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電撃戦 -グデーリアン回想録- (下) [回想録]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ハインツ・グデーリアン著の「電撃戦(下)」を読破しました。

下巻はスターリングラードの敗北直後にヒトラーにより新設の装甲兵総監に任命され
現場復帰するところから始まり、ここからは原題である「一軍人の回想」のとおり、
電撃戦は過去のものとなり、東部戦線とヒトラーとの戦いの物語です。
そういえばマンシュタインの「失われた勝利」も後半は同じような展開でしたね。

電撃戦_下.JPG

ソ連戦車、T-34に衝撃を受けたグデーリアンたちは、既に開発中のティーガーに加え、
新たにⅤ号戦車パンターの開発に着手します。
1942年の間にヒトラーの細かい命令と変更の結果、多種多様な戦車を含む兵器が混在し、
生産と修理が滞るといった状況を打破するため、
装甲兵総監としてあちこちの戦線を飛び回る毎日のグデーリアン。
彼は武装SSに対して好意的な印象で、特にこのような時期にティーガーやパンターのような
新型戦車が武装SSのエリート部隊にも配備されたこともあって、
SS戦車兵たちとも接する機会も多かったのでしょう。
1942年の干されていた時に最初に遊びに来てくれたのがゼップ・ディートリッヒだった
ということも書かれていますしね。

Guderian visited the Leibstandarte's Tiger.jpg

しかし、そんなことを尻目にすでにこのときにはヒトラーの希望により、
100㌧を超える超重量戦車マウスの開発が始まっていたそうです。
グデーリアン自身はこのような見掛け倒しの大型兵器には興味なしで、
機銃も付いていないため、敵の肉薄攻撃に弱いフェルディナンドといった大型戦車や
グスタフ列車砲なども、どうでもいいといった感じです。

maus.jpg

そして、1943年の夏季攻勢「ツィタデレ作戦」が検討され始めると、
上巻での因縁、クルーゲ元帥と再会することとなります。
別室に呼ばれて過去の問題を話し合い、気まずく別れた後、
クルーゲはヒトラーを立会人としての「決闘」を申し込んできます。
さすがにヒトラーもこれには困ったのか、グデーリアンに穏便に済ますよう求めてきたそうで、
この意を酌み、下出に出た書簡を送って和解を求めたと述べています。

Günther von Kluge.jpg

それでもクルーゲに対する思いはかなり激しいようで、その後もノルマンディーにおける
ルントシュテット元帥の後任としてクルーゲが任命されたところでも触れています。
曰く「フォン・クルーゲ氏はまことに勤勉な軍人であり、まあまあの小戦術家であった。
機動的指揮による装甲部隊の用法に関して、少しの理解も持ち合わせておらず、
彼が与えた影響といえば、単なる妨害だけだった。
彼は装甲部隊の分散的使用の名人で、西方戦線では、
最悪な状況の根本的な改善策を打つこともなく、
しかも優秀な敵艦砲火力の射程距離内で限られた目標に正面から反攻をかけたのである。
機動兵力が全滅してしまうのは当たり前であった」

Heinz Guderian.jpg

この西方戦線では戦前から面識のあったというロンメルも登場します。
連合軍上陸に備えた装甲部隊の配置について、何度もロンメルを説得したという話や
北アフリカから呼び戻されたロンメルが自分の後任にグデーリアンを推薦していたことなど
なかなか興味深い話も出てきます。


1944年7月20日のヒトラー暗殺未遂事件については、わりと早い段階から
その計画(ヒトラーを排除しようとするクーデター)を知っていたようです。
しかし、グデーリアン自身は当時もまったく反対であったとその理由を説明しています。
そしてその事件の直後、今度はツァイツラーに代わって陸軍参謀総長に任命されます。

Goering, Fegelein,Hitler, Guderian.jpg

軽蔑する国防軍総司令部総長カイテルを最高の頭脳を持つと絶賛するマンシュタインに
交代させるようヒトラーに進言しますが、にべもなく断られます。
それにしてもカイテル元帥はどの本を読んでも酷い言われようですね。
また、これも同じように言われる統帥局長のヨードルとも言い争いは絶えません。
特に西方の作戦を管轄する国防軍司令部と東部が管轄の陸軍総司令部間の
予備師団の奪い合いがその頂点となります。
それでもヨードルに対しては「最後の最後におのれの立場に目覚め、
スターリングラード以降のスランプから脱出した」と評価しています。

Jodl_hitler_guderian.jpg

SS全国指導者ヒムラーヴァイクセル軍集団司令官となった際、
部下のヴェンクを補佐に付けようと「頑固親父」ヒトラーにしつこく食い下がり、
ついに大爆発したヒトラーの罵詈雑言を耐え忍んだ結果、
突然ヒトラーが負けを認めるシーンはまさにハイライトで、
これがヒトラーに対する唯一の勝利だったそうです。
ちなみに「ヒムラーのごとき人間がなぜヴァイクセル軍集団を率いることになったかというと
騎士十字章が欲しかったからである」と述べています。

RFSS Heinrich Himmler.jpg

まったく、とても書ききれないほどの興味深い登場人物とエピソードに溢れた回想録で
パウル・カレルなども大いに参考にしている古典的名著といえるでしょう。
なにか以前に読んだ話もあり、この回想録から抜粋された本がいかに多いか認識しました。
遠回しな表現や参謀らしい神経質さなど微塵もない、下町オヤジ風に思ったことを
ズバズバ言う爽快な回想録で、ぜひ読んでいただきたいものです。





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