SSブログ

武装親衛隊 -ドイツ軍の異色兵力を徹底研究- [武装SS]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

広田 厚司 著の「武装親衛隊」を読破しました。

最近、似たようなタイトルの本を独破したばかりですが、今回は仕事帰りに
立ち寄った本屋で偶然見つけた、10月に発売されたばかりの「武装SS」モノです。
著者は聞き覚えがあるなぁと思って帰ってきてから調べてみると
ドイツ列車砲&装甲列車戦場写真集」の著者ですね。
本書は文庫ですが、500ページの書き下ろしで、帯にも書かれているとおり、
多数の写真も掲載し、広い視点から武装SSを解説したものです。

武装親衛隊.JPG

まずは、SSモノではすっかり定番である、ナチ党とヒトラーの台頭、そしてSAと国防軍、
レーム殺害と、SSが組織として発展していく様子。そしてヒトラー護衛隊として発足した
ゼップ・ディートリッヒの「ライプシュタンダルテ」。
それに平行してアイケの収容所監視兵「髑髏部隊」が武装SSとなっていく過程・・。
もちろん、SS-VTを仕切るパウル・ハウサーも詳しく紹介されています。

Hausser2.jpg

その後もSS連隊として初陣となるポーランド戦、そしてフランスの電撃戦。
ギリシャ戦役から東部戦線へ、1944年には再び西部戦線で消耗し、
ベルリン攻防戦での終局までがダイジェスト的に書かれています。
有名な戦いや逸話も多く、また、2ページに1枚の割合で写真も出てくるので、
武装SS初心者の方でもなかなか楽しめるんじゃないでしょうか。

武装SSの組織も詳細に解説されていて、本部長ゴットロープ・ベルガー
アーリア人によるエリート部隊から、異教徒、ロシア人なんでもありの徴兵ぶりもさることながら、
本書では、SS作戦本部長であり、SS予備軍司令官、
そして武装SSに関するヒムラーの代理を務めたハンス・ユットナーが何度も登場し、
彼もまたヒムラーの思想とは違うことを知ることが出来ました。

Hans Jüttner.jpg

次の章では、武装SSの軍装などが紹介されます。
各師団のマーキングやカフタイトルも写真付きで紹介され、
このような独特な軍装や襟章などに、まず興味がある方でもなかなか楽しめます。
特に襟章の解説ではクリスチャン・タイクゼンSS大尉とオットー・ヴァイディンガーSS中尉が
ツー・ショットでモデルになっている?という素晴らしい写真もありました。

Sylvester Stadler - Hans Weiss  - Christian Tychsen - Otto Kumm - Vinzenz Kaiser - Karl-Heinz Worthmann.jpg

後半は、エリート師団を取り上げて、その師団史と共に師団長にもスポットを当てています。
ただし、「ライプシュタンダルテ」では前半活躍したクルト・マイヤー
ノルマンディ攻防戦では、戦死したヴィット師団長に代わって臨時師団長を務めた・・・など、
第12SS師団「ヒトラーユーゲント」とごちゃごちゃになったりしています。

ダス・ライヒ」ではヴィルヘルム・ビットリッヒ(Bittrich)が頑なに「ヴィットリッヒ」になっていたり、
ダンマルク」の写真の説明が「オランダ人義勇兵」だったり、
「フルンツベルク」のハルメル師団長の就任期間が「1945年5月のちょっとだけ」という
意味不明な部分があった以外、読んでいてそれほど気になるところはありませんでしたが、
この筋の専門家の方が読んだら、ひょっとするといろいろ怪しいところもあるかも知れません。

Heinz Harmel2.jpg

また、良く言われる「武装SSによる残虐行為」も東部戦線の村人から
西部戦線での捕虜に至るまで、ヴィトゲンシュタインが知らなかった話も簡単に登場してきます。
しかし、これらもマイヤーやパイパーが、実際どこまで係わっていたのか・・ということを
改めて検証しているわけではなく、彼らの具体的な指示や命令があったのか、
などの疑問には残念ながら答えてくれていません。
副題の「ドイツ軍の異色兵力を徹底研究」というほどではないかも・・。

ヒトラーユーゲント」の章では、カーンでの「狂信的な」防衛戦で師団の20%が戦死し、
負傷者も40%という記述を改めて見ると、彼らが起こした「捕虜数十人の射殺事件」も
単に武装SSの残虐性を現したもの・・とは言えない気もします。

12th SS Panzer Division Hitlerjugend in Caen.jpg

平均年齢18歳の彼ら・・33日間も昼夜に及ぶ連合軍の爆撃に耐え、
1年間一緒に訓練に励んだ仲間の5人に1人が戦死し、
敬愛する師団長も艦砲射撃により、顔を吹き飛ばされて戦死。。。

witt_waffenss1943.jpg

どこの国の戦記を読んでも、仲の良い戦友が戦死した途端、
敵に対して「復讐心」を持つのは当たり前・・といった戦争で、疲労困憊し、
精神的にも追い詰められた彼らの2~3人が怒りに駆られ、戦友の仇とばかりに
勢い余って、捕虜を銃殺したとしてもおかしくないと思うのです。

この事件を勝者である西側が「ナチのイデオロギーに洗脳されたヒトラーの子供たちによる
狂信的な残虐行為」と宣伝し、戦後も一般的にそのような解釈であることも理解できますが、
前線における捕虜虐待はある程度、双方で起こったことですし、
東部戦線でも西部戦線でも、その報復がエスカレートしていくのは避けられないと思います。

Young grenadier of 12th SS-Panzer-Division Hitlerjugend in Normandy.jpg

バルカンでチトーのパルチザンと戦った「プリンツ・オイゲン」の紹介でも、
「この師団は残忍を極めて、犯罪師団と呼ばれるほど悪名が高かった」と書かれていますが
これもバルカンという土地の残虐性が、より残虐な殺し方に双方発展したいったと解釈するべきで、
東部、西部、バルカン、北アフリカ(ここには武装SSは行っていませんが)など
その土地と相手、快進撃中の時期や敗戦濃厚となった時期などで戦い方も違うわけであって、
もともとの部隊の性質が残虐であるとは個人的には考えていません。
まぁ、ディルレヴァンガーは別にして・・ですが・・。

Officers of the 7th Division SS Prinz Eugen.jpg

なので単純に「武装SSの残虐行為」と一括りにするのには抵抗があり、
パルチザン相手にしても、SS指揮官にしていつ自分が背後から殺されるかわからないという状況は
その恐怖から、怪しい人間は皆殺し・・と考えたとしても不思議ではありません。
イメージ的に最新鋭の装備を持つSS部隊と、短銃を持って隠れる僅かなパルチザンという図式は、
当事者たちにとっては、実はそれほど大きな力の差がなかったのかも知れません。
「殺したい」という欲求ではなく、「殺されたくない」思いからの虐殺もあったのではないでしょうか。

いやはや、ちょっと脱線気味になってしまいましたが、
本書の内容は大きめのハードカバーであれば、間違いなく¥3000オーバーとなり、
その意味では¥1000でこれだけの内容であれば、とても費用対効果は良いと言えますし、
武装SSについて勉強しようという方にとって、手頃な値段で取っ付きやすい1冊だと思います。



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