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共産主婦 -東側諸国のレトロ家庭用品と女性たちの一日 [欧州諸国]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

イスクラ 著の「共産主婦」を読破しました。

このBlogでも人気のある「ニセドイツ〈1〉」、「ニセドイツ〈2〉」の共産趣味インターナショナル。
本書は3月に出たばかりのシリーズ"vol.4"です。
内容は表紙の帯に書かれたとおり・・としか、言いようがありませんが、
当時の雑貨だけでなく、各国の文化や旅行などにも言及しており、
「ニセドイツ」を彷彿とさせる部分も多々あります。

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まずは「東ドイツ」から・・。
帯のかわいい人形さんが1980年の東ドイツの生活を紹介してくれますが、
彼女の名前はモニカ、ライプツィヒ在住の22歳で電話局勤務、
夫のジークフリートと2人暮らしで、趣味はお菓子作り・・としっかりしたプロフィール。。

朝の5時起きで生活がスタート。
東ドイツのどこの家庭でもあったというコルディッツ社製のコーヒーカップ、
勤務先の食堂で使える「食事補助券」などがオールカラーで紹介されます。
「いつ何時食材が買えるか分からないので、主婦は折り畳んでバッグを忍ばせて・・」と、
デデロン素材の買物袋が・・。
関西のおばちゃんは折り畳んだレジ袋をいつも持ち歩いている・・というのを
聞いたことがありますが、同じ感覚なのかな??

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夜の10時、夫婦での語らいの時間。
「ジギー! 私の予想では「トラバント」はあと5年で来るわ!」。
と、あのボール紙の車と揶揄された東ドイツ車も。

「旧共産圏共通コラム」では、いきなり生理用品について詳しく解説します。
東ドイツのタンポンもカラー写真で、こりゃ公共の場所で読むのはちと恥ずかしい。。
いや~、でもタンポン。。
この話題に中年男が触れるのもはばかれますが、ちょっとした思い出があります。
中3当時、女子の机の中からタンポンを発見した奴がいて、
帰りにヴィトゲンシュタインの部屋に4人ほどが集まって、この未知の品を研究・・。
筒を一度外したら元に戻らなくなったり、悪戦苦闘の末、
「水に浸してみようと!」と、コップにの中に入れてみたら、ブア~!と広がって「うぁ~!」。。

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そんなことはど~でもいいですね。
次は1972年のポーランドの生活で、22歳のアグニエシュカが登場。
1932年にと、戦後の1965年にイタリアのフィアット社とライセンス契約を結んだという
「ポルスキ・フィアット」という自動車が面白いですね。
走りが軽快で、英国などの西側にも大量に輸出されたそうですが、初めて知りました。

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お休み前にビールを一杯。
彼女の住むクラクフには、1856年に創業された「ジヴィエツ」という
有名なビール醸造所があり、クラクフ地方の民族衣装がデザインされたラベルも2枚。
世界各国のビールを呑んできたヴィトゲンシュタインですけど、コレは知らなんだ。。

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「休暇の過ごし方」では、ワルシャワの文化科学宮殿が印象的です。
1955年に完成したスターリンの贈り物という42階建ての大建築。
まさしくスターリン様式であり、ソヴィエト支配を象徴する建造物ゆえ、
住民は嫌悪感をもっているそうです。

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続いては共産主義のボス、ソ連をイルクーツクに住む30歳のナターシャが紹介。
ロシアでなく、「ソ連邦」の各共和国が入り組んでいますから、
例えば、お昼にはウクライナの「ボルシチ」、お茶の時間にはやっぱりウクライナの
ドヴビッシュ社の白に朱色の水玉模様でお馴染み・・という陶器。
凄い柄ですね。ツール・ド・フランスの山岳ジャージだな。。
そして、このティーカップで飲むのは、スターリンの故郷であるグルジアのお茶であり、
さらにこのお茶は「レーニン製茶工場製」という徹底ぶりです。

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そんなグルジアには、「スターリン博物館」が存在し、生家まで復元されていると・・。
う~む。。グルジアにおけるスターリンの評判はどんなもんなんでしょうね。

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1972年にはペプシコーラのソ連で独占販売が合意に達し、
ソ連における初めての米国製品となり、
モスクワ・オリンピックの前年、1979年にペプシは大々的な販売を開始したそうです。

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次は1976年のハンガリー主婦事情です。
ブダペストに住む32歳のアンナが紹介します。
これまで各国とも朝昼晩の食事にも触れられていましたが、
どこもお昼にタップリ食べて、夜は軽く・・なんですね。
これは共産主義ではなく、東欧の文化なんだと思いますが・・。
このハンガリーでは「ベーチ・セレット」と呼ばれるハンガリー風カツレツ。
そしてハンガリーのソウルフードという牛肉のスープ「グヤーシュ」。
ドイツで言うところの「グラーシュ」ですね。うへー、美味そう・・。

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フルシチョフによる「スターリン批判」を発端とした1956年の「ハンガリー動乱」にも
触れながら進みます。
ちょうど白水社の「ハンガリー革命 1956」を読んでみたいと思っているんですよねぇ。




こうしてハンガリー人の休暇といえばココ。
独ソ戦記好きなら誰でも知っている「バラトン湖」です。
中欧最大の湖であり、ハンガリー人は「海」と言っているそうで、
会社所有の保養所も多く、海外からバカンスで来る人も多いのだとか・・。

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26歳のヴェロニカが語る、1987年のチェコスロバキアの生活。
ここでも気になったのは自動車で、第三帝国好きのお馴染みメーカー、「シュコダ」です。
第2次大戦後に国営企業となったシュコダは、大衆車「シュコダ」を生産。
英国だけでなく、ニュージーランドやオーストラリアにも輸出されたそうです。

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途中2回の「コラム」では、紙のパッケージ入りで保湿ができたか怪しいソ連製コンドームと、
紙質が固くて、お尻が痛かったという各国のトイレットペーパー事情を・・。
なぜかコラムは「下ネタ」ですね。

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1970年のルーマニアは24歳のマリチカが紹介。
もちろんマリチカ自身もドール(人形)ですが、ルーマニアの誇るレジェンド・オブ・10点満点、
コマネチ公認の「コマネチドール」がウケますね。似てなさ加減がなんとも。。

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最後は1981年のブルガリア。24歳のニナが紹介するのは
東ドイツの「ロボトロン」を凌いだというパソコン、「ブラヴェツ」です。
その他、農業国らしい野菜の切手シリーズもいい味出してます。
東ドイツの交通安全の切手とか、チェコスロバキアの毒キノコ切手など、
各国のデザインも個性的で、切手好きも楽しめます。

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4つめのコラムは「タバコ」。
家事、労働、育児とこなす共産主婦たちの息抜きがお茶とタバコの時間だとし、
特にロシアは伝統的に女性の喫煙率が高かったそうです。
そんなロシア製のタバコ、ドゥカット社の「トロイカ」は可愛いパッケージ。
しかし2007年には日本のJTに買収されたそうです。
エストニアのタバコ、「タリン」もJT傘下となり、ルーマニアの「ドゥナレア」も同様。。
JTは世界各国、荒らしまくってるんですねぇ・・。

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本書は当時の「共産主婦」の目線から生活雑貨を紹介したものですが、
このように"一般的日本中年男"が読んでも楽しめる内容となっています。
ただし、客観的に考えても、このレビューが本質をついているなどということは、
決してありませんので、騙されずに女性らしい雑貨を楽しんだり、
あまり知られていない「共産主婦」の日常を自分に置き換えて夢想してみたり、
東欧の歴史と文化を学んでみるキッカケにしてみたり・・と、
人それぞれの楽しみ方がある一冊だと言えるでしょう。

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実は本書の他、「ニセドイツ」、「世界軍歌全集」、「消滅した国々」を手掛けた
編集者さんと最近お会いすることができ、2時間ばかりお話させていただきました。
ヴィトゲンシュタインが数ある書籍Blogと同じのは嫌だと思って始めたように、
この編集者さんも、世に出ていないような本を出版する・・という信念がベースにあり、
企画立案、組み版、カバーまで行っているというコダワリようです。
本書が男性でも楽しめる仕上がりになっているのは、お世辞ではありませんが、
この編集者さんのお力も大きいのでは・・と、読み終わって改めて思いました。



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