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劇画ヒットラー [戦争まんが]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

水木 しげる著の「劇画ヒットラー」を読破しました。

1年数ヵ月ぶりとなる「独破戦線まんが」の第5弾は、
以前からコメントでもちょくちょく話題になっていた本書になりました。
水木 しげるといえば、子供の頃に家にあった「墓場の鬼太郎」と、「悪魔くん」ですね。
特に悪魔くんのオドロオドロシイ感じは何とも言えない世界でした。
この「劇画ヒットラー」は1971年に『週刊漫画サンデー』に連載され、
1972年以降、「ヒットラー 世紀の独裁者」など、タイトルも変えながら出版。
今回選んだのは1990年の276ページ、ちくま文庫です。

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1908年のオーストリア・リンツ。
親友ヒトラーの下宿先に一緒に住むことになったクビチェク くん。
しかしヒトラーは美術学校にスベッていて、自尊心だけは強い彼に翻弄されてしまいます。
やがて宝くじが当たることを夢見てアレコレと語るヒトラーですが、
アドルフ・ヒトラー 五つの肖像」にあった、こんなエピソードまであるんですねぇ。
でも個人的には夢破れて半狂乱に陥り、自己憐憫に耽るところまで欲しかった・・。

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浮浪者同然の生活から、絵を描いて多少の収入も・・。
第1次大戦が始まると熱狂的に志願して、1級鉄十字章を貰うほど・・。
ヒトラー1人で15人ものフランス兵を捕えた逸話が挿入されていますが、
15人は盛り過ぎじゃないかなぁ・・。
それでもカルダンという名のフランス兵がモロにねずみ男なのが笑えます。。

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1919年、「ドイツ労働者党」に潜入するヒトラー。
このナチ党の最初期主要メンバーが何人か登場しますが、
ディートリヒ・エッカートは、「モルヒネ中毒で精神病院にも入っていたこともある・・」と
化け物のようなアホ面で登場・・。

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また、変人経済学者と紹介されるゴットフリート・フェーダーの口髭を見たヒトラーが、
「カッコいいなあ・・」と真似したと、多くの歴史家は見ている・・という説は初めて知りました。
それにしても、このフェーダーの顔も口髭以外は酷いですね。
1971年当時には、フェーダーの顔写真なんて手に入らなかったのかも知れません。

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念のため、ヒトラーの口髭ビフォーアフターはこんな感じ。。

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党首のドレクスラーも出てきた後には、後の副総裁ルドルフ・ヘスが・・。
コレは激似です・・。まぁ、前から薄々思っていましたが、まんが顔なんですね。

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1923年の「ミュンヘン一揆」はタップリと描かれていて、ルーデンドルフを筆頭に
エーベルト大統領に首相のシュトレーゼマン、バイエルン州の総督カールに
陸軍司令官のフォン・ロッソウ、警察長官フォン・ザイサーらまで登場。

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ランツベルク刑務所出所後、ナチ党の立て直しを図るヒトラーですが、
強力なライバルであるグレゴール・シュトラッサーと対立が起きます。
秘書をやめて本業の養鶏に精を出したい・・と言いだすヒムラーに、
その後任の秘書となったゲッベルス
ゲッベルスはほとんどマッドサイエンティストの風貌です。

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そしてベルヒテスガーデンの山荘にやって来た姪のゲリ
かなり可愛い女の子に描かれていて、ヒトラーは隙を見ては「チューッ」と溺愛・・。
そんなタイミングで「総統、用意ができました」と入って来る気の利かないヘス。
「ヘスくん。開けるときはノックをしたまえ、ノックを・・」。

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全部で17章から成る本書。
その章扉の絵はなかなか印象的なもので、
例えば第9章は有名な写真がモチーフです。
シルクハットのヒトラーとフォン・パーペン、それからブロムベルクです。

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ゲリが自殺し、半狂乱となったヒトラー。
そんなときに首相になるかならないか・・という大事な問題が・・。
ヒンデンブルク大統領と面会し、陰謀家と紹介されるフォン・シュライヒャー
シュライヒャー将軍・・、ほとんど妖怪ですね。。

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遂に首相となったヒトラーですが、レームとSAの粛清「長いナイフの夜」へと進みます。
"お前と俺"の仲であるレームに苦言を呈するヒトラー。
「お前はSAを野放ししすぎやしないか。苦情が絶えないじゃないか。
それとホモもやめてくれ。
いやしくも一国の大臣がホモなんて話、聞いたこともない」。

「量より質」がモットーのSS指導者ヒムラーに、ゲシュタポを創設したゲーリング
この2人が首謀者なわけですが、ゲーリングも怪人だな、こりゃ。。

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ドゥーチェ(親方)と称されるムッソリーニの出番も多くなってきました。
典型的なまんが顔なのか、先生の筆もノッテル感じすらします。

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そしてチェンバレンの活躍する「ミュンヘン会談」から、チェコの併合へ・・。
呼び出したハーハ大統領を恐喝し過ぎて、失神させてしまうと、
「気絶してる。モレル、強心剤を・・」と、ヤブ医者が「はい」と登場です。
いや~、この話はいろいろな本に書かれていますが、思わず吹き出しました。

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西方電撃戦は実にあっさりと過ぎると、降伏しない英国首相チャーチルの出番です。
「われわれは最後の勝利を確信している。サインはV!」。
ここで2回目の爆笑・・。
TVドラマの放送が1969年からですから、コレは間違いなく意図的でしょう。

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不可侵条約を結んでいる友好国であるソ連との会談の様子も・・。
リッベントロップはいまいち似ていませんが、モロトフは強烈です。
まさにキャラが立っています。

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そのソ連に対して「バルバロッサ作戦」を開始。
モスクワで立ち往生すると陸軍総司令官ブラウヒッチュを解任し、自らが総司令官に。
劇画調に描かれたヨードルカイテル

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元ネタの写真はコレかな?

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スターリングラード戦では「一歩も引くな」と言うスターリンに、陣頭指揮をとるフルシチョフ
一方、文句の多い参謀総長のハルダーは「クビだ! 後任はツァイツラーを任命する」。

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幽閉されていたムッソリーニをスコルツェニーが救出したころ、
出てこないと思っていたボルマンが姿を現します。
「ナチ党の権力を一手に握ろうという、妖怪ボルマン。
こいつがヒトラーが喜ぶようなことしか報告しなかった」。

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1945年となりベルリンの総統ブンカーから指揮を執り続けるヒトラー。
ゲーリングがボルマンの計略によって失脚し、空軍総司令官に任命されたフォン・グライム
ハンナ・ライチュがやって来ます。
ちょっと残念なナチ女という扱いでしょうか・・。

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こうして最期のときが近づいてきます。
エヴァと結婚をし、秘書のユンゲに遺言を口述・・。
「運転手がヒトラーの遺体を焼いた」とまで書かれていますが、
残念ながら、好きなケンプカは描かれていませんでした。。

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いや~、コレはまったく馬鹿に出来ない一冊でした。
とても子供向けのまんがではありませんし、ほとんどが事実でしよう。
多少驚きだったのは、思っていたより青年時代のヒトラー、
ナチ党創成期のヒトラーについて詳しく描かれていることです。

個人的にはヒトラー伝となると、大きく3部に分かれると思っていて、
1900年代~1910年代の青年時代と1920年代にのし上がろうとするヒトラー、
1930年代のナチ党政権奪取~ドイツ国民のアイドルたる総統時代、
最後に1940年代の戦争指導者としてのヒトラーです。

戦記マニアなら1940年代のヒトラーの軍事的関与に興味があるでしょうし、
ドイツ国民のナチ化やヒトラーの外交政策に興味があるなら1930年代、
しかしヒトラーの人間性を知りたいなら、やはり1900年代~1920年代でしょう。
人格形成は少年~青年期にかけて成されるものであり、
その当時の出来事や、総統に上り詰めるまでに重点が置かれた本書は
ヒトラーがどんな悪いことをしたか?? ではなく、
なぜヒトラーのような人間が誕生したか?? がテーマのように思いました。

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その意味では、ヨアヒム・フェスト著の超大作「ヒトラー」に通じるものがありますね。
実は「ヒトラー 最期の12日間」でも知られるドイツ歴史界の重鎮が書いた、
この1975年の函入りの上下巻、計1100ページを読破したのが1年前のこと・・。
何度もレビューを書こう・・と思いつつも、いつも挫けていました。

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第一にジョン・トーランドの「アドルフ・ヒトラー」を先に読んでしまいましたし、
本書の上下2段組み、小さい文字でビッチリ・・を見る度に、
どう考えたって、トーランドのより文字数多いだろ。。文庫にしたら6冊分はカタい・・、
と、読む前から気合が削がれてしまったほどです。

このヒトラーの生涯をトーランドの「アドルフ・ヒトラー」と比較すれば、
当時のドイツ(ワイマール共和国)の状況・・、政治だけでなく、人々の考え方など、
米国人のトーランドとは別の視点、ドイツ人がドイツ人向けにヒトラー伝を書いている・・
といった印象を持ちました。
そういう意味で奥深さは感じるものの、現在の日本人が率直に理解できるかというのは
別の話であり、ややもすれば冗長すぎると考える読者もいるでしょう。

結局、1年悩んでこの有名な超大作ヒトラー伝のレビューを書くことは諦めました。
悪い本ということではなく、トーランドが書いたヒトラーの人生とは、
基本的には変わらないということです。
こちらの方が出版は早いですし、もしヒトラーの人生が全然違って書かれていたら、
どちらかがペテン師ということになって、それはそれで大問題ですね。

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もう一冊、つい最近に出版されたヒトラー本も楽しめましたのでご紹介。
タイトルは「ヒトラー サラリーマンがそのまま使える自己PRとマネジメント術」。
表紙を見るとなんとなく、日本を舞台にした「帰ってきたヒトラー」みたいな印象がありますね。
面白いのはちゃんとしたビジネス書なのに、ヒトラーの戦略を参考にする・・という視点です。
例えば「ミュンヘン一揆」の失敗で裁判にかけられたヒトラーが、「責任は私一人で負う」として、
徐々に人気が上がっていった件を紹介したうえで、
プロジェクトの失敗もこのようにチャンスに変えるのだ・・といった展開で、
その他、アルゲマイネSSの黒の制服・・などのイメージ戦略からも、
第一印象は大事ですから清潔で、ある程度上等のスーツを着て、靴も磨きましょう・・と解説。
レームやヒムラー、ゲッベルスのような部下を持ったときにどうすべきか・・など、
ヒトラー戦略は関係なくてもヴィトゲンシュタインが共感する部分も多く、
逆にその関連性に思わず何度か笑ってしまいました。

ナチス関連の写真も掲載された176ページの本書は一日でも読破できるボリュームですが、
カバーもせずに通勤電車で読むのには、それなりの度胸が必要でしょう。
ナチス好きのサラリーマンなら、昼休みに自席でコッソリ読んで、ニヤつける一冊です。



最後に「劇画ヒットラー」に戻りますが、巻末には参考文献が挙げられており、
ヒトラー伝としてはヴェルナー・マーザーの「ヒトラー」と、
アラン・ブロックの「アドルフ・ヒトラー」など。
独破戦線で紹介したものなら、「ヒトラー最後の戦闘」、「第三帝国の興亡」、
ゲシュタポ -恐怖の秘密警察とナチ親衛隊-」、「ゲシュタポ・狂気の歴史」、「国防軍とヒトラー」、
ナチス狂気の内幕」、「バルバロッサ作戦」、「砂漠のキツネ」、「Uボート作戦」です。

水木 しげるの最高傑作との評判もある、「総員玉砕せよ! 」もつい買ってしまいました。










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宮崎駿の雑想ノート 【増補改訂版】 [戦争まんが]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

宮崎 駿 著の「宮崎駿の雑想ノート」を読破しました。

このBlogの栄えある第1回目の「まんが」といえば一昨年の誕生日に紹介した
泥まみれの虎―宮崎駿の妄想ノート」ですが、
特に「雑想ノートも面白いですよ」といったコメントもいただきました。
本書はもともと「月刊モデルグラフィックス」に1984年から連載されていた短編をまとめ、
1992年に発刊され、1997年に128ページの【増補改訂版】として出された
オールカラーの大型本でてす。

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序文ではいきなり「この本に資料的価値はいっさいありません」と大きく書かれ、
「ようするに、自然保護の問題をどうのこうのとか、
少女の自立がどうのこうのとかね、そういうのは一切ヌキ!」。

ということで、「第1話 知られざる巨人の末弟」です。
ヨーロッパの小国であるボストニア王国の、若き国王ペトルⅢ世。
この飛行機気違いの青年によって、ユンカース四発旅客機J-38(G-38)を
軍用機に仕立て上げる・・というお話です。

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ボストニア王国は架空の国で、ボスニアのイメージかな? とか、
ペトルⅢ世は、何度か紹介したことのあるユーゴのペータル2世がネタかな?
などと、完全なフィクションではなく、虚実の混じった凝った話ですが、
3ページで終了。。まんがって感じじゃないですね。

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「第2話 甲鉄の意気地」は南北戦争での世界初の装甲艦による海戦で、
さすがに南北戦争は疎いので、どこまでホントの話なのかは不明ですが、
「第3話 多砲塔の出番」になると、ヴィトゲンシュタインの出番ですね。
夢の200㌧超重多砲塔戦車のその名は「悪役1号」。
悪役大佐に率いられた反乱軍の活躍が8コマ程度でやっとまんがらしくなりました。

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最後には「このようなマンガ映画を観たい方は、2億円ほど持参してください。
1年ほど待って下されば、70分の総天然色マンガ映画を創って差し上げます(PR)」。
コレは確かに興味ありますね。実際、1/72モデルなんか売ってます。。

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以降、徐々に1話ごとのページ数も増え、まんがらしくなっていきますが、
「第7話 高射砲塔」が良いですねぇ。
1943年に建設されたキール軍港に近いリュースバルク市の高射砲塔
これは街も塔の形も架空のものですが、128㎜2連装高射砲が据えられ、
ストーリーも面白く、最後のオチも現実味があります。
なかでも「キルマークをかくのも途中でやめた」っていう絵が印象的ですね。

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続く「第8話 Q.ship」では、第1次大戦のUボート大エース、ド・ラ・ペリエールが登場。
プール・ル・メリットも付けていますが、顔はブタ・・。
最後に「第2次大戦中にQシップ(囮船)は使われなかった」と書かれていますが、
1941年くらいまでのUボート戦記では、たまに出てきますね。

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「第9話 特設空母 安松丸物語」は8ページのしっかりした2回連載のまんがで、
英補給路の分断にアフリカ沖へと向かうストーリーです。
英雷撃機ソードフィッシュを味方と間違えたり、逆に英船団は96式艦攻を
ソードフィッシュと間違えたりと、機体に描かれた「赤丸」のエピソードが楽しいですね。
「これ以降アジア方面の英軍機は赤丸を消すのである」とか、
日の丸を「ミートボール」と英兵が言うところなど、ホントかどうかは良くわかりませんが・・。
最後の「ドイツ・アフリカ軍団にとび・・」というオチも良し。

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「第10話 ロンドン上空 1918年」に登場する、戦略爆撃機「ツェッペリン・シュターケン」は
あまりにリアルなので、さすがに気になって途中で調べてしまいました。
すると、この話は結構、史実に則っているんですねぇ。
なかなか勉強になるなぁ。。
整備兵長のハンスが大活躍しますが、彼は「泥まみれの虎」の「ハンスの帰還」なんですね。

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「第11話 最貧前線」は太平洋戦争末期に、木造漁船が特設監視艇として
配備されるお話です。平均年齢40歳の年寄りに14歳の機関助手とくれば、
まさに「国民突撃隊」の日本海軍版といった趣ですね。
B-24 リベレーターを「コンソリ」と呼んだというのは初めて知りましたが、
主人公の「吉祥丸」がお隣さんの「三鷹丸」を助けに向かったり、
反対側は「荻窪丸」、「阿佐丸」、「高円寺丸」、「中野丸」と東京の人間はウケますね。

「第12話 飛行艇時代」は3回連載のボリュームで、これは知っています。
アニメになった「紅の豚」ですね。といっても実は観ていません。。
フィオという名の少女も出てきたりと、いかにも宮崎アニメの雰囲気が出ています。
当時、映画館の予告編を観た時、「豚の声が刑事コジャックだ・・」と驚いたもんです。。
こういうタイミングでTV放映してくれれば、じっくり観るんですけどねぇ・・。

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ラストを飾る「第13話 豚の虎」の主役はポルシェ・ティーガーです。
ポルシェ博士はマッド・サイエンティストとして描かれ、お馴染みハンスと、
ドランシ予備大尉が登場。「A7V以来の生残りはオレだけだ」と語る戦車ジジィ。。
「P虎実験小隊」として第656重駆逐戦車連隊(象部隊)に編入されて
1943年のクルスク戦に向かい、大量のT-34と戦うシーンは迫力満点です。
この話も最後の「マウス」のオチが最高に笑えました。

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最後にはミリオタの著者と、「ジャーマンタンクス」、「ティーガー・無敵戦車の伝説」、
パンツァー・フォー」、「奮戦! 第6戦車師団」の訳者さんである富岡吉勝氏との対談。
とてもマニアックなトークに終始していますが、悲しいかな「イシシシシシ!」という
笑い声が印象に残ってしまいます。。

オマケとして答え合わせとばかりに1話ごとに虚構と現実の種明かしが・・。
「ボストニア王国」はボスニアとエストニアの合成語だそうで、
そうか・・エストニアは「泥まみれの虎」の舞台だしなぁ・・と思ったり、
「甲鉄の意気地」も実話。
いや~、欧州の第2次大戦の話なら見極められますが、
日本軍や第1次大戦の話だと、まんまと騙されるくらい虚虚実実の勝負でした。

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こうして一通りの話の裏まで確認して、一番面白かったのは・・??  と考えると、
「第3話 多砲塔の出番」と、「第7話 高射砲塔」のどちらかですねぇ。
あくまでストーリーとしてどうか・・という問題なんですが、
やっぱりまんがですから、実話よりもファンタジーを求めてしまうんでしょうか。
多砲塔はスポンサー募集に対して実際に名乗りを上げた会社があり、
アニメ化が進行していたものの、「悪役大佐」の性格を巡った問題で製作は中止に・・、
ということもあったそうです。残念なエピソードですね。







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炎の騎士 -ヨーヘン・パイパー戦記- [戦争まんが]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

小林 源文 著の「炎の騎士」を読破しました。

ル・グラン・デューク」以来、次のまんがは何にするか・・?
大分、検討しましたが、「世界の戦車」にもチョコっと書かれていたり、
オススメのコメントを戴いていた著者の一冊を選んでみました。
ヨアヒム・パイパーは「ヨッヘン」とか「ヨーヘン」などと呼ばれ、
映画「バルジ大作戦」のヘスラー大佐のモデルとも云われている超有名人で、
洋書では彼に関する本が何冊か出ているものの、残念ながら翻訳されていません。
同じ武装SS「ライプシュタンダルテ」のヴィットマンが2冊、
パンツァー・マイヤーも回想録が翻訳されているのに、コレはどうゆう扱いなんでしょうね。
そんなわけで、まんがでパイパーを勉強してみました。

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1940年のフランス戦から始まる本書。
先遣中隊長パイパーSS大尉の活躍が描かれた後、彼の経歴が文章で書かれています。
1938年にSS少尉として、SS全国指導者ヒムラーの副官を務めたという有名な経歴の他に、
このフランス戦のあとに、師団長ゼップ・ディートリヒの副官となったと紹介されています。
コレは初めて聞いた話ですが、師団史には書かれてないものの、種々の写真から
著者が判断したとして、副官飾緒を下げた ↓ の写真を掲載しています。

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SS‐LEIBSTANDARTE―第1SS師団の歴史」にもヒムラーとゼップ、
そして副官パイパー3人が写った写真を載せていますが、
どちらも1級鉄十字章を着用していることから、フランス戦後だと思いますが、
上の写真も近くにヒムラーがいるのかも知れませんし、
コレだけだと、「パイパーがゼップの副官」だったとは断言できませんね。

1941年に対ソ戦が始まると、戦車部隊への転属をゼップに願い出るパイパー。
しかしゼップはあっさりダメ出しして、SS少佐へ昇進し、
擲弾兵連隊の第3大隊長となったことを告げるのでした。

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スターリングラードで第6軍が降伏し、東部戦線に危機が迫ると、
西部での休養から第3次ハリコフ戦へと駆り出されます。
所々で連隊長のフリッツ・ヴィットSS大佐の2ショット写真などが組み込まれているのが
面白いですね。そして孤立しているパンツァー・マイヤーの救援に向かうパイパー。

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また、「世界の戦車」のように兵器について、ストーリーとは別に細かく紹介するのも
著者ならではのようです。
「歩兵の対戦車兵器」として、「吸着地雷」や「ライフルグレネード」などの使用法も・・。
本書ではパイパー自らライフルグレネードでT-34を屠るシーンもあったりして。。

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続く、クルスク戦はプロホロフカの戦いなど大戦車戦として知られていますが、
擲弾兵のパイパーは戦車の乗って戦うわけではありません。
それでも走ってくるT-34目掛けて対戦車地雷を投げつけて撃破・・。
大隊長自らの捨て身の活躍に部下たちも「ブラヴォー!」
まぁ、パイパーは右腕に「戦車撃破章」を付けているくらいですから、大したモンです。

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降伏したイタリアへ武装解除に向かうことになったパイパー。
ドイツの政治指導者に虐められているユダヤ人ラビを救ったかと思えば、
イタリア兵に連れ去られた2名の部下を救うため、ボヴェス村に救出に向かい、
それと引き換えに戦闘によって33名の民間人が死亡したというエピソードも・・。

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再び、地獄の東部戦線へと向かうことになったパイパーですが、
戦死したシェーンベルガーSS中佐の後任として、念願の戦車連隊長に任命されます。
双眼鏡で戦況を確認し、「あのティーガーはやるな。戦車長は誰だ?」
の問いに「ヴィットマンです」。
こうしてヴィットマンたちに騎士十字章を授ける有名なシーンも登場・・。

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1944年になるとベーケ重戦車大隊とともに「チェルカッシィ包囲」にも突撃します。
そして消耗した「ライプシュタンダルテ」は休養のためにフランスへ向かいますが、
そこには連合軍が上陸して来るのでした。

しかしヤーボの前に前進すらままならないパイパー。
進撃する連合軍に包囲された味方を救うために20両しかなくなった戦車で
脱出戦の援護を努めるのみ・・。

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そんなパイパーの名を不動のものとする「バルジ大作戦」こと、「アルデンヌ攻勢」が始まります。
パンターとケーニヒスティーガーを揃えたパイパー戦闘団が一路アントワープを目指して発進。。
やがて投降してきた米軍捕虜に対する「マルメディ虐殺」が起こってしまいます。
本書ではこのシーンは「偶発的な事故による惨劇」と・・。

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剣章も受章し、SS大佐へと昇進したパイパーは1945年、ハンガリーでの戦いに挑み、
最後は米軍に投降・・。
パイパーの写真は世の中に多くありますが、実はSS大佐の写真は一度も見たことがありません。
もちろん本書では襟に柏葉が一枚づつ描かれています。

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その捕虜キャンプは人権を無視する命令が出されて、多くのドイツ軍捕虜が命を落とした・・と
消えた百万人」バリのことも書かれていますが、
レジスタンスが外から発砲したり、外に連れ出してリンチにしたり・・という話も。。
さらにイスラエルの手によってSS専用の収容所のパンに毒が混入され、
数百名が毒殺されたという凄い話もありました。

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裁判では悪逆非道の武装SS指揮官とされて「ボヴェス村の虐殺」と
「マルメディ虐殺」の責任を問われ、弁護側の証人として、パイパーが救った
ユダヤ人ラビが証言するものの、1957年になってやっと釈放。。
偽名を使い、フランスで余生を送るパイパーですが、
1976年、フランス極左テロリストに家を放火され・・。

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著者は「彼の死を信じない!」そうですが、
それよりもこれだけ戦って一度も負傷していない・・というのは信じがたいですね。。
独破後、彼の写真をいろいろと見てみましたが、確かに「戦傷章」を付けたものはありません。
甘いマスクに戦車撃破章、白兵戦章まで付けた剣柏葉付き騎士十字章受章者。
「炎の騎士」というタイトルも良いと思いましたが、幸運の騎士か何かが彼に乗り移っていたのでは・・
とも思わせる174ページのパイパー戦記でした。

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ただ、個人的にはパイパーの最期の(と思われる)ところまで描かれているなら、
彼の生い立ちやSSに入隊した経緯、ヒムラーの副官に任命・・という経歴部分も
文章ではなく、まんがで描いて欲しかったですねぇ。
ヴィトゲンシュタインのは1990年の版ですが、2004年に再刊されています。
違いがあるのかは不明です。。勉強不足でスイマセン・・。













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ル・グラン・デューク [戦争まんが]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ヤン, ロマン・ユゴー 著の「ル・グラン・デューク」を読破しました。

先日の宮崎駿著の「泥まみれの虎」で、まんがに目覚めた?ヴィトゲンシュタインが
本屋でチラ見して気になっていたスイス製の空軍独ソ戦まんがを第二弾に選びました。
これは「まんが」というより、「バンド・デシネ(フランス式まんが)」というそうで、
大人向けのオールカラーで、1コマ1コマが非常に丁寧に描かれたものです。
原著のハードカバー3冊をソフトカバー1冊にまとめた大判の本書は2,940円 となかなかの値段・・。
タイトルの「ル・グラン・デューク」とはフランス語で 「ワシミミズク」のことだそうで、
本書の主役機、ハインケルHe219の愛称「ウーフー」もドイツ語でワシミミズクを意味するそうです。

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第1章は1943年の東部戦線、まだドイツ軍が制空権を握っているとき・・。
第3夜間戦闘航空団(NJG3)に所属する、ナチ嫌いのパイロット、ヴルフ中尉が主人公です。
尾翼に描かれた「鉤十字」は国の識別マークではなく、ナチ党のマークであることから
愛機のソレは塗りつぶすという徹底振りで、周囲を困らせたり、反感を買ったり・・。

しかし腕の立つパイロットである彼に、新型の夜間戦闘機ハインケルHe219「ウーフー」が・・。
このHe219は、史実では東部戦線へ配備されてないそうですが、よっぽどのマニアでない限り
自分を含めて違和感は感じません。

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一方、ソ連側では赤色空軍の女性パイロット、リリア・リトヴァスキ中尉が主役。
彼女たちは「夜の魔女」としてドイツ軍陣地に爆弾をばら撒くのが主な任務です。
そして昼間戦闘機部隊へ移動になるものの、「空飛ぶメスザル」など信用しない大佐からは
冷たくあしらわれ、ストーブ直しを命ぜられます。
これは完全に「出撃!魔女飛行隊」のパターンだな~と思いましたが、
この主役の名前も、あの「リディア・リトヴァク」をもじったものであるのは間違いないでしょう。
時期的にはリディア・リトヴァクは戦死していますが、彼女以外にも活躍した女性パイロット
(しかも結構カワイイ)は多かったようですしね。

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そして強気の彼女は、身体を使ってさっさと大佐を誘惑し、飛行任務に就きますが、
この「バンド・デシネ」は結構、エロく描いてますね。。う~ん、嫌いじゃありません。。

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第2章は1944年秋、赤軍の攻勢の前に主人公のヴルフも「ウーフー」が撃墜され、
昼間戦闘機隊へ移動し、Fw-190で戦果を挙げていきます。
捕虜にしたソ連の女性パイロットを陸軍兵士が強姦・・、
そのような行為を許せないヴルフ。
彼は小さい一人娘に「女の人は殺さない」と約束しているのでした。

ヴルフを誘惑する婦人補助部隊の色っぽいおねーちゃんも登場しますが、
これがまた、芸術的なほどに描かれた美巨乳で、実に素晴らしい。。
自他ともに認める「おっぱい星人」のヴィトゲンシュタインとしては大好物です。。

medicalspecialtyluftwaf.jpg

ソ連側でも、主人公のリリアに恋をするエース・パイロット、ヴァレンティンと
そのエースに思いを抱く政治委員の陰険なおばちゃんの三角関係が展開。。
イメージしていたより、人間関係がドラマチックに描かれていて
さすが大人をターゲットにしたまんが、、じゃなくて「バンド・デシネ」ですね。

第3章は1945年春、戦局は決定的となったものの
娘の疎開したドレスデンが壊滅し、復讐の鬼となったヴルフは撃墜を重ねます。
そしてドイツ側の捕虜となったリリアが、ソ連の女性エース・パイロットという宣伝材料として
ベルリン送りになるという情報を捕虜からの仕入れた政治委員のおばちゃんは、
この輸送機の撃墜任務をヴァレンティンに託します。
しかしそこに愛するリリアが搭乗していることなど知らされないヴァレンティン・・。
またその輸送機には柏葉騎士十字章を受章するためにベルリンへ向かうヴルフも
乗り込んでいるのでした。

ル・グラン・デューク2.jpg

なんとか生き延びることのできた主役の2人。
しかし同僚の脱走に手を貸したかどで、懲罰任務を与えられたヴルフ。
彼が乗る飛行機はBf-109と、機首に4㌧爆薬を装着するJu-88が合体した
空飛ぶ棺桶「ミステル」です。
この親子飛行機でキュストリンの橋を破壊する特攻任務に命を懸けるヴルフの運命は・・。

ル・グラン・デューク3.jpg

最初は綺麗だな~と思いながら読んでいましたが、途中、空戦が始まるとなにか物足りない・・。
コレは「バンド・デシネ」特有の技法であって、「ギューン!」とか「バババババッ!」とか
擬音が一切ないんですね。
なので、コマ1つは静止画のような綺麗な空戦が連続するんですが、
それがスピード感や迫力に欠けたように感じるみたいです。

160ページの本書ですが、2時間くらいかけて、ジックリと読みました。
フォッケウルフ Ta152やらエアコブラやらの飛行機と塗装、コックピットに装備、
ドイツ陸軍も含め、冬季のバラバラな軍服と実に細かく、丁寧に描かれていましたし、
ルフトヴァッフェ内に混在するナチ派と反ナチ派や、独ソの敵同士の交流・・と
戦争に翻弄される個人個人の心情が充分伝わってくるものでした。
登場人物もストーリーもフィクションですけど、
300機撃墜でスターリンから1万ルーブルの懸賞金を懸けられたハルトマンの話もあったり・・。
今まで読んだ「まんが」とは明らかに違った、初体験の一冊でした。
次に「独破戦線」で紹介できる「まんが」は、まだ決まっていません。あるのかな?



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泥まみれの虎 -宮崎駿の妄想ノート- [戦争まんが]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

宮崎 駿 著の「泥まみれの虎」を遂に読破しました。

オットー・カリウスの有名な戦記「ティーガー戦車隊」を読んだのが去年の3月。
その時にも、本書のおすすめコメントを戴いていましたが、
シュトラハヴィッツ機甲戦闘団―“泥まみれの虎”の戦場写真集」を先に読んでしまったりして、
結局、本書に辿りつくまでにだいぶ時間がかかってしまいました。
ジャンルとしては、「独破戦線」初の「まんが」というカテゴリーになりますが、
この大判で87ページの一冊は、まんがは2/3くらいで、
宮崎駿氏とカリウスのインタビューなどもあり、なかなか充実したものでした。

泥まみれの虎.jpg

まずは、ヴィトゲンシュタインとまんが、それからヴィトゲンシュタインと宮崎駿アニメの関係が
如何なるものか・・を述べさせてください。
本ばっかり読んでるヴィトゲンシュタインはホント久しぶりにまんがを読みましたが、
子供の頃はまんが少年で、毎週欠かさず、少年ジャンプにマガジン、サンデー、
そしてチャンピオンの4冊を買っていました。
お気に入りは単行本も全巻買って、特に何度も読み直したのは「男組」・・。
流全次郎vs神竜剛次の20数巻も延々と続く死闘です。。好きなキャラは高柳秀次郎でした。
それから「我ら九人の甲子園」も良かったなぁ・・。当時は高校生が卒業して
メジャーリーグ行くなんて結末は、まさにまんがの世界でしたからね。
ところが18歳のときに一気にやめてしまい、それ以来、ほとんど読まなくなりました。

男組.jpg

そして宮崎駿アニメについてですが、最初に観たのが「ルパン三世 カリオストロの城」。
たぶん小学校6年生で、あくまでTVのルパンが好きだったのでロードショーに行きましたが、
あまりの面白さに、そのまま続けて観て、それでも飽き足らずに
翌週、友達みんなを誘ってもう一度観に行った・・という、今でも大好きな映画です。

そして数年後にも「風の谷のナウシカ」を観に行ったかというと、そうではなく、
もう年齢的にも男としてもアニメを観に行く気が起きず、
また予告編で観たナウシカの顔と声が「クラリスじゃん!」というのが、今思うと大きかったですね。
クラリスに軽く恋心を抱いていたヴィトゲンシュタインにとっては、
あんまり彼女の戦う姿を観たくなかったんでしょう。。
ということで、いまだに「ナウシカ」をTVでも観ていないというヴィトゲンシュタインですが、
いま、調べてみると「魔女の宅急便」だけは、なぜかTVで観ていましたねぇ。
別に宮崎アニメが嫌いって訳じゃあないんです。いつか子供が出来たら、いっしょに全部、観ます。。

カリオストロの城.jpg

こういった事情を踏まえて、いざ本文・・というか、本まんが?ですが(なんて言うんでしょう??)、
カリウスの「ティーガー戦車隊」からエストニアのナルヴァの戦いの部分を抜粋したストーリーですが、
オールカラーで凄く細かく書かれています。
主役のカリウスは何故か「ブタ」。。そういえば「紅の豚」というのもありましたねぇ。
この「泥まみれの虎」は連載まんがだったそうで、本書はそれをまとめたものなんですが、
途中でタイトルが「「泥だらけの虎」・・になってて、「なんか違うだろ」と突っ込んでたり、
連載の締め切りに追われていたのか名前が「宮崎オソオ」や「宮崎グズオ」になってたり、
細かいところも楽しめます。

泥まみれの虎1.JPG

カリウスとともに戦う、もう一両のティーガーの戦車長ケルシャーも登場し、
役に立たない中隊長のフォン・シラーもボロクソに書かれていました。
あ~、確かにそんな中隊長いましたね~。

Albert KERSCHER.jpg

風呂にも入らず、ひたすら「虎」の戦車内で待機するカリウスたちクルー。
車内は汚れ、シラミが発生・・。おしっこも外に出ないで88mmの空薬莢にする話・・。
対するソ連軍の行動パターンも面白おかしく解説していて、勉強にもなりました。

泥まみれの虎6.jpg


この「泥まみれの虎」が半分程度で終わると、ナルヴァの戦いについての解説ページになりますが、
これを書いているのが、あの「ラスト・オブ・カンプフグルッペ」などの著者である高橋慶史氏でした。
そして宮崎氏の現地旅行記とカリウスを尋ねてインタビュー、
エストニアとナルヴァの歴史紹介などがカラー写真を掲載して紹介されます。
まんが以外の部分も物凄く充実していて、1ページたりとも気が抜けません。。

Narva_church.jpg

バルト3国の一番上の国であるエストニアですが、
個人的にはマイナーな国だと、その国の有名人に「誰がいたっけ・・?」といつも考えます。
そうすると、知らない国でもなんとなく親近感が沸いたりするからですが、
ヴィトゲンシュタインの好きなサッカー選手を思い出してみましたが
10年位前にスペインのセルタで活躍していたカルピンがエストニア出身で、
しかもナルヴァ生まれだったんですね。
ソ連崩壊後にエストニアではなく、ロシア代表を選んだそうですが、好きな選手でした。

Valeri Karpin.jpg

本書はもうひとつ、「ハンスの帰還」というまんがも収められていて、
こちらは「泥まみれの虎」の先に書いた「戦車モノ」だそうです。
終戦時にⅣ号戦車でソ連占領地から西へ逃げ延びる・・というフィクションで、
これもなかなか楽しめました。
だいたい宮崎氏がまんがを連載していたことも実は始めて知りました。
アニメの監督さんだと思っていましたので・・・。
そしてこの「ハンスの帰還」の後にも、高橋慶史氏による最終戦でのお話が掲載・・。

ハンスの帰還.JPG

宮崎氏が「ティーガー戦車隊」以外に好きな戦記(回想録)が「鉄の棺」と「空対空爆撃戦隊」で、
ルーデルの「急降下爆撃」はあまり好きじゃないというのもなるほどね・・という感じでした。
これはルーデルは攻勢の時期がメインで、彼が嫌なことにはほとんど触れていないというのが
ご不満のようで、それ以外の3冊は苦境に立たされた戦争後半がメインですから、
苦しい中での生活や、有利な相手に技術的に立ち向かうことなどが興味深いようです。

Otto Carius.jpg

いや~、実に久しぶりのまんが・・。楽しかったですね。
あまりに久しぶりなので最初は左に行くのか、下に行くのか、一瞬、悩んだりして・・。
4時間ほどかけて、コマの一字一句ジックリ読みましたが、定価の2600円は妥当と思いました。
第二弾として、先日、本屋でチラ見したフランスのまんが「ル・グラン・デューク」も
近いうちに読んでみようと思います。









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