SSブログ

ファーザーランド [戦争映画の本]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ロバート・ハリス著の「ファーザーランド」を読破しました。

第2次大戦にドイツが勝利していたら・・という「パラレル・ワールド」を舞台に
ベルリンの刑事であるSS少佐を主人公にした、サスペンス小説です。
もうカレコレ20年以上前になるでしょうか・・。当時、スパイ小説を愛読していた
ヴィトゲンシュタインは、レン・デイトン著の「SS-GB」という、やはり
ナチス・ドイツが勝利した後の占領下の英国を描いたものを
読んだ記憶がありますが、この手のものはそれ以来ですね。

ファーザーランド.JPG

このような小説はネタバレになりますので、ストーリーは概要程度に留めます。
1964年、ヒトラー総統の75歳の誕生日行事が近づくベルリンで
1人の老人の水死体が発見されます。
捜査に当たった刑事警察(クリポ)の捜査官マルヒは、上位の権限を持つ
秘密警察(ゲシュタポ)から妨害を受けはじめ、やがては命がけの捜査の末、
戦時中に行われたホロコーストの事実を知ることに・・・という
ある意味、典型的な巻き込まれ型サスペンスとも言えます。

fatherland.jpg

本書を原作としたTVムービー「ファーザーランド -生きていたヒトラー-」は
DVD化されていないので残念ながら未見です。。。
中古ビテオは売っていますが、なんせ、我が家のビデオデッキが先日、
お亡くなりになってしまいましたので・・・。

ひょっとしたら原作より、こちらをご覧の方が多いのかも知れませんね。
自分も、このTVムービーのタイトルを以前から知ってました。

主役のマルヒを演じるのは、これがまた大好きなルトガー・ハウアー!
「ブレードランナー」でのレプリカントの名演はハリソン・フォードを喰ってましたし、
「ヒッチャー」のサイコな雰囲気は最高でした。

Rutger Hauer fatherland.jpg

この独破戦線をご覧の方なら、本書の特徴である徹底した第三帝国的雰囲気を
思わずニヤニヤしながら楽しめると思います。
ベルリンは、シュペーアが完成させた「世界首都ゲルマニア」であり、
例えば、ベルリンの新空港「ヘルマン・ゲーリング空港」には
ハンナ・ライチュの像」が立っていたり、
「フリッツ・トート広場」や「ゼップ・ディートリッヒ士官養成学校」、
通りの名前も「シュトゥーデント通り」に「ライヒェナウ通り」、
モーデル通り」を右折すると「パウルス通り」、さらには
マントイフェル小路」なんかも出てきます。

Welthauptstadt Germania.jpg

最新鋭の原子力潜水艦は「グロース・アドミラル・デーニッツ」、
空母なら「グロース・アドミラル・レーダー」と細かい心遣いもなされていますね。
これが逆だったら、その時点で読むのやめてます・・・。

主人公のマルヒは戦時中は若きUボート艦長として活躍し、
戦後にクリポに入ったという経歴で、警察機関は当然のようにSSの一部であることから、
本書では「大隊指揮官」(=SS少佐)と呼ばれます。
この階級の呼び方は徹底していて、SS中将なら「○○師団指揮官」という表現です。

また、第2次大戦において、如何にドイツが勝利したのか、についてはこんな感じです。
1942年の夏季攻勢で見事コーカサス(カフカス)とモスクワを切り離すことに成功し、
スターリンの戦車軍団も燃料切れでお手上げ・・、
1944年にはエニグマの暗号を一新したことで、Uボートが大活躍、
遂に食料欠乏となった英国は屈服。
その後1946年、ニューヨーク上空で「V3ロケット」を破裂させたことで
アメリカも講和に応じたという設定です。

fatherland1.jpg

そして本書の中核となる組織、1964年の「親衛隊」はというと・・・、
その2年前にヒムラー長官の乗った飛行機が爆破されたことで
チェコでの暗殺の危機を乗りきったラインハルト・ハイドリヒが後を継いでいます。
主人公マルヒの上司であるクリポの長官は、いまだアルトゥール・ネーベが健在・・。

Arthur Nebe_Heydrich.JPG

敵役のゲシュタポ側ではポーランドの絶滅収容所の責任者でもあった
オディロ・グロボクニクが登場。
悪役としては最高で、強烈なまでにイヤなジジイです。。

globocnic.jpg

ハイドリヒが「ユダヤ人の最終的解決」の責任者として仕切ったことでも知られる
有名な「ヴァンゼー会議」は物語の鍵となる部分でもあり、
当時の実在の出席者、15名が尽く変死を遂げていきます。
それらのメンバーはヒムラーと共に墜落死したゲシュタポ長官ハインリッヒ・ミュラー
アドルフ・アイヒマンは心臓発作で、ローラント・フライスラー裁判長は
精神異常者にメッタ斬りにされて・・そして唯一の生き残りはハイドリヒ1人に・・。

Wannseekonferenz.jpg

サスペンス・スリラーとして、またはスパイ小説としても良い出来の一冊です。
付きもののロマンスもシッカリあり、また、偶然ですがマルヒが自分と同い年であったことも
感情移入しやすかった理由かも知れません。
英国の作家はアメリカの作家に比べ、派手なドンパチや大どんでん返しの
ハッピーエンドとならないので、読了後は暗い充実感に襲われます。
これは最近の映画についても言えることで、戦争モノじゃなくてもここ数年は
ハリウッドより、英国映画の方がお気に入りが多くなっています。

Haus der Wannseekonferenz.jpg

このヴァンゼー会議の様子はケネス・ブラナーがハイドリヒを演じた
「謀議」というTVムービーがDVD化されていますね。
以前に観ましたがアイヒマン役のスタンリー・トゥッチがイメージに合わずイマイチでした。。
まぁ、しかし名優ケネス・ブラナーは「ワルキューレ」では
トレスコウ少将を演じていたりと、なんでも巧くやる役者さんです。

Conspiracy branagh2.jpg

あ、ちなみに本書ではSS全国指導者のハイドリヒ爺さんは登場しません。
あくまでシチュエーションと、陰で強力なオーラを出しているだけですので、あしからず・・。









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