V1号V2号 -恐怖の秘密兵器- [第二次世界大戦ブックス]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
ブライアン・フォード著の「V1号V2号」を読破しました。
今回でちょうど10冊目と、スッカリお馴染みとなった「第二次世界大戦ブックス」からの紹介です。
有名な報復兵器であるV-1飛行爆弾とV-2ロケット・ミサイルですが、
このblogではちょいちょい登場するものの、これらについて詳細に書かれた本は
読んだことがありませんでした。
なので、実は詳しいことはほとんど知りません・・。
そんなときには、写真タップリでボリュームも手ごろな第二次世界大戦ブックスがうってつけです。
原題は、副題のような感じの「ドイツの秘密兵器」。
気になって珍しく目次を見てみましたが、「V1号V2号」だけに特化したものではなく、
さまざまな特殊兵器に言及し、解説しているものでした。
まずは「秘密兵器の研究センター」と題した章で、陸海空3軍の兵器開発/研究組織と
各々の置かれた立場を解説します。
ヴェルサイユ条約によって排水量1万㌧以上の戦艦を建造することを許されなかった海軍は
ドイツの技術者たちが軽合金や高度の溶接技術を駆使して、「ポケット戦艦」を建造。
海軍兵器実験部には魚雷や無線の研究所が置かれ、世界をリードします。
新設の空軍では、その伝統のなさから逆にゲーリングと、ヒトラー政府の大きな関心が・・。
1931年には最初の液体燃料ロケットを打ち上げており、大型の長距離飛行機も開発し、
プロペラの新型戦闘機メッサーシュミットBf-109で最高速度も樹立します。
そして第1次大戦前からの伝統ある陸軍兵器局では「兵器実験部」と、
それと同じレベルに「兵器研究部」という似たような部署が存在・・。
これだけでもヤヤコシイですが、ロケットの研究では見解の相違も。
「ロケットは本来、砲弾の一種である」と、
「ロケットは翼が短く、操縦者がいない飛行機である」
こうしてドルンベルガー陸軍少将が指揮官として250人の若い科学者から成る
ロケット研究が始まります。
規模はすぐに大きくなり、1937年、ペーネミュンデに莫大な費用をかけて広大な秘密施設を建築し、
そこで働く科学者は2000人を越えていきます。
そしてその中には20歳そこそこの青年、ヴェルナー・フォン・ブラウンの姿も・・。
1942年にやっと「V2ロケット」の発射実験に成功し、ヒトラーも注目します。
本書は相変わらず写真が豊富ですが、内容もかなり専門的で驚きました。
5000基以上つくられたV2の最終形は全長14.03m、直径1.651m・・。
さらに燃料などの細かい数字もバンバン出てきます。
長距離ロケットによる「ロンドン爆撃」に心を動かし始めたヒトラーですが、
彼はロケットよりも、ジェット機、飛行爆弾という「飛行機」の方に関心を持ち、
そして「爆薬を内蔵した大きな弾丸」という兵器に分類され、
ロケットは陸軍の管轄下に置かれると、これに反発した空軍は独自の計画を打ち出し、
無人飛行爆弾「V1」の生産を始めます。
このようにして、空軍の「V1」、陸軍の「V2」競争が勃発しますが、
安価ですが性能はイマイチ、スピード的にも戦闘機に撃墜されてしまうこともある「V1」と、
マッハ4の超高速で飛ぶものの、高価で生産にも時間のかかる「V2」。
結局は両兵器とも並行して使用されることになるわけですが、
相変わらずナチス・ドイツらしい展開で、苦笑いするしかありませんね。。
ちなみに超名作映画「グレン・ミラー物語」で、超名曲「イン・ザ・ムード」を野外で演奏中に
この「V1」が落下してきても演奏を中止せずに、観客(英国軍人たち)が拍手喝采・・、
なんてのを思い出しましたが、コレが幼少の頃に「V1」を知ったキッカケです。
タイトルの「V1号V2号」はこの半分ほどで終わり、その他の秘密兵器が登場します。
以前に紹介したBa 349「ナッター」だけでも10ページも書かれており、
続いてロケット戦闘機Me-163も6ページ。
「超巨大機と超小型機」の章では、He-111を2機繋ぎ合せた怪物機He-111z、
Uボートに折りたたんで格納できるヘリコプター、フォッケ・アハゲリス Fa 330。
これはエンジンなしで気流によって回転し、揚力を得るというものです。
その他、親子飛行機のミステルや、
試作機も3枚のブレードフィンが回転して垂直離昇を目指したトリープフリューゲル、
三角翼がトレードマークのリピッシュDM-1。
ジェット・エンジンを搭載したホルテンH IX V2も詳しく書かれています。
特にホルテンについては、現在では「ステルス性」を評価されますが、
さすがに1971年の本書には「ステルス」という言葉は出てこないですね。
この変り種飛行機シリーズが終わると、突然「戦慄の毒ガス」の章がやってきます。
いわゆる生物化学兵器・・。これも今まで読んだことがありませんし、
せいぜい、第1次大戦でヒトラーが一時的に失明した程度です。。
本書では古代の戦争から、川の汚染や伝染病といった戦術を紹介し、
近代の毒ガスの種類と症状についても詳しく解説します。
そして前例がないほど危険なガス・・として紹介されるのが、ドイツ人が発見した「タブン」。
1939年頃に開発したらしいですが、当然、戦争では使用されていません。
これに続いて「サリン」や「ソマン」が出来たそうですが、
"sarin"、"soman"ですから、本書で書かれているように「ザリン」と「ゾマン」が正しいようです。
また、ドイツは終戦までに「サリン」だけでも7000㌧を貯蔵し、
これはパリのような大都市30個の住民を全滅させるのに充分な量だったということです。
「地下鉄サリン事件」当時も、地下鉄通勤していたヴィトゲンシュタインにとっては、
この章は妙に現実味があるというか、恐ろしさを感じました。
このような話を詳しく知ると、やっぱりヒトラーがコレを兵器として使わなかった理由と
絶滅収容所でも同様だったことが不思議のような気もします。
兵器として使わなかった理由はわからなくもないですが、
効率的な絶滅方法を模索して「チクロンB」に辿り着いたSSが使わなかった理由は・・?
本書を読む限り、明らかに毒性は強いですし、ヒムラーですら存在を知らなかったのか、
または、輸送やガス室での使用に設備が追い付かなかったのか・・?
小型Uボートのゼーフントや、巨大な列車砲「ドーラ」(連合軍は「ビッグ・バーサ」と
呼んでいたそうです)が登場し、「V3」ことホッホドルックプンペ(ムカデ砲)、
最後はジェット戦闘機Me-262だけでなく、国民戦闘機He-162もしっかり出てきます。
こうして書いていても、本書は物凄く広い範囲をカバーしています。
写真と絵が随所にありますから、このような内容だと実に助かりますね。
う~ん。これは本当に勉強になりました。いろいろ興味も湧きましたし・・。
実は「報復兵器V2 -世界初の弾道ミサイル開発物語-」も持っているので
どちらを先に読もうか悩んでいましたが、本書が先で正解だった気がします。
たぶん「「報復兵器V2」を読むと、ドルンベルガーの「宇宙空間をめざして―V2号物語」や
フォン・ブラウンの「宇宙にいどむ」、「月をめざした二人の科学者―アポロとスプートニクの軌跡」
なんかに進んでしまうような気がしてなりません。。
ブライアン・フォード著の「V1号V2号」を読破しました。
今回でちょうど10冊目と、スッカリお馴染みとなった「第二次世界大戦ブックス」からの紹介です。
有名な報復兵器であるV-1飛行爆弾とV-2ロケット・ミサイルですが、
このblogではちょいちょい登場するものの、これらについて詳細に書かれた本は
読んだことがありませんでした。
なので、実は詳しいことはほとんど知りません・・。
そんなときには、写真タップリでボリュームも手ごろな第二次世界大戦ブックスがうってつけです。
原題は、副題のような感じの「ドイツの秘密兵器」。
気になって珍しく目次を見てみましたが、「V1号V2号」だけに特化したものではなく、
さまざまな特殊兵器に言及し、解説しているものでした。
まずは「秘密兵器の研究センター」と題した章で、陸海空3軍の兵器開発/研究組織と
各々の置かれた立場を解説します。
ヴェルサイユ条約によって排水量1万㌧以上の戦艦を建造することを許されなかった海軍は
ドイツの技術者たちが軽合金や高度の溶接技術を駆使して、「ポケット戦艦」を建造。
海軍兵器実験部には魚雷や無線の研究所が置かれ、世界をリードします。
新設の空軍では、その伝統のなさから逆にゲーリングと、ヒトラー政府の大きな関心が・・。
1931年には最初の液体燃料ロケットを打ち上げており、大型の長距離飛行機も開発し、
プロペラの新型戦闘機メッサーシュミットBf-109で最高速度も樹立します。
そして第1次大戦前からの伝統ある陸軍兵器局では「兵器実験部」と、
それと同じレベルに「兵器研究部」という似たような部署が存在・・。
これだけでもヤヤコシイですが、ロケットの研究では見解の相違も。
「ロケットは本来、砲弾の一種である」と、
「ロケットは翼が短く、操縦者がいない飛行機である」
こうしてドルンベルガー陸軍少将が指揮官として250人の若い科学者から成る
ロケット研究が始まります。
規模はすぐに大きくなり、1937年、ペーネミュンデに莫大な費用をかけて広大な秘密施設を建築し、
そこで働く科学者は2000人を越えていきます。
そしてその中には20歳そこそこの青年、ヴェルナー・フォン・ブラウンの姿も・・。
1942年にやっと「V2ロケット」の発射実験に成功し、ヒトラーも注目します。
本書は相変わらず写真が豊富ですが、内容もかなり専門的で驚きました。
5000基以上つくられたV2の最終形は全長14.03m、直径1.651m・・。
さらに燃料などの細かい数字もバンバン出てきます。
長距離ロケットによる「ロンドン爆撃」に心を動かし始めたヒトラーですが、
彼はロケットよりも、ジェット機、飛行爆弾という「飛行機」の方に関心を持ち、
そして「爆薬を内蔵した大きな弾丸」という兵器に分類され、
ロケットは陸軍の管轄下に置かれると、これに反発した空軍は独自の計画を打ち出し、
無人飛行爆弾「V1」の生産を始めます。
このようにして、空軍の「V1」、陸軍の「V2」競争が勃発しますが、
安価ですが性能はイマイチ、スピード的にも戦闘機に撃墜されてしまうこともある「V1」と、
マッハ4の超高速で飛ぶものの、高価で生産にも時間のかかる「V2」。
結局は両兵器とも並行して使用されることになるわけですが、
相変わらずナチス・ドイツらしい展開で、苦笑いするしかありませんね。。
ちなみに超名作映画「グレン・ミラー物語」で、超名曲「イン・ザ・ムード」を野外で演奏中に
この「V1」が落下してきても演奏を中止せずに、観客(英国軍人たち)が拍手喝采・・、
なんてのを思い出しましたが、コレが幼少の頃に「V1」を知ったキッカケです。
タイトルの「V1号V2号」はこの半分ほどで終わり、その他の秘密兵器が登場します。
以前に紹介したBa 349「ナッター」だけでも10ページも書かれており、
続いてロケット戦闘機Me-163も6ページ。
「超巨大機と超小型機」の章では、He-111を2機繋ぎ合せた怪物機He-111z、
Uボートに折りたたんで格納できるヘリコプター、フォッケ・アハゲリス Fa 330。
これはエンジンなしで気流によって回転し、揚力を得るというものです。
その他、親子飛行機のミステルや、
試作機も3枚のブレードフィンが回転して垂直離昇を目指したトリープフリューゲル、
三角翼がトレードマークのリピッシュDM-1。
ジェット・エンジンを搭載したホルテンH IX V2も詳しく書かれています。
特にホルテンについては、現在では「ステルス性」を評価されますが、
さすがに1971年の本書には「ステルス」という言葉は出てこないですね。
この変り種飛行機シリーズが終わると、突然「戦慄の毒ガス」の章がやってきます。
いわゆる生物化学兵器・・。これも今まで読んだことがありませんし、
せいぜい、第1次大戦でヒトラーが一時的に失明した程度です。。
本書では古代の戦争から、川の汚染や伝染病といった戦術を紹介し、
近代の毒ガスの種類と症状についても詳しく解説します。
そして前例がないほど危険なガス・・として紹介されるのが、ドイツ人が発見した「タブン」。
1939年頃に開発したらしいですが、当然、戦争では使用されていません。
これに続いて「サリン」や「ソマン」が出来たそうですが、
"sarin"、"soman"ですから、本書で書かれているように「ザリン」と「ゾマン」が正しいようです。
また、ドイツは終戦までに「サリン」だけでも7000㌧を貯蔵し、
これはパリのような大都市30個の住民を全滅させるのに充分な量だったということです。
「地下鉄サリン事件」当時も、地下鉄通勤していたヴィトゲンシュタインにとっては、
この章は妙に現実味があるというか、恐ろしさを感じました。
このような話を詳しく知ると、やっぱりヒトラーがコレを兵器として使わなかった理由と
絶滅収容所でも同様だったことが不思議のような気もします。
兵器として使わなかった理由はわからなくもないですが、
効率的な絶滅方法を模索して「チクロンB」に辿り着いたSSが使わなかった理由は・・?
本書を読む限り、明らかに毒性は強いですし、ヒムラーですら存在を知らなかったのか、
または、輸送やガス室での使用に設備が追い付かなかったのか・・?
小型Uボートのゼーフントや、巨大な列車砲「ドーラ」(連合軍は「ビッグ・バーサ」と
呼んでいたそうです)が登場し、「V3」ことホッホドルックプンペ(ムカデ砲)、
最後はジェット戦闘機Me-262だけでなく、国民戦闘機He-162もしっかり出てきます。
こうして書いていても、本書は物凄く広い範囲をカバーしています。
写真と絵が随所にありますから、このような内容だと実に助かりますね。
う~ん。これは本当に勉強になりました。いろいろ興味も湧きましたし・・。
実は「報復兵器V2 -世界初の弾道ミサイル開発物語-」も持っているので
どちらを先に読もうか悩んでいましたが、本書が先で正解だった気がします。
たぶん「「報復兵器V2」を読むと、ドルンベルガーの「宇宙空間をめざして―V2号物語」や
フォン・ブラウンの「宇宙にいどむ」、「月をめざした二人の科学者―アポロとスプートニクの軌跡」
なんかに進んでしまうような気がしてなりません。。