世界軍歌全集 -歌詞で読むナショナリズムとイデオロギーの時代- [世界の・・]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
辻田 真佐憲 著の「世界軍歌全集」を読破しました。
先日の「ニセドイツ〈2〉」のコメントでオススメいただいた本書は、
2011年の発刊、424ページという結構なボリュームで、
300曲がオリジナルの歌詞、翻訳、解説されているものです。
ソフトカバーながら表紙は重厚な雰囲気で、
世界軍歌・・といいながら真ん中上にはナチス・ドイツの「アドラー(鷲)」が・・、
と思いましたが、良く見ると、丸の中がハーケンクロイツじゃなくて、
ソ連の「ハンマーと鎌」になっていました。。
ということは、「軍歌独ソ戦」が中心となっているのでしょうか・・?
「はじめに」ではこの軍歌の定義を分析し、愛国歌、国民歌、戦時歌謡、革命歌、
闘争歌、宣伝歌といったものも本書に含まれるとしています。
そして18世紀後半からのフランス革命、アメリカ独立戦争などを扱った、
第1章、「ナショナリズムの目覚め」へ・・。
1曲目はいきなり「ラ・マルセイエーズ」です。
以前にこのBlogでも紹介したことのある、超有名なフランス国歌ですが、
フランス革命当時に生まれた、その血なまぐさい歌詞でも良く知られています。
7番まである歌詞とその翻訳、さらには1ページに渡ってこの歌の歴史を紹介しており、
すでに単なる歌本ではない雰囲気ですね。
また、この誰でも知っている歌を1発目に持ってくるあたりは、掴みとしてOKでしょう。
以降は興味深かった「軍歌」をいくつか紹介していきたいと思いますが、
まずはフランスで生まれた「インターナショナル」。
翻訳をちゃんと読んだのも初めてですが、ソ連の初代国歌して有名ですね。
ドイツ軍の伝統的な追悼歌、「我には一人の戦友がいた」は歌詞が良いですね。
ヒンデンブルク大統領も好み、フィンランド人SS部隊、フランス外人部隊などでも
替え歌として親しまれたそうです。2番からを・・。
飛び来る弾丸の狙いは我か、またお前か
弾丸は戦友を貫き、その身は足許に倒れた
片割れのごときお前が
戦友は手を伸ばすも、我は弾を込めるのみ
「手はやれぬぞ、安らかに眠れ。
我が良き戦友よ!」
1944年の「バルジの戦い」、ドイツ軍で言う「ラインの護り作戦」の元となった
「ラインの護り」も登場した後は、「世界に冠たる我がドイツ」です。
これも現在3番がドイツ国歌になっていることで有名ですね。
国歌ということでは「神よ王を護りたまえ」、いわゆるGod save the Kingです。
現在はエリザベス女王ですから、God save the Queenであり、
ヴィトゲンシュタインはSex Pistolsの曲のどちらも歌えますが、
このオリジナルは3番まであったんですねぇ。
「星条旗」はもちろんアメリカ国歌です。
コレも1番は歌えますが、4番まであったのか・・。
そして106ページには一番気になっていた「ロシアのウラー」が登場します。
コレは1837年、皇帝ニコライ1世がヴォロネジを訪れた際の民衆の様子・・
ということで、「ロシアの民は沸き立ちて叫び奉る。ウラー!」とか、
「ツァーリ一家の御前に兵士は雷の如く叫び奉る。ウラー!」という感じです。
どんな曲かと探してみましたが、残念ながら見つからず・・。残念。。
他には「英国軽竜騎兵」の作曲者がベートーヴェンという異色の英国軍歌も。。
第2章は第1次大戦前後の軍歌です。
章の間には本書では取り上げていない日本の軍歌についての解説も。
この章でも1発目は有名なあの曲です。「希望と栄光の国」というタイトルだと
良くわかりませんが、Land of Hope and Glory、「威風堂々」と言えば、
英国第2の国歌とも云われる個人的に大好きな曲です。
やっぱり大好きな映画「ブラス!」のエンディングにも使われました。
歌はないですが、曲はこちら ↓
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
「全てに冠たるアイルランド」というのは、「世界に冠たる我がドイツ」の替え歌です。
アイルランドの独立闘争歌として英語の替え歌になっていて、
「Für das deutsche Vaterland」(祖国ドイツのために)のところは、
「For our Irish Fatherland」(祖国アイルランドのために)なっています。。
タイトルだけで笑えるのは「ブジョンヌイ行進曲」ですかねぇ。。
まぁ、ブジョンヌイが革命の際に第1騎兵軍を指揮したのは知っていましたが、
ヴォロシーロフを絡めた歌詞はこんな感じです。
兄と仰ぐはブジョンヌイ、全人民が我らと進む
下る命令は、地面を向くな、前を見据えよだ!
我らには最高の赤軍将校、ヴォロシーロフがついている
ソ連のため、我らは血戦に当らん!
第3章は「イデオロギーの時代」。いや~、歌詞もアツくなりそうですね。
「コミンテルンの歌」、「赤軍騎兵隊歌」、「ボルシェヴィキ党歌」と続きますが、
ココではやっぱり1938年作の「スターリンの歌」が印象的です。
今やソヴィエト全土は
世界一太陽の輝く国となった
スターリン式の大収穫で
コルホーズの野は満たされる
この曲が作られたのは、まさに「大飢饉」後、「大粛清」の時ですからねぇ。。
「グラーグ -ソ連集中収容所の歴史-」で気になっていた、
「ベリヤの歌」とか、「スターリンのバラード」は残念ながらありませんでした。
対するナチスといえば、党歌「ホルスト・ヴェッセルの歌」の他にも、
最初の闘争歌である「ドイツよ目覚めよ!」や、「ヒトラー万歳」、「突撃隊は行進す」などなど。
「進め、進め!」は、「ヒトラー・ユーゲント旗の歌」というサブタイトルのとおりですが、
作詞は全国青年指導者のフォン・シーラッハその人です。
ユーゲント、ユーゲント! 僕らは明日の兵士
ユーゲント、ユーゲント! 来る使命の担い手だ
総統よ、僕らは貴方のもの
僕らは貴方の戦友なのです!
個人的にも大好きな「パンツァーリート」、映画「バルジ大作戦」ですね。
「戦車の歌」とも訳されるこの名曲ですが、解説では、作詞されたのが1933年であり、
Ⅰ号戦車の生産が始まったのは1934年であることから、
「Panzer」は戦車のことではなく、「装甲兵の歌」だと推測しています。
ソ連では「カチューシャ」、ドイツでは「エリカ」など、娘さんの名前で知られた曲に、
「リリー・マルレーン」も当然のように出てきます。
ドイツの軍歌には女性名を冠したものが実に多い・・として、
ローゼマリーやゾフィー、ヴェローニカ、モーニカ、イレーネなどを挙げていますが、
やっぱりイルザとか、オルガとか、イルゼといった悪女看守風はダメなんですね。。
「ホルスト・ヴェッセルの歌」は世界のファシストの替え歌にもなっていて、
オズワルド・モズレーの「英国ファシスト連合行進歌」に、
スペインのファランヘ党でも「青シャツ」というタイトルで使われています。
第4章は、いよいよ第2次大戦時の軍歌です。
急降下爆撃機シュトゥーカを題材にした軍歌も多かったようですが、
本書で取り上げているのはズバリ、「シュトゥーカの歌」です。
我らは空より急襲し、攻めかかる
地獄を恐れず、休みもしない
敵を平伏させるまでは
英国を、英国を、英国を屠り去るまでは
シュトゥーカ、シュトゥーカ、シュトゥーカ!
「戦車はアフリカを驀進す!」と、「我らがロンメル」はアフリカ軍団歌。
「潜水艦の歌」はもちろん、Uボートですが、
「メルセデス・ベンツと共に進め」っていうのはちょっと変わっています。
ヒトラー専用車がベンツなのは有名ですが、
空軍や海軍にもエンジンを供給しているわけですね。
ですから、3番まであるこの軍歌は、
1番・・運転手よ、エンジンの響きが聴こえるか
2番・・航空兵よ、エンジンの響きが聴こえるか
3番・・水兵よ、エンジンの響きが聴こえるか
と、3軍の兵士たちをそれぞれ歌っているんですね。
「親衛隊は敵地へ進む」という、武装SSの軍歌。
実はコレも替え歌で、オリジナルは「コンドル軍団分列行進曲」です。
ついでにフランス語の替え歌、「悪魔の歌」になると、
フランス人SS師団「シャルルマーニュ」の歌になっています。
さらにデンマーク語ならデンマーク人SS義勇兵、
ノルウェー語ならノルウェー人SS義勇兵。
言語と歌詞は若干違いますが、サビで「ハハハ・・」と笑うのがお約束です。
そして悪魔が嘲笑う
ハ、ハハハハハ!
「元帥よ、我らここにあり!」はなんと、ヴィシー政府のペタンを讃える歌・・。
と来れば、ドゴールの自由フランスの抵抗歌、「パルチザンの歌」も。
英語の歌なのにムッソリーニを題材にしたものもありました。
「統帥はびっくり仰天」です。
「あわれなムッソリーニ・・」で始まるドゥーチェをおちょっくったこの歌。
ああ、統帥は、統帥はびっくり仰天
ギリシャ人に勝てないなんて!
ああ、統帥はびっくり仰天
何週間もスパゲッティが喉を通らないってさ!
以前に紹介したディズニーの反ナチス映画、「総統のお顔」まで出てきましたが、
おちょくりシリーズはフィンランドでも作られています。
1939年のソ連との冬戦争を題材にしたもので、
タイトルは「モロトフはダメだ」。。
まだまだドイツ軍の義勇兵となったスペインの「青師団の歌」。
クロアチアの「ウスタシャ行進曲」、
ユーゴの「チトー元帥と共に」、
カミンスキー旅団の「RONA 旅団行進歌」、
ウラソフ将軍の「ロシア解放軍の歌」、
と、その筋のマニアな方々も喜びそうなタイトルが並びます。
1944年に新しく制定された「ソヴィエト連邦国歌」、
米国では「チビで汚いジャップを引っ叩きに行かなきゃ」に
「原爆が落ちたとき」。
最後の第5章は戦後の軍歌で、「ガガーリン行進曲」、
東ドイツのドイツ社会主義統一党の党歌は、
「党は、党は、党は常に正しい」
と、なかなか強烈です。
お終いは「金日成将軍の歌」に、
「我等の親善永遠なれ」という北方方面の曲、
「金正日、プーチン、プーチン、金正日」と連呼します。
予想していたより、とてもシッカリした一冊でした。
単に軍歌だけを掲載しているだけでなく、解説が勉強になります。
戦争の歴史だけでなく、その時代、各国の紛争やイデオロギーにまで言及し、
読み終えて、改めて本書の副題、「歌詞で読むナショナリズムとイデオロギーの時代」
なるほどねぇ・・と感心しました。
おじいちゃんのように難しい文字を駆使する著者ですが、1984年生まれと若く、
「西洋軍歌蒐集館」というWebサイトを運営しています。
実は以前にこちらのサイトでドイツ軍歌を物色したことがあるんですね。
「ヒトラーとスターリン -死の抱擁の瞬間- 〈上〉」のコメントでもリンクを紹介していました。
そうですか、その節はお世話になりました。
ただし、本書に掲載されている軍歌すべてが「西洋軍歌蒐集館」にあって、
曲が聞けるわけではなく、その逆もまた然りです。
何度か手を止めて、気になった曲をWebで探してみましたが、
「ロシアのウラー」をはじめ、見つからなかったのが悔しいですね。
やっぱり読みながら、聴く・・のが楽しそうです。なにかCDでも買ってみようかな。
できれば、その国のお酒で一杯やりながら・・。
辻田 真佐憲 著の「世界軍歌全集」を読破しました。
先日の「ニセドイツ〈2〉」のコメントでオススメいただいた本書は、
2011年の発刊、424ページという結構なボリュームで、
300曲がオリジナルの歌詞、翻訳、解説されているものです。
ソフトカバーながら表紙は重厚な雰囲気で、
世界軍歌・・といいながら真ん中上にはナチス・ドイツの「アドラー(鷲)」が・・、
と思いましたが、良く見ると、丸の中がハーケンクロイツじゃなくて、
ソ連の「ハンマーと鎌」になっていました。。
ということは、「軍歌独ソ戦」が中心となっているのでしょうか・・?
「はじめに」ではこの軍歌の定義を分析し、愛国歌、国民歌、戦時歌謡、革命歌、
闘争歌、宣伝歌といったものも本書に含まれるとしています。
そして18世紀後半からのフランス革命、アメリカ独立戦争などを扱った、
第1章、「ナショナリズムの目覚め」へ・・。
1曲目はいきなり「ラ・マルセイエーズ」です。
以前にこのBlogでも紹介したことのある、超有名なフランス国歌ですが、
フランス革命当時に生まれた、その血なまぐさい歌詞でも良く知られています。
7番まである歌詞とその翻訳、さらには1ページに渡ってこの歌の歴史を紹介しており、
すでに単なる歌本ではない雰囲気ですね。
また、この誰でも知っている歌を1発目に持ってくるあたりは、掴みとしてOKでしょう。
以降は興味深かった「軍歌」をいくつか紹介していきたいと思いますが、
まずはフランスで生まれた「インターナショナル」。
翻訳をちゃんと読んだのも初めてですが、ソ連の初代国歌して有名ですね。
ドイツ軍の伝統的な追悼歌、「我には一人の戦友がいた」は歌詞が良いですね。
ヒンデンブルク大統領も好み、フィンランド人SS部隊、フランス外人部隊などでも
替え歌として親しまれたそうです。2番からを・・。
飛び来る弾丸の狙いは我か、またお前か
弾丸は戦友を貫き、その身は足許に倒れた
片割れのごときお前が
戦友は手を伸ばすも、我は弾を込めるのみ
「手はやれぬぞ、安らかに眠れ。
我が良き戦友よ!」
1944年の「バルジの戦い」、ドイツ軍で言う「ラインの護り作戦」の元となった
「ラインの護り」も登場した後は、「世界に冠たる我がドイツ」です。
これも現在3番がドイツ国歌になっていることで有名ですね。
国歌ということでは「神よ王を護りたまえ」、いわゆるGod save the Kingです。
現在はエリザベス女王ですから、God save the Queenであり、
ヴィトゲンシュタインはSex Pistolsの曲のどちらも歌えますが、
このオリジナルは3番まであったんですねぇ。
「星条旗」はもちろんアメリカ国歌です。
コレも1番は歌えますが、4番まであったのか・・。
そして106ページには一番気になっていた「ロシアのウラー」が登場します。
コレは1837年、皇帝ニコライ1世がヴォロネジを訪れた際の民衆の様子・・
ということで、「ロシアの民は沸き立ちて叫び奉る。ウラー!」とか、
「ツァーリ一家の御前に兵士は雷の如く叫び奉る。ウラー!」という感じです。
どんな曲かと探してみましたが、残念ながら見つからず・・。残念。。
他には「英国軽竜騎兵」の作曲者がベートーヴェンという異色の英国軍歌も。。
第2章は第1次大戦前後の軍歌です。
章の間には本書では取り上げていない日本の軍歌についての解説も。
この章でも1発目は有名なあの曲です。「希望と栄光の国」というタイトルだと
良くわかりませんが、Land of Hope and Glory、「威風堂々」と言えば、
英国第2の国歌とも云われる個人的に大好きな曲です。
やっぱり大好きな映画「ブラス!」のエンディングにも使われました。
歌はないですが、曲はこちら ↓
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
「全てに冠たるアイルランド」というのは、「世界に冠たる我がドイツ」の替え歌です。
アイルランドの独立闘争歌として英語の替え歌になっていて、
「Für das deutsche Vaterland」(祖国ドイツのために)のところは、
「For our Irish Fatherland」(祖国アイルランドのために)なっています。。
タイトルだけで笑えるのは「ブジョンヌイ行進曲」ですかねぇ。。
まぁ、ブジョンヌイが革命の際に第1騎兵軍を指揮したのは知っていましたが、
ヴォロシーロフを絡めた歌詞はこんな感じです。
兄と仰ぐはブジョンヌイ、全人民が我らと進む
下る命令は、地面を向くな、前を見据えよだ!
我らには最高の赤軍将校、ヴォロシーロフがついている
ソ連のため、我らは血戦に当らん!
第3章は「イデオロギーの時代」。いや~、歌詞もアツくなりそうですね。
「コミンテルンの歌」、「赤軍騎兵隊歌」、「ボルシェヴィキ党歌」と続きますが、
ココではやっぱり1938年作の「スターリンの歌」が印象的です。
今やソヴィエト全土は
世界一太陽の輝く国となった
スターリン式の大収穫で
コルホーズの野は満たされる
この曲が作られたのは、まさに「大飢饉」後、「大粛清」の時ですからねぇ。。
「グラーグ -ソ連集中収容所の歴史-」で気になっていた、
「ベリヤの歌」とか、「スターリンのバラード」は残念ながらありませんでした。
対するナチスといえば、党歌「ホルスト・ヴェッセルの歌」の他にも、
最初の闘争歌である「ドイツよ目覚めよ!」や、「ヒトラー万歳」、「突撃隊は行進す」などなど。
「進め、進め!」は、「ヒトラー・ユーゲント旗の歌」というサブタイトルのとおりですが、
作詞は全国青年指導者のフォン・シーラッハその人です。
ユーゲント、ユーゲント! 僕らは明日の兵士
ユーゲント、ユーゲント! 来る使命の担い手だ
総統よ、僕らは貴方のもの
僕らは貴方の戦友なのです!
個人的にも大好きな「パンツァーリート」、映画「バルジ大作戦」ですね。
「戦車の歌」とも訳されるこの名曲ですが、解説では、作詞されたのが1933年であり、
Ⅰ号戦車の生産が始まったのは1934年であることから、
「Panzer」は戦車のことではなく、「装甲兵の歌」だと推測しています。
ソ連では「カチューシャ」、ドイツでは「エリカ」など、娘さんの名前で知られた曲に、
「リリー・マルレーン」も当然のように出てきます。
ドイツの軍歌には女性名を冠したものが実に多い・・として、
ローゼマリーやゾフィー、ヴェローニカ、モーニカ、イレーネなどを挙げていますが、
やっぱりイルザとか、オルガとか、イルゼといった悪女看守風はダメなんですね。。
「ホルスト・ヴェッセルの歌」は世界のファシストの替え歌にもなっていて、
オズワルド・モズレーの「英国ファシスト連合行進歌」に、
スペインのファランヘ党でも「青シャツ」というタイトルで使われています。
第4章は、いよいよ第2次大戦時の軍歌です。
急降下爆撃機シュトゥーカを題材にした軍歌も多かったようですが、
本書で取り上げているのはズバリ、「シュトゥーカの歌」です。
我らは空より急襲し、攻めかかる
地獄を恐れず、休みもしない
敵を平伏させるまでは
英国を、英国を、英国を屠り去るまでは
シュトゥーカ、シュトゥーカ、シュトゥーカ!
「戦車はアフリカを驀進す!」と、「我らがロンメル」はアフリカ軍団歌。
「潜水艦の歌」はもちろん、Uボートですが、
「メルセデス・ベンツと共に進め」っていうのはちょっと変わっています。
ヒトラー専用車がベンツなのは有名ですが、
空軍や海軍にもエンジンを供給しているわけですね。
ですから、3番まであるこの軍歌は、
1番・・運転手よ、エンジンの響きが聴こえるか
2番・・航空兵よ、エンジンの響きが聴こえるか
3番・・水兵よ、エンジンの響きが聴こえるか
と、3軍の兵士たちをそれぞれ歌っているんですね。
「親衛隊は敵地へ進む」という、武装SSの軍歌。
実はコレも替え歌で、オリジナルは「コンドル軍団分列行進曲」です。
ついでにフランス語の替え歌、「悪魔の歌」になると、
フランス人SS師団「シャルルマーニュ」の歌になっています。
さらにデンマーク語ならデンマーク人SS義勇兵、
ノルウェー語ならノルウェー人SS義勇兵。
言語と歌詞は若干違いますが、サビで「ハハハ・・」と笑うのがお約束です。
そして悪魔が嘲笑う
ハ、ハハハハハ!
「元帥よ、我らここにあり!」はなんと、ヴィシー政府のペタンを讃える歌・・。
と来れば、ドゴールの自由フランスの抵抗歌、「パルチザンの歌」も。
英語の歌なのにムッソリーニを題材にしたものもありました。
「統帥はびっくり仰天」です。
「あわれなムッソリーニ・・」で始まるドゥーチェをおちょっくったこの歌。
ああ、統帥は、統帥はびっくり仰天
ギリシャ人に勝てないなんて!
ああ、統帥はびっくり仰天
何週間もスパゲッティが喉を通らないってさ!
以前に紹介したディズニーの反ナチス映画、「総統のお顔」まで出てきましたが、
おちょくりシリーズはフィンランドでも作られています。
1939年のソ連との冬戦争を題材にしたもので、
タイトルは「モロトフはダメだ」。。
まだまだドイツ軍の義勇兵となったスペインの「青師団の歌」。
クロアチアの「ウスタシャ行進曲」、
ユーゴの「チトー元帥と共に」、
カミンスキー旅団の「RONA 旅団行進歌」、
ウラソフ将軍の「ロシア解放軍の歌」、
と、その筋のマニアな方々も喜びそうなタイトルが並びます。
1944年に新しく制定された「ソヴィエト連邦国歌」、
米国では「チビで汚いジャップを引っ叩きに行かなきゃ」に
「原爆が落ちたとき」。
最後の第5章は戦後の軍歌で、「ガガーリン行進曲」、
東ドイツのドイツ社会主義統一党の党歌は、
「党は、党は、党は常に正しい」
と、なかなか強烈です。
お終いは「金日成将軍の歌」に、
「我等の親善永遠なれ」という北方方面の曲、
「金正日、プーチン、プーチン、金正日」と連呼します。
予想していたより、とてもシッカリした一冊でした。
単に軍歌だけを掲載しているだけでなく、解説が勉強になります。
戦争の歴史だけでなく、その時代、各国の紛争やイデオロギーにまで言及し、
読み終えて、改めて本書の副題、「歌詞で読むナショナリズムとイデオロギーの時代」
なるほどねぇ・・と感心しました。
おじいちゃんのように難しい文字を駆使する著者ですが、1984年生まれと若く、
「西洋軍歌蒐集館」というWebサイトを運営しています。
実は以前にこちらのサイトでドイツ軍歌を物色したことがあるんですね。
「ヒトラーとスターリン -死の抱擁の瞬間- 〈上〉」のコメントでもリンクを紹介していました。
そうですか、その節はお世話になりました。
ただし、本書に掲載されている軍歌すべてが「西洋軍歌蒐集館」にあって、
曲が聞けるわけではなく、その逆もまた然りです。
何度か手を止めて、気になった曲をWebで探してみましたが、
「ロシアのウラー」をはじめ、見つからなかったのが悔しいですね。
やっぱり読みながら、聴く・・のが楽しそうです。なにかCDでも買ってみようかな。
できれば、その国のお酒で一杯やりながら・・。
またご紹介して頂き、ありがとうございます。それにしても詳細な紹介記事、本当にありがとうございます。担当編集者より遙かに軍歌にお詳しいですね。
ところで軍歌が聴けるYouTubeへのリンク集が存在します。
http://ameblo.jp/nikuman-toka-suki/entry-11124906674.html
良かったら参考にしてみて下さい。
by 担当編集者 (2013-01-31 09:44)
担当編集者さん。こんばんわ。
オススメいただいたことがあって、大いに楽しみました。軍歌は詳しくないんですが、国歌などもあってとっつきやすかったですね。
ご紹介していただいたリンク先も早速拝見しました。
本書の順番通りですし、コレは本書を読む前に発見しておけばよかったですねぇ! もちろんお気に入りに追加しました。
「ロシアのウラー」は想像を超える「ウラー、ウラー」ぶりでシビレましたし、「金正日! プーチン!」 のメロディは大爆笑ながらクセになりそうです。あのホーンセクションは目覚まし代わりに聞いたら元気が出そうですね。。
近いうちには「ニセドイツ3」に進む予定です。ありがとうございました。
by ヴィトゲンシュタイン (2013-01-31 19:33)
こんばんは。
こちらの本は気になってはいたものの、なかなか購入には至っていません。
ドイツやソ連の軍歌は私も大好きで、「パンツァーリート」以外では「聖なる戦い」「モスクワ防衛軍の歌」の2曲が特に好きです。
それにしても、こちらの本にも「スターリンのバラード」は載っていませんか。
一体、どんな歌なのか非常に気になります(^_^;)
「金正日、プーチン」はTVでも紹介されていたのを覚えています。
それにしても、金正日とプーチンのキスシーン…
ひどい絵面ですね…
by でんこう (2013-02-03 02:28)
ど~も。
でんこうさんも軍歌お好きですか。
「スターリンのバラード」はホント残念なんですねぇ。そういえば「グラーグ」でもコメントいただきましたね。
「金正日、プーチン」をTVでやっていたとは・・。グロ写真、ご容赦ください。
by ヴィトゲンシュタイン (2013-02-03 08:55)
リンク集、参照して頂き、ありがとうございます。本当はCD付きで出せれば良かったですが、何しろあらゆる言語の軍歌を生で歌える人が日本ではいないので、やはり難しかったですね。ですので帯に「YouTube見ながら」と入れたんです(笑)。
是非、『ニセドイツ3』、ご紹介頂ければ幸いです。あと『消滅した国々』なども読破戦線のテーマと若干被りますね。今後ともよろしくお願いします。
by 担当編集者 (2013-02-03 10:15)
>本当はCD付きで出せれば良かったですが
あ~、そうですね。ボクも第1章を読んでいる時に、そう思いました。なんというか、デアゴスティーニの「週刊 世界の軍歌。CDが付いて初回は390円」みたいなイメージですね。。
「ニセドイツ3」も楽しみですが、「消滅した国々」も非常に興味があります。近いうちに紹介できるようガンバリマス。
by ヴィトゲンシュタイン (2013-02-03 16:14)
金正日、プーチンの写真初めて見たので、「手の込んだアイコラなのか???」と一瞬思いましたが。。。リアルだったんですね。wwwwwww
この本の著者のインタビュー動画を以前Youtubeで見たりしてたので、面白そう~と思っていました。新譜がなかなか無いので、北朝鮮の存在が大事とか、中近東も調べたいとか、意欲を感じましたw
by IZM (2013-02-03 20:24)
>金正日、プーチンの写真初めて見たので、「手の込んだアイコラなのか???」と一瞬思いましたが
コレはボクも同様でした。それも面白いかなぁとUPしたんですが、
リンク集の
http://ameblo.jp/nikuman-toka-suki/entry-11124906674.html
でのYoutubeでもこの写真が何回も出てきたので、ホントなのかなぁと思ってる次第です。
IZMさんも本書を知っていたとは、なかなかマニアック・・。さすが特派員です。
ちなみに今、NHKでロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」の真実に迫る・・というのをやってます。でも、もう酔っ払ったなぁ・・。
by ヴィトゲンシュタイン (2013-02-03 21:06)
>NHKでロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」の真実に迫る
本当なら撃たれたら前のめりに倒れるんじゃないか、とか言われてる例の話でしょうか。。。?何か新しい証言でもあるのでしょうか。。。?
by IZM (2013-02-03 23:17)
CGを使って角度を解析したりとかしてました。
結局、戦闘中ではなく、訓練中の写真で、
撃たれたわけではなく、滑って倒れる写真で、
撮ったのはキャパではなく、彼の1.2m前で一緒に撮っていた恋人ゲルダの写真・・ということでした。
で、その彼女は本番の戦闘中に戦車に巻き込まれて死んでしまい、その後に一緒くたの写真がキャパの写真として、「ライフ誌」に「崩れ落ちる兵士」掲載されて・・という経緯でした。
ノルマンディから、40歳で地雷で死んでしまうまで紹介してて、なかなか興味深かったですよ。
by ヴィトゲンシュタイン (2013-02-04 08:00)