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ドイツ武装SS師団写真史〈2〉​遠すぎた橋 [武装SS]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

高橋 慶史 著の「ドイツ武装SS師団写真史〈2〉」を読破しました。

すっかり発売を心待ちにしてしまっているこのシリーズですが、
早々に購入したものの、すぐに読んでしまうのももったいないので、
袋から出さずに本棚へ直行させていました。
こうしておくと、次に読む本を探した際に気が付かないんですねぇ。
しかし、ちょっとご無沙汰の「武装SS」モノに対する禁断症状からか、
いよいよ、開封の時がやってまいりました。

ドイツ武装SS師団写真史〈2〉.jpg

今回登場する武装SS師団は副題の「遠すぎた橋」のとおり、
モントゴメリー元帥発案によるマーケット・ガーデン作戦を見事粉砕し、
映画でも「あの橋は遠すぎたな・・」と言わしめたSS第9戦車師団「ホーエンシュタウフェン」と
SS第10戦車師団「フルンツベルク」が主役です。
そして後半は、SS第34義勇擲弾兵師団「ラントストロム・ネーダーラント」と
SS第29武装擲弾兵師団「イタリア第1」という、スーパー・マイナー師団が紹介されます。

Michael Caine, Gene Hackman, Dirk Bogarde, Edward Fox and Ryan O'Neal in A Bridge Too Far.jpg

前作「ドイツ武装SS師団写真史〈1〉髑髏の系譜」で2部/6章が紹介されていたため、
本書は第3部の第7章としてSS第9戦車師団「ホーエンシュタウフェン」から始まります。
1942年8月の連合軍のよる「ディエップ奇襲」がヒトラーに衝撃を与えたことから
新たに2個SS師団をノルマンディに編成することになったという、この双子の2個師団の
創設された経緯が書かれ、師団長には武装SSの顔役のひとり、ビットリッヒSS少将が就任。

そして1944年2月、東部戦線で包囲された第1戦車軍20万名を救出するために
SS第10戦車師団「フルンツベルク」とともに投入されますが、
本書ではこの有名な「フーベ移動包囲陣」の様子をパウル・カレルの
焦土作戦」から抜粋して、紹介します。

Hohenstaufen   Panzer IV.jpg

ノルマンディでの激闘では、第7軍司令官のドルマン上級大将の急死(心臓麻痺)に伴い、
SS第9/第10師団を合わせたSS第2戦車軍団司令官のハウサーSS大将が昇格し、
ハウサーの後任にはビットリッヒが指名されるという、玉突き状態の結果、
SS第2戦車師団「ダス・ライヒ」のデア・フューラー連隊長を努めていた
シュタドラーSS大佐が新師団長となります。
このシュタドラーもなかなか有名な人ですが、写真つきで経歴もしっかり書かれていて
実に嬉しいですね。
しかし、就任1ヶ月もしないうちに、この激戦の中、重傷を負ってしまいます。

sylvester_stadler.jpg

この結果、9月のマーケット・ガーデン作戦の際には、ハルツァSS中佐が代行している・・という
ことになるわけですね。う~ん。実にわかりやすい。。
そしてこの戦闘の様子も、「不屈の名著であるコーネリアス・ライアンの「遥かなる橋」から
引用することにしよう」という展開です。
最終的には「春の目覚め」作戦でバラトン湖でも戦い、消耗した師団は終焉を迎えます。

SS第10戦車師団「フルンツベルク」は、ローター・デベスSS少将という地味で知らなかった人物が
初代師団長となりますが、当然、彼の経歴も詳しく書かれていて、
特に、バート・テルツなど2つのSS士官学校の校長を務めた、武装SSの頭脳ともいうべき、
唯一無二の存在であった・・というのは、大変勉強になりました。

D DAY The SS Frundsberg division.jpg

この「フルンツベルク」の戦役はSS第2戦車軍団として「ホーエンシュタウフェン」と基本的には
同じですが、一番の読みどころは、パンターを擁する戦車大隊副官のバッハマンSS中佐(中尉?)の
活躍によって、隠されていた米軍の新品シャーマン戦車12両を鹵獲したくだりでしょう。
そしてこのシャーマンは第5中隊として終戦まで使用された・・とのことで、
隊列で進むこの「第5シャーマン戦車中隊」の写真も掲載されています。こんなの初めて見ました。
しかし、これがあと2ヶ月ほど早かったら、バルジの戦いに挑むスコルツェニーが喜んだろうに・・。

erwin bachmann.jpg

終戦間際にはフルンツベルク師団長のハルメル総統随伴師団長のレーマー
ヒトラーとシェルナー元帥からベルリンへ進撃せよの命令を受け、
第344歩兵師団長ヨーラッセ少将とともに、命令を遂行するしないで激論を戦わせます。
そして総統命令を拒否したかどで解任されるハルメルですが、この話もドラマチックですねぇ。

ss-brigadefuhrer_Heinz_Harmel_stielhandgranate_smoke.jpg

第4部は「生き残ってはみたものの」という見出しで、
まずSS第34義勇擲弾兵師団「ラントストロム・ネーダーラント」。
この部隊はその名の通り、オランダ占領軍の強化のためのオランダ人義勇兵による部隊です。
主役となるのは、オランダ占領地行政長官で、その政策からニュルンベルクで死刑となった
ザイス=インクヴァルトです。
あまりにマイナーな師団過ぎて、まったく知りませんでしたが、詳しく書かれてますねぇ。
写真もなかなかですし、細かいことは書きませんので、
興味のある方はぜひ買って読んでみてください。

Reichskommissar Seyss-Inquart, Höhere SS und Polizeiführer Rauter en Befehlshaber der Waffen-SS Demelhuber.jpg

最後のSS第29武装擲弾兵師団「イタリア第1」も同様にパルチザンに対する郷土防衛部隊であり、
この地でのSS司令官を務めるカール・ヴォルフSS中将の存在が大きく影響しています。
興味深かったのはこの部隊の襟章ですが、黒の台布の使用は禁じられ、
赤字の台布を使用していたということです。本書は白黒なので良くわかりませんが、
これも初めて知った話ですねぇ。

italienische Nr. 1.jpg

この「生き残ってはみたものの」という2つの部隊はドイツのために
自国でパルチザン相手に戦った連中であり、敗戦とともに、
その運命は裏切り者の自国民のレッテルを張られたうえ、処刑は免れません。
強制的に入隊させられていたりしたら、実に可哀想ですね。

ひとつだけ気になったのは、数枚出てくるカール・ヴォルフの最後の写真です。
キャプションでは1935年頃のヒムラーの副官時代であると書かれ、
腕の徽章も初期の空軍操縦士徽章・・となっていますが、これは全然、別人だと思います。
大体、顔も似ていないし、制服や制帽、その腕の徽章も「警察」のものですし・・、
まぁ、ご愛嬌といったところでしょうか。
ちなみに警察の制服は ↓ です。

Adolf Wagner_Kurt Daluege.jpg

次の第3巻に登場するSS師団はまだわかりませんが、噂によると
ラスト・オブ・カンプフグルッペ」の続編が先に出る・・という話もあったり・・。
こちらも好きなので、どっちが出るのかまたまた楽しみです。



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