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第5SS装甲師団「ヴィーキング」写真集 大平原の海賊たちⅠ [武装SS]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

石井 元章 著の「第5SS装甲師団「ヴィーキング」写真集 大平原の海賊たちⅠ」を読破しました。

今年の10月に出た、264ページで3990円の大判写真集。
スッカリ武装SSとはご無沙汰だったのもあって、新品を購入しました。
本書の写真は「SS戦友会」関係者からもたらされたもので、
大隊長(少佐)以上の指揮官クラスのみに配られたアルバムから提供された
1300枚を超える写真が掲載されているようです。

大平原の海賊たちⅠ.jpg

とりあえず、表紙をジックリと見てみましょう。
大きく書かれた「大平原の海賊たち」の文字。
コレは「ロシアの大平原で戦い続けたバイキング」という意味ですね。
上部の写真はパンター、下部のメガネの将官はオットー・ギレです。
そして「Viking」のカフタイトルをイメージした帯。ほぼ実物大のように感じます。
以上の4点を、手に取ってパッと理解できる人向けの一冊と言えます。

著者は40年に渡るドイツ軍装品と写真のコレクターだそうで、
過去にはあの「プライベート・ライアン」のドイツ語台詞を翻訳したり、
最強の狙撃手」の軍事用語などのチェック、
第2次大戦ドイツ軍装ガイド 」の監訳を行っているとのことです。

Wiking  T-Shirt.jpg

最初の10ページ程度は、ヴィーキング師団史です。
デンマーク、オランダ、ノルウェー、エストニア、フィンランド、ベルギー、スイスの義勇兵
それから東部などのドイツ国外に住むドイツ人から成る特異なSS師団。
SS特務部隊(SS-VT)のひとつである「ゲルマニア連隊」に、新設の2個連隊、
「ノルトラント連隊」(デンマーク、ノルウェー出身)、
「ヴェストラント連隊」(オランダ、ベルギー出身)が誕生して、
第5SS機械化師団「ヴィーキング」が編成されます。

fellesfront.jpg

しかし、この師団史は、「SSと密接なキーワード」として、
反ユダヤ主義と反共産主義についても並行して語られているため、
正直、なんだか良くわかりません。。
リイド社の「SS-WIKING -第5SS師団の歴史1941-45-」の方が
師団史だけならわかりやすいでしょう。

また、本書の大きな特徴としては、「アルファベットに忠実な表記をする」ことで、
例えば、ゲルマニアは「ゲルマーニア」、ノルトラントは「ノルトゥラントゥ」、
ヴェストラントなら「ヴェストゥラントゥ」、デア・フューラーは「デル フューラー」という具合で
徹底されています。

Belgian Waffen-SS Recruiting Poster.jpg

こうして19ページから写真集が始まります。
「ヴィーキング師団の東方戦役」戦況図が掲載されていて、
1942年7月~1944年4月までの動きがわかります。
ただ、コーカサス(カフカス)山脈に行ったのはわかるにしても、
「青作戦」におけるA軍集団隷下・・といったことは一切わからないので、
まぁ、それが読み取れる人じゃないと・・。

そして早速、初代師団長のフェリックス・シュタイナーが不敵な笑みを浮かべて登場。
困ったことに、日付と場所がキャプションに書かれていないため、
「1943年4月14日まで師団長を務めた」ということと、背後に写っているSS兵の軍装、
それから戦況図などを組み合わせて、1942年夏から秋のコーカサスかな??
と、推測するしかありません。

viking_1.jpg

次のページは雪を積って「クリスマス休暇であろうか?」という笑顔のSS兵の写真。
1942年の12月といえば、B軍集団がスターリングラードで絶体絶命になっている時であり、
ヴィーキングのA軍集団も、急いで撤退しなきゃ!って感じだと思ってたんですけどね。
それからラクダとロシア兵捕虜のほのぼのした写真など、切羽詰まった風ではありません。

破壊された装甲列車や、鹵獲したヴァレンタイン戦車を珍しげに検分するSS中尉と下士官。
「1942年の暮と思われる」とキャプションがありますが、その下には英語でも書かれています。
まるで洋書写真集の翻訳版みたいですが、この英文も著者が書いてるんでしょう。
SS中尉やSS大尉クラスでも氏名不明で、元の写真にはなんの情報もないのがわかります。

viking_2.jpg

その分、軍装についての細かい解説は楽しめますね。
例えばの襟章のSSルーンの位置がおかしいと、
かつての「第2SSゲルマニア連隊」の襟章「SS2」から「2」を取っただけ・・と、
これでもかというほど分析します。

SS-VT Standarte Germania Tabs.jpg

78ページにはドン川に架かる「マルシャル・アントネスク橋」を渡ります。
この写真で1943年2月、ロストフまで撤退したことがわかります。
ロストフの街でドイツ兵を恐れないロシア人たちや、女性を検診するSS軍医中尉殿。
誘っているかのような視線がなかなかエロくてよろしい・・と誉めたい1枚です。

viking_3.jpg

シュタイナー以来の人名が。
高射砲大隊長のカール・ディービッチュSS大佐です。
そして97ページでは、巨大なアドラーのモニュメントが設置されたドニエプル川を・・。
もう1944年になりそうですね。

制帽に軍服、装備品と、軍装はバラエティ豊かです。
長い前線での生活、個人の好みに作り替えたり、いろいろとやっていますが、
実は帯の「Viking」のカフタイトルを付けている将兵は少ないんです。
カフをしているほんどがゲルマニア連隊のカフタイトルで、
それも旧型のゴシック文字タイプだったり、新型のラテン文字だったり・・。

Germania Cuff Title.jpg

「恐らくオットー・ペチュ中佐」と書かれた騎士十字章拝領者とナチス厚生省(NSV)女性職員。
彼女たちは安全地帯での食糧配給や負傷兵介護、避難民の世話が仕事だそうです。
肝っ玉の据わったおばちゃんたち見えるのはヴィトゲンシュタインだけでしょうか。。

viking_4.jpg

ゲルマニア連隊長のユルゲン・ヴァーグナーSS准将はたっぷり出てきました。
著者はもともとドイツ軍装品コレクターですから、本書全体のキャプションは実に細かく、 
将校服はテーラーメイドで、1929年~1942年に使用されたI型の襟章は准将だが、
肩章は大佐、手刺繍で縫い付けたドイツ十字章金章は私費購入品である・・などなど。
また、彼のような人物はキャプション以外にも、生年月日から詳しく経歴が書かれています。
こういうのは嬉しいですね。

Jürgen Wagner.jpg

勲章授与の閲兵式の様子も10数枚の連続写真で詳しく。
主役は第1装甲擲弾兵大隊長アウグスト・ディークマンSS少佐で、
20人程度の軍楽隊まで参加。
東部戦線でもデカいバスドラムまで帯同しているんですね。

SS-Sturmbannführer August Dieckmann.jpg

ただ、連続写真というのは、動画を見ているかのような楽しさがある反面、
同じような写真を続けて見せられてもツマラナイ・・という方もいるでしょう。

途中、撃破したT-34や、Ⅲ号戦車は出てきましたが、
145ページからはティーガーパンターが登場してきます。

SS wiking panther.jpg

このような戦車や各種砲など、掲載された兵器についても詳しく解説。
新兵器「パンツァーファウスト」の試射に立ち会うのは、
第3歩兵連隊長フランツ・ハックSS少佐です。

franz hack.jpg

この後、MP43で掃討戦に参加するハック。
大喜びしていますが、右頬を怪我して、出血・・。

SS-Sturmbannführer Franz Hack.jpg

以前に紹介したことのある有名人、ハンス・ドーア(ハンス・ドル)SS少佐が姿を現します。
白兵戦章に、柏葉騎士十字章だけあって、貫録が違います。

viking_5.jpg

名も無きSS伍長らの食事風景や、散髪の様子なども収められていて、
戦い続けながらも西へと撤退する彼らの生活もよく伝わってきます。
そして185ページから登場してきたのは、表紙の師団長、オットー・ギレ
知らない方には学者風のおっさんにしか見えないかも知れませんが、
フィギアにもなっているほどの武装SSの超有名人。

Herbert Otto Gille2.jpg

続いて、パンターの砲塔から姿を現すのは、ヨハネス・ミューレンカンプSS大佐
この辺りから1944年3月のコーヴェル(コヴェリ)の戦いの写真のようです。
小さな塹壕内にSS兵士と国防軍兵士が身を寄せ合い・・。
ミューレンカンプとハックも真剣な表情で指示を出しています。

pantherwiking- Mühlenkamp R02.jpg

この直前、1月から2月にかけては、あの「チェルカッシィ包囲戦」に巻き込まれた
ヴィーキングですが、さすがにその写真はないようです。
師団付きカメラマンにもそんな余裕がなかったか、
撮られたにしても、指揮官クラスに配るには不適切だったのかも知れません。

通話をする2等兵の向こうを通り過ぎるパンターの写真は良いですね。
特に迷彩が独特です。

5 ss panzer division wiking panther field telephone camo trench helmet cover.jpg

それからこの写真も良い味出しています。
BMW750サイドカーに、Sd Kfz251装甲兵員輸送車、その後ろにパンターと
まさに「ザ・ドイツ軍」ですね。

SS Wiking war machines.jpg

撃破された3両のパンターから戦友の遺体を回収する連続写真は生々しい。
砲塔から何だかわからないほど焼け焦げた物体を運び出したり、
パンターの脇に置かれた2遺体の無残な姿・・。

5th_ss_wiking_kowel1944.jpg

途中、ギレ師団長の詳しい経歴で触れられていましたが、
このコーヴェルで包囲された部隊との連絡を回復したことで、
4月、ギレはヒトラーからダイヤモンド章を授かり、
疲弊していた師団にも8月まで休養が与えられたそうです。

Herbert Otto Gille.jpg

1942年から時系列で進んできた本書はここで終わりますが、
この12月には本書の続編が出るようです。
詳しい内容はわかりませんが、流れからすると1944年5月~終戦まで・・、
ということになるのでしょうか。

何度か書いたように、とてもマニアックな写真集で、
初見の写真が多く、そしてとても鮮明です。
軍装についてのキャプションは異常と言えるほど詳細を極めていて、
お好きな方には大変、参考になるでしょう。
「SS戦友会」の写真ということでは大日本絵画の「武装SS戦場写真集」がありますが、
ひょっとしたら重複している写真があるかも知れませんね。
ず~と未読のままでしたから、買ってみようかなぁ。

viking_6.jpg

その一方、大尉以下の氏名は不明で、日時と場所もキッチリ特定できていません。
ですから、ヴィーキング戦闘記録集や師団史といった類を期待したり、
戦記マニアの方には物足りなく感じるかも知れませんが、
東部戦線におけるドイツ軍の実像に興味がある方、
もちろん武装SSに飢えている方なら、買って損はないと思います。







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