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ドイツ空軍装備大図鑑 [軍装/勲章]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

グスタボ・カノ ムニョス著の「ドイツ空軍装備大図鑑」を読破しました。

これまで「ドイツ軍装備大図鑑」、「ナチス親衛隊装備大図鑑」と続いてきた大型本シリーズ、
今回は去年の9月に出た435ページの空軍ものをようやく・・。
このシリーズはお値段1万円とお高いことは否めませんが、オールカラーで実に楽しめます。

ドイツ空軍.jpg

早速、目次を過ぎると、30㎝x20㎝級のマルセイユの美しいポートレートがいきなり出てきて、
若干変な声をタメ息とともに発してしまいました。
この大型本で見ると、映画俳優並みですね。そりゃ、キャーキャー言われるわな。。

30x20 Hans-Joachim.jpg

「序文」では本書の目的と特徴を解説。抜粋すると、
「もっとも識別しやすい要素を簡単に概観することであり、装備や被服のすべてを深く考察したり、
系統立てて紹介することではない。
他の本との違いは、量から質に重点を移したことで、平均的なドイツ軍パイロットと搭乗員が
一般的に使用した品々を並べ、場合によっては高度なファンの関心を引く希少な現存品も紹介」。

そして第1章は17ページの「ドイツ空軍史」。
とはいっても、各ページには鮮明な白黒、またはカラー写真が掲載され、それらはBf-109から
Ju-86、ドイツ空軍軍楽隊高射砲部隊、巨大な口を開けた怪物のようなMe-323ギガントなど。

Pogruzka technology in the Me 323.jpg

続くフロー図になっている「組織と指揮系統」では、最期の空軍総司令官となってしまった
リッター・フォン・グライムと、アルフレート・ケラーの談笑中の写真が・・。
この人は「国家社会主義航空軍団(NSFK)」の軍団長ですね。

Alfred Keller, von Greim.jpg

37ページから第2章の「制服」です。
そのドイツ空軍の制服の歴史は、1933年にSAとSSの飛行部隊が統合されて、準軍事組織の
「ドイツ航空スポーツ連盟(DLV)」であり、規定としてブルーグレーの被服に制帽、階級章など・・。
ほぼそのまま「ドイツ空軍」に受け継がれ、高射砲兵は「真紅」、技術将校は「ローズピンク」、
飛行要員と降下猟兵は「ゴールデンイエロー」といった兵科色もカラーの一覧で解説します。

REIBERT Luftwaffe.jpg

こうしてまずは「帽子類」から現存する実物をカラーで、当時の使用例を白黒写真で紹介。
お馴染みの「将校用制帽」に始まり、「下士官用制帽」、白の映える「夏用制帽」。
この4月~9月まで着用が許可されていたドイツ空軍版クール・ビズですが、
頭部は洗濯のためにボタンで取り外しが可能となっています。
同じ白の制帽でも、歴戦のUボート艦長の証、油で汚れた白の制帽ではいけません。。

Sommermütze Luftwaffe.jpg

コレもお馴染み「略帽」ですが、将校用、下士官用併せて、実物を23カットで分析。
モデルとして登場するのは我らがギュンター・リュッツォウ大佐。ステキです。。

Günther Lützow.jpg

1943年には陸軍の野戦帽と同様の「規格略帽」が登場。ただし色はブルーグレーです。
また、冬季用として耳宛ての付いた白いシープスキンの毛皮帽も・・。
帽子の最後は「ヘルメット」、M35とM40で4ページ、降下猟兵用のヘルメットは無視されたか。。

Pelzmütze.jpg

お次はある意味メインとなりそうな「上衣」です。
ドイツ空軍の制服のデザインに影響を与えたのは、先の「DLV」に、「NSFK」、
それから警察集団「ヴェッケ」と、「ゲネラル・ゲーリング」だということです。

なぜか最初が「社交服上衣」で、ケース入りのカフスまで実物で登場。
次にやっと「フリーガーブルーゼ」として知られる飛行上衣。
このデザインは帝政時代の1915年型上衣の影響を受けていたそうです。
前ボタンが隠れるデザインというのが、その影響なんでしょうか。

fliegerbluse Hermann Goering_ww1.jpg

本書の当時の写真ではドイツ軍と一緒に闘った「クロアチア空軍」将校や、
スペイン義勇兵の「青飛行中隊」の整備伍長などという珍しい人達がモデルとなっています。
また、左袖に付けられた整備員の「特技章」もアップで嬉しいですね。

空軍1.jpg

「通常勤務服上衣」はドイツ空軍将兵の写真でも、もっともポピュラーなもの。
ドイツ語では「トゥーフロック」と言いますが、日本語表記の下にカタカナでも書かれています。
開襟で4つボタン、ポケットも4つというのがこの制服です。

空軍2.jpg

3種類目の上衣は「軍服上衣(ヴァッフェンロック)」で、1938年11月に採用された、
フリーガーブルーゼと、トゥーフロックの両方に取って代わる狙いがあったそうです。
しかし、なぜか先の2着も製造され続けたそうで、単に要望が多かったのかはわかりませんが、
こういうところ、なんといっても自分用の軍服をデザインするゲーリングが最高司令官ですから、
ルフトヴァッフェは規定が緩いようにも感じますね。

空軍3.jpg

で、このヴァッフェンロックの特徴は前に5つボタン、襟は閉じても開いても着用できるもので、
ガーランド、トラウトロフトが着用例を示します。
では戦闘機隊総監によるフリーガーブルーゼ、トゥーフロック、ヴァッフェンロックの着こなしを。

Galland_fliegerbluse_Tuchrock_waffenrock.jpg

「夏用制帽」が出てきたように、白の「夏期用上衣」も当然出てきます。
デザインはトゥーフロックであり、素材はギャバジンまたは麻。
洗濯が容易なように、肩章と襟章は取り外しが可能で、
通常は右胸に縫い付けられている「国家鷲章(アドラー)」はピンバッジとなっています。

空軍4.jpg

続いて「オーバーコート」を各種。
「通常勤務用のオーバーコート」は帝政ドイツ陸軍のデザインが基本で、色はブルーグレー。
「革コート」は将校と将校クラスの文官専用の被服で、軍被服廟では入手不可能なため、
民間の洋服屋で購入する必要があったものの、1944年には原材料の節約のために製造禁止。
ウーデット、ガーランド、メルダースが写った有名な写真も掲載されていました。

Galland with Ernst Udet & Werner Mテカlders Luftwaffe aces.jpg

「ズボン」では、将校用乗馬ズボンと長ズボン。
「ベルトとバックル」では将校用のライトブラウンの2本爪の革製に、
下士官用の黒の革に「空軍型アドラー」が打ち出されたアルミ製のバックルです。
しかし悲しいかな1940年以降は「鉄製」となり、にぶいブルーグレーに塗装。

Koppelschloss Luftwaffe.jpg

134ページになって「軍靴」コーナーになりました。
「将校用ハイブーツ」は、乗馬ズボンをはいた将校にだけ許可され、
そのほとんどが民間の靴屋によって製造された上等な革の素晴らしいもの。
下士官用には「行軍ブーツ」が支給されますが、やっぱり1943年にもなると、
丈の高い行軍用ブーツの製造は中止に・・。

「長剣と短剣」は8ページ、短剣は初期型と後期型があり、
結婚式などでの使用例や、吊り下げ方なども解説します。

two Luftwaffe daggers.jpg

下の写真は違いますが、ヴェルナー・バウムバッハの結婚式だという写真もデカデカと・・。
ヴァルター・バウムバッハと誤字ってましたが、この程度は大目に見ても良いでしょう。

Luftwaffe wedding pilotsbadge.jpg

いわゆる「地上勤務服」はこれにて終了し、第3章の「飛行服と装備」へ。
「飛行帽」ひとつとってみても種類は豊富で、寒さから守るための単純な「K33」は山羊革。
「K33(改)」は子牛革。以降、耳に通話システムを備えたり、喉マイクを備えたりと進化し、
さらに改良を加えていくのです。
夏季用のネット帽などを含め、飛行帽だけでも25ページです。

飛行帽とくれば、今度は「飛行眼鏡」。
これもまた種類が豊富で割れにくいレンズに、色付きのサングラスタイプまで様々。

fliegerbrille luftwaffe.jpg

黄金ダイヤモンド野郎のルーデル大佐の場合には、ネット製飛行帽に、
色付きレンズのニッチェ&ギュンター社製タイプ「D」の飛行眼鏡と詳しく解説します。

rudel2.jpg

また、「汎用眼鏡」として、もともとオートバイ兵向けにデザインされたゴーグルが
航空機搭乗員に広く使用されたとして紹介。

Pilot's Goggles 302.jpg

「防塵日除けゴーグル」も空軍向けというわけではなく、陸海空で使われたように思います。
ミイラ怪人のようなアフリカ軍団兵も、おそらくコレでしょう。
ロンメルのゴーグルが英軍の鹵獲品だというのは有名な話ですが、
ドイツ軍にもゴーグルがあったということは軍装的には規定違反なわけで、
思うに、自軍のゴーグルのデザインがあまりにダサかったから・・というオチなのでは。。

Wehrmacht goggles.jpg

「マスク」は、酸素マスクと防寒マスクの2種類。
ふと思ったんですが、日本でもよくドイツ軍将兵の軍装を着て集う方がいるようですけれど、
キチンとした軍服を規定どおりに着こなすのがルールなんでしょうか?

空軍5.jpg

自分がもしドイツ軍コスプレをやるなら、前線の古参下士官が良いですねぇ。
本書にもあるような現地調達、現地改造、敢えて規定を無視したオリジナル作成・・。
若い彼らもファッションに興味があり、人と同じのは嫌だ、スマートに格好良く、
或いは新参者を差別するため、わざと古い支給品を使い続ける・・といろいろやったんでしょう。
ですから、そういう若干アナーキーな古参の前線装備ならやってみたいところですね。
右胸に空軍のアドラーを付けている陸軍兵なんてのも、以前いましたし、
空軍兵なら、酸素マスクを付けたパイロットの軍装したって良いんじゃないでしょうか?

German Luftwaffe pilot wearing his high-altitude oxygen mask.jpg

「飛行服」ではまず、男子の憧れ「革製飛行ジャケット」です。
エリート・パイロットたちは支給される着心地の悪い飛行服の代わりに、
注文仕立ての着心地の良い衣類を着用する許可を上官に求め、その結果、
フランスやベルギーなどの占領地からオートバイ用の革ジャケットを購入します。
個人の場合もあれば、あるグループで大量にまとめ買いしたりと、
同デザインのジャケットも見受けられます。

空軍6.jpg

そんな現存する革ジャケットを3種類、メルダースプリラーの写真と共に紹介。
肩章を縫い付け、アドラーも同様か、ピンバッチ式を右胸に留めて出来上がり・・。
「鷲は舞いおりた」のシュタイナ中佐も、私費で購入したというわけですね。
ちなみに後ろの降下猟兵たちは、バリバリのフリーガーブルーゼです。

The_Eagles_Has_Landed.jpg

この後はしばらく「ワンピース飛行服」と、「ツーピース飛行服」がかなりのボリュームで・・。
ちっょとややこしいのは、「電熱式カナール革製ツーピース飛行服」というのが
大戦末期に支給され、ハルトマンもこのタイプを着用している・・と紹介。
同じ革ジャケットでも、初期のは私費、後期は支給という違いがあるようですね。

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「手袋」に、「飛行ブーツ」は、防寒用に裏には子羊の毛皮がタップリ。
さらに「救命胴衣」に「パラシュート」、「腕時計」、「信号拳銃」と、重要な装備品が続きます。

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特に救命胴衣は、当初背中側にも浮力があったため、うつぶせの状態となり、
意識不明の場合には溺れることになった・・として1943年にこの問題は解決、
などという記述を読むと、悪名高いジークムント・ラシャー空軍医師がダッハウで行った
低体温実験や、低気圧実験を思い出しますね。
まぁ、冬のドーバー海峡に墜落したら、いつまで仲間の捜索を続ければよいのか??
というようなことに繋がる実験でもあるわけですけれど・・。

rascher-freezing1.jpg

最後の装備品は「拳銃」です。
いざ戦線の向こう側に不時着してしまったら、コイツだけが頼りなのです。
まずは「ルガーP08」がホルスター付きで6ページ。

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8千挺が発注されただけの小型拳銃「モーゼル1934」は海軍と空軍、
そして警察で使用されたそうで、ちょっと調べてみたところ、映画「大脱走」で登場したとか。
逃亡中の"ビッグX"が「おい、待て!」と呼びとめられると、
「何ですか。私はフランス人ですよ? 拳銃をしまってください」と騙して難を逃れるシーン。
この拳銃が「モーゼル1934」なんだそうです。

Mauser 1934.jpg

そして同じモーゼルでもコンパクトな「HSc」拳銃。
狭いコックピット内では「ルガーP08」などよりも携帯が楽な拳銃が好まれたのです。

Mauser HSc.jpg

というわけで、3日かけてじっくりと楽しみましたが、最初に書いたように
ルフトヴァッフェの恰好良い制服のカラー写真が盛りだくさん・・ということではなく、
半分は実際に戦闘機、または爆撃機に乗るための装備で構成されており、
その意味では、軍装マニアが手放しで喜べる本ではないと思います。

あくまで、彼らは死を賭けて戦う軍人なのであり、その戦いざまは、
ポートレート写真で見るような、勲章まみれで優しく微笑んでいる姿だけではなく、
表の顔と裏の顔、そして軍装と装備も大きく変わるんですね。
次は「ドイツ海軍装備大図鑑」が出るのを密かに楽しみにしています。








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