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ナチ・ドイツ軍装読本 -SS・警察・ナチ党の組織と制服-【増補改訂​版】 [軍装/勲章]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

山下 英一郎 著の「ナチ・ドイツ軍装読本」を読破しました。

6月の「制服の帝国」に続いて、本書も2006年に発刊された同名の再刊です。
今年の4月に【増補改訂​版】として20ページ程度、旧版からボリュームアップしているそうです。
以前に紹介した「SSガイドブック」や「制服の帝国」はSSに限定したものでしたが、
本書は副題を見る限り、「警察」と「ナチ党」の制服にも言及している点が大きな違いですね。

ナチ・ドイツ軍装読本.jpg

まずは「SSの成立」という無難なところから始まる本書。
しかし、1929年のニュルンベルク党大会の部分になると、この時の参加者に配られた
「1929年党大会章」が写真つきで解説され、この大会がナチ党の政権獲得前であり、
ナチ党結成10周年であることから、金枠党員章が制定されるまで、ヒムラー
常に着用する非常にステータスの高いものだった・・と著者ならではのマニアックな説明が
勉強になります。

Reichsparteitag 1929.jpg

この章では非常に珍しい写真「眼鏡をかけたハイドリヒ」の登場です。
キャプションでも「ヒムラーと談笑するハイドリヒが眼鏡を着用!」とビックリマーク付き
(ちなみに「!」は子供の頃「オッタマゲーションマーク」と教えられて、20歳まで信じてました・・)、
しかし、それほど写りの良くない斜め後ろからの写真ですので、ハイドリヒと言われて辛うじて
気づく程度のものですが、珍しいことに間違いはありませんね。

Reinhard Heydrich 74.jpg

「SSのキャリア」の章では、名誉SS大将でもあったザイス=インクヴァルトが紹介され、
そのSSの黒服以外にも、占領下オランダの弁務官という彼の本来の
「官僚」としての制服も検証しています。
特に官僚の袖章の星が階級を示すものではなく、給料のランクを示すなどの解説と写真は
興味深いですね。こんなことが書かれているのは日本では本書だけでしょう。

Hans_Frank9.jpg

フリードリヒ=ヴィルヘルムと、その兄のヴァルター・クリューガー兄弟も続いて登場して、
この有名な兄弟の比較をした後、アイヒマンSS中佐の出番となります。
ここでも著者ならではの観点から、ホロコーストの代名詞ともされている人物を検証し、
「過去10年に渡り、数万枚のSS関係の写真を確認しているが、アイヒマンの制服写真は2枚のみ」
として、このような重要人物が写った写真がこれほど少ない訳がなく、結論から言えば、
誰も撮影する気すら起きなかった移送列車の手配をする程度の「小物」であり、
たかが中佐に、国策を左右する権限があったなどという歴史認識は改めるべき・・としています。
かなり強気で書いていますが、自分もどちらかといえば、同感ですね。

Adolf Eichmann_1.jpg

SS大佐服の写真も凛々しいシェレンベルクは、4ページに渡ってその人生が述べられています。
ベルリンでのヒムラーの昼食会では、たまにアイヒマンも末席に呼ばれていたようで、
その度にシェレンベルクから「役立たず」だの「根性なし」だのといびられて泣いていたらしい・・。
また、彼が終戦間際もうまく立ち回り、彼を知る人物たちが死んだり、失踪した結果、
驚くほど軽い量刑で済んだことに触れ、「ヨーロッパで最も危険な男」スコルツェニーでさえ、
シェレンベルクの部下だった。本当に危険だったのは誰か、明らかである・・と
見方によっては、その「策士」っぷりを高く評価しているようでもあります。

Schellenberg_skorzeny.jpg

中盤は「ナチ体制下のドイツ警察」の章で、クルト・ダリューゲが長官を務めていた
「秩序警察」を中心に展開します。
地方警察や防空警察、水上警察といったマイナーな警察まで詳しく書かれていますが、
このあたり、写真もいくつかあるものの、制服を検証するものではなく、
あくまで、組織の解説となっています。
組織図があると、もう少し関係が分かりやすいんですけどねぇ。

Himmler und Daluege.jpg

同じ警察でも「憲兵」は、以前から気になっていたこともあって、楽しく読めました。
1939年の開戦後、秩序警察から国防軍に転属となった憲兵は、1940年時点で13000名。
最高階級は少将で、軍集団レベルでの憲兵司令官であり、大佐だと軍司令官だそうです。
主な任務も「交通整理」であり、映画などで良く見る「通行証を見せろ!」も該当・・。
また、その権限も強力で、階級に関わらず身分証の提示を要求でき、
同一階級者であっても、上位とされていた・・ということです。
さらに、独自のカフタイトルや、憲兵の象徴である首から下げた「ゴルゲット」にも言及しています。

Feldgendarmerie.jpg

「武装SSの給与と食事」も楽しい章でした。
1ライヒスマルクを現在の日本円に換算し、例えば、1940年のSS二等兵の月給が約6万円、
しかし、戦局の悪化した1944年になると25万円へと大幅UP・・。
これは一覧にもなっていて、一番給料の高い、元帥やOKW総長なら300万円強です。
早い話、カイテルの月給ですね。

食事についても肉、バター、パンなどがグラム単位で書かれていて、
面白いのは刑務所勤務に比べ、武装SSではパンで2倍、肉類で4倍の厚遇という部分です。
ということは、同じトーテンコップでも前線と収容所勤務で違ったのかなぁ?

Men of the Waffen-SS.jpg

最後の章は「写真で見る政治指導者」です。
この政治指導者というは大きく分けて2つあり、ガウライターと呼ぶ大管区指導者、
そしてライヒスライターと呼ぶ全国指導者です。
特に全国指導者は1945年時点で17人がおり、例えば、党幹事長のボルマン
法律全国指導者のハンス・フランク、世界観全国指導者のローゼンベルク
宣伝全国指導者のゲッベルス・・というようなメンバーです。

Himmler, Goebbels, Frank and Mussolini ( on back ) in Florence during Hitler's state visit to Italy in 1938.jpg

なお、SS全国指導者ヒムラーはライヒスライターとしては、民族問題全国指導者のようで、
SS全国指導者は「ライヒスフューラー」ですから、また別扱いのようですね。

この政治指導者の階級も表になっていて詳しく書かれていますが、
一番知りたかった赤の「襟章」については、若干述べられているだけなのが残念でした。

Nazi Party Ranks.jpg

全体的には本書もなかなか楽しめ、かつ勉強になるものでした。
ただ、やはり「軍装読本」と謳っている限り、特に警察については違う印象ですし、
わがままをあえて言えば、カラー写真が1枚もないと、軍装の説明だけでは
完全にはイメージできないのがネックだと思います。





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制服の帝国 -ナチスSSの組織と軍装- [軍装/勲章]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

山下 英一郎 著の「制服の帝国」を読破しました。

去年の10月に発売された792ページで6195円という大作版「制服の帝国」です。
著者による大判の写真集「制服の帝国」は、「アルゲマイネSS」と「武装SS 」の2冊が
出ていましたが、すでに廃刊となっていることから、出版社も変え、
ハードカバーとして集約した「総集編」ということです。
amazonなどでは「シリーズ3部作を・・」と書かれていますが、もう一冊は
以前にココでも紹介した「SSガイドブック」のことでした。
しかし、これが「制服の帝国」のシリーズだったとは知らなかったなぁ・・。

制服の帝国.jpg

この重たい本書を開くと、まずオットー・ギレSS中将とフーゴ・クラースSS大佐の
カラーのポートレートがお出迎え・・。
そして6ページほど肩章、襟章、カフタイトルなどがカラーで紹介されます。

Hugo Kraas9.jpg

第1部は「SSの組織」で、「SSガイドブック」が丸々収められています。
これは1997年の出版ということもあり、当時の間違いの修正や加筆も行っているようで、
今回、「SSガイドブック」と読み比べてみましたが、ページ数も数10ページ増えています。
特に「アインザッツグルッペン」に関する章も大分、加筆されていました。

写真もほとんど一緒ですが、来日したヒトラー・ユーゲントと交換で訪独した
「大日本青年団」の写真などは、さすが日本人の著者によるもの・・といった感じですね。
ドイチュラント連隊がダブルのSS夜会服を着てダンスをしている写真も好きです。
この第1部だけで350ページもありますが、この内容については
SSガイドブック」のレビューをどうぞ・・。

Hugo Kraas,LAH_gesellschaft anzug.jpg

第2部、「写真で見るアルゲマイネSS」は、「制服の帝国―アルゲマイネSS写真集」と
同じ内容なんだと思いますが、この「一般SS」とも呼ばれる黒服のSS隊員たちの写真と
その解説はなかなか勉強になりました。
それは著者が「ナチス・ドイツの制服にはすべての機能が付随しており、個人の権限や
位置づけを示しているものは軍装(制服)なのである」ということから本書のタイトルが
付けられたと言うように、一枚のなんてことない無名なSS隊員の写真でも
その軍装や徽章にまで、実に細かく分析しています。

Unity Mitford SS.jpg

終戦も近くなって編成された武装SSの超マイナー師団の襟章などに興味もあって
結構、勉強していたものの、SSの元祖で中心でもあるこのアルゲマイネSSの
襟章については、実は良く知らなかったことに、自分でも驚きました。
例えば、左襟は階級章ですが、右襟は「SSルーン」ではなく、
各連隊ごとの番号が振られていたりとか、
その大管区の番号の書かれたカフタイトルをしていたりとか・・。

Allgemeine SS.jpg

有名人も「キング・オブ・アルゲマイネSS」ことハイスマイヤーに、
ハンス・アドルフ・プリュッツマンといったSS大将連中。
ゲシュタポのミュラーと人事局長シュトレッケンバッハの両SS中将が語り合う写真や
バルコニーで談笑するSD隊員のなかにもシェレンベルクSS少佐が写っていたりして
これらの写真のほとんどが未見のモノでした。

Hans-Adolf Prützmann meets with Heinrich Himmler in the Ukraine.jpg

第3部「写真で見る武装SS」は、第1章の「オリジナル写真で検証する階級と軍装」が
またまた楽しめました。
SS二等兵から写真で軍装を詳しく紹介するんですが、ここでも初期のSS隊員が多く、
武装SSが編成される前の「ライプシュタンダルテ」や、いわゆる「SS-VT」、
そして「髑髏部隊」の襟章の違いが良くわかります。

一般的な「SSルーン」を付けられるのはエリート連隊である「ライプシュタンダルテ」のみ。
SS-VTのドイチュラント連隊は「SSルーン」の中に数字の「1」を入れた「SS1」、
「SS2」がゲルマニア連隊です。

1. SS-Standarte_Deutschland.jpg

「髑髏部隊」はトーテンコープフの襟章ですが、このドクロが左向きだと武装SS師団であって、
右向きは強制収容所警備部隊だということです。
また、左向きといっても水平と垂直があって、これも当初は垂直ドクロであったことから
「古参兵」は垂直ドクロを着用し続けたとか、さらに両襟ドクロもあったりしますし、
前線から警備部隊に戻ってきたりなどというパターンも考えると、
一概にこの襟章だけでは判断できそうもありませんね。

totenkopf tabs 2.jpg

各階級の将軍ではシュタイナーSS中将やゼップ・ディートリッヒSS大将などが
登場してきますが、あるSS准将が唯一付けている勲章が見たことのないもので、
これは「ドイツ赤十字社会奉仕章」というものだそうです。
初めて知りましたが、良く書かれていますねぇ。
この勲章とSSの将官というアンマッチがなんともいえません。。

Ehrenzeichen des Deutschen Roten.jpg

また、デメルフーバーSS中将の紹介文は笑えました。
「古参」のうえ、ドイチュラント連隊やゲルマニア連隊の連隊長を歴任したものの、
ノルト」の臨時師団長を勤めた程度で、外地駐屯の武装SS司令官という閑職ばかり・・。
かつての同僚や部下であるシュタイナーやギレ、ビットリッヒらが軍団長となり、
騎士十字章を受章しているのに比べ、喉元を飾るのは、
お情けで貰ったフィンランドの「自由解放勲章一級」であり、かなりイタイ・・。

Demelhuber.jpg

ただ、「第2部」からは写真が縦向きから、頻繁に横向きになったりするので、
本も横にしたりとちょっと大変でした。1ページにフルフルの写真ですから
そのほうが大きくなるのはわかりますが、なんせ、この本は重たいんで・・。

その他、SS戦争報道部隊である「クルト・エッガース連隊」が詳しく解説されたり、
製パン中隊や野戦食の味見や配給の様子など、既存の武装SSものでは、
なかなか紹介されないところにも光を当てています。
それはやはり「制服から歴史を読み取ろう」とする本書のあり方であって、
ただの軍装モノだけでもなく、SS興亡史としても成り立っている・・という感じを持ちました。

Young crowds greet Hitler at Fallersleben Volkswagen Works cornerstone ceremony.jpg

なお、著者の「制服の帝国」という本は3月にも「シリーズ 制服の帝国 -ナチスの群像-」
というのが上下巻で発売されていて、これは全く別のもののようですが、
重複している部分も多少はあるのかも知れません。
また「ナチ・ドイツ軍装読本」も「増補改訂版」が出ましたが、テーマ的にどこまで違うのか、
ちょっと悩みどころですね。















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パンツァー・ユニフォーム -第2次大戦ドイツ機甲部隊の軍装- [軍装/勲章]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

マイケル・H. プルット著の「パンツァー・ユニフォーム」を読破しました。

ドイツ戦車兵の黒の戦闘服というのは、世界中にファンが多いと思いますが
ヴィトゲンシュタインもご多分に漏れず、そのうちの一人です。
本書はややお高いですが、以前に1300円で古書を購入・・。
380点に及ぶらしい写真も含め、週末に家でジックリと楽しみました。

パンツァー・ユニフォーム.jpg

第1章は「野戦服、記章、帽子類」の紹介です。
しかし、写真はほとんどなく、文章による非常にマニアックな解説が続きます。
「んん?」と思っていると、どうやらこの20ページの解説のあとに、
50ページに及ぶ「白黒写真」がこの解説文の実例として紹介されるという構成のようです。

初期の戦車師団・・フランス戦役までのベレー帽をかぶった戦車兵たちの写真から
柏葉騎士十字章のローエ少尉の特注戦車服・・、大きなダブルの合わせが特徴的な
この戦車服を仕立て直したファスナー式という、物凄く珍しい写真まで・・。

Panzer crewman uniform.jpg

この戦車兵たちの写真のキャプションでは、身に着けている「戦車突撃章」の他、
珍しいものにも触れられており、例えばスペイン内戦での「コンドル軍団戦車突撃章」も
415個のみが授与された・・と書かれています。

Tank Combat Badge of Legion Condor.jpg

裏表紙の写真の人物、スコルツェニーをも遥かに凌ぐ「スカーフェイス」である、
第5戦車師団の戦車連隊長ロルフ・リッパート大佐は強烈な印象を残します。
1945年にはこの師団長となったようですが、東部戦線で戦死・・。

Rolf Lippert.jpg

アダルベルト・シュルツやフランツ・ベーケ、突撃砲兵もペーター・フランツ
シェーンボルンなど、以前にココでも登場した面々の姿も・・。
特にアダルベルト・シュルツ少将は特注の凄い戦車帽をかぶったポートレートがありました。

1943年以降に現れた、師団ごとのエンブレムの小さな記章を帽子につける話もあり、
第5戦車師団の「柏葉」や、第116戦車師団の有名な「グレイハウンド」なども・・。
ちなみにヴィトゲンシュタインはこの第116戦車師団「グレイハウンド」のTシャツ持ってます・・。

pz div 116.jpg

第2章の「戦車部隊」では、いきなり「パンツァー・フォー」にもチョロっと書かれていた
1940年にブローニュで英駆逐艦との一騎打ちの末、見事撃沈したとされる
第3戦車連隊のⅣ号戦車とクルーのデカい写真が出てきて、ビックリしました。
まぁ、これは魚雷艇だったとか、フランスのだったとか、諸説ありますが、
砲塔に描かれた駆逐艦が可愛らしい・・。

パン・ユニ_1.jpg

更にここでも、騎士十字章の戦車兵が珍しいものを付けています。
それは「ヒトラー青年団優等章」ですが、こんなの付けたドイツ兵士自体、初めてです。

Hitler Youth Proficiency Badge.jpg

この章ははあくまで「戦車部隊」であって、その後、「対戦車部隊」、そして「装甲列車部隊」と
続きます。いや~、装甲列車の写真も嬉しいですが、特に部隊のユニフォームは明確ではなく、
戦車服から突撃砲など様々ですね。
このようなことは、特に1943年以降になると、物資不足、度重なる規則の改定などで、
エリート装甲師団でも正規の軍装などは「死語」のような感じです。
そしてそれこそが、このような軍装研究家の頭を悩ます、大きな要因のようです。

また、「オートバイ狙撃兵部隊」、「機械化偵察大隊」、「機甲工兵部隊」、「機甲通信部隊」と
紹介されていくなかでは、その兵科色も詳しく書かれています。
戦車部隊が「ローズピンク」、突撃砲部隊が「赤」、そして通信部隊が「レモンイエロー」というのは
わりと知られていますが、戦車服を着た「機甲工兵部隊」が当初「黒」であり、
結果、「黒の戦車服に黒のパイピング」では意味がないことから、黒白、士官は黒シルバーの
より糸になったということです。

パン・ユニ_4.jpg

第10章には「装甲ロケット自走砲中隊(パンツァーヴェルファー?)」なんていうのも出てきます。
この兵科色をご存知の方はいるんでしょうか??
本書によると自動車輸送部隊の「ライトブルー」と砲兵の「赤」を合わせた「紫」で
「ワインレッド」と呼ばれていたそうです。

途中、この黒い戦車服を着た有名な女の子の写真も出てきました。
この娘と第3戦車師団の伍長が写った写真もあって、この写真が撮られた経緯が
なんとなくわかりましたが、彼と彼女、どっちが着てみようと言い出したんでしょうかねぇ。
個人的な経験では、女性の方がコスプレ好きというか、男物であっても、
着れるものがあれば、とりあえず1回着てみたい・・と思うようですが。。

panzer woman.jpg

「機甲宣伝部隊」をトリに、いよいよお楽しみ、カラー写真ページに突入です。
下襟にボタンホールの空いてない第1号戦車服から、デニムのものまで紹介。
アフリカ軍団などの熱帯用も出てきます。
もちろんプロイセン軽騎兵の伝統を引き継ぐ「ドクロ」の襟章から肩章、
ベレー帽まで、実にカラフルな30ページです。

パン・ユニ_3.jpg

カラー写真は確かに後半だけではありますが、前半の細かく書かれた部隊ごとの
ユニフォームや兵科色の遍歴などの文章部分も、非常に楽しく読めました。
白黒写真も珍しいものばかりでしたし、こういうのを読むと、
やっぱり洋書の軍装カラー写真集を欲しくなりますね。

ちなみに本書では武装SSが対象外となっています。
モデルになってもらったヴィットマンSS少尉のパンツァー・ユニフォームはこんな感じ・・。
国防軍との違いはいろいろありますが、一見でわかる大きな違いは、
SSは襟章が「ドクロではなく」階級章というところですね。

Michael_Wittmann.jpg

参考までに最近TVに出て、ナチだの、SSだの・・と、サイモン・ウィーゼンタール・センターから
「ダメ出し」を喰らった、氣○團はこんな感じだったそうです。

Kishidan-SS-uniform.jpg

まぁ基本はSSではなく、右胸のアドラーなど、本書の国防軍パンツァー・ユニフォームですね。
ただ、他の写真を見ても徽章類はメチャクチャだし、赤い腕章がナチ党員ぽいっですから、
この「ドイツ国防軍戦車兵の制服」が、ナチ、SSを連想させる(ひょっとしてSSと思って着てる??)
のもしょうがないですね。
彼らもマニアックに着ているわけではなく、ファッションとして着ているのも、
この残念な着こなしから充分、伝わってきますから・・。




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ヒットラーと鉄十字章 [軍装/勲章]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

後藤 譲治 著の「ヒットラーと鉄十字章」を読破しました。

著者の「おわりに」では「ヒットラー・デザイナー説の書である」と書かれているように、
美術家を目指していたヒトラーが、そのナチ党党首として、第三帝国の総統として制定した
各種の勲章/徽章のデザインや、それらのヒトラーの関与を検証したものです。

ヒットラーと鉄十字章.JPG

まずは赤白黒のナチ党旗のデザインについてです。
これはヒトラーによるデザインとされていて、一見してそれとわかる
優れたデザインだとしています。
また、ヒトラー自身がシンボルや映像などの民衆に対する効果を良く理解していたことから、
自身のイメージについても、逆に勲章で飾り立てることをせず、
党員章」と第一次大戦時の「1級鉄十字章」、「黒色戦傷章」を誇りを持って
付けていたとしています。

50th Hitler´s Anniversay Parade.jpg

1923年の失敗に終わった「ミュンヘン一揆」を記念した、通称「血の勲章」は、
ヒトラーが右胸に着用している写真を掲載して、その着用方法なども解説しています。

Blood Order.jpg

続いては、ヒトラーがデザイン、または関与したとされる勲章類です。
この「独破戦線」でも紹介したことのある「母親名誉十字章」と
ほとんど知らなかったナチ党の最高勲章である「ドイツ勲章」の紹介です。
ヒトラー渾身のデザインともされる「ドイツ勲章」は正式には「大ドイツ帝国ドイツ勲章」というそうで、
等級も1~3級まで存在したものの、わずか10人しか授与されず、
そのうち6人は死後であったことから、別名「死の勲章」とも呼ばれたそうです。

栄えある第1号の受賞者は、飛行機が墜落した軍需大臣フリッツ・トートで、
2番目がチェコで暗殺されたハイドリヒとなっています。
いずれも死後ですから、彼らがコレを着用している写真はあるわけないですね。

Deutscher Orden der NSDAP.jpg

国防軍の軍服の右胸、SS隊員の場合は袖に刺繍されている
国家鷲章「ライヒスアドラー」がシュペーアのデザインである、という話や、
結構有名な「SAスポーツ章」が実はSA(突撃隊)は
表向きは「スポーツ団体」であったためという面白い話も紹介され、
著者の大のお気に入りであるらしい「ドイツ馬術徽章」について、
そのデザインの美しさやカギ十字が入っていない点などを挙げています。
これはヘルマン・フェーゲラインも付けていた写真を見たことがあったような・・。

Deutsche_reiterfuhrerabzeichen.JPG

逆に「SSスポーツ章」と呼ばれる「ドイツルーン優秀章」は初めて見ました。。。
SS隊員に限定した体力検定章ですが、銀章と銅章のみであるそうです。

germanische leistungsrune.jpg

う~ん、しかしなぜ金章はないんでしょうか?
ひょっとしてヒムラー自らが受章するために制定しなかったのかも・・。

Kugelstoßen HEINRICH HIMMLER.jpg

党大会の記念バッジや労働記念バッジなどの紹介後、いよいよ「鉄十字章」です。
まずは第一次大戦時の「プール・ル・メリット章」についてゲーリングや
ロンメルらが受章したことなども解説し、歴史ある鉄十字章2級、1級がそれぞれ
250万個、30万個と乱発されたことや、女性では2級を39名が受章したということです。

Ritterkreuz des Eisernen Kreuzes.jpg

騎士十字章」は第三帝国における制定であり、ヒトラーのアイデアと
おそらくゲッベルスが一枚かんでいたと推測していますが、
「柏葉」、「剣」、「ダイヤモンド」、「黄金ダイヤモンド」と詳しく解説しています。
最初の受章者も「柏葉」がディートル、「剣」をガーランドとシッカリ書かれ、
「ダイヤモンド」ではマルセイユの凄さと、唯一の「黄金ダイヤモンド」受章者ルーデルにも
それなりに触れて、彼らの写真も載せています。

Marseille&Rommel.jpg

国家元帥ゲーリングだけが受章した「大十字鉄十字章」や
やや地味ながらも第一次大戦で受章した軍人が再度受章した場合に着用する
2級、1級の「鉄十字副章」も詳しく書かれています。
ゲーリングはアメリカ軍に投降した際にも「大十字鉄十字章」を着用していましたが、
今やこの唯一の「大鉄十字」は行方不明だそうです。

Reichsmarschall Hermann Goering Grosskreuz Grand Cross.jpg

それにしても疑問なのは、第一次大戦後に廃止された「プール・ル・メリット章」を
ヒトラーはなぜ復活させず、新たに「騎士十字章」を制定したのかということです。
これについては本書以外でも書かれたものを読んだことがありません。
憶測ですが、第一次大戦の「プール・ル・メリット章」は
確か将校以上に限定されていたことが原因かも知れませんね。
「騎士十字章」は受章資格に階級は関係ありませんから・・。

Pour le Mérite.jpg

最後は伝統ある「大十字鉄十字星章」の第三帝国版原型(プロトタイプ)が
戦後のオーストリアで発見され、現在、アメリカのウェスト・ポイントに保存されているようです。
これもまったく知りませんでしたが、ドイツが勝利した暁には、
誰かが受章したのかもしれません。それを想像するのも一興ですね。

Größe der Voransicht_1939.jpg

小型で140ページほどの本書はカラー写真も巻頭の2ページのみ、というのが残念ですが、
なかなか面白い観点からヒトラーと勲章を整理しています。
ちょっと説明の重複があったりもしますが、この値段(定価1200円)なら
満足のいくものだと思います。
ちなみに神保町の古書店で偶然見つけて、定価より安く買いましたが、
amazonでは凄い値段が付いている本ですね。実はレア本なのかも・・。

しかしできれば洋書で良くある、オールカラーの強烈な勲章/徽章本のようなものを
どこかで出して欲しいと切実に思う今日この頃です。。


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ナチス親衛隊SS 軍装ハンドブック [軍装/勲章]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ロビン・ラムスデン著の「ナチス親衛隊SS 軍装ハンドブック」を読破しました。

SS創設当時の貴重な写真から制服、帽子、徽章類とカテゴリー別に分類した
とてもためになる一冊です。
著者は実物軍装品のコレクターで、これらの物は冒頭の数ページに
カラーで紹介されています。ただ本文の数多くの写真が白黒なのが残念ですね。
ちなみに表紙を飾るのはSS経済・管理本部長官オスヴァルト・ポールの物と
1935年頃の第88歩兵連隊のアルゲマイネSS(一般SS)曹長の物だそうです。

ナチス親衛隊SS 軍装ハンドブック.JPG

暗号や隠されたメッセージといった類が大好きだったヒムラーによって
神聖なまでに祀り挙げられた「ルーン文字」が詳細に解説されています。
ゲルマン神話の雷神をあらわす「ハーケンクロイツ」から勝利をあらわす「ジーク・ルーン」、
このジーク・ルーンを2つ並べたものが「SSルーン」で
1932年頃にグラフィック・デザイナーのSS隊員によるものだそうです。

SS_Rune.jpg

SSでは14個のルーン文字を使用し、1939年まではSS志願兵の
訓練期間中にルーン文字についての講義を行っていたそうですが、
隊員たちが関心を示さないのでこの講義は中止になったとか・・。

SSと言えば髑髏のイメージです。
自分も以前は国防軍戦車兵の髑髏の襟章を見て「SSだっ!」と思ったものです。
この髑髏(トーテンコップフ)における過去からの遍歴は大きなテーマとして取り上げられていて
特に有名な「髑髏リング」の解説は楽しめました。
異常なほど厳格な規定を持つ髑髏リングは除隊、または戦死した場合に返却されていましたが、
終戦間際までに戦死したSS隊員の指から抜き取られた膨大な数の髑髏リングは
ヒムラーの古城の神殿に祭られ、連合軍により奪われてしまうことを恐れたヒムラーは
ヴェーヴェルスブルクの山腹に埋めるよう命じ、これらは未だに発見されていないそうです。

totenkopfring.jpg

SS隊員といっても戦功などによる勲章類は国防軍と同様だったのは知っていましたが
SS独自の戦功勲章として「パルチザン・バッジ(対ゲリラ戦章)」が存在していました。
銅章、銀章、金章の3等級に分かれ、それぞれ対ゲリラ作戦に
20日間、50日間、100日間と参加する必要があったそうで、
受章基準が高いことで知られる「白兵戦章金章」が50日間ということから、
(コレを身に着けている人はたいがい修羅場をくぐり抜けて来たという凄い顔をしています・・)、
対ゲリラ戦章の金章を受章することはそれを2回受章するに等しいほどの至難の業で、
色こそ判りませんがバッハ=ツェレウスキはさすがに着けてますね。

bandenkampfabzeichen.JPG

ラインハルト・ハイドリヒものも突然出てきます。
ハイドリヒがチェコで暗殺された際にSSが発行した「追悼の書」や
そのデスマスクをあしらった「ハイドリヒ記念切手」です。

Reinhard_Heydrich_stamp.jpg

イタリアの降伏に伴い、多くの被服がドイツ軍に接収されたそうですが、
そのなかにはヒトラーがムッソリーニに提供したUボート乗組員用の革ジャケットなどがあり、
それらはライプシュタンダルテヒトラー・ユーゲント師団の戦車兵たちに
火傷から身を守る効果もあることから支給されたようです。
そういえばヴィレル・ボカージュの戦いの時の
ヴィットマンの有名な写真も革ジャケットですが、なにかUボート用のものだということを
聞いたことがありますね。

Wittmann_Villers-Bocage.jpg

SS落下傘部隊についての記述は別の意味で勉強になりました。
武装SSのなかでも特に知られていないこの部隊の軍装は謎だらけのようで
SSとしての特別な装備ではなく訓練なども受け持っていたルフトヴァッフェの
装備だったのではないかということですが、それよりも
スコルツェニーの率いたSS降下猟兵第500大隊によるムッソリーニ救出作戦、
1944年5月、ユーゴスラヴィアのチトー司令官を標的にしたグライダー作戦で
パルチザンとの戦闘により部隊はほぼ壊滅したというプチ戦記が印象的です。

その後もアルデンヌ攻勢や東部戦線など、「SS落下傘部隊は常に最悪の戦場に放り出され、
一種の「自殺部隊」と考えられていたと見て良いだろう」としています。

少ないながらも「SS婦人補助部隊」についても書かれています。
シルバーのSSルーンが描かれた黒い卵型の徽章ですが、
さすがに著者も持っていないのか、実物の写真はありません。。。

Women SS.jpg

外国人義勇兵の章では多数の独特の襟章について考察しています。
実際に認可されていなかったものもあるようで、市場には偽物も出回っているそうです。
このような偽物のキャッチフレーズは
「ダッハウの被服倉庫から未使用の状態で発見された」。
イギリス自由軍」もスリー・ライオンのデザインというのは知られていますが、
ヴィトゲンシュタインも当時の着用している写真や実物の写真は見たことがありません。

British Free Corps.jpg

定価2200円ですが、やはりフルカラーで読みたかったですね。
値段は倍以上してしまうかも知れませんが、個人的にはOKです。
洋書ではいろいろ出ているので、買ってみようかとも思っています。



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