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突撃砲兵 [パンツァー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

フランツ・クロヴスキー著の「突撃砲兵」を読破しました。

以前に紹介した「ヘルマン・ゲーリング戦車師団史」の著者による、
突撃砲独立大隊興亡史といえる内容の1冊で
1935年にフォン・マンシュタインによって歩兵支援の装甲化自走砲として提言された
この兵器が紆余曲折の末、開発され、歩兵の守り神として全線戦において活躍し、
最終的に1945年の終焉を迎えるまでが詳細に描かれています。

突撃砲兵.JPG

まずは戦車との違い、回転する砲塔を持つ戦車と違い
多少の俯角はつけられるものの、相手に正面を向いて砲撃する突撃砲は
それゆえ防御のため、前面装甲を厚くし、車体も低くすることが条件となり、
結果的に乗員の数も戦車の5名に対して、4名、また、車長とは言わず、砲長と呼ぶそうです。

Sturmgeschutz Battalion Advancing toward Stalingrad.jpg

これは兵科の違いも大きくあり、戦車科ではなく、砲兵科に属する突撃砲は
そのユニフォームも前はダブル仕様ですが、黒ではなく、フィールドグレー、
襟章などのバイピングも砲兵の赤を使用します。

そして1940年前半、砲兵教導連隊に突撃砲中隊が配属されると、
いきなりフランツ少尉が登場。「おっ!」と思って読み進めると
やはり彼は後にグロースドイッチュランドで柏葉騎士十字章を受けることになる
ヴィトゲンシュタインの好きなペーター・フランツでした。

Peter Frantz GD.jpg

本書はフランス戦役、バルカン戦役、ほとんどを占めるロシア戦役は年毎に、
また軍集団毎に細かく、その突撃砲大隊の戦いが出てきます。
数ページ毎にクリアーな写真が出てくるのが救いですが、結構、シンドイ展開なので
好き嫌いは分かれますね。

それでも楽しい回想というか、報告もあり、例えばユーゴでは
発電所が破壊されて町の冷蔵庫も停電となったことから、
ここの所長は冷凍されていた1万羽のニワトリを形式的な受け取りだけで、
ドイツ軍兵士たちに提供。どの突撃砲もこのニワトリを携行し、大いに役立つものの、
後にロシアの奥深くでこのときの請求が「非友好的」な計算書で届き、
部隊の上級主計長が頭を抱えた・・。

sturmgeschutz inside interior.jpg

バルバロッサ作戦で中央軍集団に配属された第191突撃砲大隊の指揮を取る
ギュンター・ホフマン・シェーンボルン少佐は本書のなかでも特別に印象に残ります。
「韋駄天」と呼ばれた活躍で、柏葉騎士十字章も授章。その後も頻繁に登場し、
突撃砲学校の校長を勤めるという、まるで突撃砲兵の父のような雰囲気です。

Günther Hoffmann - Schönborn.jpg

ここから始まる東部戦線の戦いは有名な戦役が目白押しです。
セヴァストポリも一次と二次、デミヤンスクとホルム包囲戦、
ハリコフ戦役からスターリングラードではいくつかの突撃砲大隊が全滅。
ツィタデレ作戦水牛作戦と1943年までが上巻で紹介されます。

Cholmschild.jpg

本書では頻繁に、「1級鉄十字章や騎士十字章を授与された」という記述が出てきますが、
その中間に位置する「ドイツ黄金十字章」の授章記録以外にも
なかなか記述された本は少ない「武勲感状徽章」にまでしっかり触れられています。
この「武勲感状徽章(Ehrenblatt Spange des Heeres)」は、
「陸軍名鑑章」などとも訳されますが、位置づけ的には
ドイツ黄金十字章と騎士十字章の間ということです。
空軍、海軍にも各々ありますが、胸ボタンの2級鉄十字章のリボンに装着するようですね。

Ehrenblattspange des Heeres.jpg

○○シュミット大尉や△△ベルガー少尉といった名の数多くの突撃砲兵たちが
入れ代り立ち代り登場し、その多くは1回出てくるだけ・・なので、
その名をいちいち覚える必要はありませんが、
「ガッターマン」という中隊長が出てきたときだけは、凄い名前だなぁ・・と
暫く頭の中で子供の頃に良く見た、2つのアニメ・ソングが流れていました・・。

Stu.H.42 Ausf.G Zėlovo aukštumose, 1945.jpg

下巻では防御一点張りとなった突撃砲の戦い・・西部戦線、チェルカッシィ
包囲されたクーアラント軍集団での突撃砲の戦いも出てきます。
ここでは糊の利いた「KURLAND」のアームバンドを受領する場面が・・。
しかし、このカフタイトル・・近ごろ流行のノルディック柄ですね。お洒落です・・。

Ärmelband Kurland.jpg

途中、回転砲塔を持たないフェルディナンド(エレファント)やブルムベアが出てきますが、
これらは駆逐戦車、突撃戦車と呼ばれ、兵科も戦車科であることから
本書の対象外とされています。

Brummbar_Sturmpanzer IV.jpg

しかし、兵器生産量の低下により突撃砲部隊にⅣ号駆逐戦車が補充されたりもしたそうで、
これら突撃砲と駆逐戦車の割合によって「駆逐戦車大隊」などへ変更していったようです。

また、個人的にはティーガー戦車で活躍する前の突撃砲兵ヴィットマンなどが
出てくるのも楽しみにしていましたが、装甲師団内で編成されている突撃砲中隊も本書では
触れられていません。よって武装SSの部隊も一切なし・・。ちょっと残念でした。

wittmann_Stug III.jpg

当初の短身砲から長砲身へと進化していく突撃砲の、
兵器としての解説は最初の章に述べられているだけなので、
突撃砲のそのような内容を求める方には不向きな内容かもしれません。

司令部に戻ってみると、そこが20名ものロシア兵に占領されていて、
友好的な態度でタバコを勧め、なんとか窮地を脱したという「雪の中の軍曹」ばりの話もあったりと、
突撃砲マニアでなくとも楽しめる部分もありますが、
よほど心してかからないと、かなり大変な1冊(2冊?)です。





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