髑髏の結社 SSの歴史(上) [SS/ゲシュタポ]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
ハインツ・ヘーネ著の「髑髏の結社(上)」を読破しました。
原著は1967年、日本でも1981年にフジ出版から発刊された有名な一冊です。
フジ出版のものは昔から古書店で良く見かけて知っていました。
しかし箱入りでぶっとい背表紙に「髑髏の結社」と書かれている毒々しく、怪しげで、
いかがわしい雰囲気をプンプン発散したもので、立ち読みするには度胸も必要です。
そんな小心者のヴィトゲンシュタインは、人目を気にしてamazonで講談社学術文庫の再刊を
上下巻¥1500で購入しましたが、そのボリュームに負けず劣らず、恐ろしく充実した内容です。
過去に紹介した「ヒトラーの親衛隊」や「ゲシュタポ」、「SSガイドブック」などは
ベースは本書であると言って良いでしょう。
上巻はまず、SSが形成されていく過程とその中心人物となるヒムラーについての解説です。
一般的に「SS全国指導者」と訳されているヒムラーですが、
本書ではこの「ライヒスフューラー」を「帝国指導者」と訳しています。
あくまでイメージの問題ですが、SSという組織からすると、この「帝国指導者」というのは
個人的には気に入りました。
ヒムラーの生い立ちから入党する経緯については、他の書籍でも多く書かれていますが、
本書では、彼の「アーリア人思想」がいかにして生まれたのかを掘り下げています。
特に「血と土」のヴァルター・ダレに感銘し、後に彼を全国農民指導者として登用するほどです。
SSが拡大していこうという1929年以降は、フライコーアなどからバッハ=ツェレウスキ、
フリードリヒ・ヴィルヘルム・クリューガーやカール・ヴォルフといった後の大物連中が
早くも流入し、本書にも登場してきます。
1933年にヒムラーが「国家警察」の創設にヴェルナー・ベストを起用します。
彼はその後、ハイドリヒの右腕的な存在として、ゲシュタポを含む恐怖の警察機構を
創りあげて行きますが、現行法に依存する考え方がハイドリヒの怒りを買い
後に罷免されてしまいます。
このヴェルナー・ベストは本書では度々登場する重要人物で
後にデンマークの総督として過ごしますが、ユダヤ人問題には、尽く反対し
ヒトラー直々の命令にもこっそりと逆らい続けます。
まるでSSの悪の権化ハイドリヒの対極にあるという印象を持つ人物です。
SS隊員の純血にも当然触れられ、レーベンスボルンなどの他にひとつ面白い話がありました。
ヴァルター・クリューガーSS中将の母方にユダヤ人の血があることが判明したため、
彼の娘は婚約中のSS少佐との結婚が許されなかったということです。
そしてそのSS少佐とは、あのユーゴを征服したクリンゲンベルクです。
新興勢力であるSSの権力を拡大するということは、逆に言えばSS内部も
ここぞとばかりに自らの権力拡大を目論む人間の巣窟ということもあって
この「支配と権力と陰謀のジャングルを切り開く力のある者に優先権が与えられる」
という時代、その先陣を突き進むのはハイドリヒです。
しかし強制収容所を自分の支配下に置こうとするものの、テオドール・アイケには敗北を喫し、
オーレンドルフやシェレンベルクといった新鋭の知識人を要するSDも
ハンリヒ・ミュラーやアルトゥール・ネーベらの秘密/保安警察との役割の中でパッとせず、
そのミュラーとネーベというハイドリヒの部下2人もお互い足を引っ張り合います。
そして陸軍総司令官フリッチュに対するでっち上げスキャンダルが失敗に終わると
さしものヒムラーとハイドリヒも陸軍の復讐に恐れをなします。
「ドイツ参謀本部興亡史」ではこのブロムベルクとフリッチュ事件は
大変重要な事態となっていましたが、
この事件はSSという組織でもかなり、その存亡の危機にもなっています。
結局はSDと保安警察を統合し、「国家保安本部=RSHA」として
更なる勢力拡大を目指しますが、ポーランド侵攻からは、SSには新たなる敵も登場します。
上巻の500ページはここで終わります。。。
古い本なので、特別びっくりするような新たな話が出てくるわけではありませんが、
ひとつひとつが丁寧というか、実に濃く書かれていて
ロマンチックな夢想家ヒムラーと、リアリストで権力主義者のハイドリヒが
なんでも思うようにやれていたわけではないという感じがしました。
ハインツ・ヘーネ著の「髑髏の結社(上)」を読破しました。
原著は1967年、日本でも1981年にフジ出版から発刊された有名な一冊です。
フジ出版のものは昔から古書店で良く見かけて知っていました。
しかし箱入りでぶっとい背表紙に「髑髏の結社」と書かれている毒々しく、怪しげで、
いかがわしい雰囲気をプンプン発散したもので、立ち読みするには度胸も必要です。
そんな小心者のヴィトゲンシュタインは、人目を気にしてamazonで講談社学術文庫の再刊を
上下巻¥1500で購入しましたが、そのボリュームに負けず劣らず、恐ろしく充実した内容です。
過去に紹介した「ヒトラーの親衛隊」や「ゲシュタポ」、「SSガイドブック」などは
ベースは本書であると言って良いでしょう。
上巻はまず、SSが形成されていく過程とその中心人物となるヒムラーについての解説です。
一般的に「SS全国指導者」と訳されているヒムラーですが、
本書ではこの「ライヒスフューラー」を「帝国指導者」と訳しています。
あくまでイメージの問題ですが、SSという組織からすると、この「帝国指導者」というのは
個人的には気に入りました。
ヒムラーの生い立ちから入党する経緯については、他の書籍でも多く書かれていますが、
本書では、彼の「アーリア人思想」がいかにして生まれたのかを掘り下げています。
特に「血と土」のヴァルター・ダレに感銘し、後に彼を全国農民指導者として登用するほどです。
SSが拡大していこうという1929年以降は、フライコーアなどからバッハ=ツェレウスキ、
フリードリヒ・ヴィルヘルム・クリューガーやカール・ヴォルフといった後の大物連中が
早くも流入し、本書にも登場してきます。
1933年にヒムラーが「国家警察」の創設にヴェルナー・ベストを起用します。
彼はその後、ハイドリヒの右腕的な存在として、ゲシュタポを含む恐怖の警察機構を
創りあげて行きますが、現行法に依存する考え方がハイドリヒの怒りを買い
後に罷免されてしまいます。
このヴェルナー・ベストは本書では度々登場する重要人物で
後にデンマークの総督として過ごしますが、ユダヤ人問題には、尽く反対し
ヒトラー直々の命令にもこっそりと逆らい続けます。
まるでSSの悪の権化ハイドリヒの対極にあるという印象を持つ人物です。
SS隊員の純血にも当然触れられ、レーベンスボルンなどの他にひとつ面白い話がありました。
ヴァルター・クリューガーSS中将の母方にユダヤ人の血があることが判明したため、
彼の娘は婚約中のSS少佐との結婚が許されなかったということです。
そしてそのSS少佐とは、あのユーゴを征服したクリンゲンベルクです。
新興勢力であるSSの権力を拡大するということは、逆に言えばSS内部も
ここぞとばかりに自らの権力拡大を目論む人間の巣窟ということもあって
この「支配と権力と陰謀のジャングルを切り開く力のある者に優先権が与えられる」
という時代、その先陣を突き進むのはハイドリヒです。
しかし強制収容所を自分の支配下に置こうとするものの、テオドール・アイケには敗北を喫し、
オーレンドルフやシェレンベルクといった新鋭の知識人を要するSDも
ハンリヒ・ミュラーやアルトゥール・ネーベらの秘密/保安警察との役割の中でパッとせず、
そのミュラーとネーベというハイドリヒの部下2人もお互い足を引っ張り合います。
そして陸軍総司令官フリッチュに対するでっち上げスキャンダルが失敗に終わると
さしものヒムラーとハイドリヒも陸軍の復讐に恐れをなします。
「ドイツ参謀本部興亡史」ではこのブロムベルクとフリッチュ事件は
大変重要な事態となっていましたが、
この事件はSSという組織でもかなり、その存亡の危機にもなっています。
結局はSDと保安警察を統合し、「国家保安本部=RSHA」として
更なる勢力拡大を目指しますが、ポーランド侵攻からは、SSには新たなる敵も登場します。
上巻の500ページはここで終わります。。。
古い本なので、特別びっくりするような新たな話が出てくるわけではありませんが、
ひとつひとつが丁寧というか、実に濃く書かれていて
ロマンチックな夢想家ヒムラーと、リアリストで権力主義者のハイドリヒが
なんでも思うようにやれていたわけではないという感じがしました。