ニセドイツ〈1〉 ≒東ドイツ製工業品 [ドイツの都市と歴史]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
伸井 太一 著の「ニセドイツ〈1〉」を読破しました。
先日の「スターリン・ジョーク」にいくつか出てきた、東ドイツ・ジョークから
ちょっと気になっていた2009年発刊で159ページの本書に流れてきました。
タイトルの「ニセドイツ」とは「贋」ではなく、「西ドイツ」のシャレのようで、
「似せ」とか「2世」にも引っ掛けてるようです。
「ゲルマン職人魂+ボリシェヴィズム=ニシモノっぽい!」ということになるようですが、
いったい、どんな本かを簡潔に説明するのは難しいので、早速、内容を紹介してみましょう。
まずは「トラビ」という愛称の自動車、「トラバント」からです。
ヴィトゲンシュタインは車には疎いので、なんとなく聞いたことのある名前・・という程度ですが、
そういえば、TVで見たことありますねぇ。
ドイツ人マニアが何台かで集まって街中を走るってヤツでした。
1950年代に東ドイツの化学工業が生み出した熱硬化性プラスチックのボディ。
しかし80年代に物資が不足すると、紙繊維が混ぜられて「走るダンボール」のニックネームが・・。
そんな「スターリン・ジョーク」ならぬ、「トラビ・ジョーク」もいくつか紹介されます。
「トラビが最高時速になるのはいつ?」
「それはレッカー車に引かれている時だよ」。
続いては高級車、ヴァルトブルクが登場しますが、この会社の歴史が面白いですね。
アイゼナハ市の工場は戦後、ソ連占領地となりますが、戦前から関係のあった
「BMW」の商標をそのまま使って車を製造し、
西ドイツの「BMW」が敗戦によって自動車生産がストップされているのを尻目に、
オランダ、ベルギー、そして西ドイツにまで輸出。
しかし復活したバイエルン州の本家の前に、東ドイツの国営企業となっていたアイゼナハ社は
「Eisenach」の頭文字を使って「EMW」へ。。
本書にもエンブレムのカラー写真が掲載されていますが、
比較するとこんな感じ・・。赤というところが、さすが「共産主義車」です。
その他、東ドイツのワゴンにトラクター、バイクにスクーターなどもカラー写真たっぷりで紹介。
自転車の項では「自転車発祥の国であるドイツは・・」というのに驚きました。
そ~ですか。。知りませんでした。。
続いては「鉄道」です。
ベルリンの高速鉄道(Sバーン)の環状線が東京の山手線の元になっているという説に始まり、
東西ベルリンを隔てる壁が構築されても、地下には壁が存在しません。
そこで壁を越えた西ベルリン側の地下鉄は東ベルリンの駅には停車せず、
「幽霊駅」となったそれらの駅には国境警察の見張りつき。。
1926年に設立された「ルフトハンザ」も、戦後、東ドイツが民間航空会社として復活させますが、
惜しくも3か月前に、西ドイツで公式な「ルフトハンザ」が誕生しています。
ここでも結局、「BMW」と同様に敗北する「オスト・ルフトハンザ」。。
ラジオとラジカセといった電気製品。そして1952年に発売された最初のテレビ受信機は、
その名前の凄さにぶっ飛びます。その名も「レニングラード」。。
1950年代後半から、東ドイツのプロパガンダ番組を批判する
西ドイツのTV番組「赤いレンズ」が放送を開始すると、
負けじと東ドイツも、西ドイツの殺人、暴力事件、汚職、ネオナチなどのスキャンダルを扱った
日本のワイドショー的番組「黒いチャンネル」を放送します。
カメラやミシン、タイプライターと続き、70年代から進められていたコンピュータ開発。
その会社名は「ロボトロン」です。
この項でも、この「ロボトロン・ジョーク」が楽しめます。
「どうしてシュタージがロボトロン内臓の盗聴器を仕掛けたって気づいたんだ?」
「部屋にタンスがひとつ増えていて、家の入口に簡易小屋が建っていたんだよ・・」。
そして「ロボトロンこそが、世界最大の"マイクロ"・コンピュータだ!」
後半は「集合住宅」などの建築物が紹介されますが、
東ドイツの人民議会堂も兼ねた「共和国宮殿」は興味深かったですね。
ココはもともとは「ベルリン王宮」があった場所ですが
1945年、連合軍の攻撃によってこの王宮は廃墟と化し、
東ドイツ政府の意向によって取り壊されて、やがて「共和国宮殿」が建築されます。
しかし、ドイツ統一後、今度はコレが閉鎖、解体され、
現在、「ベルリン王宮」の再建工事が始まっているそうです。
東ドイツ当時の彫像、銅像といった類も、巨大なレーニン像にマルクスなど
統一後は、撤去されたものもあれば、残されているものもあるそうで、
特にヒトラー台頭時代のドイツ共産党党首テールマンの銅像の写真では
「小さく"ファイト"って感じの手がかわいい」というキャプションが絶妙です。
東ドイツ軍というのは、ほとんど何も知らなかったんですが、
「国家人民軍」というそうで、軍服などは「ドイツ国防軍」を踏襲しているそうです。
本書の写真ではよくわからなかったので、いろいろと調べてみましたが、
襟章はそのままで、軍服の色は陸軍、型は空軍って感じですか・・?
「勝手に東ドイツ国営企業カタログ!!」とも紹介されているとおり、
写真たっぷりのオールカラーで、見ているだけでも楽しい一冊でした。
159ページですから、1日2日で読み終わってしまいますが、
お値段1995円というのは最初、高いかな?とも思いましたが、この内容なら妥当ですね。
最後は現在でも旧東ドイツの諸都市には必ずあるという
1945年にヒトラーからドイツを開放してくれた「ソ連兵の顕彰と慰霊碑」が印象に残りました。
掲載された写真は「ゼーロウにあるソ連兵顕彰碑」で、
この場所は「最終戦」で有名な、あのゼーロウ高地のようですね。
コレは一度、実物を見てみたくなりました。
タイトルからしてそうですが、本文もダジャレが満載で、
人によっては少々、鼻に付くかもしれませんが、個人的には許容範囲でした。
著者は2006年から3年間、ベルリンに住んでいたこともあるようで、
単に登場する製品を専門的に分析したり、そのダメさ加減をうんぬんするだけではなく、
逆に出来の悪い物に対する愛・・も感じましたし、
戦前から東西分割、そして1989年の統一後までの関連する歴史にも言及していて、
そのような大きな歴史の中での人々の変化の過程も理解することができました。
本書と同時に発刊されたらしい「ニセドイツ〈2〉≒東ドイツ製生活用品」は
コックの料理本、ロック、宝くじ、ファミコン、エロ本、カフェ、ファッション、家具、キャラクター、
といった雑貨が中心のようで、ひょっとしたら、個人的にはコッチの方が
面白かもしれぬ・・と思っています。
また、今年の2月には、懐かしい西ドイツ製品を紹介する
「ニセドイツ〈3〉ヴェスタルギー的西ドイツ」も出ていて、コッチも気になりますね。
伸井 太一 著の「ニセドイツ〈1〉」を読破しました。
先日の「スターリン・ジョーク」にいくつか出てきた、東ドイツ・ジョークから
ちょっと気になっていた2009年発刊で159ページの本書に流れてきました。
タイトルの「ニセドイツ」とは「贋」ではなく、「西ドイツ」のシャレのようで、
「似せ」とか「2世」にも引っ掛けてるようです。
「ゲルマン職人魂+ボリシェヴィズム=ニシモノっぽい!」ということになるようですが、
いったい、どんな本かを簡潔に説明するのは難しいので、早速、内容を紹介してみましょう。
まずは「トラビ」という愛称の自動車、「トラバント」からです。
ヴィトゲンシュタインは車には疎いので、なんとなく聞いたことのある名前・・という程度ですが、
そういえば、TVで見たことありますねぇ。
ドイツ人マニアが何台かで集まって街中を走るってヤツでした。
1950年代に東ドイツの化学工業が生み出した熱硬化性プラスチックのボディ。
しかし80年代に物資が不足すると、紙繊維が混ぜられて「走るダンボール」のニックネームが・・。
そんな「スターリン・ジョーク」ならぬ、「トラビ・ジョーク」もいくつか紹介されます。
「トラビが最高時速になるのはいつ?」
「それはレッカー車に引かれている時だよ」。
続いては高級車、ヴァルトブルクが登場しますが、この会社の歴史が面白いですね。
アイゼナハ市の工場は戦後、ソ連占領地となりますが、戦前から関係のあった
「BMW」の商標をそのまま使って車を製造し、
西ドイツの「BMW」が敗戦によって自動車生産がストップされているのを尻目に、
オランダ、ベルギー、そして西ドイツにまで輸出。
しかし復活したバイエルン州の本家の前に、東ドイツの国営企業となっていたアイゼナハ社は
「Eisenach」の頭文字を使って「EMW」へ。。
本書にもエンブレムのカラー写真が掲載されていますが、
比較するとこんな感じ・・。赤というところが、さすが「共産主義車」です。
その他、東ドイツのワゴンにトラクター、バイクにスクーターなどもカラー写真たっぷりで紹介。
自転車の項では「自転車発祥の国であるドイツは・・」というのに驚きました。
そ~ですか。。知りませんでした。。
続いては「鉄道」です。
ベルリンの高速鉄道(Sバーン)の環状線が東京の山手線の元になっているという説に始まり、
東西ベルリンを隔てる壁が構築されても、地下には壁が存在しません。
そこで壁を越えた西ベルリン側の地下鉄は東ベルリンの駅には停車せず、
「幽霊駅」となったそれらの駅には国境警察の見張りつき。。
1926年に設立された「ルフトハンザ」も、戦後、東ドイツが民間航空会社として復活させますが、
惜しくも3か月前に、西ドイツで公式な「ルフトハンザ」が誕生しています。
ここでも結局、「BMW」と同様に敗北する「オスト・ルフトハンザ」。。
ラジオとラジカセといった電気製品。そして1952年に発売された最初のテレビ受信機は、
その名前の凄さにぶっ飛びます。その名も「レニングラード」。。
1950年代後半から、東ドイツのプロパガンダ番組を批判する
西ドイツのTV番組「赤いレンズ」が放送を開始すると、
負けじと東ドイツも、西ドイツの殺人、暴力事件、汚職、ネオナチなどのスキャンダルを扱った
日本のワイドショー的番組「黒いチャンネル」を放送します。
カメラやミシン、タイプライターと続き、70年代から進められていたコンピュータ開発。
その会社名は「ロボトロン」です。
この項でも、この「ロボトロン・ジョーク」が楽しめます。
「どうしてシュタージがロボトロン内臓の盗聴器を仕掛けたって気づいたんだ?」
「部屋にタンスがひとつ増えていて、家の入口に簡易小屋が建っていたんだよ・・」。
そして「ロボトロンこそが、世界最大の"マイクロ"・コンピュータだ!」
後半は「集合住宅」などの建築物が紹介されますが、
東ドイツの人民議会堂も兼ねた「共和国宮殿」は興味深かったですね。
ココはもともとは「ベルリン王宮」があった場所ですが
1945年、連合軍の攻撃によってこの王宮は廃墟と化し、
東ドイツ政府の意向によって取り壊されて、やがて「共和国宮殿」が建築されます。
しかし、ドイツ統一後、今度はコレが閉鎖、解体され、
現在、「ベルリン王宮」の再建工事が始まっているそうです。
東ドイツ当時の彫像、銅像といった類も、巨大なレーニン像にマルクスなど
統一後は、撤去されたものもあれば、残されているものもあるそうで、
特にヒトラー台頭時代のドイツ共産党党首テールマンの銅像の写真では
「小さく"ファイト"って感じの手がかわいい」というキャプションが絶妙です。
東ドイツ軍というのは、ほとんど何も知らなかったんですが、
「国家人民軍」というそうで、軍服などは「ドイツ国防軍」を踏襲しているそうです。
本書の写真ではよくわからなかったので、いろいろと調べてみましたが、
襟章はそのままで、軍服の色は陸軍、型は空軍って感じですか・・?
「勝手に東ドイツ国営企業カタログ!!」とも紹介されているとおり、
写真たっぷりのオールカラーで、見ているだけでも楽しい一冊でした。
159ページですから、1日2日で読み終わってしまいますが、
お値段1995円というのは最初、高いかな?とも思いましたが、この内容なら妥当ですね。
最後は現在でも旧東ドイツの諸都市には必ずあるという
1945年にヒトラーからドイツを開放してくれた「ソ連兵の顕彰と慰霊碑」が印象に残りました。
掲載された写真は「ゼーロウにあるソ連兵顕彰碑」で、
この場所は「最終戦」で有名な、あのゼーロウ高地のようですね。
コレは一度、実物を見てみたくなりました。
タイトルからしてそうですが、本文もダジャレが満載で、
人によっては少々、鼻に付くかもしれませんが、個人的には許容範囲でした。
著者は2006年から3年間、ベルリンに住んでいたこともあるようで、
単に登場する製品を専門的に分析したり、そのダメさ加減をうんぬんするだけではなく、
逆に出来の悪い物に対する愛・・も感じましたし、
戦前から東西分割、そして1989年の統一後までの関連する歴史にも言及していて、
そのような大きな歴史の中での人々の変化の過程も理解することができました。
本書と同時に発刊されたらしい「ニセドイツ〈2〉≒東ドイツ製生活用品」は
コックの料理本、ロック、宝くじ、ファミコン、エロ本、カフェ、ファッション、家具、キャラクター、
といった雑貨が中心のようで、ひょっとしたら、個人的にはコッチの方が
面白かもしれぬ・・と思っています。
また、今年の2月には、懐かしい西ドイツ製品を紹介する
「ニセドイツ〈3〉ヴェスタルギー的西ドイツ」も出ていて、コッチも気になりますね。