SSブログ

柏葉騎士十字章受勲者写真集1 (eichenlaubträger 1940-1945-BandⅠ) [軍装/勲章]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

Fritjof Schaulen著の「eichenlaubträger 1940-1945-BandⅠ」を再度読破しました。

6年前に3冊セット1万円で買ったオールカラーの洋書を紹介してみます。
当時、パウル・カレルなどを読んでドイツの将軍たちの名前を覚えるのに苦労していた時、
このカラー写真集がどうしても欲しくなりました。
やっぱり名前と顔が一致しないと、面白くないですからねぇ。
それ以来、戦記を読んでいて、柏葉騎士十字章の受章者が出てくる度に、
本書を引っ張り出して、写真が無いかを確認する・・・と大変重宝しています。
今回は久しぶりにアタマから1ページずつ、ジックリと読んで(眺めて??)みましょう。

eichenlaubträger 1940-1945-BandⅠ.jpg

さすがドイツ語だけあってタイトルの「eichenlaubträger」という意味から考えなくてはなりません。
ヴィトゲンシュタインは英語はおろか、ドイツ語もからっきしダメで、
日本語すらちょっと怪しい・・という学のない人間ですから、まぁ、大変ですね。
「eichenlaub」は柏葉(オークの葉)、「träger」は経歴とかキャリアという意味だそうですが、
「柏葉の経歴」だと直訳しすぎで意味不明ですし、
以前に紹介した「ヒットラーと鉄十字章」では、「受勲者」と訳されていましたので、
素直に「柏葉騎士十字章受勲者」でも良いかな・・と思います。

その表紙に写っている6名のカラー写真。皆さん、全員即答できますか?
左上から、エーリッヒ・"不屈の鉄十字エース・"ハルトマン
ハンス・"包囲陣"・フーベ
レオン・"SSヴァローン"・デグレール
下はゴードン・"戦闘機隊総監"・ゴロップ
カール・"Uボート司令"・デーニッツ
ゼップ・"肉屋の親父"・ディートリッヒです。
一応、独破戦線では全員写真付きで紹介しておりました。

最初からペラペラめくってみると20ページほどは
柏葉騎士十字章とは如何なるものか・・といったようなことが(たぶん・・)書かれています。
ギュンター・"スカパフロー"・プリーン艦長に、「アドミラル・イソロク・ヤマモト」も写真で紹介し、
彼はさらに上位の「剣付き柏葉騎士十字章」を受章したことも書かれています。
「いきなり俺を出すのかい・・」とビックリした表情ですね。

BandⅠisoroku yamamoto.jpg

1939年にヒトラーによって制定された「騎士十字章」ですが、
翌年には西方戦での大勝利もあって、この「柏葉騎士十字章」が誕生します。
しかしこの「柏葉」は伝統的な物で、第1次大戦時の「プール・ル・メリット」にも
柏葉付きがあったんですね。

eichenlaub.jpg

いよいよアルファベット順で受章者がオールカラーで紹介。
とは言っても、柏葉章受章者は諸説ありますが、850人以上おり、数え間違いがなければ
この第1巻では116人ですから、3冊合計でも350人くらいということですね。
まぁ、終戦間際にカラー写真を撮って・・というわけにもいかなかったでしょうし、
あの超有名人がなぜかいない・・という不明な人選でもあります。。

最初の5名はヴィトゲンシュタインも知らない受章者です。
柏葉の将軍でも知らないものはしょうがありません。まだまだ勉強不足・・。
6人目ででやっと有名人の姿がありました。フランツ・"重戦車隊長"・ベーケです。
右のページにもエース・パイロットのハインツ・ベーア
この写真を見ると、2人とも「剣付き」ですね。
ですから、必ずしも柏葉章受章時の写真ではないようで、
実際、「騎士十字章」だったり、それすらしていないという写真も出てきます。

Bake_Bar.jpg

ヘルマン・"G軍集団司令官"・バルクゲルハルト・"301機撃墜"・バルクホルン
ヴェルナー・"KG200"・バウムバッハと続き、
ヨハネス・"ポーランド占領司令官"・ブラスコヴィッツの写真は2ページぶち抜きの写真です。
ポーランド戦勝利後のワルシャワでのパレード写真ですが、
良く見ると、ヒトラーの手の下にいるのは、総統警護責任者のロンメル少将ですね。

Blaskowitz.jpg

ハインリッヒ・"U-48 "・ブライヒロートギュンター・"参謀長"・ブルーメントリット
アルブレヒト・"ゼーフント戦隊"・ブランディヘルマン・"第3装甲軍団"・ブライト
グラーフ・フォン・"デミヤンスク包囲陣"・ブロックドルフ=アーレフェルトと「B」が続きます。
「C」に入ると、必ず手が止まるページがあります。
Sボート乗りのゲオルク・クリスチャンセンという人物ですが、
えらいカッコイイと思いませんか?
佐藤 健くんにも似てるなぁ・・。隣の怖い顔した人はカール・デッカー将軍です。

Christiansen_Decker.jpg

オットー・"第4航空軍司令官"・デスロッホ、それからエドゥアルト・ディートル将軍
ドイツ語の解説を苦労しながら読むと、受章者の生没年月日と戦時中の経歴の他、
柏葉章の受章日付と何人目の受章者かが、キッチリと書かれています。
そして栄えある第1号がこの山岳スペシャリストのディートル将軍なんですね。
隣りの着ぐるみ着たかのようなゴッツい「肉屋の親父」が41番目ですから、
ヒトラーは勲章についてはえこひいき無しなのがわかります。

Dietl_Sepp.jpg

ハンス・"THE・SS擲弾兵"・ドーアアルフレート・"戦闘爆撃機"・ドルシェル
テオドール・"強制収容所ボス"・アイケゲルハルト・"陸軍副官"・エンゲル
ヘルマン・"義弟"・フェーゲラインマクシミリアン・"敗残兵専門家"フレッター=ピコ
ハンス・フォン・"第47装甲軍団"・フンクと続き、柏葉章第3号のアドルフ・ガーランドが登場。
まだまだオットー・"SSヴィーキング"・ギレヘルマン・"転向"・グラーフ
ロベルト・リッター・フォン・"パパ"・グライム

そして「G」といえば、この親父、ハインツ・グデーリアンですね。
ヴォルフスシャンツェの写真では、ヒトラーがワルシャワの時と同じポーズなのが笑えますが、
総統の後ろでカイテルがニヤニヤしながらグデーリアンに話しかけ、
ウザったそうなグデーリアンに、そのネタが気になるシュペーアと、
完全無視のヨードル・・といった構図です。

G.jpg

Gはさすがに多いですね。
U-81の艦長、フリードリヒ・"アーク・ロイヤル撃沈"・グッゲンベルガーの次は、
U-177の、ロベルト・ギュゼーという艦長です。
この人が活躍するUボート戦記は読んだ記憶がないんですが、良い写真ですねぇ。
とても同じ時期の同じ人物とは思えない、髭剃りのCMの使用前、使用後って感じです。

Robert Gysae.jpg

エーリッヒ・ハルトマンは表紙の写真の他にクルピンスキーとふざける写真も・・。
リヒャルト・"第1降下猟兵"・ハイドリヒ、ゴットハルト・"最終戦"・ハインリーチ
ハンス・ヨアヒム・"エルベ特攻隊"・ヘルマンフリードリヒ・"男"・ホスバッハ
ヘルマン・"装甲ジジイ"・ホトと、重鎮たちの迫力ある写真が続いて終了です。

Krupinski_Hartmann.jpg

いや~、今回読み返してみても、知っているのは1/4程度ですかねぇ。
ただ、買った当時に比べればこれでもかなり増えました。
160ページ程度ですが、大変重宝する迫力十分の写真集です。





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ナチ独逸ミリタリー・ルック 制服・制帽から勲章・ワッペン・徽章まで [軍装/勲章]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

第二次世界大戦ブックス〈別巻 1〉の「ナチ独逸ミリタリー・ルック」を読破しました。

勲章・徽章好きで第二次世界大戦ブックス好きのヴィトゲンシュタインですが、
本書は以前から古書店で見かけていたものの、なぜかビニールカバーに入っていて
中身の確認ができないことから、手を出していなかったものです。
しかし、写真タップリのオールカラーということが判明し、しかも綺麗な古書が300円・・、
ということで慌てて購入。早速、読んでみました。

ナチ独逸ミリタリー・ルック.jpg

最初に登場するのは、目玉焼き勲章こと、「ドイツ十字章」が1ページのカラー写真で。。
「1級鉄十字章と騎士十字章との中間の勲章で、金と銀の2等級に分かれていた」と
キャプションもちゃんとしています。
その左のページには「国家労働奉仕団(RAD)の短剣とスポーツ服のワッペン」と
いきなりマニアックな現物写真・・。全く展開が読めませんから、
ページをめくるのも緊張します。。

RAD Badge.jpg

すると「第1次大戦参戦者連合会の腕章」に「陸軍予備役軍人バッジ」、
「鉄兜団名誉章」といった見たことも聞いたこともない品々が・・。
次の「腕章」というのは今まで細かく気にしたことがありませんでしたが、
本書では1ページにまとめて、種類別に掲載しています。
金の紋様が入っている一目見て豪華なものがガウライターなどの政治指導者用。
上下に黒線が入っているのがSS隊員用。線なしのただの赤が一般党員用。
一番下がヒトラー・ユーゲント用です。

nazi Armband.jpg

戦争に貢献した発明に与えられたという「フリッツ・トート博士記念名誉徽章」も
1944年1月8日のトート博士の2周忌に制定され、金、銀、黒鉄の3等級あると書かれ、
う~ん。コレは結構、勉強になるなぁ。

Dr. Fritz Todt Preis.jpg

ゲシュタポの恐怖の「認識票」の次にはコイン各種です。
コインは以前に「ヒトラー・コイン」を紹介しましたが、
本書にはそれにプラス、「ゲーリング・コイン」も出てきました。
これは空軍で技術的功績のあった者に送られたそうですが、知りませんでしたね。
他にも「1940年のフランス占領記念コイン」なるものも・・。これは、どレアです。。

Herman Göring Technical Medal.jpg

続いて短剣シリーズ。SA(突撃隊)にヒトラー・ユーゲント、3年間勤務したSS隊員が貰えた短剣。
国家政治教育機関、ナチ赤十字社の短剣もありますが、彼らは何のために??
勲章付きの当時の制服もカラー写真で紹介します。
先任地区指導官の茶色の制服に、SAの先任中隊指揮官、武装SSダス・ライヒ分隊指揮官。
それからSD大尉まで。

Nazi SA Dress Dagger.jpg

警察関係の記章各種も地方保安警察官の袖章に、防火警察・消防隊員の袖章、
国家保安警察都市警察官の袖章などをまとめて掲載。
バリエーションの多さも理解できます。

Police-sleeve-eagle.jpg

選挙と党大会記念バッジは、1933年の「リッペの選挙バッジ」というコレまたレアなものも・・。
選挙の度にバッジ作っていたなんて、ナチ党はマメですねぇ。。
記念バッジは「労働記念日バッジ」、「国家体育記念日バッジ」と、
ちょっと知られたものもありますが、ズバリ、「不明」となっているバッジも・・。

REICHSPARTEITAG 1937.jpg

メッサーシュミットにハインケルポルシェ博士といった経済と社会に貢献した人物に与えられた
「労働功労賞」というのも初めて見ました。
オリンピックにも1936年のベルリン大会の組織者に与えられた
「1級ドイツ・オリンピック功労賞」というがあったんですね。

Ehrenzeichen Pionier der Arbeit_Deutsches Olympiaehrenziechen.jpg

冷凍肉勲章と揶揄された「東部戦線従軍徽章」と一緒に写っているのは
太西洋防壁建設に従事した者に与えられた「ドイツ西部防衛線従軍徽章」です。
その他、「1級ドイツ鷲勲章」に、「ドイツ労働戦線」のバッジ、「母親名誉十字勲章」も3等級揃いで。

Westwall Medal.jpg

まだまだ、スペイン内戦に参加した「スペイン十字章」に、各種年功章。
これは「SS隊員の12年勤続年功章」や「8年勤続年功章」、警察官の「25年勤続年功章」です。

制帽も出てきました。
茶色の政治指導官の制帽も実物で、4階級は縁取りで区別されていたそうです。
地方警察官の帽子にSA、空軍将校、陸軍将校の制帽、略帽に
ヘルメットでは陸軍の1916型と1935型の前に、
空軍と民間防衛隊のヘルメットが出てくるところが本書の気の抜けないところです。
もちろん、アフリカ軍団の防暑帽も。

3rd Reich period Polizei.jpg

中盤20数ページは政治指導者などの制服姿がカラーイラストで紹介されます。
コートを着たバージョンから夏季の白服、パレード用など細かいバリエーションで
ここまで細かくする必要があるのかと、ちょっと思いました。

ただ、SA水上部隊勤務服などは、聞いたこともありませんので、
その紺色(ネイビーブルー?)の制服に茶色の襟章の組み合わせは斬新です。
同じようにナチ自動車協会(NSKK)の中隊指揮官の制服も、
黒に金の襟章・・と、SSとはまったく違うカッコ良い色合いで新鮮ですし、
空軍の前身である「ナチ航空協会(NSFK)」の制服は、空軍のブルーグレーなのに
襟章はSAやSSの階級章というありそうでない、不思議な組み合わせです。

nsfk.jpg

ヒトラー総統旗やナチ党旗などもイラストで進みますが、
SSアドルフ・ヒトラー連隊旗」の下には、「SSユリウス・シュレック連隊旗」が・・。
はぁ~ん。。こんな連隊があったんですか。。シュレックは元ヒトラーの運転手ですが、
一応、SSの初代指導者だったからなんでしょうね。

Hitler&Julius Schreck_SS_Standarte.jpg

外国人義勇兵の部隊マーク(袖章)から現物カラー写真に戻りました。
これらは武装SSではなく、国防軍所属の部隊で、
ウラソフのロシア解放軍「POA」やスペインの「青師団」、コサックにアルメニア人部隊。

ここまで海軍は無視されていましたが、「海軍の徽章各種」でやっと紹介されます。
Uボート章」は当然ながら、「駆逐艦乗組員戦功章」に「特務士官の肩章」などなど・・。
ヴィトゲンシュタインの好きな「大海艦隊戦功章」と「仮装巡洋艦戦功章」もあってうれしいですね。
海軍の高射砲兵戦功章である「沿岸砲兵戦功章」も良いなぁ。

Coastal Artillery Badge.jpg

カフタイトルは武装SSの「ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン」、「ヴェストラント」に
ラインハルト・ハイドリヒ」といった、ややマイナーな部隊のものが前半に出ていましたが、
アフリカ軍団のカフタイトルと同じページに出てくるのは第199擲弾兵連隊です。
これは第1次大戦時にヒトラーが所属していた「リスト連隊」なんですね。

Götz von Berlichingen.jpg

ベルトのバックルも前半に政治指導者の金色のバックルが印象的でしたが、
ヒトラー・ユーゲント、陸軍、空軍、SSのバックルが勢揃いします。
疑問に思っていた空軍のバックルですが、唯一、言葉はなし・・が正解でした。
さらにRADにSAのバックルまで。ベルト・マニアの方なら買いですね。

空軍の戦功章、3等級の戦傷章と続き、前半と同じカラーの現物制服です。
空軍少尉の制服に陸軍歩兵大尉礼服、なかでも国民突撃隊指揮官(少佐)は凄いですね。
この制服のベースはワイマール共和国時代の陸軍将校服で、
第1次大戦の2級鉄十字章の略綬をつけていますが、
やっぱりコレを着たのは、おじいちゃんだったんだと思うと、泣けてきます・・。

Deutscher Volkssturm.jpg

陸軍の勲章は突撃戦功章に空軍にもあった「高射砲兵戦功章」などの他に
「砲手勲功懸章」なる砲手に贈られるものが・・。
装甲部隊砲手のものだけデザインが違い、戦車突撃章に似たデザインですが、
戦車の向きが逆だったり、全く別物です。う~ん。なんだこりゃ??

最後には「騎士十字章」に「白兵戦章」とメジャーな勲章に、野戦憲兵の「ゴルゲット」では
「夜間勤務のため、中央の鷲と左右の円形には蛍光塗料が塗ってある」
との解説には驚きました。蛍光塗料って昔からあるんですね。。
でも軍用腕時計にも確か、塗ってありましたか・・?

Feldgendarmerie.jpg

中盤の政治指導者などの制服こそ、カラーイラストでしたが、
NSKKやNSFKといった超マイナーな制服は大変良かったですし、
全体的には当時の現物のカラー写真集と言って間違いありません。
勲章、徽章類も結構マニアックで、初めて見るものもいくつかありましたし、
実際、本書に掲載されている品々を全部知っているという人は
ほとんどいないんじゃないでしょうか?
こういうのを眺めるとやっぱりコレクター魂に火がついてしまいますねぇ。
和書では何故かカラーの勲章、徽章本が出てませんので、
そのような意味でもお好きな方にとっては価値ある良書だと思います。



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ドイツ軍装備大図鑑 制服・兵器から日用品まで [軍装/勲章]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

アグスティン・サイス著の「ドイツ軍装備大図鑑」を読破しました。

いやいや、なんですかね、この本・・。
偶然、ネットで見つけた去年の11月に原書房から出た大型本ですが、
318ページで定価はなんと、9450円!
先日も大きな本屋さんの軍事モノのコーナーに行って来たばかりですが、
こんなのは売っていなかったと思います。
しかし、値段が値段ですし、内容もイマイチ不明なことから図書館で調べてみると・・、
ありました。しかも「在架」・・。ニヤニヤしながら早速、図書館へ・・。
そして手に取ってみると、この大型本はオールカラーで当時の現物の写真集であるという
通常は洋書でしかありえない、スゴイ代物であることが判明しました。

ドイツ軍装備大図鑑.jpg

原著は2008年、スペイン人のコレクターによるもので、「プロローグ」では、
「軍隊暮らしにおける所持品やその使い方を図版で生き生きと観察することで、
戦闘員の姿を身近に理解してもらうことにある」と執筆の目的を語ります。
ただ、出だしの「1930年までベルリン士官学校の校長を務めたクラウゼヴィッツ・・」には、
かなりビックリしましたが・・、でも以降は気になる誤字はありませんでした。

続く「序章」ではナチ党員の有名な丸い赤白のバッジのカラー写真と共に、
逆三角形の青ベースの「ナチ党婦人部のスカーフ用バッジ」が載っていました。
これは初めて見ましたが、「母親十字章」もそうですが、ドイツの伝統、またはナチ党に、
女性ものには「青」を使うというなんらかの理由があるんでしょうか??

Nat. Soz. Frauenschaft Members Pin.jpg

本文は「鉄ヘルメット」からです。
第1次大戦までの、美しく様式化された「スパイク付きヘルメット」が1916年に近代的なものとなり、
1918年にはさらに進化(M1918)、それをベースにナチス・ドイツのM35ヘルメットが・・ということも
最初に紹介され、M40、M42と3つのモデルを写真で比較しながら、
戦局悪化とともに素材も工程も仕上げも、徐々に粗雑になっていく様子が、目で理解できます。
がんこなハマーシュタイン」で ハマーシュタインがかぶっていたのが
「M1918」モデルだったんですねぇ。
この「鉄ヘルメット」だけで12ページ・・。これでもか・・という徹底ぶりで驚きました。

Heer-M1918_M35.jpg

次は「制服」。タイトルである「ドイツ軍」とは、本書では「陸軍」のことを指しているわけですが、
この「制服」でも「野戦帽」から始まって、「野戦服とズボン」、「国家鷲章」、「襟章」、「肩章」、
そして襟の裏の「カラー」に「サスペンダー」と身に付ける物すべてを紹介する勢いです。
「シャツ」にしてもM33のシャツにM41のシャツと実物で・・。
こうなってくるともちろん「下着」も・・。さすがにパンツにはM40とかの規格は無いようですね。。

下着.jpg

まだまだ「セーター」に「ハンカチ」、「手袋」、「靴下」と新品も紹介され、「オーバーコート」が登場。
「迷彩服」も詳しく紹介し、「軍靴」へ・・。
「行軍用ブーツ」ではM41モデルの裏に計44個の鋲が打たれていることを写真とともに解説します。
ドイツ軍ブーツの靴底は初めて見ましたが、最初に思ったのが、「モスクワ攻防戦」で
この鉄の鋲が打たれたブーツで、多くの兵士の足が凍傷にやられた・・というヤツでした。。

ブーツ.jpg

そんなことを思いながら読み進めていると、やっぱり防寒靴の「フェルト製ブーツ」が登場し、
靴底の鋲は「革」に変身・・。読んでて足元も寒かったですから、ほっとしました。

フェルトブーツ.jpg

プロローグで「「軍隊暮らしにおける所持品やその使い方を・・」と書かれているとおり、
ココからはそれらのお手入れグッズとお手入れ方法を紹介します。
支給品の「靴墨」に「裁縫道具」。
この解説では「ドイツ軍は装備の維持管理規則が極めて厳格だった」として、
破れや取れたボタンのない完璧な状態に保つ責任を兵士は負っていたそうです。

裁縫道具.jpg

次の章「ベルトとバックル」では、このドイツ陸軍のベルト・バックル(コッペルシュロス)に
書かれている言葉が、プロイセンのモットー「GOTT MIT UNS(神は我らとともにあり)」
であることに著者は、公然と聖職者の権力に反対する国家にしては驚くべきこと・・としています。
SSのバックルは有名な「忠誠こそ我が名誉」ですが、空軍も違うようです。
新しい軍だからSSと同じかも知れません。
ちなみにヒトラー・ユーゲントのバックルは「血と名誉」みたいですね。

Wehrmacht - Gott mit uns,SS - Meine Ehre heißt Treue,HJ - Blut und Ehre.jpg

次は「ガスマスク」です。
この解説ではドイツ軍のよる英国本土上陸作戦が実施されていたら、
英国は「毒ガス」を使う気だった・・という話や、ワルシャワ蜂起にドイツ軍は「毒ガス」を使用し、
すぐに世界に向かって「不幸な誤りだった」と世界に謝罪した・・ということです。
前者は初めて聞いたことですが、後者は諸説あるのでなんとも言えません。。
軍に支給されたものだけではなく、何百万という女性や子供にも支給された
「ドイツ国民ガスマスク(ディ・ドイチェ・フォルクスガスマスケ)」の新品と説明書を含めて
「ガスマスク」の章は25ページも続きます・・。
ガスマスク・マニアの方ならこれだけで購入決定でしょう。

Deutsch volks gasmaske.jpg

「野戦装備」の章はまず、「水筒」からです。
「背嚢」では教範の絵と、そこに示されている規則どおりの詰め方の写真・・。
本書ではいくつか教範も紹介されてて、どんなものにも教範があるのがわかりました。。
「飯盒」も蓋がフライパンになるなど、初めて知りましたが、そういえば良く
こんなのを持ちながら食事している兵士の写真を見ますねぇ。
さらに「シャベル」に「弾薬パウチ」、「銃剣」に「近接戦用ナイフ」、「銃カバー」と続きます。

飯盒.jpg

「観測、通信」の章になると、カラーペンやらペンケースやら分度器やらが・・。
「地図」では、「軍は自前の地図ばかり使っていたわけではなく、定期的に更新される
市販の道路地図も頼りにした」ということで、
ノルマンディ地方の当時の「ミシュラン・ガイド」が出てきました。
その他、「双眼鏡」に「野戦電話機」。「ホイッスル」もココに含まれます。

野戦電話機.jpg

いよいよ「武器」の章へ。
「モーゼルKar98K 小銃」が8ページ、その後、「MP40 短機関銃」、「StG44 突撃銃」、
「MG34 機関銃」。拳銃では「ブローニングHP35」から、「ルガーP08」、
そして「ワルサーP38」を紹介。
手榴弾もドイツらしい「M24 柄付き手榴弾」から、らしくない「M39 卵型手榴弾」まで。
ここまでで、300ページ強の本書の2/3です。

武器.jpg

後半の「身のまわりの装備品」はちょっと気色が違うというか、好き嫌いは分かれるでしょうが、
万年筆などの「筆記具」から、レターセット、切手、時計と続きます。
「腕時計」では、国防軍から要求される厳格な仕様と数量にドイツの会社が応じきれなくなり、
1942年、スイスの「ロンジン」が最初に注文を受け、その後は複数のスイスのメーカーが
製造したそうですが、あらゆる交戦国からの需要が増えたために、単に刻印が違うだけで
同じモデルの時計がドイツと英国のために製造されることもあったようです。

German Army MILITARY WW2 Watch WWII DH.jpg

「眼鏡」に、有名なライカを中心とした「カメラ」、「懐中電灯」に「現金」が続くと、
次の章は「文書類」です。
兵役の年齢に達した際に登録し、与えられる「ヴェーアパス(兵籍手帳)」と
動員されたときに代わりに受け取る「ゾルトブーフ(給与手帳)」を
それぞれ中のページまで詳しく紹介。
「認識票」に「射撃記録帳」、「国防軍運転免許証」も写真は1枚ではなく、
それぞれ数枚の写真があります。

文書類.jpg

ヴィトゲンシュタインの好きな「勲章と徽章」の章も出てきました。
陸軍の一般兵の生活が本書の構成の基礎になっていますから、まずは「2級鉄十字章」からです。
他には「戦功十字章」、「東部戦線従軍章」、「歩兵突撃章」、「戦傷章」、「クリミア・シールド」など。
「歩兵突撃章」の銀色は歩兵、ブロンズは自動車化部隊の兵士に・・、ほう、そうでしたか。

勲章類.jpg

「健康と衛生」では、ニベア・クリームなどのメジャーなドイツの商品以外にも、
軍の公式コンドームに、国防軍専用のバージョンなるマイナーなコンドームが。。
寄生虫を駆除するパウダーでは、以前に読んだヒトラー物の本にも登場した
モレル博士印のパウダー」が写真つきで・・。マニアックですが、コレは面白いですね。

公式コンドーム.jpg

「糧食」はスプーンとフォークが一体化した官給品に始まり、各種ナイフや肉の缶詰まで。
コカコーラとファンタの瓶の話はなかなか興味深く、
1936年のベルリン・オリンピックのスポンサーになり、ヒトラーとゲーリングも大ファンだった
コカコーラ社ですが、両国が敵対関係になると、アトランタの本社は
「敵兵に飲ませるわけにはいかない」と原液の第三帝国内への供給を中止。
この事態にドイツ法人のコカコーラ社はサッカリンを甘味料に使った果実ジュースを作り、
それが「ファンタ」になったということです。

coca-cola_nazi_germany_1938.jpg

「プロパガンダ媒体」では国民ラジオから始まりますが、驚いたのは「ダス・ライヒ」紙です。
Uボートが米国東海岸を荒らしまわった「パウケンシュラーク作戦」の紙面が載っていますが、
この記事を書いたのは、あの「Uボート」の著者、ロータル=ギュンター・ブーフハイム です。。

「音楽」ではアコーディオンやハーモニカ、「煙草」では当時の紙巻煙草にパイプとライター。
本当に日常使う品々が出てきますから、軍事に興味が無くても、
自分が普段使っている品々や商品が当時、ドイツで使われていたことを知ると
彼らを身近に感じることが出来るのではないでしょうか。

battle_kursk_German soldiers.jpg

これだけの写真の量ですが、とても読みやすかった理由として、
当該写真のキャプションが必ず同じページにあるということですね。
軍事関連の写真集では、左ページの写真のキャプションが右ページにあるなんてことは
あたりまえで、場合によってはめくった次のページとか、4ページ後に・・というのがザラですから
本書のような丁寧な編集はとても良いですね。そもそも当たり前とも言えますが・・。
また、ひとつひとつのキャプションも短いながらも
例えば、「双眼鏡は、将校・下士官の階級に関係なく、分隊長に割り当てられる」などと
勉強になるのも多くありました。

まぁ、ただ値段が高いですから、購入に悩んでいる方の参考になれば幸いです・・。



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シリーズ 制服の帝国 -ナチスの群像- <下> [軍装/勲章]

ど~も。明けましておめでとうございます。ヴィトゲンシュタインです。
今年も「独破戦線」をど~ぞ、ごひいきに・・。

山下 英一郎 著の「シリーズ 制服の帝国 <下>」を読破しました。

2012年の一発目は、年末に上巻を読破して続けて・・と思っていたたものの、
160ページのわりには実に内容の濃い、マニアックさにやられて、
上巻だけで疲れてしまった、「シリーズ 制服の帝国」の下巻です。
ちょっと一度浮気して、頭をリフレッシュしてから本書に挑みました。

制服の帝国 下.JPG

上巻同様、最初の8ページは、カラーで制服などを掲載していますが、
今回は「空軍将官用フリーガーブルーゼ」。
フランツ・ロイス空軍少将が着用していた実物の制服を詳細に解説します。
このドイツ空軍のブルーの制服は個人的に一番好きなので、下巻の掴みもOKです。

まずは「徒然なる第三帝国」と「写真で見るナチスドイツ」の章でスタート。
「写真で見るナチスドイツ」はなぜか内相のフリックが主役で、
10枚ちょっとの彼の写真が続けざまに登場しています。

Goebbels and Frick.jpg

次の「参謀本部の憂鬱」は非常に面白く読みました。
1935年の復活した陸軍参謀本部の組織に始まり、1939年開戦時の組織改革まで細かく解説し、
「参謀総長のもとに中央部長と5人の次長がおり、その下に16部が配置されていた」
そして「参謀総長」が陸軍総司令部(OKH)の最高司令官を補佐する5人のうちの
一人に過ぎなくなっていたとして、
陸軍人事長官、総務長官、兵器長官、主計長官という長官職を紹介。
さらに国防軍最高司令部(OKW)が創設され、参謀本部出身者たちで構成された
ヨードル長官の国防軍統帥部の存在がOKHを不利な立場に追いやります。

Hitler in a meeting with Keitel, Brauchitsch, and Paulus.jpg

19世紀以来、参謀本部が立案してきた戦争がらみの国策によって連戦連勝し、
軍事が政治を越えていたとされ、第1次大戦敗北後も「皇帝は去ったが将軍は残った」
と云われてプライドのある参謀本部ですが、
OKWが西部戦線を受け持つと、OKHの東部戦線は踏んだり蹴ったりが続き、
無能な参謀が出世に目が眩んで、陸軍よりナチ(OKW)に走ったとしても無理はないとしています。

Hitler_shakes_hand_with_Generaloberst_Friedrich_Fromm_at_Wolfsschanze_1944__On_the_left_is_Oberst_Stauffenberg.jpg

そして1944年のヒトラー暗殺未遂事件に触れ、「現在では諸手を挙げて"良心"だとされている行動」
については「ナチスを選んだ愚かな国民の一員という自覚がなく、
参謀本部は「神」であり超然としていると考えていた」として、
また「ヒトラー排除後の首相に、元参謀総長のベックを据えようとし、
自分たちが敬意を払われないナチス体制を嫌う点でのみ一致するだけの烏合の衆で
一体、どのように国民を救うというのか・・」とかなり辛辣です。

ただ、首尾よく「ヒトラー暗殺」していたらその後は・・??
と、個人的には懐疑派なので、ある程度納得のいく章でした。

ludwig_beck_0.jpg

続いて「ヒトラーの将軍たち」では武装SSが軍事組織ではあったものの、
「参謀本部」も持たないことから、国防軍3軍のような、「軍」とは認められてないという話や、
「准将」という階級はドイツ国防軍にはなく、SA時代からの「上級指導者」を階級整合の際に
「SS准将」(柏葉2枚)としたものの、肩章などの観点からも将官ではなかったという話。
しかし一般SSにおいては、肩章も含めて将官待遇であった・・と相変わらずややこしいですね。
写真もリストハルダーマンシュタインブラウヒッチュとすべて初見のモノばかりです。

NSKK, Guerrera de Servicio de un Oberführer.jpg

「パンツァージャケット事始め」の章では、その有名な「黒」や「髑髏」についても解説。
そして装甲部隊の生みの親であり、パンツァージャケットのデザインも手掛け、
戦争後半には参謀総長にもなったグデーリアンを大きく取り上げて、
「戦争の最初も最後もドイツの命運を担ったのはグデーリアンだった」として、
「戦記のほとんどが彼の回想録を底本にしている・・」
著者はほとんど「SS」の専門家と思っていましたから、このような国防軍の組織や
人物についての独特の見解が本書では続いて、かなり楽しめました。

Guderian_Panzerjacket.jpg

14ページに渡ってしっかりと書かれた「国民突撃隊」はなかなかの力作です。
1944年9月の総統命令での、「国民突撃隊の創設に関して」という呼称の初登場から
11月のナチ党官房長官ボルマンによる命令の発行、
SS全国指導者兼国内予備軍司令官ヒムラーの最終指揮権、
そして「総力戦全権委任者」ゲッベルス・・という、結局、誰が責任者なのか
相変わらず、よくわからないこの新設部隊を丁寧に検証します。

Kaltenbrunner_Goring_Goebbels_Himmler_Bormann.jpg

3軍やSSに属するものではなく、すべての陸軍、武装SS、警察によって大管区単位に編成し、
その年齢は20歳から60歳。後に16歳まで引き下げられヒトラー・ユーゲントなども対象になります。
「階級」も隊員、班長、小隊長、中隊長、大隊長とあり、既定の制服の襟には
ちょっとSSっぽい独自の襟章が・・。
大隊長なら両襟に「星四つ」で、以下、星が一つずつ減っていきます。
この中隊長の制服の写真が掲載されていますが、初めて見ましたね~。

Volkssturm company leader.jpg

また、ほとんどの隊員は「ドイッチャー・フォルクスシュトルム」と書かれた腕章だけをする訳ですが、
これにも「国防軍」と書かれたものと、書かれてないものと2種類あるようです。
さらに国防軍所属の「国民擲弾兵師団」や「突撃師団」との混同についても解説していますが、
この「突撃師団(Sturm-Division)」というのも聞いた記憶がないですねぇ。
いずれにしても「国民突撃隊」についてこれだけしっかり書かれたものは初めてで、
大変勉強になりました。

volkssturm-armband-original.jpg

ヒムラーが射撃練習をする写真で始まる「ルガーP08」の章。
以前にもワルサーP38と、この尺取虫の如きルガーP08のモデルガンを持っていた
ということを書きましたが、そんな思い出もあって楽しめました。
帝政ドイツ陸軍に1908年に採用された「ルガーP08」。
しかし1938年に「ワルサーP38」に取って代わられますが、本書ではその理由を、
SA粛清の際に幕僚長レームに自決を迫ったものの、アイケらの渡したルガーP08が不発に終わり、
レームの勢いが挫かれ、仕方なくブローニングで撃ったところ、口径が小さく、
即死せずに30分ももだえ苦しんだため、アイケは
「間違いのない拳銃」をヒムラーに要望した・・ということです。
ということは「長いナイフの夜」がなけれは、ルパン3世もワルサーP38じゃなかったかも・・。

Himmler aiming a pistol P08.jpg

後半は勲章の章が続きます。「鉄十字章」に「騎士十字章」
特に英兵と米兵が捕虜のコレが欲しくてしょうがなかった・・という件では、
いまでも英米が大きなコレクターの市場であることが解説され、
実物の残存数は騎士十字章が2万個、柏葉章が1800個、剣章が450個、ダイヤモンド章が80個
だそうです。もちろん定価はなく、欲しい人がいくら出すのかの問題ですが、
以前、ヤフオクで騎士十字章は数百万でしたかねぇ。。

それらに比べてマイナーな「剣付き騎士戦功十字章」も登場しますが、
実は受賞者はかなり少なく、140人ほどだそうで、ゲシュタポのミュラー
ヒトラー暗殺未遂事件捜査の功績によって受章したそうです。

Ritterkreuz des Kriegsverdienstkeuzes.jpg

血の勲章」と呼ばれる「ブルート勲章」、「戦車突撃章(戦車戦闘章)」と続き、
「陸軍将官階級章」では独特のアラベスク模様のような襟章について考察。
写真が白黒なのが残念ですが、「現物を手にしたことのない低レベルな自称コレクターの間では
"海老フライ"と揶揄されている」ということで、まぁ、そう言われてみれば・・。

Generalfeldmarschall pattern collar tab in fine gold wire from the uniform of GFM von Manstein.jpg

装甲師団"フェルトヘルンハレ"少尉の制服」というのもマニアックで素晴らしい・・。
このフェルトヘルンハレという部隊が、SSに立場を奪われたSAに
公務に参加する機会を増やしてあげよう・・という目的で
1938年に創設されたSA警察連隊であったことや、
1942年、SA部隊、もしくは人名を冠した師団を編成するというヒトラー命令によって、
ほとんどがSA隊員から成っていた第271歩兵連隊がフェルトヘルンハレと改名して
師団となっていったということですが、SA警察連隊とは別組織で並行して存在していたそうです。

SA Standarte Feldherrnhalle.jpg

下巻も濃い内容なのでいくつか章は飛ばしましたが、
この巻は著者お得意の「SS」ではなく、「ドイツ陸軍」中心のものでした。
しかし、その分、過去の著作も含めて重複することもなく、予想外の展開で
新鮮な驚きと、独特の視点は充分楽しめました。
著者の本を読まれたことがないドイツ陸軍ファンの方にもオススメします。



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シリーズ 制服の帝国 -ナチスの群像- <上> [軍装/勲章]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

山下 英一郎 著の「シリーズ 制服の帝国 <上>」を読破しました。

6月に紹介した「制服の帝国 -ナチスSSの組織と軍装-」は、6000円オーバーという大作で
腕が疲れる・・というほどものでしたが、今年の3月に発刊された、「月刊アームズマガジン」誌で
2008年から連載されていたモノを上下巻の単行本にまとめた本書は
ソフトカバーで160ページ、お値段も1890円となかなか手頃なものです。
副題の「ナチスの群像」からは本書のテーマや内容がイマイチ読み取れませんが、
「ナチス・ドイツの規則や制服等、当時の資料や実際の用品を元に、細部に渡り徹底的に紹介する」
ということで、さらに「必ずしも一般には馴染みのない人物、組織、出来事も扱っている」と、
著者らしいマニアックな内容が期待できますね。

シリーズ 制服の帝国 上.jpg

最初の8ページは、嬉しいことにカラーでアルゲマイネSS(一般SS)の開襟服を紹介しています。
1933年頃のSS軍曹と1936年頃のSS准将の黒服、1943年頃のSS大尉と
1942年頃のRSHA少将とフィールドグレーの開襟服の4着が細かい解説で登場。
掴みはOKですね。

制服の帝国002.JPG

最初の章は「ナチス・ドイツの統治機構」と題して、
各省の大臣や党の全国指導者の関係を説明します。
といっても、これが実に大変に複雑怪奇なもので、例えばゲッベルスの宣伝大臣などは
良く知られていますが、それは首相ヒトラー内閣としての大臣であり、
ナチ党党首ヒトラーの元では「宣伝全国指導者」という役職であるわけです。

Nazi leaders Max Amann (Reich Press Chamber) and Robert Ley (German Labour Front) in Berlin, June 1939. The attractive lady in the back seat is Frau Ley.jpg

しかし閣僚や全国指導者全員がそうではなく、1936年の例を挙げて
全国指導者の18人中10人が政府での地位を持っていなかったということや、
その逆についても表を使って詳しく解説・・。また、それらも1945年まで、
常に変動していたというのが理解できます。
このような問題は似たような行政機関での混乱を招き、
青少年全国指導者フォン・シーラッハヒトラー・ユーゲントの教育方針を巡り、
政府の文部省との軋轢が起きてしまいます。

von Schirach_hitler.jpg

このような話が15ページほど珍しい写真も掲載しながら進みますが、
いや~、凄い濃い内容ですねぇ。。所々、読み返しながらでないと
難しくてなかなか理解できませんでした。
これは本書の書き方の問題ではなく、それだけ党を含めたナチス政府というものが、
様々な地位と役職が混在し、その権力争いも熾烈を極めていたことが要因のようです。
もちろん、これはヒトラーの狙いでもあるわけですね。
また、本書には書かれていませんが、ゲッベルスはナチ政権獲得前からの首都ベルリンの
「大管区指導者」でもありますが、ここにもやっぱりベルリン市長なんかがいるんでしょうけど、
どうせナチ党員でしょうから、どっちが偉いかは考えるまでもありません。。

Hitler,Hess&Goebbels.jpg

次はもうちょっと簡単な章で、「SSの高さに栄光あれ!」。
いわゆるアーリア人のエリート部隊であるSS隊員の入隊規定のひとつ、
最低身長170㎝であること、といった話ですね。
本書では年代ごとに変化したこの規定も細かく書かれ、
エリート中のエリートである「ライプシュタンダルテ」は178㎝以上であるものの
その他の一般SSなどは165㎝であり、また、これがSS独自の規定ではなく、
先に創設していた「ゲネラル・ゲーリング連隊」の基準を真似たものであるそうです。

LSSAH troops on parade.jpg

他にもSSの個人記録簿に書かれた身長と写真から、著名なSS将校の身長を推定する・・
といった試みを行っており、フリードリヒ・ヴィルヘルム・クリューガー
バッハ=ツェレウスキマイジンガーダリューゲらのオリジナルの記録簿を掲載しています。
シュトロープはちゃんと当初の「ヨーゼフ」が消されて、「ユルゲン」と手書きで改名していました。

Nordische Typen bevorzugt - die Musterung für die SS Standarte Nordland.jpg

次の章はSSの結婚式です。
あるSS少尉の結婚式の連続写真が発見されたようで、式の後の食事や団らんの様子までが
コメントとともに掲載されています。
本書によると、このような写真は新郎新婦はもちろんのこと、出席者もSS隊員だったという
証拠になって、時効のない非ナチ化裁判で追及されてしまうので、出回らないそうです。

SS-Standartenführer_Hochzeit.jpg

しかし、この奥さん、グレース・ケリー似の美人だなぁ。。と思ってたら、
次の章は「SSにおける女性キャリア」です。
SS女性補助員の組織図の「草案」を掲載し、女性全国指導者のショルツ=クリンク
キング・オブ・アルゲマイネSSことハイスマイヤーSS大将の奥さんだった話も紹介。

ss_woman.jpg

次の強制収容所と髑髏部隊の章では、「ダンツィヒ郷土防衛軍」が詳しく書かれていました。
これは1939年のポーランド侵攻時に、ダンツィヒで活躍した部隊で、
先日の「ナチスドイツの映像戦略」でも紹介されていたので気になっていましたが、
もともとは髑髏連隊「オストマルク」の第3大隊で、ダンツィヒ市議会から要請を受け、
侵攻直前の8月に派遣され、後には第3SS師団トーテンコップの歩兵連隊に編入された・・
ということです。

Danzig-Soldiers-Attack.jpg

「巴里の独逸人」の章では以前に紹介した「ナチ占領下のパリ」と「ゲシュタポ・狂気の歴史」でも
なかなか良く書かれていた、フランスでのSS、ゲシュタポのお話となっています。
最初に派遣されたクノッヘンSS大佐の頑張りと、オーベルクSS少将の登場。。
「フランスにおけるドイツ保安警察とSDの組織図」の分析では、
リヨン支部の指揮官がクナップSS中佐、代理がホラート大尉であり、
1942年からゲシュタポの長だった、かの悪名高きバルビーの名前は載っていないということで、
著者は「予想外に小物なのだろうか?」

Karl Oberg_Helmuth Knochen.jpg

ポーランドのユダヤ人を一掃する「ラインハルト作戦」の章に続き、
アインザッツグルッペンに焦点を当てた次の章では、ハインツ・ヨストSS少将が主役です。
1904年生まれの彼は、SD外国局局長を勤めますが(シェレンベルクの前任者ですね)、
「行動するインテリ」を求めるハイドリヒからの要請と、出世レースで必要な前線任務・・、
すなわちロシアでのアインザッツグルッペン指揮官としての任務に就きます。
しかし庇護者のハイドリヒが暗殺されると、彼も局長の座を解任され、役職もなくし、
東部へ左遷。。かつて同格だったオーレンドルフの指揮下で精神も病み、
挙句の果てには、武装SS軍曹として転属・・。対戦車猟兵としての訓練を受けることに・・。

Otto-Ohlendorf-Heinz-Jost.jpg

ハイドリヒが大学出のインテリに過酷な任務を求めたことや、
そのハイドリヒが死ぬと、ヒムラーによってハイドリヒ派が人事によって飛ばされた・・
というのは過去に読んだ話ですが、このヨストのような具体例を知ると、ちょっと同情しますね。
最後にはSS襟章とワシの袖章、そして金枠党員章パルチザン掃討章が紹介されます。

当初は160ページというボリュームと、写真もタップリ掲載されていることから
2時間程度で独破してしまうかと思っていましたが、いや~・・、コレはとてもとても・・。
章ごとの内容が濃くて(マニアックで)、部分的には読み返しながらでないと理解できない・・
という程の素晴らしいものでした。
結局、2日間に分けて4時間かけて読了しましたが、ちょっとグッタリしました。
すぐに下巻に突入するのをためらうほど、疲れました。。。実に濃い~です。。



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