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ティーガー戦車隊 -第502重戦車大隊オットー・カリウス回顧録- [パンツァー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

オットー・カリウス著の「ティーガー戦車隊」を読破しました。

敵戦車150輌を撃破し、最年少にして柏葉付き騎士十字章を受章した
オットー・カリウス中尉の有名な回想録です。
1922年5月生まれのこの華奢な戦車中隊長は終戦時、23歳になろうかという若さです。
原題は「泥まみれの虎」。ロシアの泥道に沈み込みながらも奮戦するティーガー戦車・・
という雰囲気が伝わってきます。

ティーガー戦車隊.JPG

1941年のカリウスの初陣である「バルバロッサ作戦」では、
38(t)戦車の砲手として活躍し、少尉に昇進後、
ティーガー戦車を備えた第502重戦車大隊に配属されて、
戦車長として東部戦線で多数の戦果をあげることになります。

Panzer 38t Russia 1941.jpg

この上巻、カリウス自身による各戦車の紹介では、チビの1号戦車のことを
クルップ製のスポーツカー」と呼んでいたという話や
当初の大隊長であり、その名の知られたヴィリー・イェーデ少佐を
非常に尊敬している様子が伝わってくるなど、
その戦闘以外の部分もなかなか興味深く、
また、苦しい戦局の東部戦線の火消し役としてあちこちの戦場に駆り出され、
様々な指揮官や上官たちと意見も合わないなか、
成功する作戦もあれば、まったくの大失敗も、という周囲から期待される
ティーガー乗りの苦悩というものは、20歳そこそこのカリウスには大変な重圧です。

Major Willy Jähde and crew.jpg

1944年「ナルヴァの戦い」ではグロースドイッチュランド戦車連隊長の
伯爵シュトラハヴィッツ大佐の「シュトラハヴィッツ戦闘集団」に組み込まれ、
この作戦の先鋒としての重要な任務に就きます。
上巻から下巻にかけて語られるこの戦役は、ただの戦車戦以上に楽しめます。

その作戦会議の様子からティーガー中隊と歩兵、砲兵と連動した戦い方など
あくまで寄せ集めである戦闘団の指揮系統の難しさや信頼関係というものを
知ることが出来ます。
特にシュトラハヴィッツ大佐の描写は豊富で、彼が階級よりも「伯爵」と呼ばれることを
好んだという話や、作戦会議中にダイヤモンド章授与の報告を受けたシーンなど
個人的に興味のある人物なので、とても楽しめました。
ちなみにプリンツ・ツー・ザイン・ヴィトゲンシュタインは逆に「王子」と呼ばれることを
嫌っていたようで、このような貴族将校に対しては、接し方が大変ですね。

Graf Strachwitz8.jpg

この戦いの模様については
「シュトラハヴィッツ機甲戦闘団―“泥まみれの虎”の戦場写真集 」というものが
出ているので、一緒に読んだら更に楽しめるでしょうね。
今度、購入してみようと思います。

そして7月、カリウスは偵察中にロシア軍に発見されてしまい
6発もの銃弾を浴びるという重傷を負いますが、奇跡的に一命を取りとめ、
その間に柏葉章を受章することになります。

Otto Carius.jpg

ここでは、よくあるヒトラー総統の自らの手とはならず、当時、予備軍司令官であった
SS全国指導者ヒムラーから直接授与されるという、非常に珍しい話が
特に詳細に語られます。
ヒムラーから武装SSに勧誘されたり、その武装SSと国防軍の軋轢について
その理由を述べたりと、臆することなく長時間会話を交わし、そのカリウスの
ヒムラーに対する個人的な印象(とても良い)は非常に面白いものです。

carius-tiger-crew.jpg

他にも前半、武装SS(ノルトラント師団)との協同作戦時においても
そのSS隊員やSS師団長と、国防軍との違いを描いたやり取りは楽しめますし、
また、武装SSの戦いざまは賞賛しながらも
優先的に最新の兵器が補充されているという事実を
カリウスを含む国防軍兵士が憤りを感じていたという話も
良く言われていることを裏付けるものだと感じました。

Nordland-04.jpg

1945年、傷も癒え、第512重戦車駆逐大隊ヤークトティーガー中隊の
指揮官に任命されると、この128mm砲を備えた75㌧の怪物についても
その扱いの大変さを語ってくれます。
特に今までのティーガーとは違い、回転砲塔を持たない駆逐戦車(突撃砲)であることは
大きな違いであり、柏葉章を持つ戦車長でも苦労が絶えなかったようです。

jagdtiger_02.jpg

しかし、この怪物が投入された時はすでに「ルール包囲網」のなかという状況で、
せっかくのヤークトティーガーもほとんど戦果をあげることなく、終焉を迎えます。
そして最後に語られるアメリカ軍による捕虜収容所の悲惨な様子は、
消えた百万人」の内容を彷彿とさせるものです。

個人の戦車戦記として、非常に貴重な一冊ですが、このように
さまざまな登場人物と組織や、敗戦へと向かうドイツとカリウス青年の苦悩が
良く伝わってくるもので、どなたでも楽しめる回想録じゃないでしょうか。





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