ノルマンディのロンメル [戦記]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
F・ルーゲ著の「ノルマンディのロンメル」を読破しました。
著者はのちに初代ドイツ連邦海軍総監となるフリードリヒ・ルーゲ提督で
1943年11月にロンメルが西方B軍集団司令官に任命されると共に
幕僚部の海軍補佐官として、続く1年間のほとんどをロンメルと共に過ごしました。
単なる個人的な回想録に留まらず、「B軍集団戦争日誌」とロンメルの「日次報告」、
そしてルーゲ提督自身の日記を巧みに組み合わせ、D-DAYを迎えるまでに
ロンメルが日々、何を考え何を行っていたのかが詳細に語られています。
もともとロンメルに託されたOKW(国防軍総司令部)からの任務とは、
占領している沿岸地域の防御準備状況を調査/研究し、
そこから西ヨーロッパに上陸した敵軍を攻撃するための作戦の研究/立案というものでした。
この沿岸地域とはフランスのみならず、北部のノルウェーからオランダ、デンマークまでに及び、
毎日、とんでもないバイタリティであちこちを訪れては、各防衛陣地の司令官たちと会談し
そのロンメルの計画・・すなわち「連合軍を上陸直後に撃退する」戦術を説いて回ります。
これは北アフリカとイタリア戦線で経験した、空からの脅威の前には
後方からの迅速な移動が不可能であるということに端を発したものですが、
西部方面軍司令官であるルントシュテット元帥らは一旦、敵を上陸させ、
内陸に誘い込んでから、装甲部隊により撃滅するという戦術を考えていました。
しかし悲しいかな、調査/研究することが任務のロンメルにはノルマンディを含む
B軍集団隷下の各師団に対しても、防御戦術変更の指示を下す権限もありません。。。
それなりの師団数や人員はいるものの、中年の師団や空軍、海軍の地上任務部隊、
ロシアなどの捕虜で構成された部隊と、とても精鋭部隊と呼べるレベルからは程遠く、
火器にしても各国の鹵獲品が中心で、口径も様々、数発撃ったら砲弾が無くなるという有様です。
海軍と陸軍の砲兵の切り分けについても、海上の敵は海軍砲兵が、
上陸した敵は陸軍砲兵が受け持つという相変わらず、縦割りな関係です。
著者のルーゲは連合軍の陸海空3軍を統率したアイゼンハワーなどの
方面軍司令官のような考え方がドイツ軍にはまったくなかったことを嘆いています。
列車砲もかなりの数が配備されていたようです。
しかし、これらの列車砲は特定の目標に巨弾をぶち込むことが目的のため、
海上を移動している船舶にはまったく役立たずという話も出てきました。
スーパースターであるロンメル元帥の訪れる先は保安の面からも秘密となっていて
兵員食堂で食事をとっていると、それに気づいた兵士たちから歓声が挙がったり、
第21戦車師団の有名な戦車連隊長ブロニコフスキー大佐は
前夜に夜更かしが過ぎたこともあって「えらいことだ・・・」と呟いていたりと、
実際、ロンメルの知名度というものは、自分の考えていた以上のもののようです。
日々、あちこちを飛び回るロンメルに少しでも息抜きを・・と考えたルーゲ提督は
次の視察地の近くにある、世界遺産でも有名なモン・サン・ミッシェルをコースに組み込みますが
その戦術を見破られ、あっさり却下されてしまいます。
しかし、のちに同じ部隊を訪れた際には、ロンメルから
「今日はモン・サン・ミッシェルに行こうではないか!」と言われたエピソードは、
本書でほとんど唯一のホノボノした場面です。
それでもロンメルの感想は「素晴らしい地下壕だ!」。
西方装甲集団司令官のガイル・フォン・シュヴァッペンブルクとは
装甲部隊の用法を巡り互いに譲らず、毎回、なんの進展もなく物別れに終わります。
グデーリアン装甲兵総監も数回ロンメルを訪れ、装甲部隊をどこに置くかについて
意見を交わしますが、ルーゲによると、この楽しいお客さんは
ロンメルの沿岸近くに配備するという案に賛成だったようです。
OKWもロンメル案に同意したそうですが、結局は優柔不断のまま、
ロンメル案とシュヴァッペンブルク案の中間地点に配備されることに・・。
連合軍のノルマンディ上陸後の戦いは概要程度に留めていて、
ルントシュテット元帥に代わり、新たにに西部方面軍司令官となったクルーゲ元帥と
ロンメルのバトルが特別に印象的です。
そして7月20日のヒトラー暗殺未遂事件直前に重傷を負ったロンメルの入院生活。
頻繁に見舞いに訪れたルーゲ提督はロンメルに本を読んで聞かせるなど、
非常に親密な関係が伺え、それゆえ
最後に語られるロンメルの死の真相とその葬儀の様子の後、総括として
もし、ロンメルが重傷を負わなければ、連合軍との交渉が行われたのでないか・・
という著者の推測も、なにか説得力を感じました。
なかなか勉強になった一冊で、特に著者による海軍側からの視点が新鮮でした。
ロンメルものは「これで読破したかな」と思っていましたが、
学研M文庫から「ロンメル戦記」が出ていますね・・。まさにロンメルは永久に不滅のようです。
内容的には「狐の足跡」的な感じっぽいですが、両方読まれた方いらしたら
教えてください。
F・ルーゲ著の「ノルマンディのロンメル」を読破しました。
著者はのちに初代ドイツ連邦海軍総監となるフリードリヒ・ルーゲ提督で
1943年11月にロンメルが西方B軍集団司令官に任命されると共に
幕僚部の海軍補佐官として、続く1年間のほとんどをロンメルと共に過ごしました。
単なる個人的な回想録に留まらず、「B軍集団戦争日誌」とロンメルの「日次報告」、
そしてルーゲ提督自身の日記を巧みに組み合わせ、D-DAYを迎えるまでに
ロンメルが日々、何を考え何を行っていたのかが詳細に語られています。
もともとロンメルに託されたOKW(国防軍総司令部)からの任務とは、
占領している沿岸地域の防御準備状況を調査/研究し、
そこから西ヨーロッパに上陸した敵軍を攻撃するための作戦の研究/立案というものでした。
この沿岸地域とはフランスのみならず、北部のノルウェーからオランダ、デンマークまでに及び、
毎日、とんでもないバイタリティであちこちを訪れては、各防衛陣地の司令官たちと会談し
そのロンメルの計画・・すなわち「連合軍を上陸直後に撃退する」戦術を説いて回ります。
これは北アフリカとイタリア戦線で経験した、空からの脅威の前には
後方からの迅速な移動が不可能であるということに端を発したものですが、
西部方面軍司令官であるルントシュテット元帥らは一旦、敵を上陸させ、
内陸に誘い込んでから、装甲部隊により撃滅するという戦術を考えていました。
しかし悲しいかな、調査/研究することが任務のロンメルにはノルマンディを含む
B軍集団隷下の各師団に対しても、防御戦術変更の指示を下す権限もありません。。。
それなりの師団数や人員はいるものの、中年の師団や空軍、海軍の地上任務部隊、
ロシアなどの捕虜で構成された部隊と、とても精鋭部隊と呼べるレベルからは程遠く、
火器にしても各国の鹵獲品が中心で、口径も様々、数発撃ったら砲弾が無くなるという有様です。
海軍と陸軍の砲兵の切り分けについても、海上の敵は海軍砲兵が、
上陸した敵は陸軍砲兵が受け持つという相変わらず、縦割りな関係です。
著者のルーゲは連合軍の陸海空3軍を統率したアイゼンハワーなどの
方面軍司令官のような考え方がドイツ軍にはまったくなかったことを嘆いています。
列車砲もかなりの数が配備されていたようです。
しかし、これらの列車砲は特定の目標に巨弾をぶち込むことが目的のため、
海上を移動している船舶にはまったく役立たずという話も出てきました。
スーパースターであるロンメル元帥の訪れる先は保安の面からも秘密となっていて
兵員食堂で食事をとっていると、それに気づいた兵士たちから歓声が挙がったり、
第21戦車師団の有名な戦車連隊長ブロニコフスキー大佐は
前夜に夜更かしが過ぎたこともあって「えらいことだ・・・」と呟いていたりと、
実際、ロンメルの知名度というものは、自分の考えていた以上のもののようです。
日々、あちこちを飛び回るロンメルに少しでも息抜きを・・と考えたルーゲ提督は
次の視察地の近くにある、世界遺産でも有名なモン・サン・ミッシェルをコースに組み込みますが
その戦術を見破られ、あっさり却下されてしまいます。
しかし、のちに同じ部隊を訪れた際には、ロンメルから
「今日はモン・サン・ミッシェルに行こうではないか!」と言われたエピソードは、
本書でほとんど唯一のホノボノした場面です。
それでもロンメルの感想は「素晴らしい地下壕だ!」。
西方装甲集団司令官のガイル・フォン・シュヴァッペンブルクとは
装甲部隊の用法を巡り互いに譲らず、毎回、なんの進展もなく物別れに終わります。
グデーリアン装甲兵総監も数回ロンメルを訪れ、装甲部隊をどこに置くかについて
意見を交わしますが、ルーゲによると、この楽しいお客さんは
ロンメルの沿岸近くに配備するという案に賛成だったようです。
OKWもロンメル案に同意したそうですが、結局は優柔不断のまま、
ロンメル案とシュヴァッペンブルク案の中間地点に配備されることに・・。
連合軍のノルマンディ上陸後の戦いは概要程度に留めていて、
ルントシュテット元帥に代わり、新たにに西部方面軍司令官となったクルーゲ元帥と
ロンメルのバトルが特別に印象的です。
そして7月20日のヒトラー暗殺未遂事件直前に重傷を負ったロンメルの入院生活。
頻繁に見舞いに訪れたルーゲ提督はロンメルに本を読んで聞かせるなど、
非常に親密な関係が伺え、それゆえ
最後に語られるロンメルの死の真相とその葬儀の様子の後、総括として
もし、ロンメルが重傷を負わなければ、連合軍との交渉が行われたのでないか・・
という著者の推測も、なにか説得力を感じました。
なかなか勉強になった一冊で、特に著者による海軍側からの視点が新鮮でした。
ロンメルものは「これで読破したかな」と思っていましたが、
学研M文庫から「ロンメル戦記」が出ていますね・・。まさにロンメルは永久に不滅のようです。
内容的には「狐の足跡」的な感じっぽいですが、両方読まれた方いらしたら
教えてください。