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ゴールデンボーイ -恐怖の四季 春夏編- [戦争映画の本]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

スティーヴン・キング著の「ゴールデンボーイ」を再度、読破しました。

なんやらネットでフラフラしていたら、キング原作の映画「ゴールデンボーイ」がヒット。
元ナチの老人と子供の話と書いてあって、そういえば・・と本棚を物色。
キングは若い頃から大好きで、良く読んだもんです。
長編だと4巻ものなんて当たり前ですから、50冊も出てきました。
本書は1988(昭和63)年の発刊で、中編の2作が収められています。
副題の「恐怖の四季 春夏編」からもわかるとおり、 秋冬編もあって、
あの「スタンド・バイ・ミー」が入っており、実はソチラが1年前に出ています。
それは映画の「スタンド・バイ・ミー」に合わせて原作が出たからなんですね。

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初めのお話は「刑務所のリタ・ヘイワース」です。
これも1994年に「ショーシャンクの空に」というタイトルで映画化されています。
日本では結構、人気のある映画ですね。
当時、ロードショーで観ましたが、個人的には「ぼちぼち」という印象が残っています。
子供の頃から「刑務所脱獄映画」なら、イーストウッドの「アルカトラズからの脱出」や、
「ミッドナイト・エクスプレス」なんかを観てきましたので、ちょっと物足りなかったかな??
本書に収められた原作は160ページほどで、
キングの基準でいえば短編・・、いや、ショートショートでしょうか・・。
ということで、この「刑務所のリタ・ヘイワース」はスルーしましょう。



そしてメインの「ゴールデンボーイ」は330ページの中編。
舞台は1974年夏のアメリカ北東部で、キングお得意の場所です。
13歳の少年トッドは、近くに住むアーサー・デンカーという老人の家に押しかけます。
友達の父親が沢山持っていた古い戦争雑誌を見た彼は、
そこに載っていたドイツ兵が女たちを虐待している写真や、強制収容所の記事に興味を引かれ、
ダッハウという場所での死体の山の写真に、嫌悪と同時に興奮を覚えたのです。
そして図書館でホロコースト関連本100冊を読破して徹底的に学んだ時、
偶然、この老人の姿を見かけたのでした。

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トッドは老人に詰問します。
本名はドゥサンダーであり、ベルゲン・ベルゼン、続いてアウシュヴィッツの副所長を経て、
70万人が死んだ「パティン強制収容所」の所長、その後、アルゼンチンへ逃亡・・。
成績優秀で私立探偵を目指しているトッドは、老人に過去の話を語るよう強制します。
話さなければ戦犯が隠れていると通報するぞ。
アイヒマンがどうなったか知っているだろう?? というわけです。

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「人間の皮膚でスタンドの笠を作ったのは、イルゼ・コッホじゃなかった?
彼女は細い曲がったガラス管を使って、すごい拷問をやったんだよね。
あんたはあいつらのお尻をぶったの?
女たちの? まず服を脱がせて、それから・・」。

当初はしらばっくれていた老人も、少年のしつこさに口を割り始めます。
それでもトッドがまず聞きたいことは、「イルゼ・コッホに会ったことある? 美人だった?
写真は見たけどほら、白黒で、ぼやけてて・・、彼女、ほんとにボインだった?」

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昼間からバーボンを呑みつつ、「この国では無辜の市民を殺したり、子供を銃剣で刺したり、
病院を焼き払ったりしたGIたちはご褒美に勲章を貰い、故郷の街では歓迎される。
戦争に負けた連中だけが、命令に従ったばっかりに、
戦争犯罪人として裁判を受ける・・」と嘆くドゥサンダー。
しかしトッド少年には、そんな政治的な話はまったく興味がありません。
彼が聞きたいのは、メンゲレのようなドイツの医者が女と犬をつがわせようとしたとか、
一卵性双生児を冷蔵庫に入れて、同時に死ぬか確かめようとしたとか、
電気ショック療法とか、麻酔なしの手術とか、
ドイツ兵が片っ端から女をレイプしたとか、そんな話なのです。

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それから毎日、学校が終わると老人宅を訪問するトッド。
「今日は『ガスかまど』の話を聞きたいな。
囚人が死んだ後、どんな風に焼いたかもね」。

実際、独破戦線へアクセスしてくる検索ワードには、
「ユダヤ人少女レイプ無料動画」なんてのが、ほぼ毎日あります。
そんな"無料動画"なんて無いと思いますが、興味のある人は多いんですね。

今の世の中、ネットの世界が広まっていますから、情報収集も楽ですけれど、
個人的には"ヒトラーが絶賛したwiki"にしろ、参考程度にしか見ていません。
何かを知りたければ、お金を使って本を買って、時間をかけて読む・・。
無料の情報なんて、信憑性もないし、間違ったことも多く、安かろう悪かろう・・です。

Die SS-Männer kamen und suchten sich die schönen Frauen aus. Sie sagten – für die Front, die Soldaten zu versorgen.jpg

本書のドゥサンダーも架空の人物、パティンも架空の強制収容所なわけですが、
ヒムラーやら、強制収容所総監であったグリュックスがNo.2として、
また「ベルゼンの野獣」ヨーゼフ・クラーマーの名も、2人の会話に上がります。
忘れたい過去を思い出させようとする、この生意気な少年は決して好きになれないものの、
話すことに不思議な満足感を覚えるドゥサンダー。

そんな関係が続いた12月にはクリスマス・プレゼントを持参するトッド。
中身は「仮装・舞台用衣装ピータース衣裳店」で買ったSS中尉の制服一式・・。
「いや、私は着ない。坊や、お楽しみはここまでだ。死んでも着ない」と拒絶しますが、
またもやアイヒマンのようになりたいのか・・と脅すトッド。。
やがてドゥサンダーはこの安物の制服を着た自分の姿に魅せられていくのでした。

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トップクラスの優等生だったトッドの学校での成績は落ちる一方。
家で勉強しようにも、教科書を開けば強制収容所の光景が頭に浮かんでくるのです。
そして初めての夢精を体験・・。
その夢は強制収容所の実験室の台の上に固定された、豊満で美しい若い娘との異常な行為。

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イメージ的には以前紹介した、こんなイケないことをしている夢を見たんでしょうか・・。
子どもが見る夢じゃないですね。実にイケません。。
ちなみに中学の同級生で、一晩で2回夢精した・・というツワモノがいますが、
ヴィトゲンシュタインは経験したことが1度もありません。その理由はナイショ。。

Gestapo behaviour towards women and young girls.jpg

一方で所長時代の尋問の様子を一人思い出すドゥサンダー。
その尋問部屋には電熱器が置いてあり、ラム・シチューがぐつぐつと音を立てて・・。
彼は優しい口調で尋ねます。「誰だね? 誰が宝石を隠しているのかね?」
吐けばシチューを食べさせるという約束は一度もしたことがないにもかかわらず、
その香りは例外なく、相手の固い口を緩めてしまうのです。
"棍棒"でも吐かせることはできますが、シチューは、そう、実にエレガントなのです。

こうして少年と老人、2人の精神バランスは徐々に崩れていきます。
お互いに殺人の夢を見始めると、それを実行に移し始めるのです。
トッドは高校3年生になり、ドゥサンダーにはイスラエルの追手が・・。

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映画「ゴールデンボーイ」は1998年に製作され、翌年に日本公開されています。
ほとんど覚えてないなぁ・・。ひょっとしたら観てない可能性大です。
映画でクルト・ドゥサンダーを演じたのはイアン・マッケランですが、
有名なところでは「ロード・オブ・ザ・リング」のガンダルフ役でしょうか??
なお、トッドは最初から16歳の高校生という設定のようですね。

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今回発掘してしまった50冊のキングの本、いくつか再読したくなりました。
特に好きだったのは「デッド・ゾーン」と、「IT(イット)」ですか・・。
それから「ダーク・タワー」シリーズも面白かったですね。
映画なら「ミザリー」と、「ペット・セメタリー」が原作と同じくらい良かったです。

とにかく今回再読して、さすがに25年ぶりですから再読と言えるかわかりませんが、
強制収容所で行われたことについて、「私はガス室の「特殊任務」をしていた」のような 
エゲツない話はほとんどないものの、当時よりも、ゾっとしたのは間違いありません。
ヴィトゲンシュタインがナチス・ドイツの勉強を始めたのは、人生としては最近・・、
いい大人になってからですが、もし、主人公のような夢精もしていない中学生じぶんに
アウシュヴィッツだとか、ブッヘンヴァルトに興味を持ってしまい、
その虐殺方法やらにドップリとのめり込んでしまっていたら、
殺人者にならないまでも、今とは別の人格になっていたかも知れません。
ホロコーストを勉強している方なら、本書を読むと思い当たるフシがあるんじゃ・・[がく~(落胆した顔)]

















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