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ヒトラー時代のデザイン [切手/ポスター]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

柘植 久慶 著の「ヒトラー時代のデザイン」を読破しました。

2000年に発刊された文庫で253ページの本書。
すでに絶版なのもあって、内容が不明ながらも、タイトルと表紙に惹かれて
懲りもせずに古書を購入してしまいました。
著者はフランス外人部隊にいた過去を持つ、自分も若い頃から知っている有名な方で、
アクション小説やグリーンベレー などのノンフィクション、「ロンメル将軍―砂漠の狐」など、
いろいろと書かれていますが、手を出すのは今回がはじめてです。

まず、本書を手にとってパラパラめくってみると、なんと驚いたことにオールカラー・・。
文庫サイズながらもほとんど1ページに1、2枚のカラーの絵葉書などが掲載されており、
今回は「大当たり」の予感・・。
どうも、著者はかなり年季の入った軍事書簡やコインなどのコレクターのようで、
彼の秘蔵の品々を簡単な解説で紹介しているものでした。

ヒトラー時代のデザイン.jpg

ちなみに表紙の主役のティーガー戦車は1944年の占領地フランスで発売されたカレンダーで、
左下のシュトゥーカも同様、その隣は1936年ベルリン・オリンピックの切手、
右下はその舞台オリンピア・シュタディオンと
「前畑ガンバレ!」専用の競泳プールが写った絵葉書です。

Berghof hitler.jpg

第1章は「アドルフ・ヒトラー」と題して、カラーの肖像画、ポスターに絵葉書を紹介します。
ヴィトゲンシュタインが見たことのあるポスターも出てきますが、
本書で紹介されるものはほとんどが絵葉書で、有名なポスターの図版が
当時そのまま絵葉書となっていたことが理解できます。
また、絵葉書の発行元はエヴァ・ブラウンがバイト?していた「ホフマン写真館」であり、
ヒトラーの写真家、ハインリヒ・ホフマンは儲かってたんだろうなぁ・・と想像できますね。

Hitler,H_Hoffmann&H_Goering.jpg

そして白黒の方が歴史的に重要な場面が多い・・と書かれているように
オーストリア併合後(アンシュルス)、両親の墓を訪れるヒトラー・・というものは初めて見ました。
こないだ、このシーンを読んだばかりなので、特に印象に残る一枚です。
さらに山荘ベルクホーフのカラーの美しい絵葉書が数点。
「ヒトラーと少女」というタイトルの生誕51周年記念切手の原画は、
「あ~、あの切手ね・・」と、知っている構図なのでちょっと比較・・。

hitler stamp.jpg

第2章は「ベルリン・オリンピック」です。
以前に紹介した大会ポスター数点に加え、大会関係者に記念品として配られた
「功労メダル」も原寸写真で出てきました。
他にもバッジに入場券など大会グッズ満載で
特に切手シートにはヒトラーとゲッベルスの直筆サインが入ったお宝も・・。

Olympic 1936 medal.jpg

続く第3章「ヒトラーの帝国」では、まずニュルンベルク党大会の絵葉書(ポスター)からです。
しかも1933年から1939年まで連続で・・。同じ年でも複数のデザインがあったんですね。
なお、1939年は9月2日に開催予定でしたが、その前日にポーランド侵攻・・。
未発行となった幻の絵葉書のようです。

reichsparteitag 1934.jpg

SASSヒトラー・ユーゲントに以前紹介したこともある警察の絵葉書(ポスター)と続き、
ここでまたマニアックは珍品が登場・・。
ブッヘンヴァルト収容所で警備に当たるSS隊員用の食堂限定通用金券(3RM)」です。

個人的に一番ビックリしたのがコインです。
「授権法成立1周年記念5マルク銀貨」と「ヒトラー首相就任記念」の銀のメダル。
後者はほとんど現存していないそうで、ヒトラーの顔の入ったコインというのは
初めて知りました。

hitler_medal_1933.jpg

まだまだドイツ少女団(BdM)のシリーズと国防軍兵士が勇気と戦友愛を見せる絵葉書、
兵科ごとの軍旗を描いた21枚の完全揃いが1ページづつ紹介され、
40年のコレクション歴を誇る著者でさえ「この1組以外も目にしたことがない」とちょっと自慢?

勲章と徽章もカラー写真でいくつか紹介。
鉄十字章から一般突撃章、戦傷章Uボート章クリミア・シールドもすべて原寸。
他に母親十字章も出てきますが、「ナチ党10年勤続章」というのは初めてですねぇ。

nsdap-long-service-medal-award-stormtrooper.jpg

当時、最高の肖像画家であったというクンツ・マイヤー=ヴァルデックが描く、
"戦艦ロイヤル・オーク撃沈男"プリーンや、"砂漠の狐"ロンメル、"戦車親父"グデーリアンなどの
ヒーロー絵葉書もプロマイド代わりで国民に大変人気があったようです。

Willrich Rommel Portrait Propaganda Card.jpg

第4章は「ヒトラーの宣伝」。
外国人志願兵ではいきなりスペイン義勇兵(青師団)の12枚セットの絵葉書が・・。
白黒の写真の絵葉書ですが、これはレアだな~。。
1941年の「青師団記念メダル」まで登場。素晴らしい・・。

division-azul_MEDALLA.jpg

表紙のティーガー戦車のカレンダーは週ごとに切り離して使うタイプで、
52週間分繋がっているという貴重品です。
FW-19088㎜高射砲列車砲突撃砲、スキーを履いた山岳兵にUボートまで
週ごとに実にバラエティに富んだカラー写真です。

第5章は「証明書・郵便物・切手」で、軍隊手帳では1936年の鷲の翼が広がっていないタイプと
1939年発行の鷲の翼が広がっているタイプの両方を紹介します。
こういうのを見ると「大脱走」の偽造シーンを思い出しますね。。
ヒムラーの署名が入ったSS隊員の身分証明書も、終戦後にコレを持っていると
戦犯に問われるため、ほとんどが廃棄された・・ということです。

Wehrpass.jpg

占領地で発行された切手も面白いですね。
特にドイツ・アフリカ軍団のシンボルを描いた専用切手・・。珍しいなぁ。
じ~・・・っと見ていると、ラーメンが食べたくなってきます。。

afrika corps_palmtree.jpg

最後の第6章は「謀略の小道具」として、ベルンハルト作戦の偽札ニセ切手を紹介。
ここでも連合軍側に撒いた「宣伝ビラ」が楽しめました。
アンツォ上陸モンテ・カッシーノ攻防戦でのものですね。
そして、日独伊の枢軸3国が一緒に戦う、イタリアの絵葉書で終了です。

per il nuovo ordine socialeper la civilta.jpg

事実上、文庫のカラー写真集ですから、ガン見しながらも1時間半で独破してしまいました。
古書を100円で購入しましたので、まったく文句はありません。
それどころかシリーズで続編が出たとしても定価の790円で買ってしまいますね。
このような第三帝国のデザインを、やれプロパガンダだのと評価する向きも多いですが、
ナチス、ヒトラー批判を前提とすることなく、純粋にデザインを歴史とともに振り返る・・
という本書のような姿勢があっても良いんじゃないでしょうか?
「コレは初めて見た・・」というのが多かったように、コレクター目線で語られた本書は、
自分のようなコレクター魂を持った人ならば、かなり楽しめると思います。



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