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兵士とセックス 第二次世界大戦下のフランスで米兵は何をしたのか? [USA]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

メアリー・ルイーズ・ロバーツ著の「兵士とセックス」を読破しました。

8月に出た本書は、そのものズバリのタイトルと副題からかなり興味を持っていました。
過去にはベルリンでソ連兵がドイツ人女性に何をしたのか? を検証した
1945年・ベルリン解放の真実 -戦争・強姦・子ども-」を読んでいますが、
コチラはノルマンディで、パリで、またはル・アーヴルで米兵は何をしたのか? を
恋愛、売買春、レイプの3つ視点で検証したものです。

兵士とセックス.jpg

最初は1944年、フランス人は連合軍の上陸を待ち望むものの、同時に恐れも抱きます。
それは50万㌧もの爆弾が落とされ、3万人以上の市民が命を落としているからです。
希望よりも恐怖・・。それはどこかよその場所であってほしいという願い。。
ソコでドイツ軍はビラ撒き作戦に出て、米国がフランスを乗っ取り、この国を破壊し、
欧州全土を植民地化するつもりだ・・と、連合軍への反感を煽るのです。

Nuns and some children look on at the ruins of an almost totally destroyed church.jpg

そして遂にやって来た解放者。
ル・アーヴルにカーン、サン・ローは爆撃によって壊滅的な被害を受け、
すでにドイツ軍が撤退したにもかかわらず、爆弾は教会も区別せずに降り注ぎ、
見つかったドイツ人の死体は10体足らずなのに、死亡した市民は3000人にものぼる・・と、
フランス当局は腹立たしげに報告するのでした。
ドイツ軍が来たからといって、ひどく困ることはなかった。少なくとも家だけは残してくれたから。
けれども今、アメリカは何一つ残してくれなかった」。

Saint-Lô_1944.jpg

そんな状況下で解放者として迎え入れられた米兵たち。
美しい現地女性と出会ったGIのジョーは、フランス語で「はじめまして」と言ったつもりが、
「どんなやり方が好き?」と口走ってしまい、往復ビンタの洗礼を受けます。
米軍の公式新聞「スターズ・アンド・ストライプス」は当然、プロパガンダ的な写真を掲載。
大抵は女性や子供から熱烈に歓迎される米兵の姿であり、
救った者と救われた者、救ったのは米軍(男性)であり、救われたのはフランス人(女性)
という構図を意図したとしています。
本書にはいくらかこのような写真や当時のマンガも掲載してありました。

A group of French teenage girls hugs a soldier during the liberation of Paris.jpg

もちろん首都パリを解放すれば、フランス人は感謝の気持ちを「キスの嵐」で表現。
前途の新聞ではコミュニケーションの向上を図るため、フランス語のレッスンを掲載します。
憶えるドイツ語は「禁煙!」、「武器を捨てろ!」、「整列、前に進め!」なのに対し、
フランス語といえば「あなたの瞳は魅力的です」、「私は将官です」、
「私は結婚していません」、「ご両親はご在宅ですか?」と、表現も大きく違うのでした。

soldier_kiss.jpg

ドイツの収容所から解放されたフランス人男性が3年ぶりに故郷に戻ってみると、
我が家は米兵たちで溢れ、食事をし、寝泊まりをしているという第2の占領期間・・。
バーやカフェでは夫や恋人と一緒のフランス女性にも言い寄り、「いくら?」尋ねる米兵の姿。
当然、男同士のケンカに発展するのです。

U.S. soldiers in liberated Paris at a sidewalk table at the Cafe George V.jpg

続いては闇市場と結びついていた「売春」です。
お金だけではなく、タバコやチョコレートでもセックスを購入できるシステム。
ナチズムと強制売春」にも少し触れられていたように、ドイツ占領下では、
売春宿は効率的に運営され、性病検査に売春婦の個人情報まで管理していたものの、
米兵が到着すると、その需要に圧倒され、もぐりの売春婦にも仕事が回ってくるのです。
一日に1000人から1500人の客が訪れ、1人の女性が50人以上の相手をさせられたとか。。
パリでは「将校用」の売春宿、「下士官用」、そして「黒人用」と・・。
アントニー・ビーヴァー著の「パリ解放 1944-49」にも似た話がありましたね。

兵士がフランス市民と見境のないセックスをするよりも、売春宿で管理しようというわけですが、
パットンもこのように語ったそうです。「連中はファックしなけりゃ、ファイト(戦闘)しない」。

Battle_of_the_Bulge_Speech_SF_still_624x352.jpg

軍上層部は男性の性的活動は健全なものと考え、禁欲を強制すると倒錯的な性行動・・、
すなわち、同性愛に走ることが懸念されているのです。

また米軍基地内に忍び込む売春婦も現れると、フルタイムのポン引きになる憲兵も登場。
入場料を取り、稼ぎの一部をせしめる輩もおり、1946年1月に基地を強制捜査すると、
124人もの女性が見つかって、粛々と基地外まで護送・・。

Le jour de la Libération de Dol-de-Bretagne, Ille-et-Vilaine, 7 août..jpg

本書の3つ目の視点は「レイプ」です。
1944年10月、憲兵隊長が提出した犯罪リストの筆頭に挙がっていたのはレイプ。
152人の米兵がレイプ容疑で裁判にかけられ、そのうち139人が黒人・・。
欧州に派遣された米兵には、わずか1割しか黒人兵がいないことを考えると、
この数字は愕然としてしまうものであり、米軍が強姦、性的暴行に関して厳しく処罰していることを
フランス国民に示すため、事件発生現場の近隣で「公開処刑」が執り行われます。
そしてロープで吊るされた者29名のうち、25名が黒人兵・・。

African American soldiers to practice methods to prevent being accused of rape!.jpg

ドイツ人女性がソ連兵だけでなく、500人以上が米兵にレイプされたという統計を紹介しつつ、
フランスではなぜ、ここまで黒人兵が簡単に犯人とされ、告訴から裁判まで僅か1~2週間、
被告にはまともな弁護人も付けられず、蝋燭や月明かりのなかで行われた犯罪に対し、
被害者がどうやって犯人を特定できたのか?? といったことに検証に検証を重ねます。

alg-normandy-jpg.jpg

いわゆる「面通し」を行っても、被害者や目撃者が犯人を特定することは困難で、
レイプ犯だと確信した理由は「ただそうに違いないと思ったから・・」。
裁判で被害者が「この人が犯人です」と指差したのは、「黒人の補佐弁護人」だったり。。
黒人は性欲が過剰であるとされていて、女性の告発に疑いがもたれることはありません。

そして軍当局がレイプを「アメリカの問題ではなく、黒人の問題」とする傾向があり、
シェルブールのような兵站基地地区に数多い黒人部隊は、白人の戦闘部隊よりも
フランス人と接触する機会が多く、女性と知り合う機会も多い・・と歩兵たちから恨まれ、
人種差別主義者によって、自らの犯罪を押し付けられたり・・。
まぁ、イタリアでもフランス軍のモロッコ兵に襲われる! なんて宣伝していたくらいですから、
当時、特に田舎では、どこの国でも黒人は野蛮で性欲が強いとされていたんでしょう。

french-colonial-troops-ww2-rape-italian-women-german-women-Italian women rape French Moroccan colonial soldiers ww2.jpg

436ページ本書は様々な記録や証言などを繰り返し引用して結論付けているわけですが、
まぁ、読んでいてそれほど驚くような事実が出てきたということもありませんでした。
過去のパリ解放モノでもある程度は書かれていたと思いますし、
男からすれば、「若い兵士がヤリたい」という心理は以前から理解しています。
最後のレイプにしても、冤罪の可能性をメインに検証していますが、
実際にあったであろうレイプの実例についてはほとんどスルー・・。
女性の著者、訳者さんですから、知りたいことの感覚が違うようにも思いました。

Did Allied troops rape 285,000 German women.jpg

ちなみにコレを書いてる今、「戦場の性 ―独ソ戦下のドイツ兵と女性たち
という本が近々出るのを見つけました。
本書の巻末にも「監訳者解題」として、日本の従軍慰安婦制度に触れられていますが、
この連発は現在の従軍慰安婦問題に対して、当時の各国の状況を確認しようという
出版業界の意思の現れなのかも知れませんね。
ソ連兵、米兵ときて、今度はドイツ兵・・。そして著者はやっぱり女性のようです。
でも、また読んじゃうんだろうなぁ。。





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ルーツィエ・マリア・ロンメル

ヴィト様おひさしぶりです。毎日、ツイッターを拝見させていただいております。この度のこの御本、ゾッといたします。あの当時の一般市民の女性にのみおこった事なのでしょうか?高位の軍人の夫人などは、どうされていたのでしょうか?この御本では、フランスでの事のようですが、ドイツの将軍の夫人などはどうされていたのでしょうか?一般市民の女性と同じ危険にさらされていたのでしょうか?ロンメル将軍の御子息が捕虜になって収容所にいたとき、フランス軍が母を探すのを手伝ってくれた、と読んだ記憶があります。やはり、逃げたり、隠れたりなさっていたのでしょうか?もし、自分がこのような状況に巻き込まれてしまったら、どのような手段を使っても自害すると思います。
by ルーツィエ・マリア・ロンメル (2015-11-28 11:42) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も、お久しぶりです。
ドイツの将軍の奥さんについては詳しくありませんが、ロンメルの未亡人は特に問題ないでしょう。ソ連軍が来れば、「1945年・ベルリン解放の真実 -戦争・強姦・子ども-」 http://ona.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08 のようなことにもなりかねませんが、西側連合軍は当時、自分たちがロンメルを殺したと思っているし、その人気のあった英雄将軍の未亡人にまで手を出そうものなら、軍法会議モノでしょう。
by ヴィトゲンシュタイン (2015-11-30 05:12) 

さくら

こんにちは。
米公式新聞で「あなたの瞳は魅力的です」ってかなり笑えますね。
ドイツや日本の新聞では、勝ち戦でもやらないでしょうね。
そんなことやる国で特攻兵士は育たない。

犯罪人の殆どが黒人というのは、命をかけて出兵してもなお、差別を受けてる黒人が罪をなすりつけられてる気がしますね。
実際に黒人犯罪率が高いか低いか知りませんが。
顔もはっきり分からないのに「こいつだ!」と告発する女は女で、とりあえず誰かに復讐していたのでしょうね。

ところでドイツ人に向かって「禁煙!」ってなんですか?
by さくら (2015-11-30 21:35) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も、さくらさん。
まぁ、そうです。本書の後半はアメリカ、フランス、そして米軍における黒人差別に視点を置いています。ちょうどJリーグでも黒人差別のツイートが問題になってますね。

「禁煙!」っていうのは、おそらく、「ここは禁煙だ!」っていうことだと思いますよ。
by ヴィトゲンシュタイン (2015-12-01 08:45) 

ヴィトゲンシュタイン

あ、付け足します。
「ドイツ人捕虜」に向かって、「ココでタバコを吸うな!」という意味です。
by ヴィトゲンシュタイン (2015-12-01 08:47) 

さくら

あ、捕虜でも食事以外に煙草も与えられていたのですね。
物資が豊富でいいですねえ。
ありがとうございます。
by さくら (2015-12-01 22:51) 

さくら

あけましておめでとうございます。
今年も独破&レビューをよろしくお願いいたします。
ナチスは本があり過ぎで、しかも次々出るし、今さらですが独破戦線は非常に助かります。
有難いです。

by さくら (2016-01-06 13:27) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も、さくらさん。
明けましておめでとうございます。
更新が滞り気味ですが、また面白い本を読んだらUPする予定です。最近、出る戦争、ナチス本は大作が多くて読む時間が。。
by ヴィトゲンシュタイン (2016-01-08 06:09) 

ハッポの父

ヴィトゲンシュタイン様こんばんは!

今日、隣の市の図書館に行ったら(地元の図書館は悲しいくらい本が少ないのです。。)書架になんとこの本が!ちょっと前に行ったときには無かったのですが。
貸し出しの記録を見ると1月中旬に1人だけ借りていました。こんなマニアックな本、きっとこの方がリクエストしたのではと思います。そして、この方は ヴィトゲンシュタイン様のレビューを読んでリクエストする気になったのではないかと勝手に想像しています。(九分九厘そうだと思います。)

もちろん借りてきて今、手元にあります。これから、ちびちび飲みながら読みたいと思います。
by ハッポの父 (2016-03-12 21:50) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も、 ハッポの父さん。スゲー酔っ払いです。
おそらくですね。ご感想はボクとまったく同じになるでしょう。なんというか、常識のある軍事、歴史好きのエロいおっさんが、まったく別の感想を持つとは思えないからであります!
もし、違う意見を持つ人がいるならば、じっくりと意見を聞いてみたいですね。ソレはソレで楽しそうですけど・・。
by ヴィトゲンシュタイン (2016-03-13 18:33) 

ハッポの

ヴィトゲンシュタイン様こんばんは!
酔っ払いのエロおやじです。

今日、やっと読破しました。
途中何度も投げ出しそうになりながら、なんとか。。
ものすごく偏った書きぶりだと思ったら、筆者の専門はジェンダー史、監訳者の専門もジェンダー研究。納得です!
せっかくの興味深いテーマなんですけどね~

男の視点で書いたら同じテーマでも全く違う本になるでしょうね。
by ハッポの (2016-03-21 20:56) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。ハッポのさん。
レビューありがとうございます。

そうなんですねぇ。視点が違うんですよね。
ただ、男が書いたら書いたで、「強姦を肯定するのか。変態著者めっ!」てなりかねないから難しいテーマなんでしょう。そこで女性研究者がお茶を濁す・・といった構図でしょうか・・
by ヴィトゲンシュタイン (2016-03-23 02:21) 

りべら

基本的にキリスト教の国である欧米の軍隊では、同性愛はタブーであり、倒錯的な事なんでしょうけど・・・・・
色々な文壇を読むと、わが旧日本軍はタブーではありませんでした。古くから「衆道」の伝統もあり、暗黙の了解で認識されていたみたいです。
慰安所があっても、ゲイ=同性愛者はかならず存在しますから、
そうなると、上下関係を利用して身分の低い初年兵や年少兵が、性的な関係を強制されてしまうケースがけっこうあったそうです。
現在なら、パワハラ&セクハラになってしまいますが、この時代、上官の命令は絶対服従、嫌でもそうされてしまうようなんですよね~。大戦末期に大量に募集された、少年兵たち、あの有名な海軍特別年少兵は、14才で入隊・1年の研修期間を経て15才で艦隊勤務です。これなんで海軍は1才引き下げて募集を行なったか???
「稚児の盛りは15~6という詩のとおり、夜伽の相手も考慮して、としか考えられませんよね~ やりたいさかりの10代20代の若い男だけの艦隊勤務・・十分考えられます。
by りべら (2017-12-09 18:48) 

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