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スターリン・ジョーク [ジョーク本]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

平井 吉夫 編集の「スターリン・ジョーク」を読破しました。

去年の「ヒトラー・ジョーク」に続く、独破戦線ジョーク・シリーズ第2弾の登場です。
本書の存在を知ったのは半年ほど前ですが、いかんせんジョークというものは、
その本質がわかっていなければ、楽しめるものではありませんから、
このスターリンとソ連、或いは共産主義をネタにしたジョークが自分に理解できるのか・・?
と、二の足を踏んでいました。
そんなこともあって先日、上下巻で1200ページを超える大作
スターリン―赤い皇帝と廷臣たち」でこのあたりをキッチリ勉強して、
やっと本書に挑むことができた・・というわけなんですね。

それから手前味噌ですが、今回が「400」記事めになりました。
1年前の「ヒトラー・ジョーク」も、ちょうど「300」記事でしたから、偶然とは恐ろしい・・。

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それでは、本書に登場する、550点の中から、気に入ったジョークをいくつか紹介しましょう。
まずは1917年のボルシェヴィキの10月革命から始まるジョークの中から・・。

ロシアは広くて、汽車は遅い。旅はみんな長旅だ。乗客の一人が靴を脱いだ。
不快な臭いが、むっと立ち込める。隣に座っていた男が言った。
「あんたね、靴下を取りかえないか」
「いいよ、だけど、砂糖とだけだよ」。

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最初の秘密警察チェーカーの初代長官、ジェルジンスキーのジョークなども出てきますが、
レーニン・ネタはやっぱり多いですね。そのうちのひとつ・・。

レーニン廟を見上げて、しきりに感心していた老婆が、衛兵に尋ねた。
「こん中に、なにがあんのかね?」
「レーニンが祀ってあるんだ」
「レーニンって誰だね?」
「新しい聖者さまだ」
聖者と聞いて、老婆はひざまずいた。
「聖レーニンさま、どうかボルシェヴィキを退治して、
また教会に行けるようにして下さいませ。アーメン」。

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1928年にはスターリンが台頭して、第1次5ヵ年計画へと突き進みます。

モスクワの政治集会で、党宣伝員が首都における輝かしい成果を語る。
「ゴーリキー通りには10ブロックの住宅が、レーニン通りでは13ブロックも建築されたのだ!」
「宣伝員同志」と一人の労働者。
「あたしはゴーリキー通りに住んでおりまして、レーニン通りを通って働きに行きますが、
新住宅なんて見たことがない」
「もっと新聞をよく読みたまえ」と、宣伝員は怒りの色。
「通りをぶらぶらする暇があったら!」

1940年7月の新法令によって、職場に遅刻した者は、サボタージュ行為とみなされ、
厳罰に処されることになった。
「聞いたか。ボリショイ劇場が丸焼けになっちまった」
「消防隊はなにをしてたんだ?」
「出火後10分で現場に到着したんだが、サボタージュのかどで即刻全員逮捕さ」。

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アダムとイヴは、最初のソビエト的人間である。
どうして?
アダムとイヴは裸で暮らし、ほとんど食べず、家もない。
そして自分たちは、楽園にいると思っている。

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「大粛清」に関するジョークはなかなかあります。短いのを紹介。
その1・・
「同志スターリンが自分に関するジョークを集めてるって、本当か?」
「うん、だけど、まず、そいつを喋るやつからだ」。
その2・・
定時きっかりに工場へ出勤した労働者が逮捕された。
容疑-外国製の時計所持。
その3・・
聞いたか。プラウダが最優秀のジョークに懸賞を出したんだってさ。
一等賞=20年。
その4・・
「ソ連の学者が人間の寿命を150歳まで延ばす方法を発見したそうだ」
「ははあ、すると判決も長くなるな」。

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1937年、ロシアの偉大な詩人プーシキンの没後百周年を記念して、
ソ連政府はプーシキン記念像のコンクールを公布し、様々なアイデアが殺到した。
厳格な選考の結果、次の作品が佳作となった。
「カフカスの頂に立ち、遥か彼方を眺めるプーシキン」
「決闘の敵手の弾丸を胸に受け、まさに倒れんとするプーシキン」
だが、一等賞を獲得したのは次の作品だった。
「プーシキンを読むスターリン」。

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いよいよナチス・ドイツとの戦争が始まります。
なにかで読んだことのあるようなジョークがありました。

赤軍兵士に降伏を呼びかけるドイツ軍。
「投降せよ。ロシア兵たち!」
ソ連軍陣地から一人の兵士が、アジア訛りで怒鳴り返した。
「俺たちウズベク人はいらねえのか!」

1945年のポーランド解放。
ソ連将校がポーランド人に志願して従軍するよう説得します。
「どうして一緒に闘わないんだ。我が軍の敵はナチスで、ポーランド解放のために闘ったのに」
「あんたは2匹の犬が一本の骨を取り合って喧嘩しているのを見たことがありますか?」
「あぁ、良く見るね」
「骨が一緒に闘いましたかい?」

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ルーマニアの小学校。
「昨日の日曜日はなにをしましたか?」
「ボクはパパと赤軍ごっこして遊びました」
「それはどんな遊びなの?」と先生。
「はじめに家で、うんと酔っ払うんです。それから隣のおばさんの家へ行きます。
パパがおばさんを押し倒して、上に乗っかって、なにかやっている間に、
ボクはおばさんの腕時計をとりました」。

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中盤からは、戦後の共産圏の国々のジョークも多くなってきますが、
チェコスロヴァキア、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリーにユーゴスラヴィア、
そして東ドイツと、その当時の国家元首に対するジョークとなっていますので、
例えば、東ドイツのヴァルター・ウルブリヒトを知らないと、その面白さは理解できません。
ヴィトゲンシュタインはあまり詳しくないので、それでも楽しめたのをいくつか・・。

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ブリジット・バルドーが東ドイツを訪問して、ウルブリヒトに会った。
「フロイライン・バルドー、なにか私でお役に立てることはありませんかな」
バルドーはお色気たっぷりに答える。
「私の願いは一つだけ。壁を取り払って、お国の全国民に国境を開いて下されば嬉しいわ」
「あっは!可愛いことを言われる。あなたは私と2人だけになりたいのですな」。

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1人の選挙人がブダペストの投票場で言った。
「すいませんが、この投票用紙じゃなくて、ほかの、そうそう、それ、上から5番目のをください」
選挙管理人が言う。「わかりませんな。どれだって同じじゃないですか」
「そりゃ、もちろん。でも少なくとも、何かを選んだって気になりたいもんですから」。

太平洋で船が沈没し、2人の男と、1人の女がだけが小島に辿り着いた。
2人の男がイタリア人だったら?
1人の男が、もう1人の男を殺して、女を独り占めにする。
2人の男がフランス人だったら?
なんのいさかいもなく、心安らかに三角関係になる。
2人の男がイギリス人だったら?
男どもは別の島に移って、女をひとりぼっちにしてしまう。
2人の男がロシア人だったら?
空びんに手紙を詰めて、モスクワからの指令を待つ。

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戦後、米英仏ソ四ヶ国の共同占領下に置かれたウィーン。
連合軍代表の会談で、米国人の延ばした足が、ソ連の通訳嬢の足に触ってしまった。
「どうも、失礼しました」
通訳嬢は赤くなって、上司のバルマショフ少佐になにかささやいた。
少佐はプーシキン大佐の席に行って、なにか耳打ちをする。
大佐はシーモノフ将軍の元へ。
将軍は会議室を出て電話を掛けに行った。
30分後に戻ってきた将軍は、プーシキン大佐になにか耳打ちを・・。
大佐はバルマショフ少佐になにかささやいた。
少佐は通訳嬢の耳元に身を屈める。
通訳嬢は米国人に向き直り、笑みをたたえて言った。
「どういたしまして」。

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ケネディのモスクワ訪問を祝して、赤の広場でカー・レースが挙行された。
出場選手はケネディとフルシチョフその人。
フルシチョフはジルのリムジンを駆ってベストを尽くした。
しかし、ゴールに先に着いたのはケネディのサンダーバードだった。
翌日のプラウダ。
「同志フルシチョフは壮絶なるフィニッシュにおいて、栄誉ある第2位を勝ち取った。
ケネディ大統領はビリから2番目であった」。

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超短編ジョークではこんなのがお気に入りです。

キリスト教徒は死後の復活を信じる。
共産主義者は死後の名誉回復を信じる。

戦車とはなんですか?
戦車とは交通手段であり、ソ連兵士が兄弟諸国への友好的訪問に利用するものである。

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ヴィトゲンシュタインが子供の頃のソ連の書記長と言えばこの人、ブレジネフです。
本書では彼もジョークのネタになっていました。

フルシチョフとブレジネフの相違はなんですか?
相違はない。ただ、ブレジネフはそのことに、まだ気づいていない。

スターリンとブレジネフの相違はなんですか?
相違はない。ただし、ブレジネフは髭を眼の上に生やしている。

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もともとは1983年に発刊され、本書は1990年に306ページで文庫化されたものです。
著者のあとがきでは、10年以上に渡ってソ連・東欧ジョークを集めた著者の
「分析」が非常に勉強になりました。
例えば、よく出来たジョークは普遍的であり、原型は国籍不明であり、
登場人物や状況設定をちょっと変えるだけで各時代、各国で語られる政治ジョークは無数にある
ということです。
本書の中でもに似たようなものもありましたし、
ヒトラー・ジョーク」にあったものと同じパターンもありました。

しかし、この共産主義ジョークというものは、読んで(聞いて)爆笑するようなものではなく、
ほとんどが「自虐ネタ」ですから、悲しいというか、苦笑いジョークに終始していますね。。

実は「ニセドイツ」という、”勝手に東ドイツ国営企業カタログ”って本があるんですが、
今回、東ドイツ・ネタに触れた勢いで読んでみようかと思っています。







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