健康帝国ナチス [ナチ/ヒトラー]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
ロバート・N. プロクター著の「健康帝国ナチス」を読破しました。
先日、不覚にも風邪をひいてしまい、病院へ行ってきました。
風邪で病院に行ったのは小学生以来でしたが、
大きな怪我や病気もしたことないヴィトゲンシュタインも、
認めたくはなくとも立派な中年なので健康には気を使うようになってきました。
そんなことで数年前からチェックしていた、2003年発刊でちょっとトボけたようなタイトルの
373ページの本書を選んでみましたが、原題は「ナチスのガン戦争」という感じでしょうか?
去年の7月に「ナチスの発明」という、気軽な本を読んだ際に、
ナチスが「ガン対策」にも取り組んでいた・・というのを知りましたし、
その4ヵ月後に読んだ「アドルフ・ヒトラー[1] 」でも、最愛の母、クララが乳ガンで死去し、
嘆き悲しむヒトラー少年の話もありましたから、下準備は完了しています。

本書ではまず、20世紀初頭のドイツが豊かな工業先進国であると同時に、
ガンの発生率が急増。1900年には世界に先駆けて国立のガン対策機関が設けられますが、
1928年には結核を抜いて死亡原因の第2位となり、1930年代には毎年、
ドイツのガンによる死亡数は10万人、ガン患者は50万人を数えた・・という歴史を紹介。
ナチス政権になるとシュトライヒャーや、党衛生指導者レオナルド・コンティらが提唱した
ガン撲滅運動プロパガンダが広まり、その中心となるのは「早期発見」です。
これは手遅れのガン治療よりも、予防に重点を置いたもので、
特に女性の子宮ガンや乳ガンの治療の可能性を高くするため、
大々的な宣伝活動をしつつ、診察所や病院での大量検査、そしてガンと診断されれば
すぐに入院させて、無料で治療を施す・・という徹底ぶりです。
いかにも女性を大事にするナチス政府とヒトラーの政策のような感じがしますね。

しかし同時にナチスの政策でも最も有名なユダヤ人排除も進みます。
ベルリンのガン研究所の研究者13人中、12人が職を失っている・・と、
この分野でユダヤ人の研究者や医者がいかに多かったかがわかろうというものです。

ナチ党の幹部はというと、副総裁のヘスは同毒療法の信者で、自然医療も尽力。
ヒトラーとの昼食会に自分専用の料理を持ち込んで、大いにヒンシュクを買ったり、
同じく自然療法信奉者のヒムラーは、ダッハウ強制収容所に温室を作り、
さまざまな種類の薬草や香草類を栽培し、土着療法の実験を援助し続けます。
人体の「生体熱」の効果を証明しようと、氷のように冷たい海に落ちたパイロットを想定して、
凍死寸前にした人間を女性被収容者に無理やり全裸で抱かせる・・といった
強制収容所での悪名高い実験についても説明しています。

しかし本書ではこのヒムラーの実験をオカルト的に面白おかしく紹介しているわけではなく、
「全裸で抱かせる」のは別として、摂氏10度の海上で3時間たった場合、
生存の可能性があって、救出の努力に値するかどうかの軍事衛生学的回答を
軍が得ようとしたものであるとしています。
中盤は原題のとおり、ガンに対する話が中心です。
1943年、早くもアスベストに起因する肺ガンを労災と認定して保障対象としたナチス。
そしてそのようなナチス・ドイツに関する研究はすべて無視しようとする
戦後の西側諸国の風潮やナチス後遺症にも言及します。

ここまで半分ほど読んで気がついた点は、ナチスの健康対策というものは
1930年代と、戦争の始まった1940年代ではその考え方が大きく違うことです。
1933年に政権を取ってからは、工場や採掘場で働くドイツ国民の健康を考えたものですが、
開戦してからは、軍へ徴兵されたドイツ人労働者の代わりに、
ポーランド人や政治犯、戦争捕虜などが強制労働でドイツ国内で働くことに・・。
そうなると結局は、労働者の健康などは知ったことではなく、それどころか
ドイツ人の配給の半分・・という劣悪な状況で散々、働かされた挙句、
病気にでもなろうものなら、強制収容所行き・・になってしまいます。
また、化学工場でもアウシュヴィッツのI・G・ファルベン工場を例に挙げ、
入院者は全体の5%と定めていることから、病人がそれを超えれば医師による「選別」が行われ、
ビルケナウのガス室行き。。

本書では所々でプロパガンダ・キャンペーンのポスターなどが出てくるのが楽しいですね。
漂白した「化学製品」に過ぎない白パンではなく、国民の健康向上のため奨励された「全粒パン」や
「健康診断」の促進に、「禁煙」・・。
本書の表紙の中央も煙草と葉巻、パイプを蹴り出す当時のポスターが使用されています。
ヒトラー・ユーゲントの手帳には「栄養摂取は個人の問題ではない!」と書かれ、
この論理は宣伝ポスターでも繰り返されます。「お前の身体は総統のもの!」
合成着色料や保存料を使わない自然食品、脂肪が少なく、繊維質の多いものを食べ、
コーヒー、アルコール、煙草といった刺激物に、缶詰も極力控えるという国家スローガンです。

ヒトラーが菜食主義者になった経緯も仮説を展開し、母、クララの乳ガンの思い出と
彼がガンを恐れていたかも検証しますが、やっぱりココでもSS全国指導者ヒムラーの
マニアックぶりが上を行っていますね。
1940年8月にハイドリヒと協力して、SS隊員の肥満撲滅計画に着手し、
SS隊員に禁酒、禁煙、菜食を要請したということですが、
「この酷な要請がどれほど功を奏したかは不明である・・」。

「ベルリン西部で最も食事が乏しく、不味いのはゲッベルス家であった」と紹介される宣伝大臣。
食物にまったく頓着せず、好物のニシンと茹でたジャガイモをひたすら食べ続け、
客にも平気でそれを出した。。。
一方、ゲーリング・・といえば、まぁ、なんでも呑んで食って・・ですから、
この政策と本書には、なんの関係もありません。

アルコールについては1933年という早い時期から「アルコール撲滅作戦」が実行され、
「国民労働の日」はアルコール抜きとされたそうです。
アルコール飲料の広告も未成年者を対象にした図柄は禁止され、
「衛生効果」や「食欲増進効果」といったキーワードもNG・・。

悪名高い大酒呑みの労働戦線ロベルト・ライが職場でアルコールを飲む習慣を廃止しようと
圧縮してブロック状にした紅茶を配布する「紅茶作戦」を大々的に開始。
ノンアルコール・ビールの開発に、りんごジュースを飲みましょうキャンペーン・・。
痛飲に喫煙を日々、規則正しく続けているヴィトゲンシュタインでも
この健康的なキャンペーンには便乗していました。
つがる100%りんごジュースを朝の起きぬけにググっと一杯・・。10年以上は続けてますねぇ。

後半は個人的に一番興味のあった煙草と肺ガン・・。
ナチスの煙草撲滅政策と、禁煙ガム、禁煙薬、催眠術といった禁煙法も盛んに・・。
1938年には空軍の基地内、役所に病院が禁煙となり、国内の列車には禁煙車が登場し、
違反者には2ライヒスマルクの罰金が・・。う~む。。最近の日本のようですね。。
ヒムラーも制服警官とSS将校の職務中の禁煙を告知したそうですが、
本書では私服のゲシュタポは例外だったようだ・・と。

こうなってくると煙草の広告もアルコールと同様に規制が厳しくなります。
煙草を吸うことが男らしいという印象を与えるような図柄は禁止。
スポーツ選手やパイロットなど、魅力的な仕事に就いている若い男性の図柄は禁止。
女性向けの煙草広告も、もちろん禁止。
ヒトラーの煙草嫌いは良く知られていて「エヴァ・ブラウン」にも書きましたが、
「兵士が煙草なしでは生きていけないなどというのは誤りである」とし、
戦争終結後には兵士への煙草配給を必ず廃止すると、軍隊への喫煙許可を後悔していたそうです。
しかし戦局が長引くと、前線で煙草を吸う兵士たちは増えるいっぽうで、
戦闘後に気持ちを落ち着かせるためのアルコールに、
身体に悪いとされる保存料タップリの缶詰も必需品であり続けます。。

「反煙草キャンペーン」がこのように繰り広げられたものの、
結局は煙草の消費には影響を及ぼさず・・だったことについて、
その高額な煙草税が経済省を煙草擁護派にし、
また国民の反ナチス的な感情もあったのでは、としていますが、
そう思えば、中学2年生のときから、パートナーに始まって、マイルドセブン、
そして今はケントの3㎎と、一日も休むことなく喫煙を続けているヴィトゲンシュタインも
もともとは、反社会的行動から始まっていますので、
もし子供の喫煙が許可されていたら、煙草なんか吸っていなかったかもしれません。。

最後はメンゲレなどに代表されるナチスの医学犯罪にも触れます。
1942年の秋に建設が開始された、第三帝国ガン研究所の話では、
実はそれが「生物兵器製造施設」だったのではないか・・?
そして現在でも広く使われている解剖学のテキストで、正確さとリアルさで評価の高い
「ペルンコップ臨床局所解剖学アトラス」がナチスの犠牲者によるものではないか・・という問題。
この反道徳的なものであると同時に医学的に価値のあるものをどうすべきか・・?
出版禁止にするべきか、図書館の棚から撤去するべきか?
あるいは犠牲者に献辞を記すべきか・・?

思っていたより、とてもシッカリと書かれた一冊でした。
最初から最後まで、著者が何度となく「ナチスを肯定するつもりはない」と書いているように
「ナチス=悪」という前提を捨てて、その時代の、その政府で行なわれていたことを
冷静に評価しようという姿勢は、とても好感が持てました。
よく「SSモノ」で、様々な思惑が入り乱れて一枚岩の組織などではなかった・・
という話がありますが、本書でも同様に、ナチス政府自体が一枚岩ではなく、
なにかひとつの政策でも、それを推進しようとする組織と反対する組織が存在し、
さらにはヒトラーを筆頭にゲッベルス、ゲーリング、ヘスにヒムラーなどの幹部の
各々の考えにも振り回される、まさにカオスと呼ぶべき混沌とした政府のように感じました。
ガンについての知識をつきましたし、本書のレビューも、こうして無事、書き終わりましたので、
とりあえず、煙草で一服しながらビールでも呑みますか。。
ロバート・N. プロクター著の「健康帝国ナチス」を読破しました。
先日、不覚にも風邪をひいてしまい、病院へ行ってきました。
風邪で病院に行ったのは小学生以来でしたが、
大きな怪我や病気もしたことないヴィトゲンシュタインも、
認めたくはなくとも立派な中年なので健康には気を使うようになってきました。
そんなことで数年前からチェックしていた、2003年発刊でちょっとトボけたようなタイトルの
373ページの本書を選んでみましたが、原題は「ナチスのガン戦争」という感じでしょうか?
去年の7月に「ナチスの発明」という、気軽な本を読んだ際に、
ナチスが「ガン対策」にも取り組んでいた・・というのを知りましたし、
その4ヵ月後に読んだ「アドルフ・ヒトラー[1] 」でも、最愛の母、クララが乳ガンで死去し、
嘆き悲しむヒトラー少年の話もありましたから、下準備は完了しています。

本書ではまず、20世紀初頭のドイツが豊かな工業先進国であると同時に、
ガンの発生率が急増。1900年には世界に先駆けて国立のガン対策機関が設けられますが、
1928年には結核を抜いて死亡原因の第2位となり、1930年代には毎年、
ドイツのガンによる死亡数は10万人、ガン患者は50万人を数えた・・という歴史を紹介。
ナチス政権になるとシュトライヒャーや、党衛生指導者レオナルド・コンティらが提唱した
ガン撲滅運動プロパガンダが広まり、その中心となるのは「早期発見」です。
これは手遅れのガン治療よりも、予防に重点を置いたもので、
特に女性の子宮ガンや乳ガンの治療の可能性を高くするため、
大々的な宣伝活動をしつつ、診察所や病院での大量検査、そしてガンと診断されれば
すぐに入院させて、無料で治療を施す・・という徹底ぶりです。
いかにも女性を大事にするナチス政府とヒトラーの政策のような感じがしますね。

しかし同時にナチスの政策でも最も有名なユダヤ人排除も進みます。
ベルリンのガン研究所の研究者13人中、12人が職を失っている・・と、
この分野でユダヤ人の研究者や医者がいかに多かったかがわかろうというものです。

ナチ党の幹部はというと、副総裁のヘスは同毒療法の信者で、自然医療も尽力。
ヒトラーとの昼食会に自分専用の料理を持ち込んで、大いにヒンシュクを買ったり、
同じく自然療法信奉者のヒムラーは、ダッハウ強制収容所に温室を作り、
さまざまな種類の薬草や香草類を栽培し、土着療法の実験を援助し続けます。
人体の「生体熱」の効果を証明しようと、氷のように冷たい海に落ちたパイロットを想定して、
凍死寸前にした人間を女性被収容者に無理やり全裸で抱かせる・・といった
強制収容所での悪名高い実験についても説明しています。

しかし本書ではこのヒムラーの実験をオカルト的に面白おかしく紹介しているわけではなく、
「全裸で抱かせる」のは別として、摂氏10度の海上で3時間たった場合、
生存の可能性があって、救出の努力に値するかどうかの軍事衛生学的回答を
軍が得ようとしたものであるとしています。
中盤は原題のとおり、ガンに対する話が中心です。
1943年、早くもアスベストに起因する肺ガンを労災と認定して保障対象としたナチス。
そしてそのようなナチス・ドイツに関する研究はすべて無視しようとする
戦後の西側諸国の風潮やナチス後遺症にも言及します。

ここまで半分ほど読んで気がついた点は、ナチスの健康対策というものは
1930年代と、戦争の始まった1940年代ではその考え方が大きく違うことです。
1933年に政権を取ってからは、工場や採掘場で働くドイツ国民の健康を考えたものですが、
開戦してからは、軍へ徴兵されたドイツ人労働者の代わりに、
ポーランド人や政治犯、戦争捕虜などが強制労働でドイツ国内で働くことに・・。
そうなると結局は、労働者の健康などは知ったことではなく、それどころか
ドイツ人の配給の半分・・という劣悪な状況で散々、働かされた挙句、
病気にでもなろうものなら、強制収容所行き・・になってしまいます。
また、化学工場でもアウシュヴィッツのI・G・ファルベン工場を例に挙げ、
入院者は全体の5%と定めていることから、病人がそれを超えれば医師による「選別」が行われ、
ビルケナウのガス室行き。。

本書では所々でプロパガンダ・キャンペーンのポスターなどが出てくるのが楽しいですね。
漂白した「化学製品」に過ぎない白パンではなく、国民の健康向上のため奨励された「全粒パン」や
「健康診断」の促進に、「禁煙」・・。
本書の表紙の中央も煙草と葉巻、パイプを蹴り出す当時のポスターが使用されています。
ヒトラー・ユーゲントの手帳には「栄養摂取は個人の問題ではない!」と書かれ、
この論理は宣伝ポスターでも繰り返されます。「お前の身体は総統のもの!」
合成着色料や保存料を使わない自然食品、脂肪が少なく、繊維質の多いものを食べ、
コーヒー、アルコール、煙草といった刺激物に、缶詰も極力控えるという国家スローガンです。

ヒトラーが菜食主義者になった経緯も仮説を展開し、母、クララの乳ガンの思い出と
彼がガンを恐れていたかも検証しますが、やっぱりココでもSS全国指導者ヒムラーの
マニアックぶりが上を行っていますね。
1940年8月にハイドリヒと協力して、SS隊員の肥満撲滅計画に着手し、
SS隊員に禁酒、禁煙、菜食を要請したということですが、
「この酷な要請がどれほど功を奏したかは不明である・・」。

「ベルリン西部で最も食事が乏しく、不味いのはゲッベルス家であった」と紹介される宣伝大臣。
食物にまったく頓着せず、好物のニシンと茹でたジャガイモをひたすら食べ続け、
客にも平気でそれを出した。。。
一方、ゲーリング・・といえば、まぁ、なんでも呑んで食って・・ですから、
この政策と本書には、なんの関係もありません。

アルコールについては1933年という早い時期から「アルコール撲滅作戦」が実行され、
「国民労働の日」はアルコール抜きとされたそうです。
アルコール飲料の広告も未成年者を対象にした図柄は禁止され、
「衛生効果」や「食欲増進効果」といったキーワードもNG・・。

悪名高い大酒呑みの労働戦線ロベルト・ライが職場でアルコールを飲む習慣を廃止しようと
圧縮してブロック状にした紅茶を配布する「紅茶作戦」を大々的に開始。
ノンアルコール・ビールの開発に、りんごジュースを飲みましょうキャンペーン・・。
痛飲に喫煙を日々、規則正しく続けているヴィトゲンシュタインでも
この健康的なキャンペーンには便乗していました。
つがる100%りんごジュースを朝の起きぬけにググっと一杯・・。10年以上は続けてますねぇ。

後半は個人的に一番興味のあった煙草と肺ガン・・。
ナチスの煙草撲滅政策と、禁煙ガム、禁煙薬、催眠術といった禁煙法も盛んに・・。
1938年には空軍の基地内、役所に病院が禁煙となり、国内の列車には禁煙車が登場し、
違反者には2ライヒスマルクの罰金が・・。う~む。。最近の日本のようですね。。
ヒムラーも制服警官とSS将校の職務中の禁煙を告知したそうですが、
本書では私服のゲシュタポは例外だったようだ・・と。

こうなってくると煙草の広告もアルコールと同様に規制が厳しくなります。
煙草を吸うことが男らしいという印象を与えるような図柄は禁止。
スポーツ選手やパイロットなど、魅力的な仕事に就いている若い男性の図柄は禁止。
女性向けの煙草広告も、もちろん禁止。
ヒトラーの煙草嫌いは良く知られていて「エヴァ・ブラウン」にも書きましたが、
「兵士が煙草なしでは生きていけないなどというのは誤りである」とし、
戦争終結後には兵士への煙草配給を必ず廃止すると、軍隊への喫煙許可を後悔していたそうです。
しかし戦局が長引くと、前線で煙草を吸う兵士たちは増えるいっぽうで、
戦闘後に気持ちを落ち着かせるためのアルコールに、
身体に悪いとされる保存料タップリの缶詰も必需品であり続けます。。

「反煙草キャンペーン」がこのように繰り広げられたものの、
結局は煙草の消費には影響を及ぼさず・・だったことについて、
その高額な煙草税が経済省を煙草擁護派にし、
また国民の反ナチス的な感情もあったのでは、としていますが、
そう思えば、中学2年生のときから、パートナーに始まって、マイルドセブン、
そして今はケントの3㎎と、一日も休むことなく喫煙を続けているヴィトゲンシュタインも
もともとは、反社会的行動から始まっていますので、
もし子供の喫煙が許可されていたら、煙草なんか吸っていなかったかもしれません。。
最後はメンゲレなどに代表されるナチスの医学犯罪にも触れます。
1942年の秋に建設が開始された、第三帝国ガン研究所の話では、
実はそれが「生物兵器製造施設」だったのではないか・・?
そして現在でも広く使われている解剖学のテキストで、正確さとリアルさで評価の高い
「ペルンコップ臨床局所解剖学アトラス」がナチスの犠牲者によるものではないか・・という問題。
この反道徳的なものであると同時に医学的に価値のあるものをどうすべきか・・?
出版禁止にするべきか、図書館の棚から撤去するべきか?
あるいは犠牲者に献辞を記すべきか・・?

思っていたより、とてもシッカリと書かれた一冊でした。
最初から最後まで、著者が何度となく「ナチスを肯定するつもりはない」と書いているように
「ナチス=悪」という前提を捨てて、その時代の、その政府で行なわれていたことを
冷静に評価しようという姿勢は、とても好感が持てました。
よく「SSモノ」で、様々な思惑が入り乱れて一枚岩の組織などではなかった・・
という話がありますが、本書でも同様に、ナチス政府自体が一枚岩ではなく、
なにかひとつの政策でも、それを推進しようとする組織と反対する組織が存在し、
さらにはヒトラーを筆頭にゲッベルス、ゲーリング、ヘスにヒムラーなどの幹部の
各々の考えにも振り回される、まさにカオスと呼ぶべき混沌とした政府のように感じました。
ガンについての知識をつきましたし、本書のレビューも、こうして無事、書き終わりましたので、
とりあえず、煙草で一服しながらビールでも呑みますか。。
タイトルのセンスが最高ですね。よんでみたいです。
うちの旦那も「体に良いから」と全糧粉のパンばかり買ってくるのですが大抵硬いし美味しくなくて困っていますよw。
by IZM (2012-05-15 03:13)
>全糧粉のパンばかり買ってくるのですが大抵硬いし美味しくなくて困っていますよw。
ボクは家でパン食べないので、食べた記憶が無いんですよねぇ。
ひょっとしたらドイツ料理屋さんとかでおつまみ的なのを無意識に食べてるのかも知れませんが・・。
日本で言うと、最近流行りの「白米」じゃなくて「五穀米」食べろ、みたいなモンなんでしょうか??
by ヴィトゲンシュタイン (2012-05-15 12:23)
ウチの地元にある有名な公園は、5月31日の「世界禁煙デー」に灰皿に蓋して全面禁煙になります。市長がタバコ嫌いで、「禁煙学会」が地元で開催された時に参加者にアンケートとって、賛成が多いから全面禁煙への流れになりました。賛成率99.7%のどこかの国民投票みたいです。地元の公園利用者の半数は反対なんですが。
ヒトラーは自分がいない場所で他人が喫煙するのはOKだった? トーランド本にそんなエピソードがあったような気が・・・
「ドイツ週間ニュース」の映像で、家族でパン食ってるのがあって何だろ?と思ってましたが、あれは全粒粉のパンの宣伝だったんですね。
「ナチスの健康ごはん」とか、レシピ本も出ないですかね?
by ろしゅっく (2012-05-16 01:40)
ろしゅっくさん。こんにちは。
>ヒトラーは自分がいない場所で他人が喫煙するのはOKだった?
そうですね。確かにトーランドの「アドルフ・ヒトラー」にも書いてあったような・・。
本書でも喫煙自体はしょうがない・・と諦めている感じです。しかし、愛煙家にとっては困った市長さんですね。。
>「ドイツ週間ニュース」の映像で、家族でパン食ってるのがあって何だろ?
そうですか。そんなシーンもあるんですか。映画館で流したんでしょうか?良くご覧になってますねぇ。
「ナチスの健康ごはん」はキビシイかなぁ・・。ボクは買って作ってみますが・・。
by ヴィトゲンシュタイン (2012-05-16 12:11)