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詳解 独ソ戦全史 -「史上最大の地上戦」の実像 戦略・戦術分析- [ロシア]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

デビッド・M. グランツ, ジョナサン・M. ハウス著の「詳解 独ソ戦全史」を読破しました。

タイトルからはわかりませんが、表紙の「クルスク戦で突撃するソ連軍」写真で
辛うじてわかるように、本書はソ連の崩壊によって公開された当時の大量な公式文書を
整理して検証された、ソ連側から見た「独ソ戦全史」です。
著者の2人は退役米軍将校の研究家で、700ページというボリュームある一冊です。

独ソ戦全史.JPG

「詳解」とあるように、とにかく次から次へと聞いたこともない「第○○軍△△△△将軍」が
登場してきますので、過去に紹介した「燃える東部戦線」がお気に入りという人や
バルバロッサ作戦」や「焦土作戦」などを読んで、敵の全貌を知りたい方
以外にはあまりお勧めできません。

まずは1918年の第一次大戦後の内戦の様子から、その後の赤軍と
スターリンによるトハチェフスキー元帥らの大粛清、スペイン内戦と
1939年、日本軍とのノモンハン事件におけるジューコフ軍団長の活躍、
ポーランドではカティンの森事件・・、
そしてフィンランド戦争での青息吐息っぷりを次々と紹介します。

Talvisota_Soviet T-26 light tanks in action at Tolvajärvi.png

緊張高まる1941年。対峙する独ソ両軍について解説されますが、
ジューコフがポーランドに集結しているドイツ軍100個師団を
152個師団をもって壊滅するという先制攻撃案をスターリンに提言したという文書や、
空軍同士の比較では、当時世界最大の赤色空軍にも大粛清の波が訪れており、
それは開発者や技術者たちも例外ではなく、実験飛行で失敗があると
「破壊行為」として、最低1人の設計者が銃殺されたという話は勉強になりました。

Great Patriotic War2.jpg

いよいよ独ソ戦が始まると、まずはドイツ軍の攻勢を紹介します。
参謀総長のハルダーや各軍集団の様子、グデーリアン
ヘルマン・ホト率いる装甲部隊の活躍も部分的には詳細です。
そして防御側のソ連軍。スターリンを筆頭にヴォロシーロフとジューコフの最高司令部と
ブジョンヌイらの方面軍司令官。8月の1ヶ月間で10個軍を新たにつくり出すという
恐ろしい人的資源と軍需工場の疎開の成功。

Guderian_Hoth.JPG

スターリングラードでドイツ第6軍を包囲/壊滅させた「天王星作戦」からは
ソ連の攻勢計画が詳しく解説されます。
この「天王星作戦」と同時に、ドイツ中央軍集団に対して行われた「「火星作戦」。
ジューコフ立案/指揮によるこの作戦は見事失敗したものの、
「天王星作戦」が首尾よく成功したことで、ソ連の歴史家たちはその「火星作戦」の存在を
なきものにしようと努めたそうです。

Жуков.jpg

「天王星作戦」の成功に続く、「土星作戦」では一気にロストフを目指し、
ドイツA軍集団壊滅を狙いますが、セヴァストポリ要塞を落としたマンシュタイン
コレを阻止。その後もロコソフスキーの「打撃軍」の攻勢をハリコフでの逆襲で凌ぎきり
進撃して来た赤軍に「唖然とするような挫折を味わわせ」ます。

ソ連側から見た本書ですが、このようにソ連「善」、ドイツ「悪」というものではなく、
良いモノは良いという見解で、特にグデーリアンとマンシュタインの回想録も
ベースになっているらしいことから、ドイツ側ではこの2人には好意的な印象ですね。

burning knocked out T-34.jpg

1943年のクルスク戦も、そのソ連軍の陣容が特に後方に控える予備軍なども詳細に書かれ、
もし、コレを知っていたなら「ドイツ側の誰もが怯んだだろう」としています。

さらにこの辺りでは、変化して来たソ連軍の編成にも触れています。
個人的には、歩兵を「狙撃兵」と言うように、ソ連軍独特の部隊名とその違いについて
書かれていたことが楽しめました。
例えば、「機械化騎兵軍団」などという良くわからない軍団の編成や
通常の「軍」と「親衛軍」との違いと、その装備と人員の優先度。
また、特別編成の「打撃軍」(軍レベルの戦闘団?)も「親衛軍」並みの待遇のようです。
ちなみに「カチューシャ・ロケット砲」は「親衛迫撃砲」と言うらしいです。

Катюша03.jpg

偵察などの特殊任務チームは「スペツナズ」だそうで、この名前は現代の
ロシアにおける特殊部隊と同名です。
まったく別物と思いますが、おそらく特殊部隊はロシア語でスペツナズというのかも
知れませんね。

コルスン・シェフチェンコフスキー地区での戦いでは、突然、シュテンマーマン将軍が出てきて
ビックリしましたが、これは「チェルカッシィ」包囲陣のことでした。
この中盤あたり、ちょっと疲れてたので、「くわっ!」と目が覚めました。。
そういえば確かに「コルスン包囲陣」とも言いますね。
なお、このコーネフによる殺戮の犠牲、脱出を図ったドイツ兵の損害は、ドイツ側より
ソ連側の数字の方が信憑性があるとしています。

kol3.jpg

そして1944年夏、泣く子も黙る大攻勢「バグラチオン作戦」が5個正面軍によって開始されます。
ここでは弱冠38歳にして「第3白ロシア正面軍」の司令官に抜擢された
チェルニャホフスキー大将が印象に残りました。
彼はその若さゆえか正面軍司令官という立場ながら、軍の先頭に立って指揮していたようで、
ケーニッヒスベルク要塞戦で致命傷を負い、戦死してしまいます。

chernyahovsky.jpg

これ以降は、お馴染みのドイツ軍の敗走とソ連軍の猛攻が最後まで続きます。
まあ、いつものことながら、この「最終戦」は暗い気持になりますね・・。
おまけに所々に出てくる戦況図を見ても、ソ連の攻勢の矢印は多く、長くなるのに対し、
ドイツ軍は各軍集団司令官の名前(軍集団そのものの名称も)が毎回代わっているという、
必死な状況がそれだけでもわかろうというものです。。。

弱体化していくドイツ軍と対照的に、軍需的にも人的にも大きくなってゆくソ連軍を
非常に詳細に解説している本書ですが、読み終えてみると、結局のところ
まるでドイツ軍を食い殺し、それを栄養にして巨大化していく怪物のような印象が残りました。

anniversary of the victory of Russia's Great Patriotic War during World War II,.jpg



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ドイツ空軍の終焉 -西部戦線ドイツ戦闘機隊、最後の死闘- [ドイツ空軍]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ヴェルナー ジルビッヒ著の「ドイツ空軍の終焉」を読破しました。

ドイツ戦闘機隊に致命的な一撃を与えた「ボーデンプラッテ作戦」を中心に
タイトルどおりの終焉までを克明に検証した一冊です。
原題は「暁の出撃」。なかなか格好良いタイトルですね。

ドイツ空軍の終焉.JPG

1944年11月から始まる本書は、昼夜を問わず猛爆を繰り返す連合軍の
爆撃機編隊に挑む、西部のドイツ空軍戦闘機隊の非情なまでの戦いざまから
紹介されます。
千機を超えるB-17フライング・フォーレス四発重爆の編隊と、それを護衛する
数百機の新顔P-51マスタング戦闘機に対し、訓練もままならない新人パイロットたちの
Bf-109とFW-190がひたすら迎撃に向かい、その結果・・・、双方の損害を分析して
毎日、数十人のドイツ戦闘機パイロットを喪失するダメージ大きさを解説しています。

B17 Flying Fortress.jpg

当時の空軍参謀長エックハルト・クリスティアン少将らとヒトラーの会談の様子を
議事録の如く掲載し、そのヒトラーの本土防衛に対する考え方も紹介しています。
そんななか、新型戦闘機である、Me-163コメートMe-262も登場しますが、
大エース、ノヴォトニーが墜落死する様子も語られています。

Walter Nowotny.jpg

そして本書のメインとなるのは1945年1月1日に発動された、
「ボーデンプラッテ(地盤)作戦」です。
本来この作戦は地上部隊の西部での最後の反攻作戦である「ラインの守り作戦」、
いわゆるバルジの戦いと平行して実施することを想定していたものですが、
ご存知のように「ラインの守り作戦」は連合軍の空からの攻撃を防ぐため
あえて天候の悪い時期を選んで実施したということは、
ドイツ空軍も天候が悪くては出撃できないという、初めから矛盾をはらんだ陸空協同作戦で、
結果的に、天候が回復したこともあって「ラインの守り作戦」が行き詰まり、
その後、この「ボーデンプラッテ作戦」が発動されるということになります。

この「ボーデンプラッテ作戦」は、連合軍が既に侵攻したフランス、オランダ、ベルギーの
各飛行場を急襲し、連合軍戦闘機に大打撃を与えて制空権を再び取り戻し、
爆撃機編隊に対する迎撃を容易にしようというもので、
西部戦線の拠点を置く、ほぼ全ての戦力である12個航空団の40個飛行隊が作戦に参加。
しかし戦闘機隊総監としてすっかり干されたガーランドに代わり、
爆撃機隊総監のペルツに責任を与えたことで
ガーランドを慕う戦闘機パイロットたちは複雑な心境だったようです。

Flakkampfabzeichen der Luftwaffe.jpg

こちらも「ラインの守り作戦」同様、詳細については秘匿命令が出され、
飛行隊指令ですら直前まで任務を知らされないという状況や
対地作戦という特殊性やパイロットたちの技量など万全の体制とは言い難く、
特に自軍の高射砲部隊への連絡にも問題があったことから、
今まで自軍のソレを見たことの無い、高射砲部隊員たちは多数の戦闘機編隊を
スッカリ敵と思い込み、撃墜してしまいます。
このような同士討ちは秘匿作戦というのには良くありがちですね。

Operation Bodenplatte.jpg

著者はこの時期の空戦について充実した調査を行っていて、
名前の登場するパイロットの数はハンパではありません。
なかでも、英空軍スピットファイアに乗り込んだポーランド人パイロットと
「ラトヴィア陸軍戦闘航空隊」からルフトヴァッフェに配属された
ラトヴィア人義勇兵パイロットによる空戦というのは印象的でした。
強制収容所ではなく、独英両空軍の戦うなかでのポーランド人対ラトヴィア人・・。
まさに世界大戦ですね。

有名どころでは、第4襲撃航空団指令で剣章を持つアルフレッド・ドルシェル大佐も
参加しており、アーヘン近郊で被弾して、そのまま行方不明に・・。
他にもベーア大佐率いる第3戦闘航空団"ウーデット"のアイントホーフェンへの襲撃成功や
わずか2機で「史上最大の作戦」に果敢な攻撃を仕掛けたプリラー中佐の
第26戦闘航空団"シュラゲーター"ではクルピンスキー大尉の名も・・。

Josef Priller.jpg

また、過去にミュンヘベルクやシュタインホフら超一流が指令を務め、ベーアやゴロップ、
ヴィーゼといった指折りのパイロットを輩出したことでも知られる
第77戦闘航空団"ロートヘルツ"も紹介され、この有名な航空団が
1944年秋のマーケット・ガーデン作戦に対して投入され、戦果は挙げたものの、
ドイツ空挺部隊の父クルト・シュトゥーデントの息子である
ハンス・デューター・シュトゥーデント少尉の戦死という重い代償を払わされた・・
といった話もありました。

結局のところ1945年1月1日のたった4時間程度の作戦で、
参加した戦闘機の30パーセントにも上る、ドイツ戦闘機300機が失われ、
このまったく無意味な作戦でドイツ空軍の背骨が折られたということのようです。

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その後、西方のドイツ空軍の戦いではJu-88からMe-262に機種変更した
第54爆撃航空団の珍しい戦記が出てきたり、
英空軍の爆撃機編隊450機にドイツ夜間戦闘機が襲い掛かり、62機を撃墜し、
なかでも夜間戦闘機のトップ・エース、シュナウファー少佐が7機撃墜したという
話も紹介され、その最後にはハヨ・ヘルマン大佐の発案による「特攻隊」、
エルベ特別攻撃隊まで書かれ、ドイツ空軍は終焉を向かえます。

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前半の戦い、現れては消え、を繰り返す若いパイロットたちの消耗品のような
戦闘の展開は若干読むのに苦労しました。
「ボーデンプラッテ作戦」からは知っている名前も多くなり、いくらか楽しめましたが、
まぁ、ある程度はルフトヴァッフェに精通していないと本書は難しい(楽しめない)でしょう。

自分も有名なワリにまだ手を出していない「ドイツ空軍、全機発進せよ!」や、
読みやすそうな「朝日ソノラマ」の「ドイツ空軍戦記」や「西部戦線の独空軍」、
「最後のドイツ空軍」などを購入して、もうちょっと基礎を学ぼう・・と考えています。
と、書きながら調べていると「ドイツ空軍戦記」は、学研M文庫から
「ヒットラーと鉄十字の鷲」というタイトルで再刊されているようですね・・。ふ~、難しい・・。


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鼠たちの戦争 [戦争映画の本]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

デイヴィッド・L. ロビンズの「鼠たちの戦争」を再度、読破しました。

ジュード・ロウ、エド・ハリス主演の映画「スターリングラード」の元ネタともいえる小説です。
年に一回はBSなどで放映する度に観てしまうので、ちょっと再読してしまいました。
最初に読んだのは7年くらい前でしょうか?
ソ連のスナイパー対その抹殺のために派遣されたドイツ軍のスナイパーの戦いに
女性スナイパーと政治指導員との関係といった概要的な部分は同じですが、
本書と映画はほぼ別物と言ったほうが良いでしょう。
タイトルの「鼠たちの戦争」とは、この廃虚と化したスターリングラード市内での
瓦礫の下や地下を這いずり回るような戦いっぷりをドイツ兵士が
「ラッテンクリーク」と呼んだことにまつわるそうです。

鼠たちの戦争.JPG

シベリア出身でモンゴロイド系の丸くのっぺりした顔立ちのザイツェフ曹長は
この地でスナイパーとして頭角を現し、政治指導員ダニロフにより
英雄として新聞へ掲載され、さらに新設のスナイパー養成学校の校長として
30名もの新人たちを教育することになります。

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ザイツェフはこのようにジュード・ロウとは似ても似つかぬ雰囲気ですが、
ジョセフ・ファインズが演じたダニロフも、デップリと太ったチビで眉毛もしっかり繋がっている・・
という風貌です。

小柄なことから<兎>の仇名を持つザイチェフの親友は、大柄で<熊>と呼ばれるヴィクトールです。
以前に読んだときはややこしくて覚えられなかった名前は「メドヴェージェフ」で、
今ではすっかり有名な名前になっているところが時代の流れを感じました・・。

新人スナイパーたちのなかには女性も何人か含まれており、
ここにはレイチェル・ワイズが演じたターニャが・・・。
本書でも恋に落ちるザイツェフとターニャですが、映画「スターリングラード」での
2人の絡みのシーンは非常に印象に残っています。
特にレイチェル・ワイズの半ケツ状態は、数ある戦争映画のなかでも
上位にランクインするほどのセクシー・シーンでしょう。。。

Weisz Enemy at the Gates.jpg

モシン・ナガンM91/30狙撃銃で200名にも上るドイツ将兵を狩り続け、
すっかり英雄となったザイツェフには「レーニン勲章」が贈られことに・・。
彼に勲章を授与するのは、スターリングラード防衛を果たしたチュイコフ将軍です。
もちろん映画同様にフルシチョフも登場してきます。

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ザイツェフは後に、より有名な「ソ連邦英雄」も受章したそうですが、
この「レーニン勲章」にまつわる話は本書以外では読んだことがないので
印象に残った場面のひとつです。

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一方、このソ連の英雄を抹殺すべくドイツから呼ばれたのは
エド・ハリス演じたケーニッヒ少佐ではなく、本書ではハインツ・トルヴァルトSS大佐
という名の狙撃学校の校長です。
ドイツ第6軍で彼を向かえるのも司令官パウルス上級大将ではなく、
参謀長のシュミット将軍というあたりは、なかなかシブイ人選ですね。

また、映画で彼のスパイを請け負って殺された少年サーシャは登場せず、
その代わり、この地獄ような最前線で生き延びる術を心得た、ニッキー・モント伍長が
トルヴァルトSS大佐の助手として、またはドイツ側のストーリーテラーとして
行き詰まりつつあるドイツ将兵の心境も代弁しています。

Major König.jpg

しかし、このトルヴァルトSS大佐、またはケーニッヒ少佐という人物は
本書ではその生い立ちから紹介され、ダンケルクでは脱出を待つ英仏将兵100人を
撃ち殺したとまで書かれていますが、
アントニー・ビーヴァーの「スターリングラード」でも検証されているように
ソ連のプロパガンダ的人物であり、実在していたかは不明です。

本書ではソ連側、ドイツ側の狙撃スタイルの違いも楽しめます。
昔TVでビートたけしがサンコンか誰かを相手に
「アフリカの狩りの名人は、どれほど遠くまで槍を投げて獲物を仕留められるのか?」
と聞くと「本当の名人はどれだけ獲物に近寄れるかだよ」
というような話があったのを思い出しました。
ザイツェフらソ連のスナイパーは前線を密かに超えて、ドイツ軍陣地に忍び寄り、
後方で安心している将校を殺害していきます。

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クライマックスの対決の場面でも、著者の次作である「クルスク大戦車戦」のような
派手な展開はなく、逆に6日間もお互い壕の中で1発の銃弾を放たずに、
相手の些細なミスを待ち続けるというもので、
こういうのはリアルな感じで個人的には好きですね。

決着のついた翌日は1942年11月19日。。
第6軍の包囲/壊滅を目指すソ連の大攻勢、「天王星作戦」が始まります。
ザイツェフとターニャは、脱出を目論むであろう第6軍司令部の
パウルス上級大将ら首脳の殺害を命ぜられます。
いくら小説とはいえ、これが首尾よく成功することはありませんが、
この11月19日という日付は自分の誕生日なので(1942年生まれではありませんよ)、
スターリングラードものにつきものの、この日が紹介されると、
毎度「おぉ・・」と反応してしまいます。

Paulus_Arthur Schmidt.jpg

マンシュタインの救出作戦と元帥となったパウルスの降伏までもエピローグで書かれていて、
「序文」で著者が書いているように、創作であるニッキー・モント伍長以外は
歴史的事実に基づいているといった印象です。

それにしても、なおさらトルヴァルトSS大佐が気になりますね。
エド・ハリスがあまりにも格好良かったから・・という理由もありますが、
以前から自分なりにも調べていますが、見つけ出せません・・。
さすがスナイパーと言うべきでしょうか。。。




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カンプフ・オブ・ヴァッフェンSS〈1〉 [武装SS]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

高橋 慶史 著の「カンプフ・オブ・ヴァッフェンSS〈1〉」を読破しました。

以前に紹介した「ラスト・オブ・カンプフグルッペ」の武装SS版で、
1年ほど前に発売されたものです。
〈1〉と付いているように、著者曰く「武装SSの全師団の戦闘史を明らかにする・・
という無謀な企画」の第1巻に当たる本書では、
武装SS創設時の2つの師団と、武装SS騎兵3個師団が紹介されています。

カンプフ・オブ・ヴァッフェンSS.JPG

まずはマイナー部隊の大好きな著者による、武装SSメジャー師団不動のNo.1、
「SS第1戦車師団 "ライプシュタンダルテ・アドルフ・ヒトラー"」からです。

部隊の創設からゼップ・ディートリッヒの紹介、ポーランド戦役ツィタデレ作戦までが
淡々と書かれ、新たな師団長テオドール・ヴィッシュも丁寧に紹介されます。
本書は未見のクリアーな写真が多く、掲載されているヴィッシュの写真も
映画「ゴッドファーザー」のロバート・デュヴァル演じるトム・ヘイゲンにそっくりです。
ヴィットマンパイパーマイヤークラースなどの有名人も登場しますが、
なんといっても、目を負傷したにもかかわらず、音を頼りにたった一人で拠点を死守し、
機関銃で英軍を撃退するという超人的な働きにより「騎士十字章」を受章した
エーリヒ・ゲーストルSS一等兵の話が最高です。

Theodor Wisch_Himmler.jpg

続いては勿論No.2、「SS第2戦車師団 "ダス・ライヒ"」です。
こちらもパウル・ハウサーから歴代の師団長を紹介し、
ハリコフ戦までをライプシュタンダルテと同様に説明しています。
しかし、この師団でもツィタデレ作戦時において、
直撃弾を受けて制御盤と変速機が壊れたのにもかかわらず、
神業的技術で30分以上も操縦を続けたことで、敵戦車7両を撃破したという
Ⅲ号戦車の操縦手、ヨハン・ターラーSS軍曹がやはり「騎士十字章」を受章したという
話が最高でした。

Johann Thaler.jpg

第2部では、マイナーなSS騎兵師団の登場です。しかし、ここからが著者の真骨頂であり、
その筆も冴えてくるのでとても勉強になりながらも楽しめました。

「SS第8騎兵師団 "フロリアン・ガイヤー"」では、その第三帝国における
騎兵の役割から、1931年までに遡る一般SSの騎兵大隊からが紹介され
主役を務めるのは、ミュンヘンのSS中央騎馬学校長のヘルマン・フェーゲラインSS少佐です。

彼の生い立ちから、1943年のフロリアン・ガイヤー師団長の就任。
そして、その後「SS騎兵総監」に就任するという、フェーゲライン一代記とともに
師団の戦闘史が綴られ、実弟のヴァルディマー・フェーゲラインも活躍して
見事、兄弟揃い踏みでの「騎士十字章」という稀有な例として書かれています。

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「SS第22義勇騎兵師団 "マリア・テレジア"」は、「フロリアン・ガイヤー」の
弟師団ともいえる存在です。
しかし「義勇」という名が付くように、ドイツ人ではなく、ハンガリー人歩兵が多数を占める師団で、
師団長となったツェーエンダーSS大佐や師団初の「騎士十字章」を受章者、
アマイザーSS少佐など、将校は生粋のドイツ人騎兵から成っていたようです。

SS-Sturmbannführer der Reserve Anton Ameiser.jpg

公式に編成されたのが終戦間際の1945年2月という「SS第37義勇騎兵師団 "リュッツォー"」
がトリを飾りますが、師団としてはほとんど活躍していません。
ここでも、あのカイテル元帥の子息、カール=ハインツ・カイテルSS少佐が連隊を率い、
「カイテル戦闘団」としてアメリカ軍に降伏するという初めて知る話が出てきました。

SS-Sturmbannführer Karl-Heinz Keitel.jpg

この騎兵師団の章では、ハンガリーのホルティ提督を狙ったスコルツェニー
「パンツァーファウスト作戦」が出てきたり、
1945年2月までの「ブダペスト包囲陣」での過酷な防御戦、
そして最後の包囲突破によるドイツ軍の壊滅的な損害が印象的でした。
このブダペスト戦はあまり詳細を知らなかったので、なおさら楽しめました。

また、「マリア・テレジア」にまつわる話・・矢車菊の襟章や女帝マリア・テレジアの
末娘がマリー・アントワネットであるなど、ヨーロッパの歴史についても、
またまた勉強したくなるようなことまで、書かれています。
これはひょっとすると、ヒムラーの策略に見事に乗っかっているのかも知れませんね。。。

florian geyer in russia.jpg

非常に楽しめる一冊で、4時間ほどで一気読みしてしまいました。
第2巻(第3、第6、第18、第25、第26、第30の各SS師団)が、なかなか発売されず、
「 ドイツ武装SS師団写真史〈1〉」が発売されてしまったのは気がかりですが、
このシリーズ、ぜひ、続けて欲しいですね。


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史上最大の作戦 [戦記]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

コーネリアス・ライアン著の「史上最大の作戦」を読破しました。

ヒトラー最後の戦争」、「遥かなる橋」に続いて、コーネリアス・ライアンの
デビュー作にして、おそらく最も有名な一冊の紹介です。
原題は言わずと知れた「THE LONGEST DAY」。
などと、さも当たり前のように書いていますが、何を隠そう、今回、初めて読みました。
実は映画も昔TVで1回観ただけ・・という、個人的にはあまり馴染みと
思い入れのない作品です。

史上最大の作戦.JPG

映画を記憶から呼び覚ましてみても、白黒映画のオールスター・キャストで
多種多様な国籍の人物たちが入れ替わり登場するといった印象で、
俳優ではアメリカ軍の空挺部隊を率いて、確か足を痛めて部下に迷惑をかけまくる
ジョン・ウェインと、ノルマンディに上陸したヘンリー・フォンダ。
そしてすっ呆けた感じの英国兵ショーン・コネリーが思い浮かびます。

THE LONGEST DAY Sean Connery.jpg



まずはロンメルの元帥杖のなぜか詳細な解説から始まる本書は、
そのまましばらく、この西部方面軍司令官のルントシュテット
参謀長のブルーメントリット、そしてロンメルのB軍集団参謀長のシュパイデル
ロンメルの副官を務め、本書の重要な人物でもあるヘルムート・ラング大尉らが紹介され、
連合軍の上陸を阻止するための「大西洋の壁」の実態とロンメルの奮戦する様子と続きます。

Marshal's_baton_of_Rommel.jpg

正直なところ、本書は連合軍寄りでアイゼンハワーが中心か・・と
勝手に想像していただけに、この展開には嬉しい驚きです。

そしてその連合軍が遂に「オーヴァーロード作戦」を決断する過程と
フランスのレジスタンスへの暗号と続き、ノルマンディの沖合いに
大小合わせて5000隻という大船団が出現します。
ポケット戦艦グラーフ・シュペーを自沈に追い込んだ、英国巡洋艦エイジャックスなど以外にも
優雅な帆船からオランダ、ノルウェーにポーランド海軍までも参加するという
正に史上最大の大連合艦隊です。

THE LONGEST DAY poster.jpg

第15軍司令官のフォン・ザルムート将軍は有名な暗号の詩を受信した情報を知らされても
のんびりとトランプを続けるといった、おっとりなのか、胆が据わっているのか
良くわからない人物で、
他にも第711師団司令部に誤って降下してしまった英国兵がライヘルト少将に
「どうもすいません、将軍・・」とほのぼのしたエピソードも結構出てきます。

generaloberst hans von salmuth.jpg

第82、および第101空挺師団と、アメリカ軍空挺モノですっかりお馴染みとなった
ギャビン准将も頻繁に登場。
この中盤では夜明け前の降下作戦が展開され、映画でも印象的だった
サント・メール・リグリースの教会での攻防も詳しく書かれています。
パチンとなるブリキの玩具やダミーのパラシュート兵と続き、
あ~、こんなシーンあったなぁ・・と。。

THE LONGEST DAY german poster.jpg

↑ のドイツ版ポスターは強烈ですね・・。特にジョン・ウェインとロバート・ミッチャムは
地獄からの使者というか、ほとんどゾンビみたいです。。
これじゃあドイツ兵が我が目を疑うのも致し方ありません。。

知らなかった話では第101空挺師団のグライダーが「ロンメルのアスパラガス」に突っ込み、
プラット准将が死亡した話や、英軍のオットウェイ中佐が果敢にメルヴィル砲台攻略に挑む姿は
非常に興味深く読みました。

Rommel inspecting the omaha_beach fortifications.jpg

オマハ・ビーチでのアメリカ軍の上陸の悲惨さは、同じ映画でも、どちらかというと
「プライベート・ライアン」を思い出しました。
あの映画をロードショーで観たときは、このシーン、強烈な印象を受けましたが、
本書でもそれに負けず劣らずの描写です。
特に「救命艇ではない!」と溺れる兵士の救出が許されない兵員揚陸艇や
障害物を爆破しようとする工兵を邪魔する・・その障害物に隠れようとする兵士・・
という大混乱が続きます。

d-day-omaha.jpg

直前に部隊を引き上げさせられたドイツ空軍のプリラー中佐が憤慨しながらも
ヴォダルチック軍曹と共にフォッケウルフFW-190で連合軍の大艦隊に
突っ込んで行く様子も映画そのものの爽快なシーンですし、
スコットランド出身ハイランダーズの先頭を命知らずのバグパイパーが進む場面も同様です。

dday-piper.jpg

橋頭堡を築いた連合軍に対し、西部方面軍司令部では予備の強力かつ精鋭の装甲部隊
第12SS装甲師団 ヒトラー・ユーゲント」と「戦車教導師団」の投入をOKWに求めます。
しかし、熟睡中のヒトラーの承認が必要なことからヨードルは拒否。
この有名な話も詳細で、ヨードルの代理ヴァーリモント
陸軍作戦部長ブランデンフェルス少将、総統副官のシュムントらが
ブルーメントリットの要請を総出で拒むことになります。

Pas de Calais, Speidel, Lang, Rommel.jpg

最後にはD-DAYの直前に休暇を取ってしまい、連絡を受けて慌てて帰還した
連合軍の上陸に対して最も責任のあったロンメルが
「今日という日はまったく長かった・・」と副官ラングに語ります。
結局、この「最も長い一日」となった戦闘には一切参加しなかったものの、
ロンメルに始まり、ロンメルに終わる・・というのが、皮肉が効いてて面白いですね。



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