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ジェット戦闘機Me262 [ドイツ空軍]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

渡辺 洋二 著の「ジェット戦闘機Me262」を読破しました。

この独破戦線では「最後の反乱―ゲーリング弾劾と独ジェット戦闘機隊」と
第44戦闘団 -ザ・ガランド・サーカス-」で紹介しているメッサーシュミットのジェット戦闘機。
ですが、この2冊を読んだのは3年近く前なんですねぇ。
それ以来、ルフトヴァッフェ興亡史本には最後に必ず登場するMe-262ですが、
先日の「ロケット・ファイター」を読んだ勢いで購入しました。

ジェット戦闘機Me262.jpg

実は本書は、その3年前から気になっていたものですが、
同じと思われる本が3冊あるんです。
一つ目は1982年、第二次世界大戦ブックスの「ジェット戦闘機Me262―ドイツ空軍最後の輝き」、
二つ目は1990年、朝日ソノラマから出た本書。
そして三つ目が2001年、光人社から出た「ジェット戦闘機Me262―ドイツ空軍最後の輝き」です。
最初が第二次世界大戦ブックスということもあって、コレが写真もタップリ・・
というのは想像できますが、朝日ソノラマはそんなでもないしなぁ・・とか、
20年の間に、中身も改定されているのかなぁ・・とか、いろいろと悩んだ挙句、選んだのは、
「間を取った」朝日ソノラマの本書です。自分で言うのもなんですが、大人な選択・・。
今現在、唯一新品が手に入る光人社の表紙が完全な「やっつけ仕事」なのも。。

ジェット戦闘機Me262―ドイツ空軍最後の輝き_第二次世界大戦ブックス_光人社.JPG

まずは1933年からハインケル社で開発されたジェット・エンジンの歴史から
その構造と特徴と続きます。
概念図まで出てきて、思っていたより専門的な感じです。
そして1939年、初のジェット機であるHe-178が誕生しますが、
社長のエルンスト・ハインケルが航空次官ミルヒのウケが悪いことから関心も持たれず、
やがてメッサーシュミット社に開発が移行していきます。
このような経緯は先日の「ドイツ戦闘機開発者の戦い」にも詳しかったですね。

He-178.jpg

航空省の契約を受けてジェット・エンジンを開発するのはBMWですが、
信頼が低く、ユンカース社のエンジンがピンチ・ヒッターに登場。
遂に完成したMe-262は1942年7月、名テスト・パイロット、フリッツ・ヴェンデルの手によって
12分間の初飛行に成功するのでした。

FRITZ WENDEL.jpg

この1942年から43年というのは東部戦線でもスターリングラードでの大敗北が起こった
いわゆる「転換期」でもあり、ドイツ空軍にとっても四発重爆の必要性が取りざたされたり、
主力戦闘機Bf-109の後継機として、Me-209やMe-309の開発が始まるものの、
その性能はパッとせず、その結果、悪代官ミルヒもメッサーシュミットのジェット戦闘機に対して
厳しい視線を送るのでした。

Erhard Milch.jpg

そして1943年4月、ロケット戦闘機Me-163の実験隊を率いていたシュペーテが、
空軍パイロットとして試乗。その性能に驚いた彼はガーランド戦闘機隊総監
報告すると、ガーランドも早速、搭乗します。
ミルヒに「Me-262はものすごい成功作です」と報告し、Bf-109の生産を停止して、
単発戦闘機はFW-190に限定し、余剰生産能力はすべてMe-262に傾注すべし・・。

Me262A.jpg

ちなみに著者は執筆にあたって、「参考文献を繋ぎ合せて本を書くのは好きではない」ことから、
ガーランドに手紙を出し、Me-262の飛行特性や戦闘法、隊の運用などを訊ねたところ、
この異国の名も知れぬ質問者に対し、折り目正しく2回も回答してくれたそうで、
「Galland」の読み方が「ガーラント」なのか、「ガラント」、「ガーランド(独破戦線はコレ)」、
果てはフランス読みの「ギャラン」なのかまで、表音記号で尋ねると
「ガランド」であるとの回答を得たそうです。

Adolf Galland and Mickey Mouse.jpg

1944年4月になってようやく「262実験隊」が編成。
「5機のBf-109よりも、1機のMe-262を!」と要求する戦闘機隊総監を尻目に、
フランスへの連合軍上陸に向けて、250㌔爆弾を搭載した「超高速爆撃機」として
量産することを要求するヒトラー・・。
こうして爆撃機仕様となったMe-262A-2aですが、30度の降下爆撃でも時速900㎞という
凄まじいスピードであり、そんな高速に合う爆撃照準器は存在しません。。

me 262.jpg

それでもノルマンディからフランスを席巻する連合軍に対して「262実験隊」が遊撃に出ます。
Me-262による初戦果から、いくつかの空戦が紹介されますが、絶対数が不足・・。
ヒトラー暗殺未遂事件後になって、「爆撃機型20機こどに戦闘機型1機」の生産を
ようやくヒトラーが許可。。
11月には本格的ジェット爆撃機である、アラドAr234Bの作戦準備が整ったことで、
Me-262は戦闘機型として生産することも承認します。

ar234v5.jpg

「262実験隊」は隊長の名前を取って「ノヴォトニー隊」に改編されますが、
そのヴァルター・ノヴォトニーは視察に来ていたガーランドの目前で墜落・・。
ガーランドはMe-262による戦闘航空団の編成をゲーリングに取り付け、
「第7戦闘航空団」の司令に剣章受賞者シュタインホフ大佐を任命。
「ノヴォトニー隊」は天才パイロットの名をそのまま残して、
第Ⅲ飛行隊に編入されるのでした。

Walter Nowotny.jpg

また、制空権を失ったことで、Ju 88やDo-217といった低速な爆撃機航空団が
次々と解隊されると、余った爆撃機パイロットをMe-262A-1aに乗せることを決定。
部隊名称も「第54爆撃航空団(戦闘機)」というややこしい名称へ丁寧に変更。
爆撃機パイロットから戦闘機パイロットへの移行も、計器飛行に慣れていることや
同じ双発機である・・といった利点もあるそうです・・。

1945年の元旦に決行された「ボーデンプラッテ作戦」でのMe-262の活躍も紹介し、
「鹿の角」と綽名されたレーダーを装着して夜間戦闘機Me-262B-1a/U1にも改良。
英爆撃機モスキートに挑みます。

Me-262B-1aU1  Night Fighter.jpg

量産はされていたものの、このように様々な航空団と指揮下にあったMe-262。
3月末にジェット機とロケット機の全権代理委員に任命されたカムフーバー中将
Me-262の全部隊を掌握すると、ガーランドが望んでいた邀撃任務に
すべてのMe-262を振り向ける体制がやっと確立されます。

Manfred Meurer, seen here receiving the Ritterkreuz out of the hands of Gen. Josef Kammhuber.jpg

一方、ゲーリングとの確執により、戦闘機隊総監をクビになって干されていたガーランドは
ヒトラーの取り成しもあって、ジェット戦闘機による1個中隊の編成が認められ、
第44戦闘団」の準備に奔走します。
「ゲーリング弾劾」でやっぱり干されていたシュタインホフにリュッツォウ両大佐を筆頭に、
300機撃墜のバルクホルンクルピンスキーなどのスーパーエース、
その他、騎士十字章受章者が集まったエリート中隊。
中隊長が「中将」というドイツ空軍史の最後を飾るにふさわしい精鋭集団の誕生です。
しかし戦局はすでに、絶望的・・。

Me262A-1a.jpg

シュタインホフ大佐の離陸時の事故の様子が出てくると、
思わず「あ~・・」と、暗い気持ちになってしまいました。
コレは以前読んだ彼のジェット戦闘機隊回想録である
最後の反乱 -ゲーリング弾劾と独ジェット戦闘機隊-」で
顔が変わってしまうほどの大火傷を負った彼の苦悩が詳しく書かれていましたから・・。
でもこの本、凄いプレミア価格になっていますねぇ。

steinhoff.jpg

一口にMe-262と言っても様々なバリエーションと部隊の運用、
そしてストーリーがあったことを知りました。
エルベ特別隊」の体当たり任務にMe-262が護衛として参加していた話なども
興味深かったですね。
またMe-262の操縦方法が5ページに渡って書かれていたり、
そのとても広い範囲を可能な限り網羅しようと努めている印象も持ちました。

ただ、その分、この278ページの文庫ではちょっと無理があるというか、詰め込みすぎというか、
写真もそれなりににあったりして、まぁ、もともと第二次世界大戦ブックスだったから
しょうがないですが、個人的には倍のボリュームが欲しいくらいでした。
ちなみに第二次世界大戦ブックス版から「全面的に改訂、新原稿を加え」ているということです。







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コメント 4

IZM

ああ~~~やっぱり買っておけばよかったかな~と、レビューをよんで後悔。。。。orz 帰国中本屋でじっくり吟味する予定が、結局出来なくて。でもこれで二ナ・シュタウフェンベルグの本が、日本の本のせいで後回しになることもないので、頑張ってそちらを先ず独破しようと思います。。。渡辺 洋二さんの本て、おたくっぽいこだわりを感じますね。
by IZM (2012-04-20 01:32) 

ヴィトゲンシュタイン

IZMさん。お帰りなさい。
>おたくっぽいこだわりを感じますね。
なるほどね。確かにそのとおりです。本書を執筆するにあたってが書かれた「あとがき」がとても面白かったし・・。
二ナ・シュタウフェンベルグの本、もし凄く良かったら、IZMさん翻訳して(絵もたくさん入れて・・)出版してください。
by ヴィトゲンシュタイン (2012-04-20 11:02) 

NAL

こんにちは、光人社NF文庫版はかなりの量の加筆がされているので
再読なさる際には、こちらをおすすめします。
by NAL (2012-12-29 09:22) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。NALさん。
そうですか。やっぱりタダで再刊されているわけではなく、毎回ちゃんと加筆されているんですねぇ。再読する際には光人社NF文庫を買ってみます。
情報ありがとうございました。

by ヴィトゲンシュタイン (2012-12-29 17:47) 

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