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第二次世界大戦 ヒトラーの戦い〈6〉 [ヒトラーの戦い]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

児島 襄 著の「ヒトラーの戦い〈6〉」を読破しました。

やっと半分が終わった「ヒトラーの戦い」との戦い・・。
当初の不安をよそに、正直、かなり面白いので、ガンガン読み進めてます。
この第6巻は1943年のイタリア情勢から始まります。
シチリア島に連合軍が上陸し、ヒトラーの盟友、ムッソリーニのファシスト体制にも
崩壊とイタリア降伏の危機が迫ります。

ヒトラーの戦い⑥.jpg

ムッソリーニを救出すればイタリアは息を吹き返し、連合軍はショック受けて気力も失うだろう」
という、ヒトラーの発言に沈黙するOKW統帥局長ヨードル
「イタリア贔屓」の南方方面軍司令官のケッセルリンク・・。
一方、シチリア島では上陸した米第7軍司令官のパットンが、
メッシーナへの英第8軍司令官モントゴメリーとの競争に勝つべく、
部下の兵士たちを叱咤激励します。
しかし、訪れた野戦病院で「神経がやられました・・」と語る兵士をビンタ。
大好きな映画「パットン大戦車軍団」そのままのエピソードが詳しく語られます。

PattonSlap.jpg

ローマではヒトラー直属としてムッソリーニの行方をひたすら追い求めるスコルツェニー
ムッソリーニの娘で外相チアーノ夫人でもあるエッダの父親へ宛てた手紙をゲットした
ゲシュタポのカプラーの活躍もあって、徐々にその行方を突き止めていきます。
最終的には有名なグラン・サッソへのグライダーによる救出作戦に成功するわけですが、
この全世界を驚かせたスコルツェニー一世一代の活躍もなかなか詳細です。

Skorzeny met de bevrijdde Mussolini.jpg

並行して語られるバドリオのイタリア新政権が連合軍と降伏交渉を行う過程も
ムッソリーニを逮捕せよ」に負けず劣らず書かれていますが、
あちらがイタリア寄りだったのに対して、本書はあくまでヒトラーが主役ですから印象も違いますね。
イタリアの「裏切り」によって引き起こされたケッセルリンクの容赦のない命令によって
イタリア兵の武装解除も行われます。
燃料や装備一式をそのままドイツ軍に引き渡し、夜逃げ同然のように姿を消す部隊もあれば、
ドイツ軍と共に戦い続けることを宣言する部隊も僅かながらにも存在するのでした。。

italienische Kriegsgefangene.jpg

無事救出されたムッソリーニを温かく迎えたヒトラーですが、まずは新政府の初仕事として
「誰よりも4倍も悪質なチアーノの処刑」を求めます。
しかし外相リッベントロップからドイツ側が協力したチアーノ脱獄計画がヒトラーに知らされます。
これはRSHA長官ハイドリヒの後任、カルテンブルンナーによる作戦であり、
チアーノの妻が隠し持つ秘密資料「チアーノ日記」をドイツ側に引き渡すのと交換に
夫共々チアーノ一家を亡命させる・・というエッダの要望に乗ったもので、
誰がムッソリーニを処刑したか」の美貌の情報員ビーツ夫人も登場。
本書では、彼女はチアーノよりも、エッダ夫人に同情的で、
この作戦の中止命令を受けて「残酷だ・・」と泣き崩れてしまいます。

Edda Ciano_Italian military officer.jpg

ヒトラーが中心となった第三帝国興亡史ですから、どうしても政治や陸軍の話が多くなりがちな
本書ですが、たまには空軍、海軍が小話程度に出てきます。
1943年11月、空軍の新兵器展示会・・。ジェット戦闘機Me-262やV1飛行爆弾、V2ロケット
そして空対地ミサイルのHs 293といった最新兵器が勢揃いです。

hs293.jpg

これらをヒトラーに説明するのは航空機総監のミルヒ元帥・・ではなく、いいところを見せようと
「自分がやる」と言い出したゲーリング空軍総司令官兼帝国元帥です。
しかし故障により戦闘機一機が急遽不参加となっていたことなど知る由もないゲーリングは
一機づつプログラム通りに読み上げながらヒトラーに解説・・。
「次は高高度戦闘機、FW Ta-152、乗員一名」と読み上げた場所には、
双発爆撃機Ju-88の改良型が・・。そして、その後もズレたまま進んでしまい・・。

Göring hitler.jpg

東部戦線では3度目の冬を迎え、チェルカッシィの包囲陣から脱出の様子などが語られたのち、
ソ連の圧力の前に、A軍集団司令官のクライスト元帥、南方軍集団司令官のマンシュタインも罷免。

続く1944年4月のクリミア半島の防衛戦はかなり詳しく書かれていて楽しめました。
特に第17軍司令官イェネッケ上級大将がセヴァストポリが包囲されたことは
前A軍集団司令官のクライストの責任であるとして、撤退を進言した結果、
解任どころか「軍法会議」という憂き目にあう展開や、ブラウヒッチュ解任後、
陸軍総司令官をも兼務してきたヒトラーがこの時期、フーベを高く評価し、
彼を陸軍総司令官の第1候補と考えていたことなど
苦境に立った東部戦線も司令官の交代が頻繁に行われます。
ちなみに本書では「上級大将」という階級は存在しません。。。

Erwin Jaenecke.jpg

西側連合軍の上陸の噂がドイツ国内に流れ始めると、兵員不足を心配する市民たちは
ちょっとしたジョークを囁き合っていたようです。
ある老人が招集され、第1次大戦に参加した時の所属兵科を聞かれて、こう答えます。
「いや、第1次大戦には参加しませんでした。年を取りすぎていましたんで・・」。

For freedom and life, popular storm! 1944.jpg

そして噂通り、西側連合軍による「史上最大の作戦」が始まります。
ここでも「パットン大戦車軍団」を彷彿とさせる、「ビンタ事件」で首になりかけている
パットンを温存するといった、連合軍による欺瞞工作がこれでもか・・と解説され、
このような連合軍の裏話では、「性の処理」問題がとても勉強になりました。
モスクワ攻防1941」に書かれていたソ連の司令官たちの「陣中妻」。
本書では西側連合軍の司令官たちも同様であったことが書かれていて、
アイゼンハワーが英国女性運転手サマーズビー大尉と公然と交際していたり、
副官のブッチャー大佐も婦人部隊士官と、参謀長のスミス中将は従軍看護婦で、
パットンも女性運転兵、そのパットンの参謀長ヒューズ少将は女性秘書・・、
この調子だと、米軍の将官はほぼ全員、こんな感じじゃないでしょうか?

Kay Summersby.jpg

モンテ・カッシーノを廃墟と変え、一路、ローマへ進軍する連合軍。
「ローマを破壊した男として歴史に記録されたくない」と語ったというヒトラーの話は、
ちょっと驚きでした。その数ヵ月後には「パリは燃えているか?」と言うんですからね。
やがて無防備都市となったローマに連合軍が到着する場面では、
「フレデリク准将の第1特別部隊が・・」という記述が・・。
これは「悪魔の旅団」ですね。危なく見逃すところでした。
さすがの荒くれ部隊だけあって、この夕暮れ迫るローマで同士討ちをやっています。

Liberation of Rome, June 1944.jpg

遂にノルマンディに上陸した連合軍を迎え撃つドイツ軍の主役は、
第21装甲師団のフォイヒティンガー少将です。
連合軍からもその存在を誤魔化していた、戦車70両を揃えた唯一の装甲師団であり、
第12SS装甲師団「ヒトラー・ユーゲント」バイエルライン率いる戦車教導師団が到着する前に
連合軍を追い落とす任務を西方B軍集団司令官のロンメルから命ぜられます。
ですが、3個師団の増援を求め、到着したクルト・マイヤー(本書ではフリッツ・ヴィットではなく
最初から師団長です)からも「一緒に突撃すべし!」と訴えられ、困惑します。

Rommel_bei_21__Pz_Div.jpg

ノルマンディの海岸を艦上から眺める連合軍首脳たち。
「ジュノー」、「ソード」の各ビーチから砂塵をあげて内陸へ向かう英軍戦車・・。
モントゴメリーは皮肉たっぷりにアイゼンハワーに語りかけます。
「オマハとユタからの連携はゆっくりでも構いません。我が軍はお待ちします」。

juno-beach.jpg

シェルブール陥落の責任を問われた、第7軍司令官のドルマン中将は青酸カリで自殺。
西方装甲軍司令部は爆撃を受け幕僚17人が死亡し、司令官シュヴァッペンブルク中将も負傷。
西方軍司令官ルントシュテットも解任され、後任のクルーゲと言い争うロンメル。。

general-friedrich-dollman.jpg

このようなドイツ軍の現状にも関わらず、粘り強いドイツ軍によって思うように進展しない作戦と
ロンドンを襲い始めた「V1」による大きな被害に、チャーチル首相は、
「ロンメル暗殺」作戦を陸軍特殊部隊 SASに命じるのでした。
そういえば、そんな小説もありましたねぇ。アフリカ戦線でしたけど・・。





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