暁の出撃 [戦争映画の本]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
ポール・ブリックヒル著の「暁の出撃」を読破しました。
6年前の「暁の七人」に続く、独破戦線「暁」シリーズの第2弾が遂にやってまいりました。
しかし「暁」って最近、聞かないですねぇ。夜明けとか日の出と言うよりも風情がありますな。
そんなことは置いておいて、この1991年、朝日ソノラマの364ページの原著の出版は、
その40年前、1951年と大変古いもので、著者が前年に発表したのがあの「大脱走」。
本書「暁の出撃」は、一足早い1955年に映画化もされている有名な一冊で、
英空軍特殊爆撃隊によるドイツのダム破壊任務の全貌を生々しく描いたもの。
原題はズバリ、「ダム・バスターズ」です。
物語は1939年に戦争が始まったころ、ピッカース社でウェリントン爆撃機を設計したベテラン、
バーンズ・ウォリス技師が爆弾の設計に携わるところから・・。
当時、英空軍が保有していた最大の爆弾は旧式な250㌔爆弾であり、
より大型の500㌔爆弾の重要性も認識され始めます。
ウォリスは思考の出発点として、ドイツに損害を与えるには「どこ」を「どのように」爆撃するか?
エネルギー供給源である炭坑や油田、水力発電所・・。
その研究はルール地方の三大ダム、メーネ、エーデル、ゾルベをターゲットとして、
10㌧の爆弾を高度1万2200mから投下することで破壊可能と計算されるのでした。
しかし、時はダンケルク撤退であり、このような新兵器案は空軍関係者から嘲笑されます。
アーサー・テッダー少将とビーヴァーブルック卿が興味を持ち、「ダム空襲委員会」も設立され、
模型を使ったテストを繰り返す日々。
ダム自体に着弾させるのではなく、ダムの壁面ギリギリの水中に沈めた爆弾が爆発することで、
ダムに破孔を生じさせることが判明すると、爆撃機軍団司令官ハリス中将と対面。
「貴様のような頭のイカれた発明家に割く時間など持ち合わせておらんのだ。
部下たちを貴様のおかしな爆弾投下で無駄死にさせるわけにはいかんのだ!」
テスト結果を見てなんとか納得したハリス。胴回り2mの新型爆弾の開発が始まると、
コクレーン少将の第5爆撃航空群に、「X」特別飛行隊を編成することとなり、
隊長に任命されたのは25歳のガイ・ギブソン中佐。歴戦の爆撃機野郎です。
しかし目標は極秘・・。ギブソンは思わず「ティルピッツだ!」
練度の高い搭乗員が各飛行隊から集められ、正式に「第617中隊」として猛訓練が始まります。
夜間に水上を速度386㌔、高度18mで飛び、正確に爆弾を投下する・・。
これがウォリス技師がギブソン隊長に与えた難題です。
ダム爆破に使用する「反跳爆弾」が爆発せずに正しい運動をしたうえで、壁面下に達するよう、
高度が重要であり、アブロ・ランカスター下部2ヵ所にスポットライトを取り付けます。
2本のビームが機体の下18mで交わることで、高度を知ることができるのです。
1943年5月、遂に「チャスタイズ作戦」の日がやってきました。
メインとなるギブソンの9機編隊が南方から侵入し、メーネ・ダムを攻撃。
その後、未投弾の爆撃機はエーデル・ダム攻撃に移り、
北方ルートをとる5機編隊はゾルベ・ダムを攻撃し、機動予備として5機編隊が遅れて発進。
ゾルベ・ダム攻撃は途中、対空砲火による撃墜などもあって失敗に終わりますが、
ギブソン隊長機はメーネ・ダムに突撃。水上面を高度18mで突き進むと、
ドイツ軍高射砲陣地もビームを放ちながら接近する敵機の姿を認め、
無数の曳光弾が飛び交います。
見事、爆弾を投下して、ダムの上に設置されたタワーの間を飛び抜けて急上昇。
そして重苦しい爆発音とともに巨大な水柱が・・、その高さ300m。
しかしダムは破壊されません。
続けて「M号機」が突入しますが、高射砲弾が命中し、爆弾も外れ、主翼も吹っ飛んで墜落・・。
空中で旋回待機しながら、一機ごとに突入を繰り返すと、遂に破壊されるダム。
司令部で一報を受けたウォリスは大喜びで、ハリスもその手を取って顔をほころばせるのです。
エーデル・ダムへの攻撃も成功し、結果は2勝1敗。
無事に帰還してビールを飲み干すギブソンですが、出撃した133名のうち、未帰還が56名。
ビールに口もつけず、涙を拭きながら立ち尽くすのは民間人であるウォリス技師。
「こういうことを知っていたら、私はこの計画を推し進めなかったろう」。
この水上スレスレを一機一機が対空砲火をくぐり抜けながら飛んで、ピンポイントで爆弾を落とし、
最終的にダムが決壊するシーン。迫力があって、読んでいてそれとなく感じていましたが、
あの「スター・ウォーズ」のクライマックス、デス・スターを破壊するシーンの元ネタだそうです。
なるほどねぇ。もっとも映画「暁の出撃」のシーンのオマージュらしいですけれど、
本書だけでも十分に伝わってきました。
ちなみにこの映画には隊長機副操縦士役で、若きロバート・ショウが出演しています。
ますます観てみたくなりました。ヘスラー大佐になる10年前ですね。
ドイツ側の損害を見てみると、ダムから80㌔も離れた炭坑すら水に浸かるほどの洪水によって、
飛行場浸水、25か所の橋梁も押し流され、6500頭の牛や豚が死に、軍需工場も大打撃。
なにか「3.11」の地震と津波を彷彿とさせますねぇ・・。
そして1300人の死者のうち、749人がドイツ人ではなかったそうです。
なぜならエーデル・ダムの下流に、ソ連兵の収容所があったから・・。
国王と皇后がお祝いに一躍有名となったダム爆撃隊を訪問。
ギブソンは飛行隊の記章コンテストを実施しており、閲兵式後に陛下に依頼します。
そして皇后も交えた厳正なる協議の結果、1枚のスケッチが選ばれます。
それはダムの中央部に裂け目が生じて水を噴出し、上には電光が煌めいている図柄。
こうして今でも「第617中隊」のエンブレムとして使われているわけですね。
さて、ここまでクライマックスのデス・スターならぬ、ドイツのダムを破壊して152ページ。
本書はまだまだ続きます。
スッカリ気を良くしたハリス中将によって第617中隊は特別任務部隊とされ、
今後は陸軍、海軍からダムに艦船、その他の硬目標を叩けとの要望があれば出撃・・と。
ギブソン中佐は充分働いた・・と飛行任務から外され、新たな隊長がやって来るのです。
英空軍最年少の大佐、レオナード・チェシアは25歳。
ウォリス技師がもともと考えていた大型爆弾もようやく完成。
長さ6.4m、重量5462㌔の「トールボーイ」です。
この爆弾は「地震爆弾」とも言われ、建造物等に直撃させることが必要ということではなく、
20m以内の弾着であれば、地表深くから爆発によって建造物を基礎から壊してしまうのです。
初陣は連合軍のノルマンディ上陸後すぐにやって来ました。
情報機関の報告によれば、ドイツ軍は1個装甲師団をボルドーから列車で輸送中とのこと。
ならばその前にロワール川付近のサウマー・トンネルを通過できなくしてしまえ・・というわけで、
投下されたトールボーイは地中30mまでめり込んでから炸裂。結果は上々。
結局、通れなかった装甲師団ってなんでしょうね? ダスライヒかな??
ル・アーブルのEボート基地への攻撃が終わると、
ロンドンとノルマンディに落下し始めた「V1飛行爆弾」と、「V2ロケット」の情報が・・。
パ・ド・カレー近郊の巨大な建造物。コンクリートの厚さは6mと推定されます。
また、パリ近郊の洞窟には膨大な量の「報復兵器」が貯蔵されているとの情報から
この洞窟そのものを潰してしまおうと出撃を繰り返します。
その翌日の目標はミモイエック。
地中に隠された砲身長153mの「V3-ムカデ砲」の退治にも成功。
300名の基地要員も生き埋めです。
ブレストにロリアンといったUボート好きお馴染みのブンカーにも「トールボーイ」が降ってきます。
5㌧爆弾「トールボーイ」に自慢のコンクリート天蓋をぶち抜かれたドイツ軍は、
ならばと、ハンブルク、ブレーメンのUボート・ブンカーの天蓋を5mから9mの厚さへ・・。
すると、今度はより強力な10㌧爆弾「グランドスラム」の開発が始まるのです。
すでに昼間もドイツ空軍の迎撃に対する心配もなくなり、堂々と編隊を組んで精密爆撃も可能。
もはや目標も減り、中隊最初の目標と勘違いされた戦艦ティルピッツがターゲットに・・。
しかし、ノルウェー北端のフィヨルドに鎮座するティルピッツを攻撃、帰還するのには
燃料が足りません。そこでロシアとの共同作戦が計画され、
アルハンゲリスクから32㌔ほどの場所にあるヤゴドニク飛行場を発射基地にすることに。
南京虫が這いずり回り、汚水のひどい臭いのする宿舎で3日間待機・・。
端折りますが、この英露パイロットの交流エピソードはなかなか面白かったですねぇ。
この頃にはファウキエ隊長に代わり、ポケット戦艦「リュッツォー」を仕留めに向かいますが、
強力な高角砲、対空砲火は凄まじく、18機すべてが命中弾を受けたかのよう・・。
撃墜されるランカスターも出始めますが、この最後の最後になって、ドイツ海軍の大奮戦。。
思わずニヤニヤしてしまいました。だってやられっぱなしでしたからねぇ。
そういえば「第二次大戦下ベルリン最後の日」では、「袖珍戦艦リュッツォウ号撃沈サル」。
ブレーメンなどのブンカーにも完成した「グランドスラム」を叩き込み、見事に天蓋を貫通。
しかし英海軍省は「貫通した」ことを信じておらず、ハリスはファウキエ隊長に現地視察を指示。
ハンブルクのドックに向かったファウキエと通訳がその威力による荒廃ぶりを眺めていると、
ドイツ水兵が「指揮官の許へおいで願えないでしょうか」とやってきます。
すると200名のドイツ海軍将兵が整列しており、指揮官が敬礼した後、降伏を申し出ます。
コレにはファウキエもビックリ仰天。
なぜなら、この周辺はとっくに降伏した安全地帯だと思っていたからです。
しかもファウキエがこのUボート・ブンカーを爆砕した張本人の爆撃隊長だと
通訳が余計なことまで告げてしまい、身の危険すら感じてしまうファウキエ・・。
しかし指揮官は「貴官の指揮された見事な爆撃ぶりに敬意を表します」。
その爆撃によって多くの部下を失っている傷心のドイツ海軍指揮官は、
沈みかけた貨物船での昼食にファウキエを招待するのでした。
ヨーロッパでの戦争はこうして終わり、隊員たちにも休暇が・・と思いきや、
対日戦略爆撃英空軍航空隊として、九州に上陸する米軍を援護するために
トールボーイとグランドスラムを本州と九州を結ぶ交通線に投下するという任務が・・。
しかしそれより遥かに強力な爆弾が広島と長崎に投下されるのでした。
本書は原題の「ダム・バスターズ」からイメージする「チャスタイズ作戦」に限定したものではなく、
第617中隊のニックネームが「ダム・バスターズ」であり、その部隊の終戦までの戦闘記録です。
ついでに言うと、夜間爆撃なのに「暁の出撃」というのも若干変な話で、
あえて言うなら「暁の帰還」ですかね。。
著者ブリックヒルの原作で映画化されたのがもう1本ありました。
1956年に公開された「殴り込み戦闘機隊」がソレで、義足のパイロットとして知られる
ダグラス・バーダーの伝記映画であり、監督は「暁の七人」のルイス・ギルバート。
コチラも未見ですが、ドイツの捕虜になってガーランドと親交を深めるシーンがあるのかどうか、
ちょっと気になりますね。
原作も読んでみたいところですが、未訳でした。残念!
ポール・ブリックヒル著の「暁の出撃」を読破しました。
6年前の「暁の七人」に続く、独破戦線「暁」シリーズの第2弾が遂にやってまいりました。
しかし「暁」って最近、聞かないですねぇ。夜明けとか日の出と言うよりも風情がありますな。
そんなことは置いておいて、この1991年、朝日ソノラマの364ページの原著の出版は、
その40年前、1951年と大変古いもので、著者が前年に発表したのがあの「大脱走」。
本書「暁の出撃」は、一足早い1955年に映画化もされている有名な一冊で、
英空軍特殊爆撃隊によるドイツのダム破壊任務の全貌を生々しく描いたもの。
原題はズバリ、「ダム・バスターズ」です。
物語は1939年に戦争が始まったころ、ピッカース社でウェリントン爆撃機を設計したベテラン、
バーンズ・ウォリス技師が爆弾の設計に携わるところから・・。
当時、英空軍が保有していた最大の爆弾は旧式な250㌔爆弾であり、
より大型の500㌔爆弾の重要性も認識され始めます。
ウォリスは思考の出発点として、ドイツに損害を与えるには「どこ」を「どのように」爆撃するか?
エネルギー供給源である炭坑や油田、水力発電所・・。
その研究はルール地方の三大ダム、メーネ、エーデル、ゾルベをターゲットとして、
10㌧の爆弾を高度1万2200mから投下することで破壊可能と計算されるのでした。
しかし、時はダンケルク撤退であり、このような新兵器案は空軍関係者から嘲笑されます。
アーサー・テッダー少将とビーヴァーブルック卿が興味を持ち、「ダム空襲委員会」も設立され、
模型を使ったテストを繰り返す日々。
ダム自体に着弾させるのではなく、ダムの壁面ギリギリの水中に沈めた爆弾が爆発することで、
ダムに破孔を生じさせることが判明すると、爆撃機軍団司令官ハリス中将と対面。
「貴様のような頭のイカれた発明家に割く時間など持ち合わせておらんのだ。
部下たちを貴様のおかしな爆弾投下で無駄死にさせるわけにはいかんのだ!」
テスト結果を見てなんとか納得したハリス。胴回り2mの新型爆弾の開発が始まると、
コクレーン少将の第5爆撃航空群に、「X」特別飛行隊を編成することとなり、
隊長に任命されたのは25歳のガイ・ギブソン中佐。歴戦の爆撃機野郎です。
しかし目標は極秘・・。ギブソンは思わず「ティルピッツだ!」
練度の高い搭乗員が各飛行隊から集められ、正式に「第617中隊」として猛訓練が始まります。
夜間に水上を速度386㌔、高度18mで飛び、正確に爆弾を投下する・・。
これがウォリス技師がギブソン隊長に与えた難題です。
ダム爆破に使用する「反跳爆弾」が爆発せずに正しい運動をしたうえで、壁面下に達するよう、
高度が重要であり、アブロ・ランカスター下部2ヵ所にスポットライトを取り付けます。
2本のビームが機体の下18mで交わることで、高度を知ることができるのです。
1943年5月、遂に「チャスタイズ作戦」の日がやってきました。
メインとなるギブソンの9機編隊が南方から侵入し、メーネ・ダムを攻撃。
その後、未投弾の爆撃機はエーデル・ダム攻撃に移り、
北方ルートをとる5機編隊はゾルベ・ダムを攻撃し、機動予備として5機編隊が遅れて発進。
ゾルベ・ダム攻撃は途中、対空砲火による撃墜などもあって失敗に終わりますが、
ギブソン隊長機はメーネ・ダムに突撃。水上面を高度18mで突き進むと、
ドイツ軍高射砲陣地もビームを放ちながら接近する敵機の姿を認め、
無数の曳光弾が飛び交います。
見事、爆弾を投下して、ダムの上に設置されたタワーの間を飛び抜けて急上昇。
そして重苦しい爆発音とともに巨大な水柱が・・、その高さ300m。
しかしダムは破壊されません。
続けて「M号機」が突入しますが、高射砲弾が命中し、爆弾も外れ、主翼も吹っ飛んで墜落・・。
空中で旋回待機しながら、一機ごとに突入を繰り返すと、遂に破壊されるダム。
司令部で一報を受けたウォリスは大喜びで、ハリスもその手を取って顔をほころばせるのです。
エーデル・ダムへの攻撃も成功し、結果は2勝1敗。
無事に帰還してビールを飲み干すギブソンですが、出撃した133名のうち、未帰還が56名。
ビールに口もつけず、涙を拭きながら立ち尽くすのは民間人であるウォリス技師。
「こういうことを知っていたら、私はこの計画を推し進めなかったろう」。
この水上スレスレを一機一機が対空砲火をくぐり抜けながら飛んで、ピンポイントで爆弾を落とし、
最終的にダムが決壊するシーン。迫力があって、読んでいてそれとなく感じていましたが、
あの「スター・ウォーズ」のクライマックス、デス・スターを破壊するシーンの元ネタだそうです。
なるほどねぇ。もっとも映画「暁の出撃」のシーンのオマージュらしいですけれど、
本書だけでも十分に伝わってきました。
ちなみにこの映画には隊長機副操縦士役で、若きロバート・ショウが出演しています。
ますます観てみたくなりました。ヘスラー大佐になる10年前ですね。
ドイツ側の損害を見てみると、ダムから80㌔も離れた炭坑すら水に浸かるほどの洪水によって、
飛行場浸水、25か所の橋梁も押し流され、6500頭の牛や豚が死に、軍需工場も大打撃。
なにか「3.11」の地震と津波を彷彿とさせますねぇ・・。
そして1300人の死者のうち、749人がドイツ人ではなかったそうです。
なぜならエーデル・ダムの下流に、ソ連兵の収容所があったから・・。
国王と皇后がお祝いに一躍有名となったダム爆撃隊を訪問。
ギブソンは飛行隊の記章コンテストを実施しており、閲兵式後に陛下に依頼します。
そして皇后も交えた厳正なる協議の結果、1枚のスケッチが選ばれます。
それはダムの中央部に裂け目が生じて水を噴出し、上には電光が煌めいている図柄。
こうして今でも「第617中隊」のエンブレムとして使われているわけですね。
さて、ここまでクライマックスのデス・スターならぬ、ドイツのダムを破壊して152ページ。
本書はまだまだ続きます。
スッカリ気を良くしたハリス中将によって第617中隊は特別任務部隊とされ、
今後は陸軍、海軍からダムに艦船、その他の硬目標を叩けとの要望があれば出撃・・と。
ギブソン中佐は充分働いた・・と飛行任務から外され、新たな隊長がやって来るのです。
英空軍最年少の大佐、レオナード・チェシアは25歳。
ウォリス技師がもともと考えていた大型爆弾もようやく完成。
長さ6.4m、重量5462㌔の「トールボーイ」です。
この爆弾は「地震爆弾」とも言われ、建造物等に直撃させることが必要ということではなく、
20m以内の弾着であれば、地表深くから爆発によって建造物を基礎から壊してしまうのです。
初陣は連合軍のノルマンディ上陸後すぐにやって来ました。
情報機関の報告によれば、ドイツ軍は1個装甲師団をボルドーから列車で輸送中とのこと。
ならばその前にロワール川付近のサウマー・トンネルを通過できなくしてしまえ・・というわけで、
投下されたトールボーイは地中30mまでめり込んでから炸裂。結果は上々。
結局、通れなかった装甲師団ってなんでしょうね? ダスライヒかな??
ル・アーブルのEボート基地への攻撃が終わると、
ロンドンとノルマンディに落下し始めた「V1飛行爆弾」と、「V2ロケット」の情報が・・。
パ・ド・カレー近郊の巨大な建造物。コンクリートの厚さは6mと推定されます。
また、パリ近郊の洞窟には膨大な量の「報復兵器」が貯蔵されているとの情報から
この洞窟そのものを潰してしまおうと出撃を繰り返します。
その翌日の目標はミモイエック。
地中に隠された砲身長153mの「V3-ムカデ砲」の退治にも成功。
300名の基地要員も生き埋めです。
ブレストにロリアンといったUボート好きお馴染みのブンカーにも「トールボーイ」が降ってきます。
5㌧爆弾「トールボーイ」に自慢のコンクリート天蓋をぶち抜かれたドイツ軍は、
ならばと、ハンブルク、ブレーメンのUボート・ブンカーの天蓋を5mから9mの厚さへ・・。
すると、今度はより強力な10㌧爆弾「グランドスラム」の開発が始まるのです。
すでに昼間もドイツ空軍の迎撃に対する心配もなくなり、堂々と編隊を組んで精密爆撃も可能。
もはや目標も減り、中隊最初の目標と勘違いされた戦艦ティルピッツがターゲットに・・。
しかし、ノルウェー北端のフィヨルドに鎮座するティルピッツを攻撃、帰還するのには
燃料が足りません。そこでロシアとの共同作戦が計画され、
アルハンゲリスクから32㌔ほどの場所にあるヤゴドニク飛行場を発射基地にすることに。
南京虫が這いずり回り、汚水のひどい臭いのする宿舎で3日間待機・・。
端折りますが、この英露パイロットの交流エピソードはなかなか面白かったですねぇ。
この頃にはファウキエ隊長に代わり、ポケット戦艦「リュッツォー」を仕留めに向かいますが、
強力な高角砲、対空砲火は凄まじく、18機すべてが命中弾を受けたかのよう・・。
撃墜されるランカスターも出始めますが、この最後の最後になって、ドイツ海軍の大奮戦。。
思わずニヤニヤしてしまいました。だってやられっぱなしでしたからねぇ。
そういえば「第二次大戦下ベルリン最後の日」では、「袖珍戦艦リュッツォウ号撃沈サル」。
ブレーメンなどのブンカーにも完成した「グランドスラム」を叩き込み、見事に天蓋を貫通。
しかし英海軍省は「貫通した」ことを信じておらず、ハリスはファウキエ隊長に現地視察を指示。
ハンブルクのドックに向かったファウキエと通訳がその威力による荒廃ぶりを眺めていると、
ドイツ水兵が「指揮官の許へおいで願えないでしょうか」とやってきます。
すると200名のドイツ海軍将兵が整列しており、指揮官が敬礼した後、降伏を申し出ます。
コレにはファウキエもビックリ仰天。
なぜなら、この周辺はとっくに降伏した安全地帯だと思っていたからです。
しかもファウキエがこのUボート・ブンカーを爆砕した張本人の爆撃隊長だと
通訳が余計なことまで告げてしまい、身の危険すら感じてしまうファウキエ・・。
しかし指揮官は「貴官の指揮された見事な爆撃ぶりに敬意を表します」。
その爆撃によって多くの部下を失っている傷心のドイツ海軍指揮官は、
沈みかけた貨物船での昼食にファウキエを招待するのでした。
ヨーロッパでの戦争はこうして終わり、隊員たちにも休暇が・・と思いきや、
対日戦略爆撃英空軍航空隊として、九州に上陸する米軍を援護するために
トールボーイとグランドスラムを本州と九州を結ぶ交通線に投下するという任務が・・。
しかしそれより遥かに強力な爆弾が広島と長崎に投下されるのでした。
本書は原題の「ダム・バスターズ」からイメージする「チャスタイズ作戦」に限定したものではなく、
第617中隊のニックネームが「ダム・バスターズ」であり、その部隊の終戦までの戦闘記録です。
ついでに言うと、夜間爆撃なのに「暁の出撃」というのも若干変な話で、
あえて言うなら「暁の帰還」ですかね。。
著者ブリックヒルの原作で映画化されたのがもう1本ありました。
1956年に公開された「殴り込み戦闘機隊」がソレで、義足のパイロットとして知られる
ダグラス・バーダーの伝記映画であり、監督は「暁の七人」のルイス・ギルバート。
コチラも未見ですが、ドイツの捕虜になってガーランドと親交を深めるシーンがあるのかどうか、
ちょっと気になりますね。
原作も読んでみたいところですが、未訳でした。残念!