SSブログ

特殊戦闘車両 [パンツァー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ヴァルター・J. シュピールベルガー著の「特殊戦闘車両」を読破しました。

「戦車マニア」や「モデラー」ではないヴィトゲンシュタインですが、
このような本にも大いに興味があります。
著者シュピールベルガーのこの「軍用車両」シリーズは以前から気になっていましたが、
ちょっと高いし、内容の濃さについて行けそうにない・・と敬遠していました。
しかし、個人的に好きな「ゴリアテ」や「カール自走臼砲」、「マウス」などが紹介された本書は
古書で安く見つけましたので購入してみました。

特殊戦闘車両.jpg

「特殊装甲車両」の章から始まる本書、この「特殊装甲車両」はナニを指すのかというと、
ゴリアテを含む「装甲化爆薬運搬車」や「地雷処理車」です。
なかでもクルップ社が1台製造した130㌧の地雷処理車「ロイマーS」というは初めて知りました。
水中用ゴリアテが進化した?水陸両用の破壊戦車「エンテ(あひる)」とか、
Ⅳ号戦車のシャーシが使用された「突撃架橋車両」なんていうのも写真つきで出てきました。

次の章は「ポルシェ」です。
「VK4501(P)」、すなわちポルシェティーガーも登場します。
ティーガーはご存じ通り「ヘンシェル社」が勝利を収め、
このVK4501(P)は日の目を見ずに終わったものの
ティーガー戦車駆逐車「フェルディナンド(エレファント)」はクルスク戦に投入されました。
そして本書のメインとなる100㌧越えの超重戦車「マウス」の出番です。
その開発過程から砲塔や戦闘室に至るまで、多数の写真を用いて、かなり細かく解説しています。

vk4501_p.jpg

次は「E型シリーズ」です。
このシリーズは本書によると、これまでの装甲車両とは全く別の新しい開発をするというもので、
それまで戦車開発・製造に関係のなかった企業を新規参入させたということです。
そしてここでも超重戦車「マウス」とは別の、100㌧戦車の開発が行われ、
有名な「E-100」の試作車両が終戦まで、細々と作られます。

マウス_E-100.jpg

続く章は「自走砲」・・。これは「特殊戦闘車両」なのか??と思いましたが、
このシリーズではそのような位置づけなのかも知れません。
ホルニッセ(スズメバチ)」が「ナースホルン(サイ)」に改名されたのが、
1944年の「総統命令」であった・・というのも初耳でした。
しかし、この時期にそんな細かいこと考えて「総統命令」出す人は、相変わらずですね。

etwa den von Porsche entwickelten Riesenpanzer Elefant.jpg

また、「フンメル(マルハナバチ)」も同じ日の「総統命令」で、
この「フンメル」という名称で呼んではいけなくなったということですが、
特に代わりの名称がないようで、単に「Sd Kfz 165」と呼ばされたんでしょうか?
ちなみに、あの「ホイシュレッケ10」もチラっと出てきました。

Russland,_Panzerhaubitze__Hummel.jpg

トリは表紙も飾っている「カール自走臼砲」です。
この「独破戦線」でもセヴァストポリパリ陥落ワルシャワ蜂起レマゲン鉄橋
いろいろ出動した、自走式の超重量級火砲ですね。
これは時間があったらプラモデル作りたくなります。

Mörser Karl.jpg

気になったのは「その他の開発車両」で書かれていた、Ⅶ号戦車レーヴェ(ライオン)です。
こんなの聞いたことがありませんでした。まぁ、本書でも文章で出てきただけですが・・。
クルップ社の「VK 7201」というのが原型のようですが、う~ん・・。

PzKpfw VII lowe.jpg

帯に書かれている「謎の千トン戦車計画に迫る!」も
最終ページに文章でチョロっと書かれているだけの実に寂しいもので、
wikiの方がよっぽど詳しく書いてありました。。。。

ただ、個人的見解ですが、wikiを無条件に信用しているわけではありません。
よく、「wikiにこう書かれている・・」という方がいますが、自分にとってはあくまで
「現在、一般的に解釈されている情報のひとつ」という位置づけとして見ています。
なので、複数の見解がある事柄については、たまに「おいおい・・」と思うこともあったり、
また、wikiが完全に正しいとすれば、本を読んで新たな発見をすることもありませんね。
wikiは「何も保証していません」し、真実や、各人が納得する解釈というのは
このインターネットの時代であっても、簡単なことではないと思うのです。

The German AT-AT Walker.jpg

ちょっと変な方向へいってしまいましたが、
「マウス」だけで言うならモデルアート臨時増刊の「ドイツ超重戦車マウス」の方が
写真も含め、内容的には濃いかも知れません。
ちなみに「グランドパワー」とか、このような雑誌もたまに買っては勉強していますが、
この「独破戦線」では紹介しないようにしています。
特にコダワリなんかがあるわけではないんですが、「雑誌」はあくまで「雑誌」、
ココでは「本」を紹介したい・・というのが、始めたときからの方針なんですね。

ドイツ超重戦車マウス.jpg

まぁ、しかし、本書の139ページで4500円をどう取るか・・。
明らかに「マニア向け」ですからしょうがないでしょうが、
「マニアではない」ちょっと興味ある程度の自分の基準ではちょっと高いと思います。。。
なので、古書を2200円で購入しましたが、そんなところが妥当じゃないでしょうか?
一番新しい「捕獲戦車」も欲しいんですけどねぇ。





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突撃砲兵 [パンツァー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

フランツ・クロヴスキー著の「突撃砲兵」を読破しました。

以前に紹介した「ヘルマン・ゲーリング戦車師団史」の著者による、
突撃砲独立大隊興亡史といえる内容の1冊で
1935年にフォン・マンシュタインによって歩兵支援の装甲化自走砲として提言された
この兵器が紆余曲折の末、開発され、歩兵の守り神として全線戦において活躍し、
最終的に1945年の終焉を迎えるまでが詳細に描かれています。

突撃砲兵.JPG

まずは戦車との違い、回転する砲塔を持つ戦車と違い
多少の俯角はつけられるものの、相手に正面を向いて砲撃する突撃砲は
それゆえ防御のため、前面装甲を厚くし、車体も低くすることが条件となり、
結果的に乗員の数も戦車の5名に対して、4名、また、車長とは言わず、砲長と呼ぶそうです。

Sturmgeschutz Battalion Advancing toward Stalingrad.jpg

これは兵科の違いも大きくあり、戦車科ではなく、砲兵科に属する突撃砲は
そのユニフォームも前はダブル仕様ですが、黒ではなく、フィールドグレー、
襟章などのバイピングも砲兵の赤を使用します。

そして1940年前半、砲兵教導連隊に突撃砲中隊が配属されると、
いきなりフランツ少尉が登場。「おっ!」と思って読み進めると
やはり彼は後にグロースドイッチュランドで柏葉騎士十字章を受けることになる
ヴィトゲンシュタインの好きなペーター・フランツでした。

Peter Frantz GD.jpg

本書はフランス戦役、バルカン戦役、ほとんどを占めるロシア戦役は年毎に、
また軍集団毎に細かく、その突撃砲大隊の戦いが出てきます。
数ページ毎にクリアーな写真が出てくるのが救いですが、結構、シンドイ展開なので
好き嫌いは分かれますね。

それでも楽しい回想というか、報告もあり、例えばユーゴでは
発電所が破壊されて町の冷蔵庫も停電となったことから、
ここの所長は冷凍されていた1万羽のニワトリを形式的な受け取りだけで、
ドイツ軍兵士たちに提供。どの突撃砲もこのニワトリを携行し、大いに役立つものの、
後にロシアの奥深くでこのときの請求が「非友好的」な計算書で届き、
部隊の上級主計長が頭を抱えた・・。

sturmgeschutz inside interior.jpg

バルバロッサ作戦で中央軍集団に配属された第191突撃砲大隊の指揮を取る
ギュンター・ホフマン・シェーンボルン少佐は本書のなかでも特別に印象に残ります。
「韋駄天」と呼ばれた活躍で、柏葉騎士十字章も授章。その後も頻繁に登場し、
突撃砲学校の校長を勤めるという、まるで突撃砲兵の父のような雰囲気です。

Günther Hoffmann - Schönborn.jpg

ここから始まる東部戦線の戦いは有名な戦役が目白押しです。
セヴァストポリも一次と二次、デミヤンスクとホルム包囲戦、
ハリコフ戦役からスターリングラードではいくつかの突撃砲大隊が全滅。
ツィタデレ作戦水牛作戦と1943年までが上巻で紹介されます。

Cholmschild.jpg

本書では頻繁に、「1級鉄十字章や騎士十字章を授与された」という記述が出てきますが、
その中間に位置する「ドイツ黄金十字章」の授章記録以外にも
なかなか記述された本は少ない「武勲感状徽章」にまでしっかり触れられています。
この「武勲感状徽章(Ehrenblatt Spange des Heeres)」は、
「陸軍名鑑章」などとも訳されますが、位置づけ的には
ドイツ黄金十字章と騎士十字章の間ということです。
空軍、海軍にも各々ありますが、胸ボタンの2級鉄十字章のリボンに装着するようですね。

Ehrenblattspange des Heeres.jpg

○○シュミット大尉や△△ベルガー少尉といった名の数多くの突撃砲兵たちが
入れ代り立ち代り登場し、その多くは1回出てくるだけ・・なので、
その名をいちいち覚える必要はありませんが、
「ガッターマン」という中隊長が出てきたときだけは、凄い名前だなぁ・・と
暫く頭の中で子供の頃に良く見た、2つのアニメ・ソングが流れていました・・。

Stu.H.42 Ausf.G Zėlovo aukštumose, 1945.jpg

下巻では防御一点張りとなった突撃砲の戦い・・西部戦線、チェルカッシィ
包囲されたクーアラント軍集団での突撃砲の戦いも出てきます。
ここでは糊の利いた「KURLAND」のアームバンドを受領する場面が・・。
しかし、このカフタイトル・・近ごろ流行のノルディック柄ですね。お洒落です・・。

Ärmelband Kurland.jpg

途中、回転砲塔を持たないフェルディナンド(エレファント)やブルムベアが出てきますが、
これらは駆逐戦車、突撃戦車と呼ばれ、兵科も戦車科であることから
本書の対象外とされています。

Brummbar_Sturmpanzer IV.jpg

しかし、兵器生産量の低下により突撃砲部隊にⅣ号駆逐戦車が補充されたりもしたそうで、
これら突撃砲と駆逐戦車の割合によって「駆逐戦車大隊」などへ変更していったようです。

また、個人的にはティーガー戦車で活躍する前の突撃砲兵ヴィットマンなどが
出てくるのも楽しみにしていましたが、装甲師団内で編成されている突撃砲中隊も本書では
触れられていません。よって武装SSの部隊も一切なし・・。ちょっと残念でした。

wittmann_Stug III.jpg

当初の短身砲から長砲身へと進化していく突撃砲の、
兵器としての解説は最初の章に述べられているだけなので、
突撃砲のそのような内容を求める方には不向きな内容かもしれません。

司令部に戻ってみると、そこが20名ものロシア兵に占領されていて、
友好的な態度でタバコを勧め、なんとか窮地を脱したという「雪の中の軍曹」ばりの話もあったりと、
突撃砲マニアでなくとも楽しめる部分もありますが、
よほど心してかからないと、かなり大変な1冊(2冊?)です。





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バラトン湖の戦い -写真集 ドイツ軍最後の戦車戦1945年1月~3月- [パンツァー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

M.スヴィーリン、M.コロミーエツ他著の「バラトン湖の戦い」を読破しました。

本書はソ連崩壊後、新たに世に出てきた大祖国戦争時の戦記写真集といわれる、
ロシア国立映画写真資料館や中央軍事博物館の所蔵写真などを用いた一冊で、
「独破戦線」でも以前に何冊か紹介した「独ソ戦車戦シリーズ」の前に発売されたものです。

バラトン湖の戦い.JPG

この戦役「バラトン湖の戦い」は、「春の目覚め作戦」としても知られていますが、
本書はまず、1944年暮れのソ連の攻勢によるハンガリーの首都、ブダペスト包囲の様子から
それを救出しようとするトーテンコップヴィーキングギレSS中将率いる第4SS戦車軍団と
フェルトヘルンハレ装甲擲弾兵師団第8SS騎兵師団 フロリアン・ガイエル等の
決死の脱出が結構詳細に前半の戦いとして紹介されます。

fhh-budapest.jpg

そして後半は3月、ゼップ・ディートリッヒ率いる、SS第6戦車軍による
「春の目覚め作戦」の終焉までが戦況図とともに解説されます。
しかし、このせっかくの戦況図ですが、「図1参照」と出てきても、
これがどこにあるのか不明だったりして、
普段見ない「目次」を見て、やっとわかるといった具合です。

まぁ、しかし東側の本ですから、第2ウクライナ方面軍のマリノフスキーと
第3ウクライナ方面軍、トルブーヒン隷下の砲兵部隊の大活躍が話の中心で
クルスク戦と比較をして、そのゼップ・ディートリッヒを軸としたドイツ軍の
戦術のダメさ加減も検証しています。

152-мм МЛ-20.jpeg

そんなソ連側でも思わず笑ってしまったのが「捕獲戦車大隊」のエピソードです。
正規の部隊ではないので、かなり信憑性には疑問符が付きますが、
このⅢ号とⅣ号突撃砲というドイツの鹵獲戦車で挑んだ「捕獲戦車大隊」は
いきなり味方戦闘機に攻撃されてしまい、2両が炎上、5両がぬかるみにはまり込み、
与えられた任務をまっとう出来ず・・。
逆にドイツ軍がこれらの突撃砲を曳きだし、その後の戦闘に用いた・・。

掲載されている写真はすべて白黒で、撃破されたドイツ軍の装甲車両がほとんどですが、
なかにはハンガリー軍の戦車も出てきます。
トゥラーンという名の戦車ですが、初めて見ましたね。

Turán II crossing a river.jpg

Ⅳ号戦車からパンターティーガーケーニッヒスティーガーのドイツ戦車。
自走砲もマーダーⅡやフンメルヴェスペ
Ⅲ号突撃砲にⅣ号突撃砲、ヘッツァーにヤークトパンターの駆逐戦車。
対空戦車ヴィルベルヴィントも何枚か写っているのは、制空権が支配されていたという
本文の記述を裏付けている気もします。

Jagdpanther.jpg

これらのなかでは個人的にあまり見たことの無かったⅣ号駆逐戦車が興味深かったですね。
なんとなくバランスの悪い、巨大な虫(カブトムシとムカデのあいのこ)みたいな外観で
できればカラーでその迷彩まで見たかったところです。

Jagdpanzer IV.jpg

行動中のティーガー、撃破されたティーガーを良く「生きてる虎」や「死んだ虎」などと形容しますが、
ドイツで発刊されたものは前者の写真が多く、旧ソ連からのものは後者がほとんどです。
本書のような後者の写真集は以前はあまり好きじゃありませんでしたが、
今回、この終戦間際の戦いにおける、ドイツ軍の後期の戦闘車両が多数掲載され、
それらは当然「死んだ」車両にもかかわらず、なにかしみじみと見入ってしまいました。

buda_tank.jpg

この自分の変化はやはり、いくつかの戦車戦記を読んできたことで、
その撃破された戦車=壊れた機械というものより、その中の戦車兵たち・・
も想像できるようになったからかも知れません。
戦車のそばで戦死している戦車兵や、砲塔から脱出できずに、焼け焦げた
戦車兵の写真も見たことはありますが、それよりも、本書のような
デッカい口径の直撃弾の穴が砲塔横に空いている「死んだ」パンターを見ると、
その瞬間、そこにいたであろう車長の運命を想像せずにはいられません。

泥にはまり込んだまま、何発もの直撃弾を喰らい「死んだ」戦車の写真も、
そのときのクルーたちの様子・・狭い車内で起こったであろうパニックなど・・、
彼らにとって、一瞬の出来事で終わったのだと思いたくなります。

Operation Frühlingserwachen.jpg

本書は2000年4月に発刊されたものですが、
翌月にも「写真集 バラトン湖の戦い」として発刊されています。
なにか問題があったのか、この2冊の内容に違いがあるのかはわかりません。
表紙はちょっと違っていたような記憶がありますが・・。



と・・、いつもはここで終わる「独破戦線」ですが、今回はもうちょっとだけ・・。

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」が公開されましたが、
いわゆる「ヤマト世代」といわれているヴィトゲンシュタインも
これについては多少なりとも気になっています。

まぁ、観ることはないとは思っていますが、
その理由はやはり、子供のころのイメージをぶち壊されたくない・・ということなんでしょう。

ただ、今の世代の子供たちにとっては、良い映画であって欲しいと思います。

映画の「ヤマト」といえば、「さらば宇宙戦艦ヤマト」が最高でした。
小学生のとき、ロードショーで大泣きして、そのまま続けてもう一度観ました。
確か、1週間後に友達とまた観に行って、大泣きしたと・・。




これは、好きだった真田さんや森雪もみんな死んで、最後には特攻・・という
悲しい展開なのが大きな要因ですが、
このラスト・シーンにかかる「大いなる愛」という曲が実に素晴らしい・・。



映画自体はもう10年か15年以上観ていませんが、
この曲だけはたまに聞いては、それだけで軽く涙します。
酔っ払っていたりしたら、軽くどころか、ダラダラ出てきます。
特にそのシーンを思い出して泣くわけではないんですが、
なんというか、その当時の大泣きした感情が蘇ってくるのかも知れません。

昔は「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち [Soundtrack] 」のLPも持ってましたが
今や手元になく、このCDもロクに売ってないんですね。残念。



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重戦車大隊記録集〈2〉SS編 [パンツァー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ヴォルフガング・シュナイダー著の「重戦車大隊記録集〈2〉SS編」を読破しました。

ボリュームたっぷりのティーガー戦車写真集です。
著者のシュナイダーは、ドイツ連邦軍、機甲部隊の現役士官という人物で
その専門知識と人脈を活用して、本書の執筆と写真の収集をしているようです。
本書は〈2〉SS編であり、当然、〈1〉陸軍編も出ていますが、
なぜかこのSS編は本屋で見当たらず、amazonでもプレミア価格となっていたので、
以前になんとか定価の¥6000で購入していました。

重戦車大隊記録集〈2〉SS編.JPG

まずは1942年11月から編成が始まった武装SSの3個師団の各重戦車中隊からです。
第1SS師団"ライプシュタンダルテ"は「第13中隊」、初代中隊長はクリングSS大尉、
2代目は言わずと知れたヴィットマン、3代目はヴェンドルフと、その期間や
騎士十字章受章者もしっかり載っています。
写真も初見のものがほとんどで、「装甲兵総監」グデーリアンが訪れた際の
ティーガーの砲塔にいるのがヴィットマンだというのは初めて知りました。
また、本書は日ごとの戦闘日誌がページ下部に紹介されていて、これが結構楽しめます。

Guderian during an inspection to Leibstandarte Tiger at the Eastern Front, April 1943b.jpg

第2SS師団"ダス・ライヒ"は「第8中隊」です。
ハリコフ近郊での航空写真・・。数10メートル上空から写したティーガーの姿も素晴らしい。
SS全国指導者ヒムラーが砲塔に納まっている写真も初めてです。
また、この中隊は各車に独自のマーキングをしていることも紹介され
有名な逆さに書かれた「福」の字、「倒福」もしっかり出てきます。
ちなみに表紙の写真もその車両(S33号)で、良く見るとキチンと帯の上に写っています。

Charkow 1943.jpg

空軍将校を交えた飲み会で「渡れる」賭けをした中隊長が、氷結した小川に
ティーガーを乗り入れた結果、水没・・。この件が総統大本営にも報告され、
中隊長は罷免・・。そして懲罰人事で訓練課程に転属・・という記録が出てきます。
この中隊長は本書の時期によるとヘルツィッヒSS大尉という人物のようです。

Tiger Tiger.jpg

第3SS師団"トーテンコープフ"の重戦車中隊は「第9中隊」です。
ソ連軍のM3グラント戦車で記念撮影・・やパンツァー戦記で良く読む、
戦車の下に潜り込んで熟睡中のクルーたち、という写真も面白いですが、
この重戦車中隊は終戦まで戦っていたこともあってか、はたまたトーテンコープフらしい
別の理由があってか、戦闘日誌が非常に興味深いものとなっています。
撃破されたティーガーの戦車長がロシア兵にスコップで撲殺されたり、
SS第4警察師団とおぼしき味方対戦車砲が命中し、SS大尉が即死・・、
その他、ワルシャワ蜂起にも駆けつけています。

Kübelwagen of the Totenkopf Division.jpg

続いては1943年7月から編成された本書の主役、SS重戦車大隊です。
SS第101(後に501)重戦車大隊はフォン・ヴェスターンハーゲンSS少佐が
大隊長に任命されるものの、傷が癒えずに合流が大きく遅れます。
この大隊にも当然ライプシュタンダルテの戦車キラー、ヴィットマンが移籍してきたこともあって、
ヴィレル・ボカージュの戦い、そして彼の最後まで多数の写真とともに紹介されています。

TigerⅠ.jpg

その後の「バルジの戦い」こと、アルデンヌ攻勢でのケーニッヒスティーガーも暴れまわる
パイパー戦闘団も出てきますが、印象的だったのは
大隊長ヴェスターンハーゲンが病気による衰弱でその任を解かれ、
ピストル自殺を遂げた・・という日誌でしょう。

heinz von Westernhagen.jpg

他にも終戦間際には、国防軍兵士によるパンツァーファウストの誤射により、
戦車長とクルー3人が死亡。そしてこの国防軍兵士は逃亡しますが、
後日、射殺されたそうです。

Volkssturm, Übungsschießen mit Panzerfaust.jpg

SS第102(502)、SS第103(503)重戦車大隊も続いて紹介されますが、
さすがにこのティーガーⅠ、ティーガーⅡが数両いるだけで、その戦果もハンパじゃありません。
ノルマンディではカナダ軍の50両からなる戦車を迎え撃ち、完膚無きまでに叩きのめしたり、
ベルリン攻防戦でもJS戦車中隊と100両を超すT-34戦車の群れが
密集しているところに襲い掛かり、このソ連戦車旅団を殲滅します。
しかもケールナーSS上級曹長という戦車長だけで39両も撃破・・!
ヒトラーが自殺しようという4月28日には、この総統官邸付近の防衛司令官である
モーンケSS少将から騎士十字章を授与されたそうです。

Hongrie-Budapest-Konigtiger-1945-1.jpg

ティーガーの砲身内に敵弾が命中するという珍事も書かれていて、
この結果、装填手は「肉片と化した」そうです。。。
また、ダス・ライヒで懲罰を喰らった、先のヘルツィッヒと思われるSS少佐が
1945年からこの503重戦車大隊の大隊長に就任しています。良かったですねぇ。

SS-Sturmbannführer Friedrich Herzig.JPG

SS師団シャルルマーニュを支援しながらベルリンの中心で戦い続ける
第503重戦車大隊の残余は、5月2日に突破作戦では、凄まじい砲撃を受け、
車外の政府高官らもやはり「肉片と化す」。。
ゲッベルスの副官であったSS少尉によると、この政府高官はマルティン・ボルマンのようであった
と明かす・・など、本当に戦闘日誌がおもしろいものです。
戦車兵たちが見た、ベルリン攻防戦ですから、それも当然ですね。

最後には武装SS以外のティーガーを擁する部隊が紹介されます。
グロースドイッチュランドの「第13中隊」~「第Ⅲ大隊」では、やっぱり有名人も登場です。
戦車伯爵シュトラハヴィッツラングカイトマントイフェル師団長の初見の写真も数枚。

Langkeit & Hassom von Manteufell.jpg

とにかく写真が素晴らしい1冊で、意味の無いものはほとんどありません。
イマイチだな~と思うティーガーの写真も、その撮影者が実はヴィットマンだったりと
いちいち感動したり・・。
それでも「写真集」ではなく、「記録集」であるわけで、これら部隊ごとのティーガー保有数などの
情報も細かく記されていて、写真、情報、戦記のすべてが充実した見事な本じゃないでしょうか。

Michael Wittmann_hitler.jpg

〈1〉の陸軍編も買うことにしました。
しかし、その前にさらにボリュームたっぷりな
「第653重戦車駆逐大隊戦闘記録集」をやっつけねば・・。




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シュトラハヴィッツ機甲戦闘団 -“泥まみれの虎”の戦場写真集- [パンツァー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

マイケル・H. プルット著の「シュトラハヴィッツ機甲戦闘団」を読破しました。

以前に紹介した「ティーガー戦車隊 -第502重戦車大隊オットー・カリウス回顧録-」で
中心とも言うべき戦役であった1944年春の「ナルヴァの戦い」の
新たに発見されたドイツ軍宣伝部隊によって撮られた、140枚を掲載した写真集です。

シュトラハヴィッツ機甲戦闘団.JPG

序文を書くのはオットー・カリウスで、この序文も2008年という新しいものです。
ただし、このようなカリウス・ファンをドキドキさせる出だしですが、
この白い夏の軍服に柏葉騎士十字章という有名なポートレート以外には一切出てきません。

個人的にはカリウスよりもシュトラハヴィッツ大佐に興味があったので、
彼の未見の写真がバンバン出てきたり、
就寝前の如何にも伯爵然としたシルクのパジャマ姿があったりして・・
という淡い期待がありましたが、こちらも残念ながらそれほどではありませんでした。

Graf Strachwitz GD.jpg

まずは1944年1月に包囲されていたレニングラードをソ連軍が突破を果たし、
その後、エストニアの古都、ナルヴァでの戦いとなっていく過程が簡単に解説されます。
そして、この1次~3次まで続く、いわゆる「シュトラハヴィッツ作戦」に参加した部隊、
「装甲擲弾兵師団"フェルトヘルンハレ"」、「総統警護大隊」、「第502重戦車大隊」が紹介されます。

本書はフェルトヘルンハレⅢ号突撃砲やⅣ号戦車、第502重戦車大隊のティーガーや
撃破されたソ連のSU-76自走砲なども随所に登場します。
「オットーの橋」と言われる、「ティーガー戦車隊」で書かれていた、
カリウス中隊が対戦車壕を超えるための丸太・・を
工兵の装甲トラックに大量に詰め込んでいる写真は、特に印象的でした。

Otto Carius _ Himmler.JPG

まぁ、しかしタイトル「シュトラハヴィッツ機甲戦闘団」のように、かなりマニアックな
写真集であることには変わりなく、一般向けというより、
やはりよほどの戦車マニアや軍装フェチのかた、またはモデラー向けの内容でしょうか。

第502重戦車大隊はカリウスの回想録でそれなりに知っていましたが、
残る2つの部隊、「装甲擲弾兵師団"フェルトヘルンハレ"」と「総統警護大隊」は
簡単に紹介されていますが、相変わらず、よくわからない部隊です・・。

「フェルトヘルンハレ」は、もともとエリート隊員で編成されたSA(突撃隊)連隊であり、
戦局の悪化後に、国防軍に編入されて第60自動車化歩兵師団「フェルトヘルンハレ」、
後に装甲擲弾兵師団「フェルトヘルンハレ」、
最終的には2個師団のフェルトヘルンハレ軍団となった・・
という話を聞いたことがありますが、あまり自信がありません。

SA-Mann of SA-Standarte Feldherrnhalle.jpg

総統警護大隊(Führer begleit battalion)は、総統護衛大隊とも訳されますが、
1930年代後半は、ロンメル大佐が指揮した部隊のようです。
歩兵連隊「 グロースドイッチュランド」と空軍の連隊「ゲネラルゲーリング」からの分遣隊により
編成後に、旅団から師団と拡大し、「バルジの戦い」などで、あのレーマーが率いることになります。

本書の説明でも「ヴォルフツシャンツェ」から派遣され、5月には帰還したと書かれており、
いわゆる映画「ワルキューレ」で爆弾を炸裂させ、車で逃走を図るシュタウフェンベルク
「通せません!」と言って、足止めを喰らわす軍曹?は「ナルヴァ帰り」なのかも知れませんね。

また1943年には総統擲弾兵大隊(Führer Grenadier Battalion)という別の部隊も編成され
こちらも「グロースドイッチュランド」から補充を受け、旅団から師団となったようです。
イメージ的には「グロースドイッチュランド」の分遣隊のようですね。

Führer-Begleit-Division.jpg

この2つの部隊は大隊と旅団規模のときは"FBB"と"FGB"と略して書かれ、
師団となると"FBD"、"FGD"と書かれているみたいですが、いずれにせよ、
和訳も含め、実にややこしくて大変です。。。

さらにはラッテンフーバーを中心とした警護部隊RSD(Reichssicherheitsdienst) や
SSのFührerbegleitkommandoもあるので、調べれば、調べるほど混乱してきます。
まぁ、こちらは前身と前線勤務は「ライプシュタンダルテ」のようですが・・。
こういうのが整理された本があると、とても助かるんですがね。。

ふと思いましたが、国防軍防諜部の直轄のような特殊部隊で知られる「ブランデンブルク」も
カナリス提督の失脚に伴うSDへの吸収によって、
スコルツェニー率いるSS特殊部隊に移管されていったなどという話もあり、
スパイの要素や特殊任務、ドイツらしからぬ洒落た「部隊マーク」もセンスがあり、
ヒトラー暗殺未遂にまつわる解体と再編成というドラマティックさからも
「ブランデンブルク装甲擲弾兵師団史」なんか発売されても良いんじゃないかと思うんですけどねぇ。

Division Brandenburg 1943-1944 Fallschirm-Jäger-Bataillon „Brandenburg“.JPG

それが無理でも武装SS師団史があるように、国防軍のこのような「番号」以外の師団を集めた
(終戦間際のやっつけ的な師団のクルマルクとかミュンヘベルクは別にしても)
「ヒトラーの秘密部隊」とかいうタイトルの本が一冊あっても面白いんじゃないでしょうか?

なにか話の方向がズレていってしまいました・・。
ちなみに本書の帯には「泥まみれの虎の続編?!」とデカデカと書かれていますが、
「泥まみれの虎―宮崎駿の妄想ノート 」はいまだ未読につき、その真相は不明です。



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