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カフカスの防衛 -「エーデルヴァイス作戦」ドイツ軍、油田地帯へ- [パンツァー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

マクシム・コロミーエツ著の「カフカスの防衛」を読破しました。

今回が4冊目となった「独ソ戦車戦シリーズ」からの1冊です。
このシリーズは古書で安く出たのを見つけては買っているので、順番はメチャクチャですが、
2004年発刊のシリーズ5作目に当たるようです。
まぁ、シリーズ自体が時系列でもないので、特に問題はないでしょう。

カフカスの防衛.jpg

タイトルの「カフカスの防衛」はシリーズ中、最も地味ですが、副題でわかるとおり
1942年のドイツ軍夏季攻勢がテーマとなっています。
しかし「カフカスへの攻勢」ではなく、「防衛」であることからして、
ソ連軍中心なのもこのシリーズの特徴ですが、パッと思い浮かぶのは、
山岳部隊が作戦とは関係なく最高峰であるエルブルス山に登頂したことでヒトラーが激怒し
リスト元帥が解任されたことぐらいですから、しょうがありません。。

Gebirgsjäger 1.jpg

発動されたブラウ作戦でグロズヌイとバクーの油田を目指すリストのA軍集団。
第1戦車軍(装甲軍)と第17軍を中心に第4戦車軍の一部も含まれて、計22個師団で展開します。
第5SS師団ヴィーキングや、第2ルーマニア山岳師団、スロヴァキア快速師団など、
編成も細かく書かれていますが、なぜか軍司令官級の名前は出てきません。
第1戦車軍はフォン・クライストというのは割と知られていますが(元々クライスト装甲集団ですね)、
第17軍と聞いても・・?? 正解はルオフ上級大将でした。ご存知でしたか?
ちなみに第4戦車軍はお馴染みのホト上級大将です。

richard_ruoff.jpg

このような編成のドイツA軍集団が航空部隊の支援も得て、ほぼ一方的に進撃し、
ソ連軍は撃破されていくという戦闘の推移を写真と共に細かく解説。
しかし、独ソ双方が入り乱れて記述されているので、かなり混乱します。
いきなり「ドン集団」とか出てくると、うっかりドイツ軍だと思ってしまいましたが、
コレはソ連軍でした。。マンシュタインの「ドン軍集団」が編成されるのは、
スターリングラード包囲後でしたね。。

さすがソ連寄りの本書ですから、赤軍司令官や旅団政治委員は名前で登場し、
再編成された兵力6個軍の北カフカス方面軍司令官にはブジョンヌイ元帥が任命されます。
8月になってもドイツ軍の進撃を止めることが出来ず、マイコープの油田を放棄。
しかし施設の疎開と破壊を済まされて、ドイツ軍は何も手に入れることは出来ません。
後退戦闘を繰り広げてカフカス方面にA軍集団の全兵力をおびき寄せることに成功したソ連軍。
このスキにグロズヌイやバクー、ウラジカフカス、トビリシの守りを強固にするのでした。

Буденный Семен Михайлович.jpg

もちろん独ソ戦車戦シリーズですので、戦車による戦いや写真も多く掲載されています。
ソ連側ではT-34にKV重戦車が基本ですが、T-26やT-60といった軽戦車も多く配備され、
また、西側連合軍の米国からはM3軽戦車、カナダからはヴァレンタイン戦車が送られて、
本書の写真でも何枚か登場しています。

T-34_1.png

ソ連軍は中尉レベルまで名前が出てきますが、ドイツ側でも9月の下旬になってようやく、
ランツ集団なるものが登場。コレは第4山岳師団長のランツ将軍が率いる各山岳連隊と
オートバイ中隊、歩兵大隊からなる作戦集団です。
このランツ将軍は後にランツ軍支隊を率いた人ですね。
そういえばエルブルス山登頂~リスト元帥解任・・なんて話はちっとも出てきませんでした。。

Hubert Lanz.jpg

10月にはソ連第4親衛騎兵軍団の進出を察知して、第1戦車軍の左翼を守るために
砂漠戦の特殊訓練を受けた「F特殊軍団」が急派されます。
こんな軍団も初めて聞きましたが、「F」はこの部隊を組織したフェルミ将軍に由来しているそうで
編成は自動車化歩兵大隊3個、戦車大隊、砲兵大隊、工兵大隊が各1個、
さらに突撃砲中隊に、なんと航空隊まで1個保有しているという、まさに特殊部隊ですね。
そして首尾よく、ソ連第4親衛騎兵軍団を撃退しますが、本書では騎兵軍団側に問題あり・・と。
「ソ連第4親衛騎兵軍団は優柔不断かつ緩慢で、与えられた任務を遂行できず・・」

Russland_032.jpg

個人的には度々登場する「ソ連装甲列車」が大変楽しめました。
独立装甲列車大隊というのがいくつかあって、ドイツ軍戦車と航空機による攻撃を受けた
友軍列車を助けるべく、別の大隊の装甲列車が救援に向かったり、
戦闘の推移も時間単位で、直撃弾によって走行不能になると、戦闘車が放火されて誘爆、
砲身に敵弾が命中して、砲座担当班が全員戦死、その他の戦闘車も破壊されて、
生き残りは残存兵器を取り出して、遂に列車を放棄・・。

Бронепоезд_1942.jpg

一方、ドイツ軍も戦車5両、Ju-88が2機が撃破/撃墜されていますし、
別の装甲列車との対決では戦車23両が撃破され、Ju-87も2機が撃墜・・。
昔、ゲームでやりましたが、装甲列車との戦いは燃えるんですよねぇ。

Бронепоезд 1942.jpg

ドイツ軍の戦車はⅢ号戦車が中心に、Ⅳ号戦車もちょこちょこと。
鹵獲されたり、撃破されたりした写真がほとんどですが、
鹵獲したⅢ号戦車を何両か、ソ連軍は使用していました。

11月から12月になると、補給も苦しくなったA軍集団は、ソ連の戦車攻勢にもあって
防御戦闘が続き、部分的には包囲壊滅の危機も訪れますが、なんとか脱出突破に成功します。
南方軍集団の片割れB軍集団がスターリングラードで包囲されると、
第1戦車軍をスターリングラードの救援に向かわせないよう、壊滅を目指すソ連軍ですが、
戦車旅団と歩兵のスピードが調整できず、砲兵による支援砲撃も砲弾が無いことで、実施されず。。
このような詰めの甘さから逆に反撃を喰らったりとバタバタ感はぬぐえません。

5-SS-Wiking.jpg

スロヴァキア師団は同じスラヴ民族として、あまりソ連軍との戦いには積極的ではなかったそうで、
前線での逃亡や、ソ連軍に寝返る兵なども続出したため、ドイツ軍は建設部隊に
改編したそうですが、本書でも捕虜となったドイツ兵とルーマニア兵を護送する、
薄笑いを浮かべた寝返りスロヴァキア兵の写真が掲載されています。

155ページの本書ですが、さすが、あまり知られていない戦役だけあってしんどかったですね。
歴史に残るようなメインとなる戦いがないというのも要因のひとつですが、
特に地名・・。真ん中にカラーの戦況図がありますが、本文は聞きなれない地名がほとんどで
例えば「12月19日にはミトロファーノフ~ドブラートキンの東3㌔~アヴァーロフの東4㌔~
シェファートフの北東3㌔~レンポショーロク~ストデレーフスカヤの東1㌔の線に進出した」
こんな感じがほとんどですから、後半は地図見る気も起きません・・。
だいたい、いま書いたこの地名に誤字があるのかどうかも、確認する気にならず・・。
それでも写真も多くて楽しめる部分もありますので、今後もこのシリーズは読んでみるつもりです。




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