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戦場のクリスマス -20世紀の謎物語- [戦争映画の本]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

グイド・クノップ著の「戦場のクリスマス」を読破しました。

気の向いた本をやみくもに読んで紹介する「独破戦線」も、季節感を大事にしようかな・・、
ということで、2006年発刊の350ページの本書を選んでみました。
タイトルである「戦場のクリスマス」は、以前に「ヴィジュアル版 「決戦」の世界史」で
「戦場のアリア」という映画を紹介しましたが、第1次世界大戦中の塹壕戦のなか
クリスマス休戦が行なわれ、サッカーまで・・というお話です。
本書はドイツZDFで放送された人気歴史番組「ヒストリー」を編集した27章のうち、
日本人向けの内容を抜粋して、15のノンフィクション短編集に仕上げたものです。

戦場のクリスマス.jpg

最初はその「戦場のクリスマス」から。
これは「戦場のアリア」のようなストーリー仕立てではなく、
当時の兵士たちが故郷に書き綴った手紙や写真などを紹介し、
戦争の最初の2年、1914年と1915年のクリスマスには、英独の各戦線のいたるところで
一時休戦が結ばれたエピソードを紹介しています。
物々交換に、写真を撮り合ったり、
もちろん双方50人ほどが参加した、じゃれ合いのようなサッカーの話も・・。

christmastruce1914.jpg

同じ第1次世界大戦からは、有名な魅惑の女スパイ「マタ・ハリ」が登場し、
「スターリンの私生活」は彼の若い奥さんの自殺や、子供たちとの関係が中心です。
この辺の話は、以前に観た「独裁/スターリン」という3時間ほどのTV映画でだいたい知っていました。
スターリンを演じたのはヴィトゲンシュタインの好きなロバート・デュヴァル
しかしデカイ「付け鼻」が異様でしたねぇ。。

STALIN Robert Duvall.jpg

本書では娘のスヴェトラーナが、パパ・スターリンに命令を下す手紙のやりとりが楽しめました。
「1934年10月21日。秘書1号の同志、J.W.スターリンへ。
命令第4号。わたしもいっしょにつれていくよう命じます。署名:女主人」
「印。秘書1号の署名:かしこまりました。J.スターリン」
この娘さんは先月、85歳で亡くなったばかりですね。。ニュースでやってました。

Svetlana Iosifovna Alliluyeva.jpg

次の「レーベンスボルン(生命の泉)」は、以前に読んだ「ナチスドイツ支配民族創出計画」の
ダイジェスト的な感じ。
続いて、1936年のスペイン内戦での有名な写真、
戦場カメラマン、ロバート・キャパが写した「崩れ落ちる兵士」の章です。
要は「ヤラセ」写真ではないか・・と言い続けられてきたこの写真の兵士が誰なのかを検証しますが、
もうちょっとキアヌ・リーブスっぽく仰け反ってたら「銃弾を避ける兵士」になっていたでしょう・・。

Falling Soldier_Capa.jpg

1940年、スターリンによって亡命先のメキシコで暗殺されたライバル、トロツキーと
その暗殺者ラモン・メルカデルの運命と続き、
次の「ココ・シャネル」の章は特に興味深く読みました。
独身を貫き通した「恋多き女」が、1927にはチャーチルと関係があったという説も登場し、
1940年には「自宅」にしていたパリのホテル・リッツがドイツ軍総司令部に・・。
壁一枚を隔てて「敵軍」と生活する彼女は、ドイツの防諜機関に属する
ハンス・ギュンター・フォン・ ディンクラーゲと恋仲となり、ドイツ軍の勝ち目が怪しくなってくると、
ディンクラーゲの上司、シェレンベルクが和平のために
彼女の友人、英首相チャーチルとの接触を模索します。

Coco Chanel_Churchill.jpg

戦後、彼女がシェレンベルクに送金を行っていたことが確認されているそうで、
これを「回想録で洗いざらい公表するよ」と脅されていた可能性も示唆しています。。

結局、シェレンベルクが「シャネルの愛人」だったのかどうか(wikiには思いっきり書いてありますが)
ヴィトゲンシュタインには良くわかりませんが、
独身で有名な金持ちのおばちゃんを利用しようとした人間が多かったのは事実でしょうし、
また、この激動の時代を生き抜いたシャネルもそうであったんじゃないか・・と思います。
そしてその「愛人」がひとりであったと考えるのも無理があり、
本命の彼氏以外にも、権力のある男と関係を持っていたとすれば、
シェレンベルクも「シャネルの愛人」のひとり・・という解釈が出来るのかもしれません。

von Dincklage_Chanel.jpg

「白バラ」のゾフィーとハンスのショル兄妹も登場します。
これは以前に観た映画「「白バラの祈りゾフィー・ショル、最期の日々」そのままですかね。
それから「ヒトラー最後の秘書」ユンゲ嬢との晩年のインタビュー。
あの「U-234」も出てきました。コレも
「深海からの声 -Uボート234号と友永英夫海軍技術中佐-」のダイジェスト版のような展開ですが、
日本人士官の2人よりは、積荷であった「ウラン酸化物」の行方がメインです。

sophie scholl.jpg

「チャップリン」では英国人の彼が米国で成功する様子と、戦争が始まり、
彼が公式にソ連軍を応援することでFBIからマークされ、米国と喧嘩になるまでが
「モダン・タイムス」なども少し紹介しながら進みます。
チャップリンは「キッド」とか「街の灯」とか、子供の頃、いろいろ観ましたが、
ラストが大抵、悲しいんであまり好きじゃありませんでした。
なので、個人的無声映画のNo.1俳優は「バスター・キートン」です。今でも大好きですね。

しかし、チャップリンの「独裁者」は、大昔に一度見たキリなので、
いま観たら、考えさせられることが多い気がします。1940年の作品というのも凄いですね。

Chaplin The Great dictator.jpg

「宿命の山ナンガ・パルバット」の章では、1930年代からのアルプスなどに挑んだ
ドイツ人登山家の話が中心です。
今年観た「アイガー北壁」の話もチョロっと出てきました。
登山はやったことがないんですが、この手の映画は昔から好きで、
特に「アイガー北壁」は結構、キツイ映画で、グッタリしましたから、
本書のアタックも読んでて思わず力が入りました。

アイガー北壁 Nordwand.jpg

これ以降は戦後のお話で、まずは東西に分かれたドイツとベルリン。
トンネルやキャデラックのダッシュボードの裏側に隠れ、東から西へ国境越えを図るお話です。
なにかNHKで見たような気もしますが、「トンネル」という映画もありましたね。

「JFK」は兄である"ジョー"との因縁が興味深かったですね。
もともとケネディ家としては長男を政界入りさせるつもりだったのが、
第二次大戦中、V1ロケット基地への攻撃で戦死・・。
そして病弱な次男"ジョン"にお鉢が回ってきた・・ということです。

John F. Kennedy and Joseph P. Kennedy Jr.jpg

最後は「サダム・フセイン」。
今年は「カダフィ大佐」が世界を賑わせましたが、
10年前の「世界の荒くれ者」といえば、この人です。
スターリンとは違い、身内を信用して周辺を固めますが、
息子のウダイとクサイはプレーボーイでやりたい放題・・。
エジプトのムバラク大統領夫人の目の前でウダイが「毒見係」を撲殺したときには
さすがのパパ・フセインも、このバカ息子を始末しようとしたそうです。。

uday-hussein.jpg

しかしこのサダムやカダフィといった独裁者たち、麻原ショーコーとかってのは、
往生際が悪いですね。だいたい隠れてみっともない捕まり方をしています。
その点だけでいえば、ヒトラーは潔かったと思ってしまいました。

saddam_Gaddafi.jpg

かなり楽しめた1冊でした。
本書のタイトル、「戦場のクリスマス」は最初のエピソードだけで、
クリスマス気分を味わった・・というほどのものではありませんでしたが、
第1次大戦から2003年まで、確かに日本人好みのエピソード満載で、
実にいい気分転換にもなりました。

クノップ本としては、「アドルフ・ヒトラー五つの肖像」と「ヒトラー権力掌握の二〇ヵ月」を
今度、読むつもりでいます。「ホロコースト全証言」はちょっとなぁ・・。
しかし翻訳されていない「SS」とか、「スターリングラード」もぜひ読んでみたいですね。



















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