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写真で見る ヒトラー政権下の人びとと日常 [ナチ/ヒトラー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

マシュー・セリグマン著の「写真で見る ヒトラー政権下の人びとと日常」を読破しました。

昨年、発刊されたこの英国人3人による共著は、パラパラと本屋で立ち読みし
たくさん掲載されている写真と、そのクオリティから面白そうだな~と思っていましたが、
350ページで3990円という結構良い値段がするので、やっぱり「図書館」で借りてみました。。。

写真で見る ヒトラー政権下の人びとと日常.jpg

第一章「警察国家」では、1933年に政権を握ったナチ党によって、ヒトラーに都合の悪い法律を
廃止する一方、SA幕僚長レームらの殺害で知られる「長いナイフの夜」事件など
過去に行った違法行為を合法化したという話に触れ、特に興味深かったのは、
このような改定の結果、1939年までにそれまで3つしかなかった「死刑の罪」が
40以上に増えた・・という部分です。
もちろん、ヒトラーが嫌悪する犯罪・・「子供の誘拐」などは真っ先に死刑・・だそうです。

Ernst Röhm, Adolf Hitler, Rudolf Heß, Joseph Goebbels und Wilhelm Frick.jpg

この章ではSSゲシュタポ、そして強制収容所が作られていった経緯も簡単に解説されますが、
国民による「密告」では48歳の女性が仲の悪い家主をヒトラーの悪口を言ったと密告し、
この家主はゲシュタポにより逮捕、人民裁判で死刑判決、そして処刑・・
という例も紹介されています。

「抵抗運動」の章では、有名なハンスとゾフィー・ショルの「白バラ」や
「エーデルヴァイス海賊団」といった市民による抵抗組織だけではなく、
国家機密を知る立場の組織も紹介します。
以前の海軍元帥フォン・ティルピッツの孫で空軍省に勤めるハッロ・シュルツェ・ボイゼンが
ドイツ空軍の情報を収集し、ソ連にその情報を提供したなどで知られる「赤いオーケストラ」。

Schulze-Boysen.jpg

ここでもシュタウフェンベルク大佐の「ワルキューレ」作戦に関する、軍部の抵抗組織も
大きく取り上げられています。
また、名将として名高いフォン・マンシュタインが暗殺計画の参加を拒否して、終戦を迎えるまで
最高司令官であるヒトラーに忠実であり続けた・・と写真つきで紹介されますが、
これは、ちょっと極端すぎますねぇ。
マンシュタインについて、たった数行で片づけるのもヒドイ気がしますし、(というより、
ワルキューレ作戦に参加しなかった軍人は臆病者のナチという前提が好きではないんですが・・)
ヒトラーに罷免されているのに、終戦まで忠実だった・・とか、あまり意味がわかりません。。。

Time_1944_01_10_Erich_von_Manstein.jpeg

「芸術文化とプロパガンダ」では当時それほど普及していなかったラジオを大いに活用するため、
宣伝大臣ゲッベルス曰く「最先端大衆感化装置」こと、このラジオの普及を目指して、
廉価版の「国民ラジオ301型」を生み出します。
この301型とはナチスの政権獲得日である1933年1月30日という日付が
国民の記憶に残るものとして付けられた「型番」だそうです。

Volksempfänger.jpg

「青少年」の章では、「永遠の少年」フォン・シーラッハヒトラー・ユーゲントの登場です。
写真もなかなかで、特に共産党員に殺されたノルクスくんを主役にしたプロパガンダ映画、
「ヒットラー青年」もその一場面が掲載されていました。

HITLERJUNGE QUEX.jpg

続く「女性」の章は、女性に対するヒトラーの保守的な考え方が
カトリックの世界では受け入れられ、例えば「中絶」に対する罰など、
ドイツのカトリック教会もこうした対策を支持します。

子供を沢山生むことで受章される「母親十字章」の写真も掲載されていますが、
そのための政策「結婚資金貸付法」によって結婚する者は無利子で借りることができ、
子供をひとり生むたびに、25%が返済免除になったということです。
ということは、4人産んだらチャラですねぇ。
しかし現実には沢山の子供を育てられるような広さの住宅がない・・という
人口増加に伴う、住宅建設を疎かにしていたナチス政策の失敗も挙げています。

LuftwaffeHelferin.jpg

このようなナチスの政策失敗例では大学に対するものも紹介されています。
インテリ層を嫌っていたナチスは大学の定員数を大幅に減らしたうえ、
ユダヤ人やナチスに従わない大学教授が解雇されたことで、大学の質は
見る影もないほどに落ち、授業もナチス思想を導入するなど、お粗末なものとなって、
その結果、軍事に不可欠な「科学」、「工学」分野の人材が育たなかった・・。

「スポーツ」の章ではヒトラー・ユーゲントなど若者のスポーツや
1936年のベルリン・オリンピックだけではなく、
ほとんど強制的な大人のスポーツ活動促進の様子が詳しく書かれています。
55歳までのすべての男性を対象に体力テストが行われるようになり、
走り幅跳びは3m以上飛び、1㎞走は6分以内、3㎏のボールを6m以上投げること。。。
当然、背中を痛めたり、靭帯やアキレス腱を切る人も続出・・。
不合格者には、再訓練が待っており、就職にも影響します。いや~、厳しいなぁ。。

Mädchen im BDM.jpg

後半の「大量虐殺」の章になると、ハイドリヒアイヒマンといった、その筋のお馴染み達が登場。
ワルシャワ・ゲットーアインザッツグルッペンといったキーワードが中心です・・。

「軍と兵役」では1941年10月の第6軍司令官ライヒェナウの訓示が紹介され、
「この戦いの目的はユダヤ・ボルシェヴィズムを打倒することであり、ユダヤ人はドイツ民族に対して、
悪逆の限りを尽くした。それに対する報復を行わなければならない」。

Generaloberst Walter von Reichenau, Oberbefehlshaber der 6. Armee.jpg

そして再び、「名将と謳われた」マンシュタインが登場し、第11軍を前にして、
「恐ろしいボルシェヴィズムを広めようと企む、ユダヤ人には容赦ない処置を取らなければならない」。
絞首刑にされたパルチザンの写真では、国防軍統帥局長ヨードルの「パルチザンなどは吊るすなり、
八つ裂きにするなり、好きに始末すればよい」という言葉を載せています。

Sommer 1942. Brutaler Partisanenkampf.jpg

これらの司令官らの発言によって、刺激されたドイツの一般兵士がその言葉に従って行動した・・
と、していますが、この対ソ戦については、ドイツ軍の行った残虐行為だけしか出ていませんから、
いわゆる「目には目を・・」的な激しい殺し合いというのは、まったく伝わりません。
ロシアだけでなく、英米の指揮官たちが、ドイツ軍と戦う際にナチの狂信者どもについて
何と言って自軍の兵士たちを鼓舞したのか・・。それは日本軍に対しても同様ですし、
その日本軍にしても、「鬼畜英米」と表現しています。

ユダヤ人であろうが、なんだろうが、戦争で人を殺すことに違いはなく、兵士たちの
心理的負担を軽減するために、「相手は人間以下の動物である」と指揮官が語るのは
何処の国でもやっていることだと思います。
パルチザンについても、当人たちからしてみれば「英雄」ですが、相手からしてみれば
一般市民のフリした、汚いテロリストであり、このような連中に対しては、
最近でもどこかの国の大統領は、容赦なく殺して、さっさと水葬してしまうのは当然としています。

またちょっと脱線ぎみになってしまいました・・。
最後は西側連合軍の無差別都市爆撃のなかで生き続ける市民の様子と、
東からベルリンに近づいてくるソ連軍に脅える人々・・。

BERLIN 1945 woman.jpg

写真はそうですね~・・2ページに一枚くらいはあるでしょうか?
なかなかバラエティに富んだ白黒ながらも鮮明な写真ばかりで、未見のものがほとんどでした。
例えばヒトラーユーゲントや少女団(BDM)のプロパガンダ的なものから、
強制収容所からアインザッツグルッペンによって虐殺された人々の山・・。

唯一、??と思ったのはヒトラー暗殺未遂事件に関与した、ベック参謀総長の写真ですが、
これはフォン・ボックなんじゃないかな~?
全般的に国防軍については、あまりに極端で納得できない部分もありました。
グイド・クノップ本を参考にし、変なとこだけ抜粋って印象ですね。

ヒトラー政権下の人びとと日常2.jpg

最初の2~3ページ読んで思ったのは、「これ字がデカいなぁ」というものです。
そしてこのようにタップリの写真ですから、350ページといっても1日半で読めてしまいます。
当然、内容もあまり細かいことや、特定の事件の経緯も最小限の記述に止められていて、
この第三帝国での出来事をわかりやすく読めるものに仕上がっているとは思います。

その意味で、なんとなく学校の「教科書」的な印象を受けた本書は、
この世界に興味を持たれている10~20代の若い人・・なんかにもおススメですが、
ちょっと値段が高いのと、時々(鮮明な)死体写真が出てくるのが難点かも知れませんね。



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西部戦線の独空軍 [ドイツ空軍]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ドナルド・L. コールドウェル著の「西部戦線の独空軍」を読破しました。

相変わらず「副題」もないアバウトなタイトルの「朝日ソノラマ」から掘り出し物の1冊を紹介します。
原題は「JG26」。ドイツ空軍に詳しい方ならおわかりの通り、これは「第26戦闘航空団」、
通称「シュラゲーター」の誕生から終焉までを綴ったもので、原著はトム・クルーズの映画が
大ヒットした当時の発刊。副題にも「Top Guns of the Luftwaffe」と書かれているように、
その基地の場所から英空軍にも「アブヴィル・キッズ」と恐れられた精鋭航空団の
570ページにも及ぶ興亡史です。

西部戦線の独空軍.jpg

「序文」を書くのはアドルフ・ガーランドで、彼が開戦当時に所属していた航空団こそ「JG26」であり、
以降もプリラーやクルピンスキーといったエース・パイロットも名を連ねています。
ちなみに航空団という単位は陸軍でいうところの「連隊」にあたると思いますので、
例えば第△△戦車連隊戦史とか、SSデア・フューラー連隊戦史のような位置づけでしょうか。。

1938年、ラインラントのデュッセルドルフの基地に新設された「第234戦闘航空団」。
その後「JG132」、そして「JG26」と改称するわけですが、この地域のヒーローの名を
名誉称号にしようということで、正式に「シュラゲーター」と命名されます。
隊員は誇らしく「シュラゲーター航空団」と書かれたカフタイトルを袖に付け、
機首を黄色く塗った新型戦闘機メッサーシュミット Bf-109E-1に乗って大戦に挑むことになります。

Schlageter Cufftitle.jpg

翌年のポーランド戦では西部の見張り部隊として参加はしなかったものの、
英仏との「まやかし戦争」中、唯一の戦果として、英空軍のブレニム双発軽爆撃機を撃墜、
この戦果は後のエース・パイロット、ヨアヒム・ミュンヘベルク少尉によるものです。

いよいよ始まった西方作戦ではルフトヴァッフェの中核として一路西へ飛び立ちます。
ダンケルクでも英国本土への大撤退作戦を空から援護する、ハリケーンやスピットファイアとの空戦、
その間にシュトゥーカ急降下爆撃機が英国の輸送船に攻撃を仕掛けます。
そしてここでも1日の戦果としては先例のない4機撃墜を果たすのはミュンヘベルク・・。

Major Joachim Müncheberg.jpg

6月にはJG27からシュラゲーター第Ⅲ飛行隊長に着任したガーランド大尉が登場し、
JG51のメルダース少佐とともに撃墜記録を更新し、早くも騎士十字章を受けることに・・。
見事、電撃戦に勝利を収めると26歳のガーランドが、この「JG26」の司令に任命されるのでした。

Adolf Galland JG26.jpg

当然、「シュラゲーター」とは何者?ということもキッチリ書かれていて
19歳で第1次大戦に従軍し、戦後はフライコーアを経て、ヴェルサイユ条約に基づき
ラインラントを占領していたフランス軍に対する、鉄道爆破というレジスタンス的な行為により、
1923年に銃殺されたアルベルト・レオ・シュラゲーターというナショナリスト・ヒーローだそうです。
う~ん。勉強になりました。なんとなく白いアリゲーターみたいなのを想像してましたから。。

white Alligator.jpg

「西部戦線の独空軍」という意味では代名詞と言えるバトル・オブ・ブリテンの火蓋が切って
落とされますが、足の遅い爆撃機の護衛として駆り出されるJG26の戦闘機パイロットたちは
苦戦を続け、自らのことを「鎖に繋がれた犬」と自嘲的に呼びます・・。

1940GermanPilotsGuns.jpg

1941年になるとエジプトへ侵攻したイタリア軍のために、英領のマルタ島を無力化するべく、
JG26にも1個飛行中隊に出撃命令が下ります。
そして選ばれたのは若干22歳の騎士十字章拝領者、ミュンヘベルク中尉率いる
第7飛行中隊、通称ロットヘルツ(赤いハート)です。
航空団はそのインシグニアの他に中隊ごとにもマークを持っていて、
このロットヘルツは特に有名ですね。
それにしても、多分いままで出てきたのを一度も読んだことにないミュンヘベルクが
この前半の助演男優並みに登場するとは嬉しい驚きです。

jg26 Insignia.jpg

一方、ドーヴァー海峡ではJG51から飛行隊長としてやってきたヨーゼフ・プリラー
40機撃墜の柏葉騎士十字章を獲得した際の戦闘報告を紹介し、
その後も本書の主役の一人として随所に登場してきます。
司令のガーランドも戦闘機隊総監としてベルリンへ転出しますが、シャルンホルストとグナイゼナウ、
プリンツ・オイゲンのブレスト艦隊のドーヴァー海峡突破作戦のために帰還し、
JG26を含む航空団から成る一大護衛作戦を見事成功に終わらせます。
さらには連合軍によるデュエップ奇襲作戦の護衛機スピットファイアとの戦闘・・。
シュラゲーターだけで27機を撃墜します。

JG26.jpg

1943年からはフランスやベルギーのドイツ軍拠点を狙った米国昼間爆撃に対する迎撃任務
忙殺される、新司令ヨーゼフ・プリラーと、Bf-109に代わり新たに配備され始めた
フォッケウルフ FW-190の戦いです。
ガーランドの弟"ヴーツ"ガーランドも飛行隊長として編隊の先頭に立って活躍し、
B-17B-24といった四発重爆と護衛のスピットファイアとの激しい空中戦を繰り返します。

Wilhelm-Ferdinand Galland.jpg

本書はドイツ側の戦果だけではなく、連合軍側の資料も詳しく分析して、誰が誰を撃墜したのか・・
もさまざまな記録や証言から検証しています。
例えば、激しい攻撃を受けエンジンの止まったB-17の米国パイロットの証言では、
「全員に脱出を命じ、機外に飛び出したが、ドイツ戦闘機2機が真っ直ぐ私に向かって飛んで来た!
そして50メートルまで接近した2機のパイロットは、パラシュートの私に向かって敬礼し、
機首を反らして飛び去って行った!」

Galland JG 26.jpg

しかし航続距離の短いスピットファイアから、P-47サンダーボルトやP-51マスタングといった
強靭で重武装の護衛戦闘機が次々と登場してくると、堂々たる大編隊でドイツ本土まで
爆弾の雨を降らす四発重爆を迎撃する、シュラゲーターの損害も大きく増えていきます。
そして遂に"ヴーツ"ガーランドもサンダーボルトの餌食に・・。

A group of early P-47 of the 56th group. 1942.jpg

プリラーが列機と共に「史上最大の作戦」で活躍したエピソードや
その後もJG26以外の戦闘航空団も果敢に戦った西部戦線が紹介され、やがては
B-24リベレーターを撃墜し、西部戦線で100機撃墜した稀にみるパイロットとして
「剣章」受章者となったシュラゲーター司令のプリラー・・。
ですが、173機撃墜記録を持つ、百戦錬磨の第Ⅱ飛行隊長、エミール・ラング大尉は戦死。

Emil Lang.jpg

出撃回数452回という物凄い数字を持った第Ⅲ飛行隊長クラウス・ミートゥーシュも
あの「マーケット・ガーデン作戦」に対する迎撃で撃墜されてしまいます。
そしてそのミートゥーシュの後任としてやってきたのは、23歳ながらも東部戦線で
177機を撃墜した柏葉章を持つ、ヴァルター・クルピンスキーです。

Major Klaus Mietusch JG 26.jpg

そんな彼ですら、もはや戦局は絶望的であり、続く「バルジの戦い」、
そして1945年元旦の「ボーデンプラッテ作戦」による戦闘機隊の壊滅的な大損害によって、
大した戦果も挙げることは出来ません。
特に「ボーデンプラッテ作戦」は味方の対空砲による損害は、自分の予想を超えており、
クルピンスキーも被弾するなど、プリラー大佐も怒り立って
この狂っているとしか言えない作戦の責任者、爆撃機隊のペルツ少将宛てに報告を書きます。

Oberstleutnant Joseph Priller arrivant avec sa BMW 327.jpg

やがてプリラーはJG26に別れを告げ、西部方面の昼間戦闘機隊総監に任命され、
クルピンスキーもガーランドのジェット戦闘機隊「第44戦闘団」へと移って行きます。
それでもシュラゲーターは戦い続け、4月にはベルリンへの護衛飛行に駆り出されます。
12機のFW-190Dがそれと知らされずに護衛したのはヒトラーの地下壕へと向かう、
フォン・グライム上級大将と女性パイロットハンナ・ライチュです。。

Adolf Galland and Walter Krupinski.jpg

やっぱりドイツ軍の興亡史というものは、「爽快」から始まって「絶望」で終わる・・
というのは避けられません。
本書もこのようにガーランドを筆頭に、多くのエース・パイロットが登場しますが、
全体的には決して、爽快な空戦記と呼ぶには程遠いものでした。
特に後半は以前に紹介した「ドイツ空軍の終焉」と同様のやるせない展開。。

まともに訓練も消化していない配属されたばかりの新米パイロットが語るシーンでは、
「中隊の将校たちは指導することを自分たちの責務だとは考えず、この負け戦の
数ヵ月を生き延びることしか頭になった・・」というのが印象に残っているくらいです。

Copy of Adolf Galland's Messerschmitt that he flew out of Abbeville.jpg

それでも本書のような特定の航空団のボリュームたっぷりの興亡史というのは大変珍しく、
ちょっと他には思い当りません。
なんか「メッサーシュミットBf109E-4 ドイツ空軍不屈のエース 」というDVDも欲しくなりましたが、
次は「東部戦線の独空軍」を・・。でも、なぜかコッチはプレミア価格になってるんですよね。。






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ドキュメント 封鎖・飢餓・人間 -1941→1944年のレニングラード- [ロシア]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

A.アダーモビチ, D.グラーニン著の「封鎖・飢餓・人間」を読破しました。

独ソ戦における戦いのなかでも特異な戦役ともいえる「レニングラード包囲」。
ドイツ軍は当初、北方軍集団によって、この帝政ロシア時代の首都占領を目指しますが、
結局は、ヒトラーが街全体を包囲することで「飢死」させることを選択します。
有名な「キエフ包囲」や「スターリングラード包囲」の対象となったソ連軍やドイツ軍ではなく、
ここで包囲されたのはレニングラード市民です。しかもその期間は3年弱・・。
この詳細については以前、ソールズベリーの「攻防900日」という本を紹介していますが、
今回は当時の包囲下にあった市民へのインタビューや当時の日記などによって、
彼らの恐ろしい生活ぶり・・。そして、どのようにして生き延びることが出来たのかを検証しています。

ドキュメント 封鎖・飢餓・人間.jpg

最初にレニングラード包囲に付き物の特に有名な写真が出てくると、
この写真の親子へのインタビュー・・という凄い「掴み」から始まります。
1942年春に従軍記者が撮ったこの写真の母親は34歳、左で杖を突く女性は13歳の娘。
「ひどい栄養失調で、これはもう、足というより、皮に包まれた骨です。
まるでお婆ちゃんのように醜い姿になって…」と、当時を回想します。

leningrad_1.jpg

当時の医師たちへのインタビューでも、最初に死んだのは筋肉質で脂肪の少ない男性で、
女性も脂肪質がなくなると筋肉や血管が透けて見えるようになって、
老人のような姿になった・・と、証言しています。

このドイツ軍に包囲された1941年の冬は、食料事情は最悪で、
配給されるパンは一日わずか125gだけ・・。
125gというと、6枚切りの食パン、2枚・・という量です。
労働者や前線の兵士はほんの少し多く与えられましたが、それでもとても十分ではありません。
ちなみに本書ではドイツ軍はほとんど登場せず、せいぜい銃剣の先に「白パン」を刺してかざし、
降伏するように呼びかける程度です。。。

The Siege of Leningrad.jpg

犬も猫も食べてしまった市民は様々なものを食料として活用します。初めて聞いた話では、
昔の北極探検者の話を思い出し、「革バンド」に手をつけるというもの。。。
しかし昔の「なま革」とは違い、科学的に加工された革バンドは、煮ても煮ても煮溶けず・・。
なんとか食べてもなんてことのない、まったく味気ない代物だったということです。
これには思わず、チャップリンが「黄金狂時代」で靴を食べるシーンを思い出しました。

The Gold Rush chaplin.jpg

「からし」で美味しいパンケーキができるという噂が広まると、からしを手に入れようと
凄い行列が・・。しかし焼きあがったパンケーキを2枚も食べると、ツーンとくる激しい痛みが広がり、
大勢の人が腸をやられて死んでしまいます。

若い民兵も普段のように立ち話をしている途中に突然、座り込み、
「あぁ、なんだか体の調子が・・」と、喋り方がゆっくりに・・そして、そのまま・・。

Leningrad blockade, 1942.jpg

病院でも飢餓状態の人を入院させますが、200gのバターと食パン半個を
一度に食べてしまったその人はその晩に死んでしまいます。
当時の医師も、このような状態の人間に多量の食物を与えてはいけない・・ということを
知らなかったそうです。

冬になって凍りついたラドガ湖の「氷の道」は市民に食料と希望をもたらしはじめます。
そして、衰弱した市民の疎開も始まりますが、病んでやつれた人々には
この30㎞の「氷の道」はあまりにつらく、多くが脱出の途中で・・または脱出後に死んでいきます。
猛スピードで飛ばす車が隆起した氷で揺れると、衰弱した母親の腕の中から、
乳飲み子も飛んで行って・・。

Ladoga 1942.jpg

問題なのは飢餓だけではなく、厳しいロシアの寒さも大敵です。
ガソリンや油もなく、工場や施設向けの燃料用として、地元の防空隊の兵士によって
木造家屋は次々に取り壊されます。
実はこの兵士とは、18~19歳の飢えて衰弱した若い娘たちで、
鉄の棒で一日がかりで家を取り壊し、大ゾりで運ぶという力仕事です。
ここで出た「薪」の一部は、彼女たちに分配されますが、市民にとって、
この「薪」は大変重要なものでもあります。

市民は本を燃やして暖をとり、それが無くなれば、家具も燃やして寒さを凌ぎます。
市場にタンスを持って行っても誰も見向きもしないのに、その場でタンスを壊して
薪にすると、20ルーブルで買い手がつきます。
それでも多くの住居はドイツ軍の砲撃によって、窓も吹き飛んでいます。。

leningrad-faim2.jpg

飢えた子どもたちはパン泥棒やかっぱらいという手段にもでます。
配給のパンを店員から受け取った女性の手から、サっと奪い取ってムシャムシャ・・。
怒り狂った女性たちが逃げられないよう店のドアを閉め、その少年を殴り始めますが、
少年は必死でパンを呑み込み続けます・・。

工場で働いていた女性から「戦車に塗る油があるからいらっしゃいよ」という話では、
「それが実にすばらしいものなんですよ。みんな喜んで食べましたし・・」。
こうなってくると、なにが食べれて、なにが食べられないのか、もう、良くわかりません。。。

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その工場では生産が始まったばかりのカチューシャ・ロケット砲の砲弾も作りますが、
ここで働くのは熟練工ではなく、男たちの代わりにやって来た女性たちです。
工場内でさえマイナス22℃という酷寒での難しい作業に泣き出すひとも・・。
また、別の工場では前線に出た親の代わりに12~13歳の少年、14歳の少女が
作業台に届くようベンチや箱に乗って作業をします。
家が爆破されることを恐れる少女は大事な「お人形」も連れてきて・・。

女性にはさらに過酷な仕事・・「死体集め」も待っています。
毎日、死体を集めては特別な車で墓地まで運搬。
とにかく冬の間にこの作業をしないことには、「疫病」が生きている人を脅かすことになるのです。

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このように一生懸命に働き、義務を果たした市民だけではなく、「腹黒い人間」も紹介されます。
市場で買ったバターのかけらをその場で呑み込んだニーナは死にかけますが、
実はそれは表面にバターを塗った「石鹸」で・・。
さらに託児所の食糧を横領して、横流しした職員・・。子供たちは当然死んでいきます。

優しかった母親でさえ、飢えからおかしくなっていき、配給券を無くしてしまった子供を
追い出してしまうという話も出てきますが、
それでも親子の愛情はやっぱりあるもので、母親は、子供により多く食べてほしいと願うものです。
娘のワーリャは言います。「食べなきゃわたし、死ぬわ。でも私が食べてママが食べなきゃ、
ママが死ぬわ。でも私はママなしでは生きられないの」。

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アパートでは自主的に各部屋を巡回する女性も。
ある部屋でベッドでこと切れた若い母親を見つけますが、1歳半の子供は生きています。
そして赤ん坊は母親の身体の上を這って、乳を吸っています・・。
このあたりは、ほとんどホラー映画のような雰囲気です。

最初の、最も苦しかった冬をなんとか生き残ったレニングラード市民。
1942年の春を迎え、パンも300gに増えて大喜びです。
植物園を訪れて、よろい草という名の雑草もお腹いっぱい食べたり・・。

Leningrad_02.jpg

全体的な印象としては、「攻防900日」の「戦争は女の顔をしていない」バージョン・・
といった感じでしょうか?
ただし、原著が書かれた当時はまだまだ「ソ連」の時代ですし、
著者の一人はレニングラードの前線でドイツ軍と対峙していた兵士だったということですから、
ソ連と市民たちをかなり「英雄視」している風でもあります。
そんなこともあってか、噂に聞く「食人鬼」などの話は、さすがに出てきません。

We will defend the city of Lenin!.jpg

それでも訳者あとがきに書かれている、1941年の11月に1万人、12月に5万人が餓死。
最悪だった1月と2月には、一日の餓死者が1万人を超える日もあったということですが、
当局も実態を掴みきれなかったようで、全体の死者数も100万人は下るまい・・ともされています。

ソ連時代という意味では1974年の「レニングラード攻防戦」がソ連映画の大作して有名ですが、
2009年に英/ロ合作の「レニングラード 900日の大包囲戦」というのもDVDで出てました。
主演はミラ・ソルヴィノにガブリエル・バーンです。
内容はイギリス人ジャーナリストのケイトは現地で激しい空襲に合い、孤立・・。
アメリカ人ジャーナリストの恋人フィリップとも離ればなれになり・・という感じのようですが、
ガブリエル・バーンは昔からファンなので、ちょっと気になります。

レニングラード 900日の大包囲戦.jpg

本書は上下巻ですが、1冊200ページちょっとなので、2日で読みきる程度のボリュームです。
これなら特に上下巻にする必要もなかったと思いますが、
1986年発刊という、やや古い本ですからね・・。









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制服の帝国 -ナチスSSの組織と軍装- [軍装/勲章]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

山下 英一郎 著の「制服の帝国」を読破しました。

去年の10月に発売された792ページで6195円という大作版「制服の帝国」です。
著者による大判の写真集「制服の帝国」は、「アルゲマイネSS」と「武装SS 」の2冊が
出ていましたが、すでに廃刊となっていることから、出版社も変え、
ハードカバーとして集約した「総集編」ということです。
amazonなどでは「シリーズ3部作を・・」と書かれていますが、もう一冊は
以前にココでも紹介した「SSガイドブック」のことでした。
しかし、これが「制服の帝国」のシリーズだったとは知らなかったなぁ・・。

制服の帝国.jpg

この重たい本書を開くと、まずオットー・ギレSS中将とフーゴ・クラースSS大佐の
カラーのポートレートがお出迎え・・。
そして6ページほど肩章、襟章、カフタイトルなどがカラーで紹介されます。

Hugo Kraas9.jpg

第1部は「SSの組織」で、「SSガイドブック」が丸々収められています。
これは1997年の出版ということもあり、当時の間違いの修正や加筆も行っているようで、
今回、「SSガイドブック」と読み比べてみましたが、ページ数も数10ページ増えています。
特に「アインザッツグルッペン」に関する章も大分、加筆されていました。

写真もほとんど一緒ですが、来日したヒトラー・ユーゲントと交換で訪独した
「大日本青年団」の写真などは、さすが日本人の著者によるもの・・といった感じですね。
ドイチュラント連隊がダブルのSS夜会服を着てダンスをしている写真も好きです。
この第1部だけで350ページもありますが、この内容については
SSガイドブック」のレビューをどうぞ・・。

Hugo Kraas,LAH_gesellschaft anzug.jpg

第2部、「写真で見るアルゲマイネSS」は、「制服の帝国―アルゲマイネSS写真集」と
同じ内容なんだと思いますが、この「一般SS」とも呼ばれる黒服のSS隊員たちの写真と
その解説はなかなか勉強になりました。
それは著者が「ナチス・ドイツの制服にはすべての機能が付随しており、個人の権限や
位置づけを示しているものは軍装(制服)なのである」ということから本書のタイトルが
付けられたと言うように、一枚のなんてことない無名なSS隊員の写真でも
その軍装や徽章にまで、実に細かく分析しています。

Unity Mitford SS.jpg

終戦も近くなって編成された武装SSの超マイナー師団の襟章などに興味もあって
結構、勉強していたものの、SSの元祖で中心でもあるこのアルゲマイネSSの
襟章については、実は良く知らなかったことに、自分でも驚きました。
例えば、左襟は階級章ですが、右襟は「SSルーン」ではなく、
各連隊ごとの番号が振られていたりとか、
その大管区の番号の書かれたカフタイトルをしていたりとか・・。

Allgemeine SS.jpg

有名人も「キング・オブ・アルゲマイネSS」ことハイスマイヤーに、
ハンス・アドルフ・プリュッツマンといったSS大将連中。
ゲシュタポのミュラーと人事局長シュトレッケンバッハの両SS中将が語り合う写真や
バルコニーで談笑するSD隊員のなかにもシェレンベルクSS少佐が写っていたりして
これらの写真のほとんどが未見のモノでした。

Hans-Adolf Prützmann meets with Heinrich Himmler in the Ukraine.jpg

第3部「写真で見る武装SS」は、第1章の「オリジナル写真で検証する階級と軍装」が
またまた楽しめました。
SS二等兵から写真で軍装を詳しく紹介するんですが、ここでも初期のSS隊員が多く、
武装SSが編成される前の「ライプシュタンダルテ」や、いわゆる「SS-VT」、
そして「髑髏部隊」の襟章の違いが良くわかります。

一般的な「SSルーン」を付けられるのはエリート連隊である「ライプシュタンダルテ」のみ。
SS-VTのドイチュラント連隊は「SSルーン」の中に数字の「1」を入れた「SS1」、
「SS2」がゲルマニア連隊です。

1. SS-Standarte_Deutschland.jpg

「髑髏部隊」はトーテンコープフの襟章ですが、このドクロが左向きだと武装SS師団であって、
右向きは強制収容所警備部隊だということです。
また、左向きといっても水平と垂直があって、これも当初は垂直ドクロであったことから
「古参兵」は垂直ドクロを着用し続けたとか、さらに両襟ドクロもあったりしますし、
前線から警備部隊に戻ってきたりなどというパターンも考えると、
一概にこの襟章だけでは判断できそうもありませんね。

totenkopf tabs 2.jpg

各階級の将軍ではシュタイナーSS中将やゼップ・ディートリッヒSS大将などが
登場してきますが、あるSS准将が唯一付けている勲章が見たことのないもので、
これは「ドイツ赤十字社会奉仕章」というものだそうです。
初めて知りましたが、良く書かれていますねぇ。
この勲章とSSの将官というアンマッチがなんともいえません。。

Ehrenzeichen des Deutschen Roten.jpg

また、デメルフーバーSS中将の紹介文は笑えました。
「古参」のうえ、ドイチュラント連隊やゲルマニア連隊の連隊長を歴任したものの、
ノルト」の臨時師団長を勤めた程度で、外地駐屯の武装SS司令官という閑職ばかり・・。
かつての同僚や部下であるシュタイナーやギレ、ビットリッヒらが軍団長となり、
騎士十字章を受章しているのに比べ、喉元を飾るのは、
お情けで貰ったフィンランドの「自由解放勲章一級」であり、かなりイタイ・・。

Demelhuber.jpg

ただ、「第2部」からは写真が縦向きから、頻繁に横向きになったりするので、
本も横にしたりとちょっと大変でした。1ページにフルフルの写真ですから
そのほうが大きくなるのはわかりますが、なんせ、この本は重たいんで・・。

その他、SS戦争報道部隊である「クルト・エッガース連隊」が詳しく解説されたり、
製パン中隊や野戦食の味見や配給の様子など、既存の武装SSものでは、
なかなか紹介されないところにも光を当てています。
それはやはり「制服から歴史を読み取ろう」とする本書のあり方であって、
ただの軍装モノだけでもなく、SS興亡史としても成り立っている・・という感じを持ちました。

Young crowds greet Hitler at Fallersleben Volkswagen Works cornerstone ceremony.jpg

なお、著者の「制服の帝国」という本は3月にも「シリーズ 制服の帝国 -ナチスの群像-」
というのが上下巻で発売されていて、これは全く別のもののようですが、
重複している部分も多少はあるのかも知れません。
また「ナチ・ドイツ軍装読本」も「増補改訂版」が出ましたが、テーマ的にどこまで違うのか、
ちょっと悩みどころですね。















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戦う翼 [戦争映画の本]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ジョン・ハーシー著の「戦う翼」を読破しました。

お馴染み「朝日ソノラマ」の米軍爆撃機モノの1冊です。
著者は第2次大戦に従軍記者として参加し、1946年には原爆「ヒロシマ」を書いたことで
有名のようで、本書の発刊当時は米国著作家連盟会長という方です。
「空飛ぶ要塞」こと、B-17"フライング・フォートレス"を舞台とした小説である本書。
原著は1959年の発刊、タイトルは「The War Lover」です。
ノンフィクションだった「ワイルド・ブルー」との比較も楽しみです。

戦う翼.jpg

一人称形式の本書の主役「私」は、B-17四発重爆の副操縦士であるボーマン中尉です。
25回と定められている爆撃任務も、あと1回で全うし、生き延びて帰国できるという状況・・。
そして朝からの出撃のため、夜中に叩き起こされ、2時半から朝食、そしてブリーフィングに
臨むわけですが、いざ出撃となっても、作戦中止となることもしょっちゅうです。

今回も「小説」なので、細かいことは極力控えて、簡単なストーリー展開を書こうと思いますが、
コレがなかなか難しい・・。
時系列で進む展開ではなく、回想で初陣まで遡ったりするので、
さまざまな出撃と爆撃任務のエピソードと乗員との人間関係がちょっとわかりづらいんですね。

memphis-belle.jpg

そんななかで本書の特徴である、各々の機のニックネームが細かく出てくるところは楽しめました。
例えば、映画「メンフィス・ベル」のような機の名前がバンバン出てくるんですが、
主人公の搭乗機は「いかす娘」号です。
機の前方に描かれたセクシー系の女の子の絵が定番ですが、この「ノーズ・アート」と呼ばれる
ものは、以前から興味があったので、「ディナより美人」号や「社長仲間」号など、
どんな絵なのかとか、オリジナルの名前を想像したりして・・。

B17_Texas Raiders.jpg

このような絵を描く専属の画家がいたようで、本書でもなぜか従軍してしまった50代の画家が、
安っぽい考えしかない連中の陳腐な考えで、同じような娘たちの絵を彼らの飛行機に描く・・
というエピソードがあり、そんな画家の苦悩も知らず、完成した自分たちの裸の娘の絵を
搭乗員たちは涎を垂らして、何時間も眺め続けるのでした。。。

cockrail hour.jpg

正操縦士のマローは26歳と、この世界では年長で、真の指揮官であると同時に、
大柄で文句が多く、怖いもの知らずを装うこの男を、主人公の副操縦士は大嫌いという関係です。
普通この爆撃機は正操縦士に命を預けた、家族のような信頼感で結ばれたモノ・・
というのが一般的ですが、本書ではドロドロした感じで、爽やかな空軍小説ではありません。

Witchcraft.jpg

「天使の足どり」号と「恋人同士」号、「消耗品6世」号、「でぶっちょマギー」号に
「往復切符」号、「ぶるぶる」号、といった連中を編隊を組み、何度も出撃。
そしてBf-109やFw-190、Ju-88の迎撃戦闘機の編隊との空戦も繰り広げられます。
しかし密集した編隊を崩してはならない爆撃機パイロットは、目の前に何度も
突っ込んでくるドイツ軍戦闘機の前には回避行動すら取れません。
やがては見たこともないMe-210にDo-217E、He-113なども一式揃って参戦してきます。
隣りでは空中分解して落下する「ねずみは止まらない」号の姿が・・。

The Virgin Hunter.jpg

そして「いかす娘」号最後の出撃・・。
本書は小説ですが、最後が特別印象的なので、勢いで書いてしまいますが、
機首部分に被弾し、機首射撃手のブリントは片足を吹き飛ばされてしまいます。
そしてスピードも落ち、編隊からも落伍した「いかす娘」号・・・、
この窮地に正操縦士のマローは神経をやられてしまい、機も制御を失います。

こうして初めて正操縦士となった主人公はドーヴァー海峡での不時着水を試みます。
執拗に追いかけているドイツ軍機にスピットファイアが護衛に・・、
このラスト空戦はなかなか手に汗握るもので、なんとか無事着水した「いかす娘」号ですが、
精神に異常をきたしたマローは、プロペラの羽根にぶら下がり、「彼女」と共に沈んでいきます。。
このマローの最期は、昔見たグレゴリー・ペックの「白鯨」のラストシーンを彷彿とさせますね。

MobyDick Gregory Peck.jpg

そしていま、このタイトルでamazonで検索したら、コレ映画になってました!
主演はなんとスティーヴ・マックィーン・・!。そしてこの偏屈な正操縦士マロー役のようです。
いや~、まったく知らなかったなぁ~!
大脱走」のヒルツ大尉をやる一年前の映画のようですね。

warlover.jpg

映画の原題も、日本での邦題も一緒・・。
「戦う翼」なんて映画、聞いたこともありませんでした。
とりあえずDVD安いし・・。
それにしても、こういう古い本でも発見があるって、ホント面白いですね。

McQueen 戦う翼.jpg







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