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鼠たちの戦争 [戦争映画の本]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

デイヴィッド・L. ロビンズの「鼠たちの戦争」を再度、読破しました。

ジュード・ロウ、エド・ハリス主演の映画「スターリングラード」の元ネタともいえる小説です。
年に一回はBSなどで放映する度に観てしまうので、ちょっと再読してしまいました。
最初に読んだのは7年くらい前でしょうか?
ソ連のスナイパー対その抹殺のために派遣されたドイツ軍のスナイパーの戦いに
女性スナイパーと政治指導員との関係といった概要的な部分は同じですが、
本書と映画はほぼ別物と言ったほうが良いでしょう。
タイトルの「鼠たちの戦争」とは、この廃虚と化したスターリングラード市内での
瓦礫の下や地下を這いずり回るような戦いっぷりをドイツ兵士が
「ラッテンクリーク」と呼んだことにまつわるそうです。

鼠たちの戦争.JPG

シベリア出身でモンゴロイド系の丸くのっぺりした顔立ちのザイツェフ曹長は
この地でスナイパーとして頭角を現し、政治指導員ダニロフにより
英雄として新聞へ掲載され、さらに新設のスナイパー養成学校の校長として
30名もの新人たちを教育することになります。

zaicev.jpg

ザイツェフはこのようにジュード・ロウとは似ても似つかぬ雰囲気ですが、
ジョセフ・ファインズが演じたダニロフも、デップリと太ったチビで眉毛もしっかり繋がっている・・
という風貌です。

小柄なことから<兎>の仇名を持つザイチェフの親友は、大柄で<熊>と呼ばれるヴィクトールです。
以前に読んだときはややこしくて覚えられなかった名前は「メドヴェージェフ」で、
今ではすっかり有名な名前になっているところが時代の流れを感じました・・。

新人スナイパーたちのなかには女性も何人か含まれており、
ここにはレイチェル・ワイズが演じたターニャが・・・。
本書でも恋に落ちるザイツェフとターニャですが、映画「スターリングラード」での
2人の絡みのシーンは非常に印象に残っています。
特にレイチェル・ワイズの半ケツ状態は、数ある戦争映画のなかでも
上位にランクインするほどのセクシー・シーンでしょう。。。

Weisz Enemy at the Gates.jpg

モシン・ナガンM91/30狙撃銃で200名にも上るドイツ将兵を狩り続け、
すっかり英雄となったザイツェフには「レーニン勲章」が贈られことに・・。
彼に勲章を授与するのは、スターリングラード防衛を果たしたチュイコフ将軍です。
もちろん映画同様にフルシチョフも登場してきます。

chuikov1946.jpg

ザイツェフは後に、より有名な「ソ連邦英雄」も受章したそうですが、
この「レーニン勲章」にまつわる話は本書以外では読んだことがないので
印象に残った場面のひとつです。

Order of Lenin.jpg

一方、このソ連の英雄を抹殺すべくドイツから呼ばれたのは
エド・ハリス演じたケーニッヒ少佐ではなく、本書ではハインツ・トルヴァルトSS大佐
という名の狙撃学校の校長です。
ドイツ第6軍で彼を向かえるのも司令官パウルス上級大将ではなく、
参謀長のシュミット将軍というあたりは、なかなかシブイ人選ですね。

また、映画で彼のスパイを請け負って殺された少年サーシャは登場せず、
その代わり、この地獄ような最前線で生き延びる術を心得た、ニッキー・モント伍長が
トルヴァルトSS大佐の助手として、またはドイツ側のストーリーテラーとして
行き詰まりつつあるドイツ将兵の心境も代弁しています。

Major König.jpg

しかし、このトルヴァルトSS大佐、またはケーニッヒ少佐という人物は
本書ではその生い立ちから紹介され、ダンケルクでは脱出を待つ英仏将兵100人を
撃ち殺したとまで書かれていますが、
アントニー・ビーヴァーの「スターリングラード」でも検証されているように
ソ連のプロパガンダ的人物であり、実在していたかは不明です。

本書ではソ連側、ドイツ側の狙撃スタイルの違いも楽しめます。
昔TVでビートたけしがサンコンか誰かを相手に
「アフリカの狩りの名人は、どれほど遠くまで槍を投げて獲物を仕留められるのか?」
と聞くと「本当の名人はどれだけ獲物に近寄れるかだよ」
というような話があったのを思い出しました。
ザイツェフらソ連のスナイパーは前線を密かに超えて、ドイツ軍陣地に忍び寄り、
後方で安心している将校を殺害していきます。

strelki.jpg

クライマックスの対決の場面でも、著者の次作である「クルスク大戦車戦」のような
派手な展開はなく、逆に6日間もお互い壕の中で1発の銃弾を放たずに、
相手の些細なミスを待ち続けるというもので、
こういうのはリアルな感じで個人的には好きですね。

決着のついた翌日は1942年11月19日。。
第6軍の包囲/壊滅を目指すソ連の大攻勢、「天王星作戦」が始まります。
ザイツェフとターニャは、脱出を目論むであろう第6軍司令部の
パウルス上級大将ら首脳の殺害を命ぜられます。
いくら小説とはいえ、これが首尾よく成功することはありませんが、
この11月19日という日付は自分の誕生日なので(1942年生まれではありませんよ)、
スターリングラードものにつきものの、この日が紹介されると、
毎度「おぉ・・」と反応してしまいます。

Paulus_Arthur Schmidt.jpg

マンシュタインの救出作戦と元帥となったパウルスの降伏までもエピローグで書かれていて、
「序文」で著者が書いているように、創作であるニッキー・モント伍長以外は
歴史的事実に基づいているといった印象です。

それにしても、なおさらトルヴァルトSS大佐が気になりますね。
エド・ハリスがあまりにも格好良かったから・・という理由もありますが、
以前から自分なりにも調べていますが、見つけ出せません・・。
さすがスナイパーと言うべきでしょうか。。。




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