SSブログ

スターリンの外人部隊 -独ソの狭間で翻弄された「赤い外国軍」の実像- [欧州諸国]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ペーター・ゴシュトニー著の「スターリンの外人部隊」を読破しました。

おかげさまで「独破戦線」もなんとか1年間続けることができました。
これも皆さんから頂く励ましのコメントや、予想以上にアクセスして頂いたおかげです。
この話は長くなりそうなので「リスト元帥のページ」で・・。

さて、本書は2年半も前に購入したものの、674ページというボリュームと
ハンガリー人の著者の「前書き」、そして訳者「あとがき」に書かれている、
「本書のやや「渋い」内容とかなりの分量にたじろがれ・・」
という出版に至るまでの話を読むにつけ、同様にいつもたじろいでしまって
読破するに至っていませんでした。

個人的にはどの本でも、この訳者「あとがき」を最初に読むようにしています。
それは、その本の立ち位置、すなわち国際的な評価や、著者の経歴、
日本人が読むにあたっての心構えや必要な知識・・といったものを
まず理解してから挑むようにしているからです。

スターリンの外人部隊.JPG

1939年にポーランドが独ソによって分割されたことから始まる本書は
1941年の8月にはドイツの攻撃「バルバロッサ作戦」に恐れをなしたスターリンが
早くも「在ソ・ポーランド軍」の創設を命じます。
捕虜収容所から恩赦によって解放されたポーランド軍人たちは
早速、部隊の編成を始めますが、なぜか将校が少ないことに疑問を抱きます。
これはあの「カティンの森」事件で大量の将校が殺されていたからですが、
そんなことをスターリンが教えるハズもありません。

Sosabowski_Browning.jpg

ポーランドは他にもロンドンの亡命政府やポーランド国内の反独勢力と存在し
この主役である「在ソ・ポーランド軍」の運命は政治的にも
かなりややこしい立場であり続けます。
また当時のポーランド軍と言ってすぐに思い浮かぶのがジーン・ハックマンの顔ですね。。
これは映画「遠すぎた橋」の自由ポーランド軍空挺旅団長のソサボフスキー准将ですが、
さすがに本書でも触れない訳にはいかなかったようです。
他にも「鷲は舞い降りた」でもドイツ降下猟兵たちはポーランド落下傘兵に化けていましたっけ。

Michael Caine in the Eagle Has Landed.jpg

東欧諸国の「在ソ軍」の中核となるのは、当然、ほとんどがソ連の捕虜たちです。
「ソ連は嫌いだけれど、収容所よりはマシ」という理由もあって、
その志願者は予想以上だったようです。

寝返ったことでドイツ軍ファンからは嫌われているルーマニアですが、
その寝返りの真相も詳しく書かれていて、本書では一番楽しめました。
国王に罷免されたアントネスク元帥の末路も興味をそそります。

Ion Antonescu.jpg

1942年の夏季攻勢「ブラウ作戦」で、ルーマニアとハンガリーをロシア深くへ
並んで進軍させることで同士討ちになることを懸念したドイツが、
その両国軍の間にイタリア軍を配置したというほど仲の悪いこの2カ国は、
その後、特にルーマニアの心の故郷ともいわれる北トランシルバニア地方を
旧敵ハンガリーから奪還する一連の話は、対ソ戦よりお互いやる気マンマンで非常に熱く、
また、子供の頃からの疑問のひとつを解決してくれました。

トランシルバニアの名産といえば、ドラキュラ伯爵ですが、
このドラキュラは物心ついた時からのファンでして、1931年の映画「魔人ドラキュラ」は
主演のベラ・ルゴシの批評では必ず「ハンガリー訛りの英語で・・」と書かれていました。
当時の学校で覚えた地理で、トランシルバニアがルーマニアであることは知っていましたが、
なのに、なぜハンガリー訛りが良いのか??
映画を観ても本当にハンガリー訛りかどうかを理解するスキルもなく・・。
このように悶々とした少年時代を過ごしていたので、この地方の歴史的な領土問題を
知ることが出来て、なんとなく、スッキリした気持ちになりました・・。

dracula_Béla Lugosi.jpg

ドイツの同盟国なのにソ連とは戦わず、最後にドイツと戦ったブルガリア
この国の立場も実に大変です。
本書では第1次大戦による敗戦から、国王ボリス3世によって渋々、ドイツとの
同盟関係へとなっていった経緯、そして、そのボリス3世が1943年に
ヒトラーの元を訪れた後に急死し、その原因がいまだに不明であることなど
これまた、いろいろ知りました。

KingBorisⅢ-Hitler.gif

これらの東欧の国々は、過去において親ソであったかなども
この時期の立場を決定する要因のひとつであったようで、
「敗戦国」の烙印を押されることを恐れ、早々に連合軍に寝返ることで
イタリアと同様の立場になることを目指したということです。

ドゴール率いる「自由フランス軍」のYak戦闘機に乗ったパイロットたちによる
戦いの様子も初めて知りました。
ソ連軍では編隊での空戦を行っていたものの、この「ノルマンディ戦隊」の
パイロットたちは、騎士的な1対1の空戦を好んだことから、
経験豊富なドイツ空軍に撃墜されることも多かったとか・・。

normandie_niemen_escadrille.jpg

その他、「春の目覚め作戦」をハンガリー側から描き、
人物としてはホルティ提督やユーゴのチトーなども登場。
対するドイツ軍はシェルナー元帥やフリースナー上級大将といった名前が
200ページに1回出てくる程度です。

このような東欧諸国が大戦中、如何にしてスターリンの元で戦うことになったのかが
時系列で書かれていますが、個人的にはこの時系列が結構しんどかったですね。
ほとんど知識のないこれらの国の国情や過去の歴史が入れ替わり出てくるので
チェコスロバキアがちょっと出てきたと思ったら、すぐ次にはユーゴスラビア・・
といった感じで、せっかく憶えた名前なども訳わからなくなってしまいました。
この方面に明るい方なら問題ないでしょうが、
そのうち、もう一度読み直す暁には、国ごとの単位で読んでみたいと思います。



nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。