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第二次世界大戦 ヒトラーの戦い〈8〉 [ヒトラーの戦い]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

児島 襄 著の「ヒトラーの戦い〈8〉」を読破しました。

ノルマンディ上陸以来、パリも開放し、順調に進軍してきた西側連合軍。
しかし補給困難から完全な停止状態に陥ります。
第21軍集団を率い、再三に渡って最高司令官アイゼンハワーに注文を付ける
英国のモントゴメリー・・、そして第12軍集団を率いる米国のブラッドレーは
モントゴメリーの傲慢さを耐えているものの、隷下の第3軍、パットンは爆発寸前です。

ヒトラーの戦い⑧.jpg

その米第3軍では落ちた士気や衛生面についての注意が伝達され、
疲れた兵士たちの間では、それに対する批判めいた「小話」が流行します。
兵士が汚れた手でパンを掴まないようにフォークを胸ポケットに入れ、
"ナニ"を引っ張り出すために、ズボンの前に紐をぶら下げていることに満足する規律にうるさい将軍。
「用を済ませて"ナニ"をしまうとき、手は使わんのかね?」
「使いません、閣下。そのときには、このフォークを使いますんで・・」。

11月にはマレーネ・ディートリッヒが慰問に訪れます。
彼女らと食事し、ショーも堪能したかのパットンですが、その感想は
「酷い低俗なショーだ。人間の知性に対する侮辱だ」。なんともパットンらしいですね。
このようなパットンの標的となったのはドイツG軍集団のヘルマン・バルク
参謀長のフォン・メレンティンが守るメッツ(メス)です。
しかし米軍の攻撃の前に敗走を続けるドイツ西方軍に起死回生の作戦が。。

Balthasar Woll &Hermann Balck.jpg

「ラインの守り」作戦。3個軍でアルデンヌからベルギーのアントワープを目指すこの作戦を
ヒトラーから聞かされた西方軍司令官ルントシュテットは4年前に同じ方面の作戦・・
電撃戦」を実施したことと比較し、「悪天候を選び、空軍の支援もなく、
たった1ヶ月の準備期間とは・・」と諦め気味。
ヒトラーのお気に入りの若き元帥、B軍集団のモーデルを「おべっか使い」と批評する
ルントシュテットですが、そのモーデルも老元帥を「前世紀の遺物」視しているという
ソリの合わない両元帥・・。それでも今度ばかりは意見の一致をみます。

Gerd von Rundstedt.jpg

この「超」がつくほどの「極秘」作戦計画ですが、
スコルツェニーによる米軍背後への「グライフ作戦」のために
「極秘挺身作戦」として英語を話せる参加希望者を各軍司令部に募集してしまいます。
連合軍のスパイにも知られかねない、この大っぴらな部下募集にスコルツェニーは
中止を進言しますが、「白痴的ミス」としながらも、ヒムラーは首を横に振ります。

結局、募集で集まった志願兵のうち「A級」とされる英語のスラングまで話せるものは僅か10人・・。
しかも全員水兵であり、「E級」のYes,Noしか喋れないものは100人にも及びます。
そして「ムッソリーニ救出」の離れ業を演じた指揮官に夢が膨らむ彼らは作戦内容を
「パットンの誘拐だ」、「最高司令官の殺害だ」、「ドイツ人捕虜の解放だ」と語り合います。

こんな展開だと、映画「バルジ大作戦」のヘスラー大佐と若き戦車長たちによる
「パンツァーリート」の大合唱シーンが頭の中では流れ続けますねぇ。
ちょっと独破を中断して、DVD観るか・・、でも今回もガマンです。。。



遂に始まったドイツ軍、起死回生の「アルデンヌ攻勢」。
順調なスタートの報告を聞いたヒトラーは上機嫌でデーニッツに語ります。
ゼップ・ディートリッヒのSS第6戦車軍がアントワープを攻略したら、
港内にいる連合軍艦艇を逃さぬことだ」。

American Sherman M4 Tank at the Battle of the Bulge.jpg

バルジ大作戦」並みに書かれたこの作戦は、当然主役のひとり、パイパー「大佐」や
総統護衛旅団」のレーマーが攻撃命令を受けたものの、損害が多いと見込み、
独断で迂回した話なども出てきますが、どちらかと言えば「バストーニュ」の攻防戦が中心で、
有名な「Nuts!」が英米軍将兵にも広く伝わり、
士気も高揚し、ブラッドレーも使った・・など、防御側の連合軍が中心です。
さらに窮地に陥った米軍を救うために、モントゴメリーが指名されると、
この英米間のドロドロ話がこれでもか、と続いていく展開です。

Joachim Peiper4.jpg

特に英国の新聞各紙が、アルデンヌ戦線の「退勢」はアイゼンハワーとブラッドレーの責任であり、
モントゴメリーはその「敗勢」を食い止めた「アルデンヌの英雄」である」という論調から、
モントゴメリーも自分を「連合軍地上軍司令官にせよ」との書簡をアイゼンハワーに送りつけたことで
腹に据えかねたアイゼンハワーが「解任する」と言い出したくだりが楽しめました。
これを聞いたパットンも、もちろん日記に記します。
「モントゴメリーの下で働くことなど絶対に御免だ。そうなったら辞任する」。

Montgomery Patton.jpg

英米連合軍である以上、英国人の自分が解任されることはない・・と
タカをくくっていたモントゴメリーですが、後任が同じ英国元帥であるアレキサンダーになりそうだ
という情報が入ると、一転、大慌てで、アイゼンハワーに「詫びの電報」を送ります。
とりあえずは一件落着し、年も明け1945年を迎えます。
いよいよドイツ本土への侵攻作戦へと移る西側連合軍ですが、ここでも
北部のモントゴメリーか、南部のブラッドレーのどちらが攻勢をかけるのか・・という問題が・・。
元々は英国vsドイツの戦争であって、主役は自分たち・・、
米国はそれを補佐する程度という立場の英軍。
しかしすでに米軍の戦力は英軍を大きく上回っており、これに納得できない米軍という図式です。

eisenhower-montgomery-bradley.jpg

すると、この消えかかっていた問題に「火に油を注ぐ」人物が登場・・。
英軍参謀総長のアラン・ブルックです。
米軍指揮官の「経験不足」を懸念するブルックは、リッジウェイ中将などは
「同階級の最良の英将軍以上ではないにしても同等だが、より上級の指揮官は
未経験者ばかりだと」して、「ブラッドレーは第12軍集団司令官になる前に、わずか数週間、
軍団長勤務をしただけであり、アイゼンハワーに至ってはそれほどの経験もない」。

Alan Brooke.jpg

また、「バルジの戦い」とそれに続く「ボーデンプラッテ作戦」でスケジュールの狂った連合国空軍は
粘り強いドイツ空軍と生産能力から、登場してきたMe-262ジェット戦闘機
Ar-234ジェット爆撃機が量産されると、6月にはドイツ軍に制空権が移るとまで危惧し、
一方、ヒトラーはジェット機の生産を2倍にするようハッパをかけ、
ガーランドジェット戦闘団も承認します。

me 262_J.jpg

鳴りを潜めていた東部戦線では、チャーチルの要請に答える形で、最後の大攻勢が始まります。
すでにかつてのソ連領土を取り返していたソ連軍ですが、ポーランドを含め、
ドイツまで侵攻するための「名分」として「復讐」を掲げます・・。

そして「東プロイセンこそ、ヒトラーの食人種ども、ドイツの野獣の棲家だ」との合言葉のもとに
解き放たれた狼群が羊群が襲うが如く、無慈悲で非道な行為が行われ、
撤退した第4軍のホスバッハや中央方面軍司令官のラインハルトも解任。。

Ostpreussen 1945.jpg

1月27日にはソ連軍がアウシュヴィッツに辿り着きます。
本書は戦争が中心ですから、ここまでホロコーストや強制収容所、ユダヤ人問題にはほとんど
触れられていませんでしたが、ここに至って、このアウシュヴィッツの絶滅システムが
所長ルドルフ・ヘースの証言とともに詳細に解説されます。

Rudolf Hoess_7.jpg

この第8巻は全体的に西側連合軍が中心でした。
かと言って、東部戦線がお座なりにされているわけではなく、
ドイツ陸軍参謀総長として奮戦するグデーリアンや彼に情報を提供するゲーレンなども
随所に登場しては、東部戦線の危機を訴え、西部の兵力を回すよう進言するものの、
ヒトラーからは「東部は東部で戦え!」と叱責されてしまいます。

いよいよ1945年の最終戦ですが、あと2巻・・、結構、濃そうで楽しみですね。





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