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バルト海の死闘 [ドイツ海軍]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

C.ドブスン著の「バルト海の死闘」を読破しました。

ソ連の潜水艦による、ドイツ引揚げ船ヴィルヘルム・グストロフ号撃沈の物語です。
8000人強といわれる乗客のうち、7000人が犠牲になった史上最悪の海難事故で
例えばタイタニック号の犠牲者が1500人ということと比較すれば
その犠牲者の多さがわかりますね。

バルト海の死闘.JPG

ヒトラーの命により1937年に建造された客船グストロフ号は、
1940年来、Uボート訓練学校の宿舎船として
バルト海の面したダンツィヒの近く、グディニアに繋留されていました。
しかし1945年、戦局の悪化とともに東方からのドイツ民族大脱出「ハンニバル作戦」が
デーニッツにより発動されると、グストロフ号もUボート部隊員を中心に
多くの女性や子供らを含む避難民をこれでもかというほど乗せ、
ほとんど護衛艦もないまま、出港していきます。

Wilhelm Gustloff.jpg

このような経緯についてはかなり詳細で、引揚げ作戦全般を管理する護衛艦隊と
Uボート艦隊との対立、特にUボート乗りはエリート意識が高く、
かつ、バルト海などというものは戦前からUボート訓練の場であり、
子供の遊び場と同義であるという認識があったようです。

Wilhelm Gustloff Kapteinis Petersen.jpg

さらには「16ノットも出せんし、ジグザク航行も出来ん」とする
高齢のグストロフ号船長ペーターゼンと
Uボート士官としての責任者ツァーン少佐とも意見がまったく合わない始末。
そしてその結果、魚雷攻撃を受け、グストロフ号は阿鼻叫喚の修羅場と化していきます。
この辺りはまるで映画「タイタニック」を彷彿とさせるもので、かなり壮絶です。

特に3人の子供を立て続けに亡くした母親・・・1人は落ちてきた大きなトランクの下敷きとなり、
1人は出口に殺到する群衆に踏み潰され、さらに1人は漆黒の海に落ちて・・。
その母親も悲しみのうちに救命ボートの中で死んでいったシーンは心に残ります。

Captain Marinesko.jpg

グストロフ号を撃沈した、S-13のアレクサンドル・マリネスコ艦長もこの本の主役の1人です。
出撃の直前に大酒をくらって数日行方知れずとなっていた等、
態度に問題があったことからか、この大戦果も上層部に取り上げてもらえず、
「ソ連邦英雄」どころか大戦中25万個もばらまかれた
「赤旗勲章」でガマンしなければならないという屈辱を味わい、
終戦後にはシベリアの収容所送りとなるというツイテいない人物です。

なお、この本ではドイツ版ダンケルクと云われるこの作戦全般も扱っており、
著者はデーニッツにもインタビューを行っています。

このグストロフ号の物語は映画にもなっています。
古いドイツ映画「ガストロフ号の悲劇」は観ましたが、
最近の「シップ・オブ・ノーリターン」は今度観てみようと思っています。

Erich Koch.jpg

最後に後記として語られる10ページほどの章は、特別に印象的です。
フリードリヒ1世の秘宝「琥珀の間」のパネルがグストロフ号に
積まれていたのではないか、というミステリーです。
主役は悪名高い東プロイセン大管区指導者のエーリッヒ・コッホで、
この人物がいかに不道徳極まる人間かを丁寧に紹介しています。
ポーランドで死刑判決が下されたものの、なぜか刑の執行はされず、
著者は80歳を過ぎたコッホがワルシャワの刑務所病院に収容されていることを発見します。
確かに「ナチと秘宝」という感じで面白いですね。






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