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ヒトラー 最期の12日間 [ナチ/ヒトラー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ヨアヒム・フェスト著の「ヒトラー 最期の12日間」を読破しました。

そろそろフェストの大著「ヒトラー」でもいってみようか・・と思い始め、
その著者であるフェストについて調べていたところ、
この「ヒトラー 最期の12日間」を同名の映画を数回観ていることや、
私はヒトラーの秘書だった」を既に読んでいたことで
すっかり読破した気になっていただけで、実は持ってすらいないことが判明しました。

最期の12日間.JPG

どうやら映画はこの2冊を元ネタとしていたようで、
ユンゲ嬢の身辺で起こっていたこと以外のベルリン攻防戦などにまつわる部分は、
「滅亡 -ヒトラーと第三帝国の最後-」という原題である本書に書かれていたようです。

1945年4月16日、ベルリン目前でのゼーロウ高地で防衛につくヴァイクセル軍集団に、
ジューコフ元帥率いる第一白ロシア方面軍が襲い掛かるシーンから本書は始まります。
ここでは「ヒトラー最後の戦闘」そのまま、ハインリーチの防御戦術が功を奏しますが、
このとりあえずの吉報を受けたヒトラーの潜むベルリン「地下要塞」では
それだけで、もう訳のわからぬ勝利への希望が再び燃え上がります。

Gotthard Heinrici2.jpg

ベルリン防衛の責任を負うのはライマン中将ですが、
本書でもハインリーチを含む様々な指揮系統のなかで大混乱を起こしており、
なかでもベルリン大管区指導者でもあるゲッベルスの余計な介入を大きく取りあげ、
以前からの目論見であった「女性大隊」の編成をヒトラーに取りつけたそうです。
またゲッベルスがヒトラーにベルリンに留まるよう強く進言した・・という話もありました。
これはベルヒテスガーデンはあくまで「別荘」であって、その最後には相応しく無い・・
という理由のようです。

Helmuth Reymann1.JPG

当時ベルリンでは、敵前逃亡者は即決裁判で街灯に吊るされた・・・
という話がありますが、「ミュンヘベルク装甲師団」のムンメルト少将などは
「特別軍法会議」に銃を抜いて立ち向かうことも良し、とするほど
この件について憤慨していたようです。

mummert.jpg

シュタウフェンベルクによるヒトラー暗殺未遂事件の巻き添えで命を落とした
ヒトラーの首席副官兼陸軍人事局長シュムントに代わり
その立場を最後まで務めたブルクドルフが、本書では結構目立ちます。
彼はロンメルに自決を強要した人物ということもあって、
以前からその人間性に興味がありましたが、なかなか登場する本がありません。
参謀総長クレープスと一緒に拳銃自殺を遂げるものの、
KGBマル秘調書」でもブルクドルフは完全に無視されていましたし・・。

Wilhelm_Burgdorf2.JPG

そしてそのブルクドルフはこの最後のときに、自らの総統への忠誠と理想主義が
間違いであったことに気づき、ボルマンと大喧嘩をして叫びます。
「将校仲間から「裏切り者」と馬鹿にされることにも甘んじてきた・・。しかし、
党の幹部たちの私腹を肥やすために彼ら若い将校が何10万人と死んで行ったのだ!」

このような「ヒトラーの最後モノ」では必ず登場のSS副官フェーゲラインですが、
本書でもその銃殺されるまでの経緯は詳細です。
それでも、どの本読んでもその最後が微妙に違うところも面白いですね。
ちなみに「衆目の一致するところ骨の髄まで腐った性格」という紹介をされています。。。

総統首席操縦士のハンス・バウアも最後には飛行機で脱出するようヒトラーを説得します。
アラブ諸国や南アメリカ、そして日本までも飛べる飛行機を用意しています・・と。

Himmler with Hans Baur, Hitler's personal pilot.jpg

やがて「ケーキを貪る廃人」となったヒトラーが自殺し、
ゲッベルスとボルマンはデーニッツに総統後継者に指名されたことを知らせます。
しかしヒトラーの遺言では、デーニッツに与えた立場は
「大統領」と「軍最高司令官」の2つであり、これをゲッベルスが指名された「首相」の座を
逃亡中のヒムラーが奪うのを怖れた欺瞞情報(「首相」もデーニッツと見せかけた)である
としています。
死を覚悟していたゲッベルスはそれでもなお、ライバルとの権力闘争に
燃えていたという感じがしますね。

Goebbels 1945.jpeg

モーンケやボルマン、ヘーヴェル秘書たちの脱出の模様も描かれ、
最後には勝利したロシア軍の様子も紹介されています。
12人ほどのロシア女性兵士が「地下要塞」を訪れ、エヴァ・ブラウンの部屋から
「1ダースものブラジャーやレースの下着を歓声をあげながら持ち出して行った・・」
ということも地下要塞に残った技術主任ヘンチェルは語っています。

Eva Braun.jpg

またヒトラーとエヴァ・ブラウンの死体についても書かれており、
有名なニセ写真を公表したりと、このあたりロシア軍とスターリンの焦りも感じます。

映画「ヒトラー~最期の12日間~」の公開に伴う古い本の再刊かと思った本書でしたが
原書は2002年というもので、フェストはかなり新しい書籍までも参考資料としていますが、
この手の本にありがちな(注)の「出典」を明にしていません。
これは、例えばヒトラーの自殺の様子についても様々な証言があることから、
それらにいちいち対応していると、(注)が(注)を呼ぶ展開となり、
非常に読みづらいものになってしまうことを懸念したそうです。

Fake_hitler_dead.jpg

下手をすると逃げ腰とも取られかねない姿勢ですが、個人的には問題ありません。
実際にヒトラーが青酸カリ、または拳銃(それもこめかみに当てたのか口に入れたのか)の
どちらが致命傷なのかということにあまり興味がありませんし、
誰かの証言が正しいにしても、今となってはそれを100%証明することは
困難だと思うからです。

まぁ、やはり映画では描き切れていなかった部分や脇役たちの話が特に楽しめました。
「ヒトラー~最期の12日間~」もいま一度DVDで見直してみますか。



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