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大空に生きる [女性と戦争]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ハンナ・ライチェ著の「大空に生きる」を読破しました。

ハンナ・ライチェといえば(Hanna Reitsch/ハンナ・ライチュが正しいですかね)
映画「ヒトラー/最後の12日間」にも登場していることで有名です。
グライム上級大将を乗せて包囲下にある総統官邸へ向かった、あの女性パイロットです。

大空に生きる.JPG

少女時代の「飛びたい!」という願望から始まり、グライダー学校で様々な記録を打ちたて、
やがて上昇気流の研究員として、アフリカから
ブラジルやアルゼンチン、アメリカ等世界中を旅します。
時代は第一次大戦後のドイツ復興のときであり、
若き女性グライダーパイロットとして訪れる先々の国で大歓迎を受けます。

Hanna Reitsch1.jpg

やがて第二次大戦の足音が忍び寄ってくると、
創設されたルフトヴァッフェのために新型飛行機などの
テストパイロットとして活躍の場を必然的に移していきます。
ハンナがグライダーでテストをした「急降下制動器」はすぐにウーデット上級大将により、
有名なJu87急降下爆撃機に採用されるなど、
世界最初の屋内(大ホール)でのヘリコプター飛行、
Me163ロケット戦闘機(コメート)やV1ロケット有人飛行と
その経歴はダテのテストパイロットではあません。
これらの活躍により2級、1級鉄十字章を受章しますが
2級鉄十字章といっても女性の受章は大変なことで
第一次大戦での看護婦さん1名のみというぐらいのものです。

ヘリコプター.jpg

当然、こうなると空軍最高司令官でもあるゲーリングやヒトラーも黙ってはいません。
しかし個人的に一番興味深かったのは、コメートでの事故により長期入院中のハンナへ
SS全国指導者ヒムラーから定期的に質素なお見舞いが届いたことから
個人的な知り合いになっていったエピソードです。
敬虔なキリスト教徒であったハンナと母は、
キリスト教迫害の大元締めであるヒムラーに良い印象をもっているはずがありません。
それでも退院後にお礼を・・ということでヒムラーを尋ねるわけですが
やっぱりヒムラーというのは不思議な人物です。

Hanna Reitsch2.jpg

非常に楽しめる回想録で、特に前半の男の競技であるグライダー社会に小柄な女性が挑戦し、
徐々に認められていくさまは、まさに青春映画ばりで、女性でも充分楽しめるでしょう。
ただ、絶版できれいな状態のものは手に入りづらくなっています。



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鉄の棺 ―U-Boot死闘の記録― [Uボート]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ヘルベルト・ヴェルナー著の「鉄の棺」を読破しました。

Uボート艦長の回想録というのはあまり多くはありません。
撃沈されたUボートの数、損害率は凄まじく、生き残った人が少ないからでもあるようです。
この本の著者ヴェルナーはUボート・エースとして名を馳せた有名艦長ではないですが、
一般的なUボートものとは一味違う感覚で、Uボート戦を再現しています。

鉄の棺.JPG

1940年海軍学校を卒業し、Uボートへ見習い将校として勤務に着きます。
当時はUボート全盛の時であり、前半では次席将校、先任将校(副官)として
貨物船をガンガン沈めていきます。
しかし伝説化した大エースのクレッチマーが撃沈されたというニュースが
新人の彼らの動揺を誘うように、アメリカの参戦、連合軍のレーダー、制空権、
船団方式の強化等により立場はあっという間に逆転してしまい、
多数のUボートが本のタイトルの如く「鉄の棺」と化していきます。
その対駆逐艦との攻防も凄まじく、
名作映画「Uボート」を思い出しながら読める人にはさらに恐ろしい。。
実はこの人、なかなか艦長にはならなくて、
後半でやっとこさ旧式のUボート「U953」の艦長になる次第です。
しかし時は連合軍のノルマンディ上陸も近く、Uボート艦隊は全滅の危機的状況であり、
体当りでの玉砕命令まで出される始末。
ベテランのUボート乗りが激減していく一方、
必然的に若く経験不足の将校でも艦長とならざるを得ませんでした。

鉄の棺 Herbert Werner.jpg

ストーリーは①哨戒任務、②帰港してパーティ、③港みなとに女との出会い、
という繰り返しパターンですが、あれだけロマンスがあるのはさすが海の男と言えるでしょう
(勿論、いつ戦死するかもという状況も大きいですが・・)。
一応、正式な恋人もいるのですが、土地土地でとっかえひっかえやってるので、
本土空襲のニュースで女性を心配するシーンがあっても
どこの誰を心配しているのかが良くわかりません。
まぁ、わざわざページを戻って再確認する必要までは無いと思いますが・・。
また、司令官デーニッツに対する想いも一般的に言われるUボート乗りとは
微妙に温度差があるように思えます。
これは、デーニッツがUボート艦隊指令から海軍総指令、
最後はヒトラーの後継者へとUボートから離れていったことと比例していくようです。

特筆すべきは終戦後が語られるエピローグの数ページです。
捕虜となった収容所からの脱走、裏切り、逮捕、フランス外人部隊への強制入隊、再び脱走・・と
ヘタすればこれだけでも一冊書けるだけの冒険紀行です。

ヴィトゲンシュタインのは旧版のフジ出版社ですが、中央公論新社から現在、再刊されています。



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クルスクのパンター -新型戦車の初陣、その隠された記録- [パンツァー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

マクシム コロミーエツ 著の「クルスクのパンター」を読破しました。

未発表の写真を中心としたシリーズの第1巻で、著者はロシア中央軍事博物館の
研究員を得た若き軍事研究家です。
80ページ程度のものですが、写真も豊富で、特筆すべきは1943年8月のクルスク戦終了後の
赤軍兵士群向けに発行された、対パンター戦車戦闘指導書です。
パンターの弱点や急所を図解で解説しており、
「対戦車兵よ!ここを狙うのだ!」と熱く説明しています。

クルスクのパンター.JPG

しかし、人間の好きなヴィトゲンシュタインとしてはクルスク戦での指揮官の迷走っぷりに
異常なまでの興味を覚えました。
第39戦車連隊とグロースドイッチュランド戦車連隊とを編成し、
第10戦車旅団としてクルスク戦に臨んだ新型戦車パンターですが、
司令官に第39戦車連隊のデッカー大佐が任命された緒戦後、召還されている間に
グロースドイッチュランド戦車連隊長の伯爵シュトラハヴィッツ大佐が指揮を取ります。
しかし旅団帰着後のデッカー大佐曰く「非論理的な行動」や「無能な戦術」により、
十数両のパンターを失ったとグデーリアン将軍に報告してしまっています。

デッカー.JPG

まあ、いろいろと連隊間の調整が不十分であったなどと、理由はあるようですが、
恐ろしくアクの強そうな百戦錬磨の戦車連隊長が2人も居るともなると、
さぞかし部下も大変だったでしょう。

シュトラハヴィッツ.JPG

例えば、映画「バルジ大作戦」のヘスラー大佐が2人同じ旅団に居たら
間違いなくトンデモないことになるでしょうからね。

ヘスラー大佐.jpg



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最後の反乱―ゲーリング弾劾と独ジェット戦闘機隊 [ドイツ空軍]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ヨハネス・シュタインホフ著の「最後の反乱」を読破しました。

撃墜数176機を誇り、剣付柏葉騎士十字章拝領者である大エース、
シュタインホフ大佐の回想録です。
アドルフ・ガーランド率いる有名な44ジェット戦闘団の小隊長を務めた著者の
1944年に起こったゲーリングに対する反乱。
そしてMe-262ジェット戦闘機中隊の創設。
さらに離陸時の事故によって全身大やけどを負い、終戦を迎えるまでを描かれています。

最後の反乱.JPG

連合軍のやりたい放題となった爆撃に憂慮しつつも、なんら新しい兵器、
対抗手段の出せない空軍首脳に対する不満の溜まった将校団が、
追い討ちをかけるかのようなゲーリングの「戦闘機パイロットは卑怯者」発言に憤慨し
更迭を企てていくまでの精神状態が生々しく、非常に印象に残ります。

シュタインホフ.JPG

また親友であり、ゲーリングに対する将校団の代表を務めたリュツォウ大佐とは
お互い常に「貴様」呼ばわりで語り合います。
ちょっと古い本で(これは30年前です)ここら辺の表現に馴染み薄いと、
最初「喧嘩してんのか?」と思ってしまいますね。まぁ、同期の桜ですかね。
しかしリュッツォウは男として、なにかミョ~に惹かれるものがあります。
「中村獅童」そっくりですが・・。
(可哀相なのでここでは男前な写真をUPします)

Lützow.jpg

他にも著者が敬愛するガーランド中将は常に「わしは・・・」と訳されていますが
これは当時のガーランドの年齢を思うとちょっと笑ってしまいます。。
シュタインホフの一つ年上で32、3歳ですからね。

この本は既に廃刊となっていまして、手に入りづらくなっています。
古書で見つけられてもちょっとしたプレミア価格です。
ガーランドの回想録「始まりと終り」や
「第44戦闘団 ザ・ガランド・サーカス」とぜひ併せて読みたいですね。



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Uボート、出撃せよ [Uボート]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

アレクサンドル・コルガノフ著の「Uボート、出撃せよ」を再度、読破しました。

初の騎士十字章受章者である、ギュンター・プリーン大尉の有名なU-47のスカパフロー潜入、
そして英国戦艦ロイヤルオークを撃沈の物語です。
デーニッツUボート指令より、作戦の検討を命ぜられ、プリーン自らが決断し、
出撃するところから話は始まります。
狭い水道に特殊な潮の流れ、さらに半分沈んだ船舶がスカパフローへの進入を妨げます。
そして、見事ロイヤルオークを撃沈するも、帰港においても英国駆逐艦との攻防、
突然の機雷原の遭遇と決死の航行となります。

Uボート、出撃せよ.JPG

翻訳がかなりクダケていて、先任から機関長、水兵にいたるまで
バイエルン弁まるだしでの会話がまるで、冒険映画を観ているように感じます。
特にラスト、母港まで先導するべき哨戒艇を逆にU-47が先導することとなるシーンや
有名な牡牛のペイントのシーンでは思わず大笑いしてしまいます。

U47.JPG

U-47とプリーンはその後1941年に撃沈されてしまいますが、
この本ではスカパフローにおける爽快な物語に閉じているため、
古い戦争映画を観たような気分になります。
と思っていたら、やっぱりありました!1958年の西ドイツ映画「U47出撃せよ」です。
内容はほぼ一緒で、現在でもDVDで購入可能ですよ。

U47出撃せよ.JPG

なお、この本のほうは既に廃刊のようです。
また以前は「U47、スカパ・フローへ突入せよ」のタイトルでした。





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