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ナチスの発明 -特別編集版- [ナチ/ヒトラー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

武田 知弘 著の「ナチスの発明」を読破しました。

表紙にも書かれている「ロケット」、「ジェット機」、「ヘリコプター」、「聖火リレー」は
この「独破戦線」でも紹介し、自分でも「ナチスの発明」と理解していたものですが、
フォルクスワーゲンやラジオ、そして医学など、「ナチスの発明」とされているものを
本書は250ページでまとめているということで、気楽な感じで読んでみました。

ナチスの発明.jpg

「はじめに」ではナチス・ドイツで発見・発明されたものは黙殺されていることが多い・・
と書かれている本書。第1章は「世界を変えたナチスの発明」です。
「コンサート技術はナチスが作った」は、10万人を収容するツェッペリン広場での
ニュルンベルク党大会の派手な演出や、100台以上埋め込んだスピーカー、
高射砲のサーチライトを巧みに使った幻想的な効果も有名ですが、ここでは
ミック・ジャガーやデヴィッド・ボウイが「ヒトラーはロックスターだ」とか
意志の勝利」を15回以上観て、ヒトラーのパフォーマンスから観客を陶酔させる方法を学んだ」
という話が印象的でした。
そんなわけで、早速「意志の勝利」のDVDを買いました。いま500円で売ってるんですね。

nrnberg1938c.jpg

次の「アウトバーン」も当時の失業者対策として見事な事業だったというのも
良く知られていますが、長い直線や急カーブがなく、適度なカーブにしているなど
人間工学の観点からも事故が起こりにくいように作られているそうです。

hitler-autobahn.jpg

1936年のベルリン・オリンピックの「聖火リレー」は以前に書きましたが、
その他にもレース判定のために1/1000秒まで計れるカメラが開発されたり、
テレビ中継が初めて行われたりと、いろいろありますね。

V2ロケット」ではその開発者である若き「宇宙狂」フォン・ブラウンが詳しく紹介され、
自らの開発の成果が「報復兵器」となってしまうと、この戦局悪化の時期に
月ロケットの開発を極秘で続けた挙句、これが発覚してゲシュタポに逮捕・・。
ヒトラーのとりなしで釈放されますが、敗戦と同時になんとか米軍に投降し、
その後はNASAに招かれて、アポロ計画に従事する・・という波乱万丈の人生を
知ることができました。

peenemunde_dornberger_olbricht_leeb_v_braun.jpg

「ヘリコプター」は女性テストパイロット、ハンナ・ライチュが飛ばしたのは知っていましたが、
その後は、軍用ヘリとしてFa-223というのも開発されたそうです。
しかし生産されたのは11機に留まり、戦後は英国に接収されたとか・・。

Fa_223.jpg

その他、テープレコーダーに、ウィルスの撮影に成功した電子顕微鏡の話などは
なかなか印象的でした。

第2章の「ナチスが目指したユートピア」では、ドイツ語で「大衆車」の意味である
フォルクスワーゲンの登場です。
前途のフォン・ブラウン同様、ポルシェ博士の生い立ちから始まり、
カーマニアのヒトラーによって、この大計画を一任される過程が書かれています。

Hitler_Volkswagen.jpg

タバコ嫌いで酒も嗜まず、肉も控えるなど健康に気を使っていたヒトラー。
ドイツは第三帝国以前から、医学は進んでいたこともあって、本書でも
「ガン対策」にも取り組んでいたそうです。
特に1943年にはアスベストを起因として肺ガンになるとしていたというのは凄いですね。

第3章ではゲッベルスヒムラーゲーリング、シャハト、ボルマンが紹介され、
ユダヤ人迫害も含む、一般的なナチス第三帝国概要を解説。

Hitler Schacht.jpg

最後の第4章「夢の残骸」では、ヒトラー最大の夢、「世界首都ゲルマニア」構想が、
建築家シュペーアと共に詳しく語られます。
フォルクスハルという名の18万人収容の巨大ドームは東京ドームの28倍という大きさ・・。
ナチ党大会用のニュルンベルク・スタジアムは、40万人収容・・・。
ちなみにこの工費は2億マルク。しかし「ビスマルク2隻より安い」とヒトラーは語ったとか。

Speer_Germania Dome.jpg

〆には「広島の原爆はナチス製だったという説」や「ナチスUFO説」が登場し、
特に「円翼機」フリューゲラートという円盤型戦闘機のBMWによる開発にもちゃんと触れて、
有り得ない話ではない・・としています。
円翼機ではないですが、ステルス型のゴータ Go229やホルテン Ho Xなど変わり種も
研究/開発していたドイツですから、確かに有り得なくもないかな??
矢追〇〇先生のトンデモ本として世に知られる「ナチスがUFOを造っていた」も
ちょっと読んでみたくなりました・・。

ho_x_model_1.jpg

「おわりに」で、ナチスの時代をただ真っ黒に塗りつぶしてきた歴史観は、
そろそろ修正されなければならないのではないか・・と締め括られます。
個人的にもその「真っ黒」な部分に興味があって、この「独破戦線」を続けているので、
その意味では気軽ながらも、公正に書かれた1冊だと思います。
結構、いろいろな話に興味も湧きましたし・・。

Nürnberg, Reichsparteitag, Adolf Hitler vor Lichtdom.JPG

ちなみに本書「特別編集版」は2008年の発刊ですが、2006年にオリジナルが出ています。
違いが何なのか・・、本書には書いていないのでわかりませんが、
amazonで、こちらの方が安かったので購入しました。
まぁ、購入した・・というより、実はタダでした。「良い」だったのが1ページ破れを発見したとかで、
「無料でお送りします」ということです。こんなこともあるんですね。









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コメント 4

IZM

こういうテーマ、すごく好きです。V2ロケットや、原爆のヒストリーは、実話か???といちいち驚いてしまうほど、サスペンスに満ちたドラマ展開ですよね。。。。
この本面白そうですね。無料でGet出来たのはラッキーでしたね。
by IZM (2011-07-12 16:39) 

ヴィトゲンシュタイン

IZMさん。お待ちしておりました。
本書は読んでて、アウトバーンの話もあったりして、先日のIZMさんの記事も思い出しました。
思い出したといえば、自動車好きで学生の頃、ドイツ語を専攻してた親父が、フォルクスワーゲンの発音や、BMWも今みたく「ビーエムダブリュー」ではなく、「ベーエムヴェーだ」と教え込まれたり、酔いが激しくなると、突然 「イッヒ リーベ ディッヒ!」とか言い出して、家族はなんのことやら分からないのを尻目に一人で大喜びしていたことなんかも思い出しました。。。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-07-12 19:43) 

IZM

ヴィトゲンシュタイン様のドイツにはまった発端はお父様仕込みだったのですねー!
>酔いが激しくなると、突然 「イッヒ リーベ ディッヒ!」
嬉々として語るお父様の姿が、目に浮かぶようです。Wwww
あのスコップを持って、せっせとアウトバーンを作っている総統のポスターは、見つけた時こそ親子で大受けしましたが、ドイツのお年寄りは結構大真面目に「ヒトラーはアウトバーンを作った」とポジテイブ面として語り、若い人がそれをネタに茶化す、という構図なのですね。「ヒトラーが作ってなかったとしたら、誰か他の人でもできた事でしょ!」とゆーふうな感じで。
でもそれはちょっと短絡的な意見で、内政的な事と、軍事的な運搬の目的など、当時の世情で開発した経緯があるでしょうにね。。。等と思ってしまいます。
ワタシは旦那に「何でそんなに戦争のことばかり調べる?戦争は全て悪!」とか言われたりもするんですが、西洋医学なんて、戦争があってこそ発展を遂げてきてる経緯もありますし、ヨーロッパの歴史なんてそれこそ戦争ばっかりだし、う~ん、でも今まで色々よんできたなかで思うのは、軍人と政治家は別に捉えてあげないといけないかなということです。今回の日本の震災を見ても、同様に思えて仕方がありませんが。
長々とすいません。
by IZM (2011-07-12 23:28) 

ヴィトゲンシュタイン

なるほど、なかなかの見解ですね。
>軍人と政治家は別に捉えてあげないといけないかな
特にこれはそうなんですよねぇ。自分も戦争とホロコーストは別に考えてますし・・。
ただヒトラーの場合は政治家なのに軍の最高司令官になってしまい、内政をそっちのけにして、1個大隊の行動という細かいことにまで口を出す・・という特異性も考慮しなければならないのが大変ですね。
また、ヒトラーは単に脅しによる第三帝国の領土拡張を東部に目指していたのであって、大きな戦争を望んでいたわけではないというのが、今のところの自分の見解でもあります。
おっと、こっちも長々となりそうなので、この辺で・・。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-07-13 12:35) 

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