ナチス親衛隊装備大図鑑 [軍装/勲章]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
アルリック・オブ・イングランド著の「ナチス親衛隊装備大図鑑」を読破しました。
去年に紹介した「ドイツ軍装備大図鑑: 制服・兵器から日用品まで」に続く 、
装備大図鑑シリーズの第2弾がやってまいりました。
5月に出た435ページの大型本で、お値段9975円と高価ですが、迷わず購入。。
山下 英一郎著の「制服の帝国」にも似た感じかと思いますが、
なんといっても当時の品々がオールカラーで楽しめます。
まずプロローグでは、「SSはドイツとヨーロッパの歴史に根ざした、驚くほど複雑で、
魅力的な歴史現象であり、このテーマに関する真に決定版と呼べる学術論文は、
(「髑髏結社 SSの歴史」はそれに近いが)疑いなくまだ現れていない」とします。
ほ~、確かにSSの本ではアレがベストですね。
そして本書のコンセプトは、「黒の軍団の制服と徽章にハッキリと現れた審美的な世界・・、
本物の一般親衛隊(アルゲマイネSS)の歴史的遺物から代表的なものを一堂に集め、
読者がSSの組織という文脈の中でそれらを理解できるような方法で紹介すること」としています。
本書は2部構成となっていて、第1部はSS内の儀式的要素と、
ドイツ社会のさまざまな領域へのSSの教化、指導、浸透の方法論を、
第2部では制服と装備品を紹介します。
それでは第1部「歴史的背景と組織」へ・・。
1925年のSSの誕生、その前身である「アドルフ・ヒトラー挺身隊(Stosstrupp-Hitler)」が
1923年に誕生した話など、当時の大きな写真も掲載してかなり詳しく解説します。
初代隊長シュレック、ベルヒトルト、ハイデンも写真付きで紹介し、
1929年にヒムラーがSS全国指導者になると、その当時の彼のSS身分証明書も登場。
ちなみに「アドルフ・ヒトラー挺身隊」は「アドルフ・ヒトラー衝撃隊」とも訳されますね。
続いて、「一般親衛隊の組織」を解説します。
SS本部から、SS国家保安本部、SS経済・管理本部など8つの部局を責任者の写真と共に。
写真といってもハイスマイヤー、カルテンブルンナーといった有名人だけでなく、
初めて聞いた名前の人もバンバン写真で出てきます。
もう、この時点で本書のマニアックさが伝わってきました。
ヒムラーが「SS信仰」構想の中心人物としていたハインリッヒ1世に触れながら、
ルーン文字、ヴェーヴェルスブルク城、アーネンエルベ協会などへと進みます。
しかし、ベルリンのアーネンエルベ本部に飾ってあったタペストリーのカラー写真や、
ヴェーヴェルスブルク城の大ホールで使われたイスのカラー写真とか、
品々のマニアック度は半端じゃありません。思わず、じ~・・と見入ってしまいます。。
髑髏リングの後は、SS隊員の結婚と葬儀。
1923年から1934年の間に400名以上のSA隊員とSS隊員が共産主義者によって殺され、
そのような殉職者はヒトラーが特に指名した場合は、SS連隊や中隊に名が付けられ、
そんな部隊のカフタイトルも各種掲載されています。
まだまだ、レーベンスボルン(生命の泉)に、
機関紙ダス・シュヴァルツェ・コーアと、SS関連の事業紹介。
SDとハイドリヒの紹介では、豪勢なハイドリヒの執務室の写真も。
SS士官学校も外観から施設の写真まで・・、校長先生はパウル・ハウサーですね。
本書は武装SSはあくまで対象外となっていますが、SS-VT(特務部隊)として
ライプシュタンダルテにドイチュラント、ゲルマニア、デア・フューラーの各連隊を紹介します。
襟章にカフタイトルもそれぞれに、またゼップ・ディートリッヒの夜会服まで出てきました。
これは1945年にベルリンで発見され、いまはモスクワ軍事博物館のコレクションだそうです。
ちなみにライプシュタンダルテは「総統旗」など、いろいろな表現がありますが、
本書では「アドルフ・ヒトラーSS身辺警護連隊」で統一されています。
それから髑髏部隊。
テオドール・アイケの未見の写真も良いですが、SS中佐のカール・コッホが結婚した写真。
ブーケを持って微笑んでいるのは、もちろんイルゼ・コッホですね。。
しかし本書ではそういう関係ないネタには一切触れません。
その他、SSの専門部隊。まずはSS乗馬連隊で、SS乗馬学校も創設。
こちらの校長先生はヘルマン・フェーゲラインですが、「交差した槍」の襟章がステキです。
工兵隊なら「交差したつるはしとシャベル」の徽章、通信隊なら「稲妻」ですね。
そして、SS飛行隊!
1931年11月にミュンヘンで設立されたそうで、コレはまったく知りませんでした。
この小規模な部隊は1933年9月に、ドイツ航空スポーツ連盟に吸収されてしまったそうですが、
「翼とプロペラ」の徽章に、「SS/SA操縦者翼状徽章」なんてのも始めて見ました!
SS音楽隊だけでも8ページと写真たっぷり、自動車化部隊にSS予備役部隊まで・・。
予備役大隊は「Reserve」のカフタイトルに、「R」の襟章、
45歳を超えた予備役資格は「後備役中隊」に配属されて、徽章類も黒ではなく、「グレー」です。
こうして155ページから第2部「制服、装具、旗、徽章」へ。
帽子だけでも1925年当初の「ケピ帽」から、定番の「鍔付き制帽」まで丁寧に紹介。
1938年型のフィールドグレーの制帽、野戦帽もしっかりと。
夏用の白制帽はヒトラー専属運転手のケンプカの物です。
将校用の黒い初期型制帽の写真では、1934年当時の見本としてモデルを務めているのが
SS大尉のテオドール・ヴィッシュです。若いなぁ。。
ヘルメットは1933年にパレード用として使うことになりますが、
最初は第1次大戦の余剰ヘルメット(M16)を黒く塗ったもの。
M1935型ヘルメットが造られ始めても、陸軍への供給が優先され、
1936年の遅くなってからようやくSSにもM35が供給されたということです。
ヘルメットをかぶったヒムラーの写真が掲載されていましたが、
第二次世界大戦ブックス「ゲシュタポ」の表紙ですね。
「制服」はまだSSの黒い上着が登場する前、いわゆるSAの褐色シャツに
SSの黒い襟章を付けたスタイルから紹介します。
一般SSの命、黒の制服も数種類現物で部分的にはアップの写真も。
リッベントロップが着ていた夜会服では特別に右胸に付けていたという
髑髏にモットーが書かれた「夜会服徽章」の写真が鮮明です。
こういう品々も、「1945年に米軍のゴールドスミス中佐がホテル・クローンから手に入れた」と
入手経緯についも可能な限り書かれていますが、
大抵、西側連合軍による略奪品で、後年、売りに出された物なんですね。
白いステッチの入ったダブルの「社交服」も一歩間違えれば戦車服ですね。
ヒトラーの給仕をする「食堂当番兵」の白の上着まで出てきました。
そんな彼らは「ライプシュタンダルテ」から選抜された隊員であり、
完璧に信用できて、何を立ち聞きしたとしても口を慎む精鋭だったようです。
1934年に採用された「黒マント」は首相(内閣)官房長官ハインリヒ・ラマースのものです。
高価につき購入したSS隊員はほとんどいなかったそうですが、
これは完全にダース・ヴェイダーですよね。。
夏季用白上衣は例のホテルで大量に略奪されたリッベントロップの物と、
1945年にヒムラーの自宅から米軍によって持ち去られた物の2着です。
フィールドグレーの制服はオスヴァルト・ポールの1938年型が細かく出てきますが
これは「SS軍装ハンドブック」にも巻頭カラーで載っていました。付いている徽章が違いますが。
「コート」だけでも12ページ。
ヒムラーの幕僚長だったカール・ヴォルフの黒のオーバーコートは上等なウールの逸品で、
左腕にはSA/SS指導者学校「ライヒスフューラーシューレ」を卒業したことの証である
「↑ ティール・ルーン」付き。「革のオーバーコート」もカッコいいっす。
各種ズボンに「新品」の褐色シャツ、白の皮手袋と続々と続きます。
ベルトのバックルも将校用、下士官用だけでなく、1932年に採用された洋銀製と
1930年代後半に製造されたアルミ製と区別するマニアックぶり・・。
それどころか美しいアルミ糸織物の礼装用のベルトまで出てきました。
キャンバス製のブレッドバッグ(背嚢)に水筒、飯盒、テント布、副官用飾緒と、
一般SS向けには何でも黒く塗装したりして製造されています。
胸当て(ゴルゲット)は、SS巡察部の物と無線局警備用の2種類を紹介。
1936年のオリンピック当時の写真では、そのゴルゲットを指さして喜ぶ日本人の姿・・。
黒革ブーツに続いて、徽章の巻。
当初はSSマンから、SSオーバーグルッペンフューラーまで9階級しかなかったものの、
SS隊員の増加に伴い階級が増えていったわけですが、
まぁ、ここら辺はボクシングの階級と同じ感じですね。
襟章の紹介では、第19SS連隊を現す「19」の襟章を付けた当時のモデルさん。
「ヨセフ・シュトロープSS上級小隊指揮官」とキャプションに書かれていますが、
この人は後に、よりアーリア人らしくと「ユルゲン」に改名したシュトロープ将軍です。
イルゼ・コッホの時といい、本書では「ブッヘンヴァルトの魔女」とか、
「ワルシャワ・ゲットー蜂起の鎮圧者」とか、そういう下世話な話はありません。
写真を見て、わかる人だけわかればいい・・ということが徹底しています。
肩章、腕章、そしてカフタイトル。
ここでも第10SS連隊のカフタイトルを付けた若きアイケがモデルです。
初見の写真ですが、やっぱり悪そうな顔してんなぁ。ボルマン系・・。
左腕につける「ダイヤモンド型職掌徽章」は素晴らしい。ドキドキします。。
歯科隊用、法務部職員用、馬係、薬剤師、獣医部、管理部など種類も豊富。
ここのモデルさんは「完全な資格を持つ医師用」の徽章を付けたレオナルド・コンティと、
「人種・移住本部要員用」の徽章を付けたヘルベルト・バッケの2人です。
右腕の古参闘士の「V字形章」も警察、国防軍の元メンバー用に星付きのがあったり、
射撃徽章も4つの等級があったりと、知らなかったことが実に多いですね。
勲章と記章では、ミュンヘン一揆の「血の勲章」から始まり、
ユリウス・シャウプの物だった「金枠党員章」。
1929年ニュルンベルク党大会記章と、1931年ブラウンシュヴァイク党大会記章の他、
1922年10月の「コーブルク集会」に参加した者を讃えるために
1932年にヒトラー自ら制定したという「「コーブルク名誉記章」。
これは知りませんでしたが、授与基準は400名程度というレアなモノです。
そして一揆が失敗に終わった禁止令時代に、代用突撃隊として1924年に設立された
フロントバンの元隊員向けの「フロントバン記章」というのも珍しいですね。
SS永年勤続章は4年、8年、12年、25年と4段階ですが、
SS誕生の1925年から勘定すると、25年も勤続したら1950年になってしまい、
受章するには「ファーザーランド」の世界が必要になってしまいます。
なので、政権を取った1933年までの期間は「闘争時代」ということで2倍の計算。。
しかし、闘争時代からのナチ党員はこのように様々な徽章や勲章があったりと、
特別扱いなのが良くわかります。
ヒトラーが首相になってからは、多くの有能なドイツ人もナチ党員、SS隊員となるわけですが、
「古参」というだけで優遇された、威張るのだけが取り柄の能無しには困ったんでしょうね・・。
「私服用ピン」も、「FM(後援会)」の会員用や名誉ピンに
1939年のポーランド戦以前から、自由都市ダンツィヒで奮戦していた隊員向けの
「ダンツィヒ郷土防衛軍名誉ピン」といったレアなものが登場します。
「長剣」も良いですねぇ。名誉長剣に、ヒムラーが特別な高級指導者の50歳の記念に
贈ったという「誕生日贈呈用長剣」などが20ページに渡って紹介されます。
なかでもSSオフィシャル長剣ではなく、「ライプシュタンダルテ」の将校団が
ゼップ・ディートリッヒの44歳の誕生日に贈呈した、特別な長剣が印象的です。
「短剣」になると、これはもうヒトラー・ユーゲントでも各自持っている位ですから大変です。
大量の短剣を受注したのはゾーリンゲン商工会議所で、大手メーカーばかりでなく、
小さな会社でも短剣を生産。
本書ではそのようなメーカー毎に紹介してくれます。
次の武器は「拳銃」です。
ハイドリヒをヒムラーに紹介したフォン・エーバーシュタインの美しい拳銃に、
オークの葉が彫刻された金メッキに象牙グリップの「ワルサーPP」。
これはカール・ヴォルフがイタリアで米軍に降伏した際に、
その贈呈用の拳銃をケンドール少将に手渡し、
その後、ウェストポイントに寄贈されて、現在もそこに保管されているそうです。
いや~、実に綺麗ですね。
「文書、身分証明書、印刷物」もたっぷりですね。
SD将校の身分証明書にはハイドリヒの肉筆署名が入っていたりします。
ハイドリヒのサインも初めてですが、凄いなぁ。字がのたくってます。
残りも少なくなってきましたが、ここで「連隊旗」の登場です。
良くナチ党のパレードで見かけるアレですね。
正面には「ドイチュラント・エアヴァッヒェ(ドイツよ、目覚めよ)」と書かれ、
旗頭の箱型に連隊名。裏は「NSDAP」です。
神聖な「血染めの旗」についても詳しく書かれていますが、
1944年までは本部に置かれていたことが分かっているものの、
戦争を生き延びたのかどうかは一切不明だそうです。
そんな連隊旗を掲げる旗手の装具も手袋から胸当て章、旗バンドまで。
旗ついでに「車両用指令旗」まで細かく紹介されます。
最後には「アラッハ磁器」という、SS御用達の陶器や彩色の美しい軍隊人形が、
まるでオークション・カタログの如く・・。
いや~、こんな高い買い物、久々にしましたが大満足でございます。
次のページにナニが出てくるのか、ドキドキ、ワクワクしつつも、
今読んでいるページの写真と解説が濃すぎて、なかなか次のページ進めない・・という
モドカシくて、悶絶しました。
「うぉあ!」とか、「なんだコリャ!?」、「ふ~、、スゲえなぁ」って何度口にしたかわかりませんね。
「制服の帝国」などが好きな方には、絶対の自信を持ってお勧めします。
今まで読んだSS関連本にも触れられてなかった情報もありましたし、
帯に書かれた「・・・永久保存版!」はダテではありません。
大概、帯に書かれた大げさな文句は「嘘八百」ですが、本書は文句なし!
「日本軍装備大図鑑」が図書館にあるので借りてみようかな。
アルリック・オブ・イングランド著の「ナチス親衛隊装備大図鑑」を読破しました。
去年に紹介した「ドイツ軍装備大図鑑: 制服・兵器から日用品まで」に続く 、
装備大図鑑シリーズの第2弾がやってまいりました。
5月に出た435ページの大型本で、お値段9975円と高価ですが、迷わず購入。。
山下 英一郎著の「制服の帝国」にも似た感じかと思いますが、
なんといっても当時の品々がオールカラーで楽しめます。
まずプロローグでは、「SSはドイツとヨーロッパの歴史に根ざした、驚くほど複雑で、
魅力的な歴史現象であり、このテーマに関する真に決定版と呼べる学術論文は、
(「髑髏結社 SSの歴史」はそれに近いが)疑いなくまだ現れていない」とします。
ほ~、確かにSSの本ではアレがベストですね。
そして本書のコンセプトは、「黒の軍団の制服と徽章にハッキリと現れた審美的な世界・・、
本物の一般親衛隊(アルゲマイネSS)の歴史的遺物から代表的なものを一堂に集め、
読者がSSの組織という文脈の中でそれらを理解できるような方法で紹介すること」としています。
本書は2部構成となっていて、第1部はSS内の儀式的要素と、
ドイツ社会のさまざまな領域へのSSの教化、指導、浸透の方法論を、
第2部では制服と装備品を紹介します。
それでは第1部「歴史的背景と組織」へ・・。
1925年のSSの誕生、その前身である「アドルフ・ヒトラー挺身隊(Stosstrupp-Hitler)」が
1923年に誕生した話など、当時の大きな写真も掲載してかなり詳しく解説します。
初代隊長シュレック、ベルヒトルト、ハイデンも写真付きで紹介し、
1929年にヒムラーがSS全国指導者になると、その当時の彼のSS身分証明書も登場。
ちなみに「アドルフ・ヒトラー挺身隊」は「アドルフ・ヒトラー衝撃隊」とも訳されますね。
続いて、「一般親衛隊の組織」を解説します。
SS本部から、SS国家保安本部、SS経済・管理本部など8つの部局を責任者の写真と共に。
写真といってもハイスマイヤー、カルテンブルンナーといった有名人だけでなく、
初めて聞いた名前の人もバンバン写真で出てきます。
もう、この時点で本書のマニアックさが伝わってきました。
ヒムラーが「SS信仰」構想の中心人物としていたハインリッヒ1世に触れながら、
ルーン文字、ヴェーヴェルスブルク城、アーネンエルベ協会などへと進みます。
しかし、ベルリンのアーネンエルベ本部に飾ってあったタペストリーのカラー写真や、
ヴェーヴェルスブルク城の大ホールで使われたイスのカラー写真とか、
品々のマニアック度は半端じゃありません。思わず、じ~・・と見入ってしまいます。。
髑髏リングの後は、SS隊員の結婚と葬儀。
1923年から1934年の間に400名以上のSA隊員とSS隊員が共産主義者によって殺され、
そのような殉職者はヒトラーが特に指名した場合は、SS連隊や中隊に名が付けられ、
そんな部隊のカフタイトルも各種掲載されています。
まだまだ、レーベンスボルン(生命の泉)に、
機関紙ダス・シュヴァルツェ・コーアと、SS関連の事業紹介。
SDとハイドリヒの紹介では、豪勢なハイドリヒの執務室の写真も。
SS士官学校も外観から施設の写真まで・・、校長先生はパウル・ハウサーですね。
本書は武装SSはあくまで対象外となっていますが、SS-VT(特務部隊)として
ライプシュタンダルテにドイチュラント、ゲルマニア、デア・フューラーの各連隊を紹介します。
襟章にカフタイトルもそれぞれに、またゼップ・ディートリッヒの夜会服まで出てきました。
これは1945年にベルリンで発見され、いまはモスクワ軍事博物館のコレクションだそうです。
ちなみにライプシュタンダルテは「総統旗」など、いろいろな表現がありますが、
本書では「アドルフ・ヒトラーSS身辺警護連隊」で統一されています。
それから髑髏部隊。
テオドール・アイケの未見の写真も良いですが、SS中佐のカール・コッホが結婚した写真。
ブーケを持って微笑んでいるのは、もちろんイルゼ・コッホですね。。
しかし本書ではそういう関係ないネタには一切触れません。
その他、SSの専門部隊。まずはSS乗馬連隊で、SS乗馬学校も創設。
こちらの校長先生はヘルマン・フェーゲラインですが、「交差した槍」の襟章がステキです。
工兵隊なら「交差したつるはしとシャベル」の徽章、通信隊なら「稲妻」ですね。
そして、SS飛行隊!
1931年11月にミュンヘンで設立されたそうで、コレはまったく知りませんでした。
この小規模な部隊は1933年9月に、ドイツ航空スポーツ連盟に吸収されてしまったそうですが、
「翼とプロペラ」の徽章に、「SS/SA操縦者翼状徽章」なんてのも始めて見ました!
SS音楽隊だけでも8ページと写真たっぷり、自動車化部隊にSS予備役部隊まで・・。
予備役大隊は「Reserve」のカフタイトルに、「R」の襟章、
45歳を超えた予備役資格は「後備役中隊」に配属されて、徽章類も黒ではなく、「グレー」です。
こうして155ページから第2部「制服、装具、旗、徽章」へ。
帽子だけでも1925年当初の「ケピ帽」から、定番の「鍔付き制帽」まで丁寧に紹介。
1938年型のフィールドグレーの制帽、野戦帽もしっかりと。
夏用の白制帽はヒトラー専属運転手のケンプカの物です。
将校用の黒い初期型制帽の写真では、1934年当時の見本としてモデルを務めているのが
SS大尉のテオドール・ヴィッシュです。若いなぁ。。
ヘルメットは1933年にパレード用として使うことになりますが、
最初は第1次大戦の余剰ヘルメット(M16)を黒く塗ったもの。
M1935型ヘルメットが造られ始めても、陸軍への供給が優先され、
1936年の遅くなってからようやくSSにもM35が供給されたということです。
ヘルメットをかぶったヒムラーの写真が掲載されていましたが、
第二次世界大戦ブックス「ゲシュタポ」の表紙ですね。
「制服」はまだSSの黒い上着が登場する前、いわゆるSAの褐色シャツに
SSの黒い襟章を付けたスタイルから紹介します。
一般SSの命、黒の制服も数種類現物で部分的にはアップの写真も。
リッベントロップが着ていた夜会服では特別に右胸に付けていたという
髑髏にモットーが書かれた「夜会服徽章」の写真が鮮明です。
こういう品々も、「1945年に米軍のゴールドスミス中佐がホテル・クローンから手に入れた」と
入手経緯についも可能な限り書かれていますが、
大抵、西側連合軍による略奪品で、後年、売りに出された物なんですね。
白いステッチの入ったダブルの「社交服」も一歩間違えれば戦車服ですね。
ヒトラーの給仕をする「食堂当番兵」の白の上着まで出てきました。
そんな彼らは「ライプシュタンダルテ」から選抜された隊員であり、
完璧に信用できて、何を立ち聞きしたとしても口を慎む精鋭だったようです。
1934年に採用された「黒マント」は首相(内閣)官房長官ハインリヒ・ラマースのものです。
高価につき購入したSS隊員はほとんどいなかったそうですが、
これは完全にダース・ヴェイダーですよね。。
夏季用白上衣は例のホテルで大量に略奪されたリッベントロップの物と、
1945年にヒムラーの自宅から米軍によって持ち去られた物の2着です。
フィールドグレーの制服はオスヴァルト・ポールの1938年型が細かく出てきますが
これは「SS軍装ハンドブック」にも巻頭カラーで載っていました。付いている徽章が違いますが。
「コート」だけでも12ページ。
ヒムラーの幕僚長だったカール・ヴォルフの黒のオーバーコートは上等なウールの逸品で、
左腕にはSA/SS指導者学校「ライヒスフューラーシューレ」を卒業したことの証である
「↑ ティール・ルーン」付き。「革のオーバーコート」もカッコいいっす。
各種ズボンに「新品」の褐色シャツ、白の皮手袋と続々と続きます。
ベルトのバックルも将校用、下士官用だけでなく、1932年に採用された洋銀製と
1930年代後半に製造されたアルミ製と区別するマニアックぶり・・。
それどころか美しいアルミ糸織物の礼装用のベルトまで出てきました。
キャンバス製のブレッドバッグ(背嚢)に水筒、飯盒、テント布、副官用飾緒と、
一般SS向けには何でも黒く塗装したりして製造されています。
胸当て(ゴルゲット)は、SS巡察部の物と無線局警備用の2種類を紹介。
1936年のオリンピック当時の写真では、そのゴルゲットを指さして喜ぶ日本人の姿・・。
黒革ブーツに続いて、徽章の巻。
当初はSSマンから、SSオーバーグルッペンフューラーまで9階級しかなかったものの、
SS隊員の増加に伴い階級が増えていったわけですが、
まぁ、ここら辺はボクシングの階級と同じ感じですね。
襟章の紹介では、第19SS連隊を現す「19」の襟章を付けた当時のモデルさん。
「ヨセフ・シュトロープSS上級小隊指揮官」とキャプションに書かれていますが、
この人は後に、よりアーリア人らしくと「ユルゲン」に改名したシュトロープ将軍です。
イルゼ・コッホの時といい、本書では「ブッヘンヴァルトの魔女」とか、
「ワルシャワ・ゲットー蜂起の鎮圧者」とか、そういう下世話な話はありません。
写真を見て、わかる人だけわかればいい・・ということが徹底しています。
肩章、腕章、そしてカフタイトル。
ここでも第10SS連隊のカフタイトルを付けた若きアイケがモデルです。
初見の写真ですが、やっぱり悪そうな顔してんなぁ。ボルマン系・・。
左腕につける「ダイヤモンド型職掌徽章」は素晴らしい。ドキドキします。。
歯科隊用、法務部職員用、馬係、薬剤師、獣医部、管理部など種類も豊富。
ここのモデルさんは「完全な資格を持つ医師用」の徽章を付けたレオナルド・コンティと、
「人種・移住本部要員用」の徽章を付けたヘルベルト・バッケの2人です。
右腕の古参闘士の「V字形章」も警察、国防軍の元メンバー用に星付きのがあったり、
射撃徽章も4つの等級があったりと、知らなかったことが実に多いですね。
勲章と記章では、ミュンヘン一揆の「血の勲章」から始まり、
ユリウス・シャウプの物だった「金枠党員章」。
1929年ニュルンベルク党大会記章と、1931年ブラウンシュヴァイク党大会記章の他、
1922年10月の「コーブルク集会」に参加した者を讃えるために
1932年にヒトラー自ら制定したという「「コーブルク名誉記章」。
これは知りませんでしたが、授与基準は400名程度というレアなモノです。
そして一揆が失敗に終わった禁止令時代に、代用突撃隊として1924年に設立された
フロントバンの元隊員向けの「フロントバン記章」というのも珍しいですね。
SS永年勤続章は4年、8年、12年、25年と4段階ですが、
SS誕生の1925年から勘定すると、25年も勤続したら1950年になってしまい、
受章するには「ファーザーランド」の世界が必要になってしまいます。
なので、政権を取った1933年までの期間は「闘争時代」ということで2倍の計算。。
しかし、闘争時代からのナチ党員はこのように様々な徽章や勲章があったりと、
特別扱いなのが良くわかります。
ヒトラーが首相になってからは、多くの有能なドイツ人もナチ党員、SS隊員となるわけですが、
「古参」というだけで優遇された、威張るのだけが取り柄の能無しには困ったんでしょうね・・。
「私服用ピン」も、「FM(後援会)」の会員用や名誉ピンに
1939年のポーランド戦以前から、自由都市ダンツィヒで奮戦していた隊員向けの
「ダンツィヒ郷土防衛軍名誉ピン」といったレアなものが登場します。
「長剣」も良いですねぇ。名誉長剣に、ヒムラーが特別な高級指導者の50歳の記念に
贈ったという「誕生日贈呈用長剣」などが20ページに渡って紹介されます。
なかでもSSオフィシャル長剣ではなく、「ライプシュタンダルテ」の将校団が
ゼップ・ディートリッヒの44歳の誕生日に贈呈した、特別な長剣が印象的です。
「短剣」になると、これはもうヒトラー・ユーゲントでも各自持っている位ですから大変です。
大量の短剣を受注したのはゾーリンゲン商工会議所で、大手メーカーばかりでなく、
小さな会社でも短剣を生産。
本書ではそのようなメーカー毎に紹介してくれます。
次の武器は「拳銃」です。
ハイドリヒをヒムラーに紹介したフォン・エーバーシュタインの美しい拳銃に、
オークの葉が彫刻された金メッキに象牙グリップの「ワルサーPP」。
これはカール・ヴォルフがイタリアで米軍に降伏した際に、
その贈呈用の拳銃をケンドール少将に手渡し、
その後、ウェストポイントに寄贈されて、現在もそこに保管されているそうです。
いや~、実に綺麗ですね。
「文書、身分証明書、印刷物」もたっぷりですね。
SD将校の身分証明書にはハイドリヒの肉筆署名が入っていたりします。
ハイドリヒのサインも初めてですが、凄いなぁ。字がのたくってます。
残りも少なくなってきましたが、ここで「連隊旗」の登場です。
良くナチ党のパレードで見かけるアレですね。
正面には「ドイチュラント・エアヴァッヒェ(ドイツよ、目覚めよ)」と書かれ、
旗頭の箱型に連隊名。裏は「NSDAP」です。
神聖な「血染めの旗」についても詳しく書かれていますが、
1944年までは本部に置かれていたことが分かっているものの、
戦争を生き延びたのかどうかは一切不明だそうです。
そんな連隊旗を掲げる旗手の装具も手袋から胸当て章、旗バンドまで。
旗ついでに「車両用指令旗」まで細かく紹介されます。
最後には「アラッハ磁器」という、SS御用達の陶器や彩色の美しい軍隊人形が、
まるでオークション・カタログの如く・・。
いや~、こんな高い買い物、久々にしましたが大満足でございます。
次のページにナニが出てくるのか、ドキドキ、ワクワクしつつも、
今読んでいるページの写真と解説が濃すぎて、なかなか次のページ進めない・・という
モドカシくて、悶絶しました。
「うぉあ!」とか、「なんだコリャ!?」、「ふ~、、スゲえなぁ」って何度口にしたかわかりませんね。
「制服の帝国」などが好きな方には、絶対の自信を持ってお勧めします。
今まで読んだSS関連本にも触れられてなかった情報もありましたし、
帯に書かれた「・・・永久保存版!」はダテではありません。
大概、帯に書かれた大げさな文句は「嘘八百」ですが、本書は文句なし!
「日本軍装備大図鑑」が図書館にあるので借りてみようかな。
更新ペースが早いですね~。
SSだけに絞ってもグッズって多いのですね。
コートとか普通にお洒落なデザインで困るw
>アルミ糸織物
初めて聞く言葉。。。wwww
ヴィト様が楽しそうで何よりでございます。
by IZM (2013-06-16 04:54)
ヴィトゲンシュタインこんにちは!
想像以上に濃い内容の本ですね!こんなにマニアックな本なのは驚きです!
欲しいけど、お値段が…
ワタクシ、先日購入した「第654重戦車駆逐大隊戦闘記録集」をまだ楽しんでおります。重さが約2キロ近くもある本なので、読み甲斐がありますし、写真も素晴らしいものが多いです。
by ハッポの父 (2013-06-16 14:43)
IZMさん。ど~も。
そう、SSだけに絞ってるんですけど、さらに「一般SS」に絞られているんですね。ここに武装SSが入ってきたらもっと凄いコトになりますが、まぁ、国防軍と重複するのが多いんでしょう。
>アルミ糸織物
ここに喰いつくのがIZMさんらしい・・。正式には「アルミニウム糸織物」って書かれてました。一般的な糸じゃないんだ・・。
by ヴィトゲンシュタイン (2013-06-16 18:13)
ど~も。ハッポの父さん。
頑張って書きました。でも、もっと紹介したかったのがあるんです。
最近、SS関連本読んでなかったというのもありますが、まぁ、興奮しました。
「第654重戦車駆逐大隊戦闘記録集」、本のボリュームを重さで表現するって良いですね。。軟弱なボクは頭の高さの棚にあったこの本を片手で取り出せそうもないと諦めた経緯があります。そうですか。写真も素晴らしいですか・・。
だんだん悔しくなってきたので、これからロールキャベツをおつまみに、ガンガン呑ります。
by ヴィトゲンシュタイン (2013-06-16 18:24)
いつも楽しく拝見しております。
SSはデザインとしては圧勝ですね。
モーターヘッドというロックバンドのリーダーがSSグッズ?のコレクターなんですが、理由はデザイン。ナチ思想ではないそうです。
スターウォーズの帝国軍はドイツ軍だし、ダース・ヴェイダーはSS将校そのものですね。
そう言えばイギリスの王子がナチファッションでひんしゅく買いましたよね。
やはり大人気です。
遊就館では昭和天皇の軍服が展示されてました。日本軍の衣装はイマイチですが、さすがに天皇=大元帥の制服はオーラありました。
by ジャルトミクソン (2013-06-17 23:28)
ジャルトミクソンさん、
>モーターヘッドというロックバンドのリーダーがSSグッズ?のコレクター
ナチスグッズ全般じゃないかなー、と思います。数年前、北ドイツでのライブの際にやはりナチス将校の帽子を被ってステージに上がり、後で問題になってました。それの新聞記事を持っていましたが、モーターヘッドのファンの兄にあげちゃって、手元にないのが残念w写真を見て、ヴィト様にレミーが何の帽子を被っていたのか鑑定してもらったり出来たかも知れませぬ。w
横槍コメ失礼しました。
by IZM (2013-06-18 03:21)
ジャルトミクソンさん。おはようございます。
>さすがに天皇=大元帥の制服はオーラありました。
見ました、見ました。あのときはちょうど高校生の団体に係りの人が説明してて、一緒に聞いてました。高校生、興味なさそうだったなぁ。ボクが一番真剣に聞いてましたよ。聞いていないフリしつつ。。
軍服が小さいと感じましたね、当時の軍服全般ですが・・。日本人の体型なんでしょう。
ボクはハードコアとかメタルを聞かないので、モーターヘッドも詳しくないんですが、いまチョロっと調べてみると、なかなかなモンですね。
IZMさんが言われている
>リーダーがSSグッズ?のコレクター
>ナチスグッズ全般じゃないかなー、と思います。
というのも面白い。
ボクも真剣に考えたことがなかったんですが、「ナチスグッズ」とはどこまでの範囲を指すのか、その定義が曖昧のような気がするんです。
「SSグッズ」はナチスグッズの中核を占めていて、コレクションすれば8割がたが「SSグッズ」になるでしょうし、その他純粋なナチスと言えば「ナチ党グッズ」ですね。
問題は国防軍をナチスと言うか言わないかの問題で、違うと言う人もいれば、制服、制帽に「アドラー」を付けている以上、ナチス・ドイツ軍だ・・という人もいるでしょう。
ちなみにレミーの写真をいくつか見ましたが、黒に髑髏のSSタイプの帽子もあれば、国防軍タイプの帽子をかぶっている写真もありました。ただし、いずれもオリジナルではなく、あくまで「似た感じ」の帽子ですね。
by ヴィトゲンシュタイン (2013-06-18 06:30)
>8割がたが「SSグッズ」になるでしょう
そうなんですか!じゃあ、すごいですねw 国防軍の扱いはまた別なのですね。。。
なんだか度々スミマセン。
レミーがナチスグッズ収集家なのは兄から聞いたんですが、まさかドイツのステージでwと、当時の新聞記事見て笑っちゃったんですが。早速ヴィト様の鑑定眼が光っていたようで、頼もしい限りです。
by IZM (2013-06-18 21:21)
一般的には国防軍込みでナチスと言うかも知れません。
ただボクは以前から、騎士十字章とかの戦功勲章はドイツ軍(武装SS含む)・グッズ、本書のようなのをSSグッズと分けて考えていたので、ナチス・グッズの定義が定まっていません。
具体的に言えば、
・ハルトマンのパイロット章の実物見て、「ナチスだなぁ」
・クレッチマーのUボート章の実物見て、「ナチスだなぁ」
・シュタウフェンベルク大佐の軍服見て、「ナチスだなぁ」
と感じるかどうかということです。余計、わかりづらいな・・。
by ヴィトゲンシュタイン (2013-06-19 09:03)
凄いですね。大興奮致しました。日本の芸能人で、ドイツ軍将校服や、親衛隊の制服が趣味な方はいるのでしょうか?
by matuda920 (2014-09-25 21:39)
ど~も、matuda920さん。
本書は確かに読んでて興奮します。
>日本の芸能人で、ドイツ軍将校服や、親衛隊の制服が趣味
コレがばれると吊し上げにされてしまいますからねぇ・・。密かに収集している有名人もいるんじゃないでしょうか??
ちなみに以前、氣志團がナチ風スタイルでTVに出て、問題なったことを
「パンツァー・ユニフォーム -第2次大戦ドイツ機甲部隊の軍装-」
http://ona.blog.so-net.ne.jp/2011-03-29
に写真付きで書いています。参考までにど~ぞ。
by ヴィトゲンシュタイン (2014-09-26 18:52)
初めまして、すごく興奮しました。私も、親衛隊の制服や、ドイツ軍将校服が大好きです。これからもよろしくお願いします。
by matuda920 (2015-08-07 21:11)
SSの高官が使ったと思われる黒ベンツについて調べています。ドイツ在住ですが、ドイツでは未だにSSがタブーで難航しています。ナンバープレートがSS382610の1936年製のSSの旗がついた車のパレード写真などご存知でしたら記載したHPの連絡先にお知らせ下さると嬉しいです。判明すると歴史的大発見になります。
by COS (2017-03-26 02:48)