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図説 死刑全書 [世界の・・]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

マルタン・モネスティエ著の「図説 死刑全書」を読破しました。

先日の「女ユダたち」を読んで、本棚に仕舞いっぱなしだった本書にとうとうチャレンジしました。
購入したのは5年以上は前ですが、なんでこんな本を買ったのか、良く覚えてません。。
まぁ、「死刑」に興味があったのは間違いありませんが・・。
1996年発刊で405ページの本書を読むに当たって、第三帝国関連の記述がない限りは
記事としてUPするつもりはありませんでしたが、やっぱり・・というか、
所々で「ナチス・ドイツは・・」と紹介されてしまいましたので、
今回、本書の内容ほど「グロ」くならないように書いてみますが、
果たして、どうなることやら・・。

図説 死刑全書.jpg

「はじめに」では本書の目的を、多数出版されている「なぜ?」ではなく、
「どのように?」という疑問に答えようというものとしています。
例えば、斬首刑で使われた斧は、どのようにして剣にとって代わられたのか?
世界中に広まっていた十字架刑は、なぜ突然行われなくなったのか?

第1章は「動物刑」です。
文明の歴史と同じくらい古くから行われてきたという動物刑。
紀元前のエジプト人は、囚人にワニを襲わせていたという話からです。
インドでは象によって踏み潰され、スペイン人は何百人ものインカ人を犬に食い殺させます。
ローマの競技場でも、飢えさせられたライオンに虎、熊などあらゆる猛獣が囚人を襲ったそうで、
コレなどは映画「グラディエーター」のようなイメージですね。

Gladiator.jpg

「喉切りの刑」から「腹裂きの刑」と続き、ココでは日本の「切腹」についても触れていますが、
ペルシャでは切った腹から腸を全部巻き取ったり、生かしたまま内臓を摘出する・・というものです。
そしてこれらは180点余の版画などを掲載して具体的に理解できるようになっています。
「餓死刑」ではルーベンスの「ローマの慈愛」に似た版画も出てきました。

ローマの慈愛.jpg

「磔刑」はキリストの有名な十字磔が知られていますが、
「聖アンデレ十字」と呼ばれる、X十字による磔刑の版画がありました。
コレはスコットランドの国旗「セント・アンドリュース・クロス」のことなんですねぇ。
そしてナチス・ドイツがソ連でユダヤ人を磔にした・・という話も紹介されていました。
う~ん。。そんな話は聞いたことがないですけどね。。

murillo_martyrdom_of_st_andrew.jpg

続く「生き埋め」でも、ナチのいくつかの部隊はレジスタンスやパルチザンに対して、
恐ろしい見せしめとなるように生き埋めを行うことがあった・・としています。
銃殺したつもりがまだ生きていて、結果、生き埋めに・・ということならありそうですが、
埋めちゃったら、その場限りですし、たいした見せしめにならないと思います。
ユダヤ人を磔に・・にしても、そんな面倒くさいことを組織的にやったとは
あまり考えられませんね。

einsatz41.jpg

第10章はヴィトゲンシュタインが一番苦手なヤツ、「串刺し刑」です・・。
1917年に赤軍兵士たちによって串刺しにされたポーランドのロジンスキー将軍の写真が
いきなり1ページフルフルで出てきてビックリ・・。
まぁ、この写真でも、串刺しってドラキュラや串刺し公で知られるヴラド・ツェペシュの
有名な版画のようにお腹から背中に突き刺すのではなく、お尻からいくんですね。。

VladTepes.jpg

そういえば「最強の狙撃手」でも赤軍兵士はやってましたか。
中学生のときにビビって観に行けなかった「食人族」のポスターもそんな感じ。。

食人族.jpg

執行人は途中でお腹なんかを突き破ることなく、口に抜ける技術が必要とされ、
しかも先が尖ったものより、丸いもののほうが臓器を傷つけることなく、
数日かけて苦しめられる・・という・・・イタタ。。もうダメ・・。

Empalement.jpg

しかしココから「皮はぎ刑」と「切断刑」、「解体刑」、「切り裂き刑」と
かなりエグイ刑が容赦なく連発。。
「火刑」では有名なジャンヌ・ダルクの場合も詳しく解説します。
一般的には縛り付けて、足元から火をつけるこの処刑ですが、
クレーンみたいなシーソーを用いて吊るして焼き、苦痛を長引かせるため、
時々、火から引き上げたりという責め苦パターンもあったそうです。

Bûcher.jpg

「火刑」の次は「肉を焼く」です・・。もう、章タイトルがエグくて困りますねぇ。
2年ほど前に確か「ヒストリー・チャンネル」で観た「ペリロスの雄牛」の版画が・・。
古代ギリシャで真鍮で作った雄牛のお腹に人間を入れ、下から火を焚く・・という残酷なもの。
外から中は見えませんが、雄牛の口から叫び声が聞こえる仕組みとなっております。
その他、この章で紹介されるのは火刑とは違う、グリルのベッドで両面こんがり焼いたり、
油の中に放り込まれたり・・と、ロースト、グリル、フライといった洋食屋さんのような処刑です。。
そして最後には「ナチスは死体を焼却しただけでなく、生きている女性と新生児を度々、
炉の中に投げ込んだのである」。

Brazen bull.jpg

「ノコギリ引き」は、「串刺し刑」に匹敵するキッツい処刑方法です。
コレもお腹から真っ二つ・・というのは優しい方法で、
基本は逆さにして足を開かせ、お股から引いていきます。
そしておヘソを通り過ぎるまで意識を失わないそうで、あ~、も~、イテーな~。。
ですから、頭から引いてあげるのはすぐに死ぬので、まだ、良いほうなんですね。

「突き刺す」ではやはりTVで観た「悲しみの聖母」、「ニュルンベルクの処女」と
名の付いた棺が登場。
「四つ裂き」はヴィトゲンシュタインの好きな映画Best10にランクインする「ブレイブハート」で
最後にメル・ギブソンがやられてしまうヤツです。
日本では「八つ裂き」と言いますが、四肢を無理やりバラバラにするので「四つ裂き」。。
八つに裂くという刑は実際には無いようですね。

Virgin of Nuremberg.jpg

中盤からは写真も多くなってきます。
主に1900年代、そして現在でも続いている絞首刑に斬首刑、鞭打ち刑などの写真ですが、
結構、デカイ生首写真なんかが予告もなく出てくるので「うおっ・・」となりました。
しかもほとんど電車のなかで読んでいましたから、隣に座ってるおばちゃんや
前に立ってる女子高生に見られないよう、身体をよじったり・・と気を使って大変。。

そしていよいよ「ギロチン」が・・。
先日の「女ユダたち」でナチス・ドイツの処刑の話から本書を読むことになってしまったわけですが、
本書で一番印象に残ったのは、ヨハン・ライヒハルトという人物です。
彼は第三帝国の「死刑執行人」として、3,165人を処刑したという世界記録保持者です。
基本的には「ギロチン」専門で、あの「白バラ」のショル兄妹も彼の手にかかったんでしょう。
ヒトラー暗殺未遂事件でのピアノ線を使ったと云われる絞首刑もそうかも知れません。

Johann Reichhart.jpg

しかし、本書をここまで読み進めていればわかるように
ライヒハルトが残酷な人間・・というわけではなく、18世紀から続く執行役人の家系の最後の
処刑人という必要不可欠で重要な仕事に就いていただけで、彼がフライスラーと手を組み、
フランス革命のギロチン王、シャルル=アンリ・サンソンの持つ、2700人の記録を
破ろうとしていたなんてことではありません。

死刑執行人は、特に19世紀以降、より人道的に苦しませないように処刑せねばならず、
手際の良く、確実な処刑を行なえるプロフェッショナルが求められます。
それはある意味「職人技」であり、戦後、ライヒハルト自身も「死刑執行人の義務を果たしただけ」
ということで無罪となって、彼はニュルンベルク裁判でも、カイテルヨードル
戦犯を絞首刑にした連合軍の死刑執行人であるウッズ曹長のお手伝いもしたというほどです。

Nazi guillotine.jpg

また、切断された頭部がいつまで意識を持っているのか・・?
についても数ページに渡って、様々な実験の報告などを紹介しながら検証しています。
本書の後半はナチスの大量虐殺にも言及した「ガス室」、
そして「電気椅子」、「薬物注射」といった現在の米国で見られる処刑と続きます。

ただ「銃殺刑」では本書で唯一、感動的な処刑がありました。
ヴィシー政府の内務大臣で、首相のラヴァルと共に死刑となったピエール・ピュシュー。
彼は自分で銃殺隊を指揮する許可を与えられ、銃殺隊長は隊員をひとりずつ紹介。
ピュシューは隊員たちに語りかけます。「諸君はこの政治的殺人には関係がない」。
そして右腕を真っ直ぐに上げ、「構え!」・・・「撃て!」
ピュシューが腕を組んだまま倒れると、兵士たちは泣いた・・。

Pierre Pucheu.jpg

日本でも死刑が廃止にならないのは「犯罪抑止力」の効果のためと言われていますが、
本書のさまざまな死刑も、根本的には同様のような気もします。
犯した罪の種類によって方法が違ったり、数万人という多くの見物人を集めた公開処刑や
四つ裂き刑という惨いものも、死刑の恐ろしさを知らしめる効果でもある気がします。
もちろん、自白目的の拷問を兼ねた処刑という別の形もありますが・・。

2002年に551ページの「完全版」というのも出ていました。
150ページ増量で図版も100点ほど多いようですが、どこら辺が「完全版」なのか・・?
本書に載せられなかったほどのエグい処刑や図版が掲載されているのかは不明ですが、
今回、万が一、興味を持たれた方がいるなら、そちらのほうが良いかも知れません。。











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