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Uボート作戦 [Uボート]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

W.フランク著の「Uボート作戦」を読破しました。

リデル・ハートの「第二次世界大戦」でお腹一杯、ちょっとグッタリ気味ですが、
Uボートについてはそれほど触れられていなかったこともあって
3年以上前に購入していた1970年発刊の本書を選んでみました。
著者のW.フランクは、名著「デーニッツと「灰色狼」」の著者というのは知っていましたが、
去年8月の「Uボート部隊の全貌」以来、実に久しぶりのUボートものなので、
本書がどのような内容なのか不明のまま、とりあえず中毒患者の如く、
一心不乱に読み進めます。。。

Uボート作戦.jpg

まずは潜水艦の誕生から第1次大戦でのヴィディゲン大尉のU-9の活躍などを簡単に紹介。
1935年、英独海軍協定によってレーダー提督の新生ドイツ海軍は
排水量250㌧の「カヌー」と呼ばれる小型U-ボートの建造を開始。
Uボート隊指揮官には前大戦のUボート艦長で、巡洋艦「エムデン」艦長となっていた
デーニッツが任命されます。

Karl Dönitz.jpg

500㌧の大型Uボートである「Ⅶ型」も完成し、Uボート部隊も徐々に拡大しますが、
1939年9月、寝耳に水の英国による宣戦布告がデーニッツに衝撃を与えます。
そしてシュウハルト少佐のU-29が早速、英空母カレイジャスを見事撃沈。
しかしレンプのU-30は誤って、客船「アセニア号」を沈めてしまいます。。

HMS Courageous sinking after being torpedoed by U-29.jpg

5本の魚雷しか積んでいない「カヌー」で4隻の商船を沈めたU-19の艦長は、
後の大エース、ヨアヒム・シェプケです。
さらに「死んだふり」を決め込んで、英国に「U-9号を撃沈した」と発表させたのは、
これまたダイヤモンド章受章者となるヴォルフガング・リュート
これら当初の1941年までの攻勢期が数々の戦記とともに語られます。

Joachim Schepke22.jpg

しかし英戦艦ロイヤルオークを撃沈した”スカパ・フローの牡牛”こと、U-47のプリーンの話になると
「あら?この書きっぷりは読んだことあるなぁ・・・」
原題はなんだろう・・とペラペラ捲りますが、通常ページの最初に書かれているハズのものもなく・・。
まあ、「デーニッツと「灰色狼」」の著者だし、アレとかぶっているかと思いつつ、読み進めますが、
「やっぱり、読んだことある」と確信し、今度は後ろを捲ってみると、
ソコには、「Die Wölfe und der Admiral」。
お~と、これは「デーニッツと「灰色狼」」そのものですね。
ちなみ表紙にもちゃんと・・。独破後にカバー外して気づきました。。

U-46 Mise en peinture de l'emblème de la 7e Flottille.jpg

本書についてハッキリしたことは謎のままなんですが、フジ出版から1975年に出た
「デーニッツと灰色狼―Uボートの栄光と悲劇」は542ページの大作で、
それより5年も古い本書は284ページです。
ということは1957年の原著の最初の翻訳版が本書ということなのかも知れません。
ただし、完訳ではなく、1/3から1/5程度の抄訳のような感じです。

Die Wölfe und der Admiral.jpg

そうは言っても「デーニッツと灰色狼」の内容を全部暗記しているわけではないので、
忘れていたエピソードも楽しめました。
あえて艦名の明かされない、とあるUボートが英国潜水艦を撃沈し、
唯一の生存者である一等水兵のペスターを収容します。
同僚のすべてを失ったペスターに「おい、君は気の毒だね」と英語で語りかけ、
彼の衣類を乾かし、チョコレートを振る舞い、司令塔でタバコを吸うことも許し、
思いに沈む彼の沈黙も邪魔しないUボート乗組員たち・・。
明日は我が身と知っている彼らには、他人事とは思えないのでした。

U-Boot-Besatzung mit Gewehren posiert an Bord mit totem Eisbär.jpg

やがて3大エースと呼ばれたプリーンとU-100のシェプケ、 U-99のクレッチマーが揃って撃沈・・。
クレッチマーは本書では「クレチュメル」と書かれているので、一瞬、見逃しました。。
ネイティブの発音ならクレッチュマーが正しいんでしょうか。

Two U-Boat aces together. Gunther Prien, with Otto Kreschmer behind him.jpg

U-556のヴォールファルトと巨大な戦艦ビスマルクとの楽しくも悲しい運命的なエピソード。
「仮装巡洋艦」アトランティスが撃沈され、U-68のメルテンとUAのエッカーマンが
戦時中最大の海難救助を行なったシーンも出てきますが、
ローゲ艦長の書いた「海の狩人・アトランティス」の共著者も、このW.フランクだったんですね。
あれは実に面白い本でした。最初の頃のレビューなんで、超ザックリですが・・。

The Encounter between U-556.jpg

「デーニッツと「灰色狼」」では、フォン・マンシュタインというU-753の艦長の名が衝撃的でしたが、
本書にもちゃんと登場します。
しかし、彼は別に商船をバンバン撃沈したりして活躍するわけではなく、
ただノルウェーに移動するUボートのうちの一隻に過ぎないんですが、
ちょっと気になって調べてみると、1943年の5月に北大西洋で撃沈されています。
スコアは5隻撃沈、3万㌧。享年35歳でした・・。

u753.jpg

1944年の8月にフランスを席巻する連合軍からUボート基地であるブレストを守り抜く様子は
最近、パットンやら、なんやらを読んだので興味深かったですね。
分厚いコンクリートで覆われたUボート・ブンカーは1000ポンド爆弾を数十発喰らっても
ビクともせず、退却してきたドイツ軍部隊が、この要塞と化したUボート・ブンカーに流れ込み、
Uボートクルーたちも海上での時と同様に、陸上でも勇敢に戦い続けます。
サン・ナゼールとロリアンも終戦まで持ちこたえられたのは、
この「Uボート・ブンカー要塞」の存在が大きかったんでしょうね。
これらの戦記に特化した本があってもよさそうなものですが・・。

Die U-Boot-Bunker von Brest.jpg

ブレストにいた2人のUボート隊司令のうち、映画「Uボート」のモデルといわれる
レーマン・ヴィレンブロック大佐は大破していたおんぼろのU-256に
間に合わせのシュノーケルを取り付け、予備の兵員と技術者をかき集めて出港。
数週間後に無事、ノルウェーに辿り着くのでした。

Heinrich Lehmann-Willenbrock.jpg

ヒトラーの後継者に任命された・・というボルマンからの電報を受け取るも、
そんなことも知らずに武装したSS将校の護衛と共にデーニッツのもとに現れた
後継者を自負するヒムラーとの対談が・・。
デーニッツは机にピストルを隠し持ち、U-333の元艦長のクレーマーが指揮をする
「デーニッツ護衛大隊」も隠れて待機しています。
今回、クレーマーの綽名が「生命保険」だったことを思い出しましたが、
まさかそれが理由でデーニッツの警護を命ぜられらたんじゃないでしょうね。。

Peter Erich Cremer.jpg

本書でもかなりの数のUボートと、有名無名に関わらずUボート艦長が登場してきますが、
その人数とエピソードはある程度に絞られています。
例えば、U-156ハルテンシュタイン艦長の有名な「ラコニア号事件」はありませんでしたし、
剣章受章者のテディ・ズーレン艦長についても同様です。
ただミルヒクーの老艦長、フォン・ヴィラモーヴィツ・メレンドルフの最期は、
相変わらずジ~ンとしましたね。。

DONITZ award ceremony.jpg

全体的に、原題「オオカミたちと提督」のとおり、数多くのUボート艦長たちの戦いと、
最初から最後までUボート司令官だったデーニッツとその苦悩、
そしてUボートそのものにもシッカリと光を当てた、とてもバランスの良い一冊で、
Uボート入門書としても、うってつけですし、
「デーニッツと「灰色狼」」がボリュームあり過ぎ・・と腰の引けている方にも、
最適なものではないでしょうか。
名作本っていうのは、何度読もうが、抄訳であろうが、面白いことに変わりありませんね。







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