SSブログ

攻撃高度4000 -ドイツ空軍戦闘記録- [ドイツ空軍]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

カーユス・ベッカー著の「攻撃高度4000」を読破しました。

ここのところ読み倒している「ルフトヴァッフェ興亡史」の元祖にして本命とも言えそうな
有名な1冊のやっとの紹介です。
まぁ、有名なのでいつでも古書が買えるという気でいましたが、軍事モノの取り扱いでは
これまた有名な古書店「軍学堂」が11月に神保町に引っ越してきましたので、
早速繰り出して、割と綺麗な本書を2000円で購入しました。
著者のカーユス・ベッカーは海軍興亡史「呪われた海」を以前に紹介していますが、
副題は「ドイツ海軍戦闘記録」なんですね。本書は「ドイツ空軍戦闘記録」ですから、
海空の姉妹本なのかも知れません。

攻撃高度4000.jpg

1939年8月25日、ポーランド侵攻直前から始まる本書は
ライヒェナウの第10軍司令部に同行しているリヒトホーフェン少将が
翌朝からの侵攻作戦の中止命令を受ける場面からです。
「我々は停止命令をもらっていないので空軍なしでも進撃しますぞ」と話すライヒェナウに
空軍の無線でベルリンに問い合わせ、深夜になってようやく陸軍にも停止命令が入るという
間一髪の状況です。

German Stuka Dive Bombers over Poland, 1939.jpg

そして9月1日、遂にドイツ軍は侵攻開始。He-111爆撃機の護衛に就く、Me-110には
後に夜間戦闘機乗りの大エースになるヘルムート・レント少尉の姿も・・。
Ju-87シュトゥーカ急降下爆撃機もポーランド軍港を襲い、駆逐艦2隻を撃沈。
このシュトゥーカを中心とした陸軍の進撃を援護する攻撃方法は良く出てくるものですが、
本書では高射砲大隊の陸軍砲兵の如き活躍も取り上げており、イルザの戦いでは
20ミリ中隊が歩兵たちのうっぷんを晴らし、88ミリ中隊もポーランド陣地に襲い掛かります。
しかし、夜間になるとポーランド軍もこの高射砲をなきものにしようと忍び寄り、
激しい白兵戦も繰り広げます。

Deutsche Flak 8,8 cm in Nowegen.jpg

続くノルウェー、デンマーク侵攻の「ヴェーザー演習」作戦では、
オスロの飛行場奪取を目指す降下猟兵を乗せたJu-52輸送機が悪天候のため引き返します。
しかしそんなことを知らずに予定通り援護に向かうレントらのMe-110・・。
待てど暮らせど現れない降下猟兵、そして燃料も尽き、この駆逐中隊での占領を試みます。
強行着陸、そして後方機銃を外して飛行場を制圧。
オスロで戦闘中の連絡を受けたJu-52も引き返してきます。

bf110-3_german-wwii.jpg

西方作戦では、あのエーベン・エメール要塞を攻略したグライダーと降下猟兵の活躍、
そしてアルベール運河の西40キロに降下し、ベルギー軍を混乱させた200体の「わら人形」部隊・・。
ロッテルダムではHe-111爆撃機百機が目標に向かいます。
しかしオランダの降伏に伴う、爆撃中止命令が間に合わず、57機が爆弾を投下・・。
さらに快進撃してきたSS部隊「ライプシュタンダルテ」が降伏していたオランダ兵とぶつかり、
戦闘開始・・。やめさせようと司令部の窓へ走り寄ったシュトゥーデント将軍は
頭部に弾丸を受けて重傷を負ってしまいます。
う~ん。パンツァー・マイヤー戦記にはどう描いてありましたかねぇ。

フランスで電撃戦を見せるグデーリアン。マース川ではレルツァー将軍との共同作戦です。
シュトゥーカが急降下し、Do-17の綺麗に並んだ爆弾が敵陣に吸い込まれます。
また、戦闘機もガーランドメルダースがスピットファイアとハリケーンを屠っていきます。

Messerschmitt vs. Spitfire.jpg

そして迎えたダンケルク・・。ゲーリングが「総統、我が空軍にお任せください!」。
これにヨードルは苦々しげに「またあいつ、大口を叩きおって」。
目前にして停止命令を受けたクライスト装甲集団とクルーゲの第4軍。
クルーゲはリヒトホーフェンに「もうダンケルクを空から取られたかな?」。
本書は空軍だけでなく、陸軍の将軍もちょくちょく出てくるので、これがまた楽しめます。

Besprechung_deutscher_Offiziere_Generalfeldmarschall Hans-Günther von Kluge.jpg

ドーヴァー海峡での船団攻撃。護衛で飛び立つ戦闘機パイロットはトラウトロフト
ヴァルター・エーザウといったエースたちです。ブラウヒッチュ元帥の息子、
フォン・ブラウヒッチュ大尉もシュトゥーカで貨物船2隻に命中させています。

Walter Oesau.jpg

そして始まった「バトル・オブ・ブリテン」。
この戦いを回想するのは、エース・パイロットとしてはエーリッヒ"ベイブ"ハルトマンより、
ベイビーフェイスだと思っている第54戦闘航空団のヘルムート・オスターマン少尉です。
特にMe-109でロンドン爆撃の護衛を繰り返し、燃料切れの赤ランプが灯るなか、
ドーヴァー海峡上を陸地を求めて飛び続ける緊張・・。

Max-Hellmuth Ostermann.jpg

クレタ島の戦い」も降下猟兵たちの甚大な損害を紹介しながら詳細に描かれ、
本土防衛のカムフーバー・ラインで知られる「夜戦総監」のカムフーバー将軍の登場・・
と続き、「バルバロッサ作戦」からウーデットの失脚と自殺・・。

Paratroopers Crete '41.JPG

1942年に南方方面軍司令官となったケッセルリンクが北アフリカで戦うロンメルのために
地中海の要衝「マルタ島攻略」に挑みます。
この天然の岩の要塞に1000㎏の徹甲爆弾を叩きこみ、陥落寸前に追い込むものの、
海空による占領作戦にイタリアが難色を示したことから、再び、攻勢に出ようとする
ロンメルも窮地に立たされます。
それでもイタリア軍を中心にクレタ島の5倍の戦力で自信マンマンで準備を進めるシュトゥーデントに
ヒトラーは「占領後、英艦隊が出動したら、イタリア軍がどんなざま見せるかわかるだろう。
最初の無線が入るや、シチリアの港に引っ込んで、貴官の降下猟兵は島で孤立するのだ」。

Generaloberst Kurt Student Fallschirmjäger.jpg

北アフリカに上陸したのは自称「空軍最古参の少尉候補生」、21歳のヨッヘン・マルセイユです。
とっくに少尉になれていたはずが、訓練期間中の素行の悪さから彼の評定表には
「パイロットとしての不品行」というヘンテコな書き込みがされていたそうです。
そしてこの地での彼のロンメルをも凌ごうかという大活躍と
世界一ともいえるエース・・「アフリカの星」が消えるまで・・が紹介されています。

Marseille_9.jpg

デーニッツのUボートを支援する空軍の戦いも1章が割かれています。
特にソ連へ物資を運ぶ第2次大戦で最も有名な船団「PQ17」にJu-88とHe-111が襲い掛かり、
Uボートと共に24隻という大戦果を挙げたこの戦いを読むと
いや~、久しぶりにUボートものを読みたくなりました。

A_formation_of_Heinkel_He_111.jpg

舞台は再びロシア・・。デミヤンスクホルムの包囲陣に空からの空輸に成功。
そしてスターリングラードで包囲された第6軍参謀長シュミット将軍
「補給は空輸に頼らねば」と第8航空軍団司令のフィービヒ中将に伝えます。
第6軍の高射砲師団を率いるピッケルトは参謀長シュミットと古くからの友人で
彼の日記を紹介し、パウルス司令官と共に脱出か否かを語った話はとても興味深いものです。

stalingrad Luftwaffe JU-52s made many resupply runs into the pocket.jpg

一方、本書の主役であり、不可能とも思える空輸を任された空軍と言えば、
飛行場へ迫るソ連軍を撃退するために、高射砲隊、修理班、補給部隊、
迷子グループをかき集めて、警戒部隊を編成。
リヒトホーフェンが探す第8航空軍団参謀長のハイネマン中佐も「第一線で機銃を撃っております」。

ルーデルやドルシェルといった爆撃パイロットも奮戦・・。しかしそんな努力も虚しく、
パウルスは最後にこう語ります。「想像できますかな、兵が古い馬の死体に殺到し、
その頭を割り、脳みそを生ですすっている姿を?」。

Sad End To German Soldiers In Stalingrad.jpg

ツィタデレ作戦」では37ミリカノン砲を装着し、急降下爆撃機から戦車襲撃機へと転身した
ルーデル・・・2年半の間にソ連戦車519両を屠った男が紹介され、
ドイツ本土に米軍も昼間爆撃を始めると、この最後の章では250㎏の爆弾を抱えたドイツ戦闘機が
迎撃に向かい、B-17B-24といった四発重爆を撃墜します。
そしてこの中隊長はハインツ・クノーケ中尉・・。「空対空爆撃戦隊」ですね。

B-17.jpg

最後のページでは「高名な夜戦パイロットも戦死した」として
プリンツ・ツー・ザイン・ヴィトゲンシュタイン少佐とヘルムート・レント大佐の最期・・。
特にヴィトゲンシュタインは巻頭の写真に登場し「夜戦パイロットの中の暴れん坊」と
紹介されていたので、どこで出てくるかとドキドキしていましたが・・・ぜんぜんでした。。。

lent.jpg

副題の通り、本書はこのような特定の「戦闘記録」が多いので、
過去に紹介した「ルフトヴァッフェ興亡史」に比べ、まったく違った味わいがあり、
さまざまなパイロットたちや前線任務の厳しさをドラマチックに理解できるものでした。
また、陸軍を支援する空軍という意味でも、有名な会戦と陸の将軍たちも
多く出てくることで、こちらの専門の方でも楽しめるんじゃないでしょうか。
さすが以前にオススメのコメントを頂いただけのことはある、とても充実した1冊です!



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