詳解 西部戦線全史 -死闘!ヒトラー対英米仏1919‐1945- [戦記]
ど~も。風邪っ引きのヴィトゲンシュタインです。
山崎 雅弘 著の「詳解 西部戦線全史」を読破しました。
以前に「ポーランド電撃戦」と「ロンメル戦記」と合わせてまとめ買いしていた本書。
先月、名著「電撃戦という幻」を読んで、西方戦役モノが無性に読みたくなっていたのもあり
今回、644ページという文庫の限界に近い厚さの本書を選んでみました。
しかし副題が微妙ですね。。「ヒトラー対英米仏」と言いつつ、「1919‐1945」。。。
「1939‐1945」じゃないのか・・? とタイトルにこだわるヴィトゲンシュタインとしては
ちょっと心配です。。
「はじめに」では、その「1919‐1945」の理由が書かれていて、
第1次大戦後のヴェルサイユ条約から「一本の大きな河の流れ」で記述することを
目的としたということです。
そして第1章では、フランスが次なる戦争では防御戦の方針を固めており、
それを「兵士の生命を重んじる立派な発想」と国民に解釈された・・とか、
スペイン内戦に参加した「コンドル軍団」のⅠ号戦車が非力過ぎることから、
バンバン鹵獲したソ連のT-26戦車で4個大隊を編成した・・というような話を紹介します。
第2章は「ポーランド戦」、そしてポケット戦艦グラーフ・シュペーなどの活躍した
「通商破壊戦」をドイツ海軍を中心にデンマークとノルウェー侵攻までを・・。
160ページを過ぎた第3章から、いよいよ西方戦役に向けたマンシュタイン・プランの誕生と、
「電撃戦」によるパリ陥落、さらにバトル・オブ・ブリテンと続きます。
英国本土上陸の「あしか作戦」では、長さ18mのホース状のシュノーケルをつけた
「潜水戦車」についても触れられています。
この西方戦役の章はまるで「電撃戦という幻」のダイジェスト版のようでした。
読んだばっかり・・というのもありますが、「あ~、アソコねぇ・・」と思ったり、
自分が書いたレビューとソックリな箇所があってビックリしたり(もちろん、本書が先です)、
巻末の参考文献にもしっかり載ってましたが、ちょっと参考にし過ぎてるような気も・・。
まぁ、逆に言えば、それだけ「電撃戦という幻」が素晴らしいということになりますね。
それでも電撃戦後は、クルップの列車砲が英国本土に向けて砲撃を開始した・・など
楽しい話もいろいろとありました。
ゲルニカ、ロッテルダムと続いたドイツ空軍による爆撃も、ヒトラーが首都ロンドンへの 爆撃を
禁止していたにも関わらず、目標を見失ったHe-111が適当に爆弾を投下した結果、
ロンドンの市街地へと吸い込まれてしまい、これを契機にベルリンへの報復爆撃と
さらにロンドンへの爆撃禁止令の撤回・・ロンドン市民の7人に1人が住居を失い、
地下鉄のホームでの生活を余儀なくされた・・ということです。
この激しくなった爆撃合戦は1943年のハンブルク爆撃で3万人の市民が命を落とすまで
なかなか詳しく書かれています。
フランス・レジスタンスも有名なジャン・ムーランが紹介され、彼がゲシュタポに捕えられて
クラウス・バルビーの拷問を受けた後、死亡・・や、
逆にドイツの傀儡政府であるヴィシー政府の後押しを受け、反独抵抗組織の壊滅に一役買った
フランス人の武装組織ミリス(フランス民兵団)も、団長ジョゼフ・ダルナンとともに登場。
本書によると彼らによって殺されたレジスタンスの数は3万人を下らないそうですが、
「神々の黄昏」を読んで気になっていた組織なので、大変勉強になりました。
まぁ、1ページだけなんですけどね。。
中盤はメインとなるノルマンディ上陸作戦です。
「ヴィレル・ボカージュの戦い」では、武装SSの戦車野郎ヴィットマンが大活躍。
そして、その死までも書かれていますが、本書は基本的に
個々の兵士のエピソードは書かれていないので(尉官レベルは皆無)、
このヴィットマンは完全に特別扱いですね。
戦況図が5ページに一枚の割合で出てくるのも、わかりやすくて良かったところです。
100枚ほどの戦況図が載っているそうですが、特にパリ解放後のドイツ本土へ向けた
モントゴメリー案とアイゼンハワー案の違いも上下で比較して見せたりして、
単なるやっつけ戦況図ではなく、簡潔ですが、
それぞれ意図を持ったわかりやすいものだと思いました。
もちろん彼らの確執に、パットンとブラッドレーらの絡んだ連合軍バトルも頻繁に登場します。
本書には独英米仏と、実に多くの師団や軍団、軍、軍集団が登場しますが、
その名称の後にカッコ書きで師団長などの名前が記載されています。
例えば、第1SS装甲師団<テオドール・ヴィッシュSS少将>という書き方で、
一度、出てくれば師団長の名はなくなりますが、その後、師団長交代すると、
第1SS装甲師団<ヴィルヘルム・モーンケSS少将>となります。
有名師団だけではなく、弱小師団についても、このルールは適用されているので
バルジの戦いで「突撃砲兵」のギュンター・ホフマン・シェーンボルンとか
「総統付き陸軍副官」ゲルハルト・エンゲルが国民擲弾兵師団長と書かれていると
「おぉ~、こんなところで頑張っているとは・・」と、なにか懐かしく感じたりもしました。
こういうのは親切かつ、発見もあったりして、実に良いですね。
ラストにはエルベ河畔で米軍第9歩兵師団がソ連第58狙撃兵師団と握手を交わし、
西部戦線と東部戦線が結合・・。ヒトラーも大急ぎで自殺して終わります。
「遠すぎた橋」などもちろん登場しますし、ドイツ側の将軍もロンメルにモーデル、
クルーゲにルントシュテットと沢山登場しますが、特別目新しい記述がなかったので
今回は思いっきり端折って、個人的に興味のあった部分のレビューにしました。
また、本書は各戦役や各々の戦いについては著者独自の見解というものはなく、
あくまで、一般的なものに留まっています。
例を挙げれば「ダンケルクの停止命令」も、いろんな説があって真相は不明・・・という表現です。
600ページ越えとはいえ、全体的にダイジェスト的な印象なのは否めませんが、
お弁当に例えるなら定番のおかずがたくさん入った「幕の内弁当」ですか・・。
ものめずらしい食材や、斬新な味付けがされているわけではなく、
「遠すぎた橋」が海老フライで、「バルジ大作戦」が唐揚げ・・なんて感じです。
しかし小さいおかずがたくさん詰め込まれてあるよりは、
「牛肉どまん中」みたいな、肉だけ食ってろ的なお弁当・・じゃなくて
戦記の方が好きな人も多いでしょうね。
最後に、この本がどんな読者をターゲットにしているのか・・?
う~ん、難しいなぁ。
初めて本格的に第二次大戦の戦記を読む人には大変だと思いますし、
詳しい方には物足りない・・。まさにいま、勉強中という人や、
20年前に「グデーリアンの電撃戦」や「史上最大の作戦」を読んでいたような方が
「懐かしいな~」なんて呟きながら楽しめる一冊なのかもしれません。
山崎 雅弘 著の「詳解 西部戦線全史」を読破しました。
以前に「ポーランド電撃戦」と「ロンメル戦記」と合わせてまとめ買いしていた本書。
先月、名著「電撃戦という幻」を読んで、西方戦役モノが無性に読みたくなっていたのもあり
今回、644ページという文庫の限界に近い厚さの本書を選んでみました。
しかし副題が微妙ですね。。「ヒトラー対英米仏」と言いつつ、「1919‐1945」。。。
「1939‐1945」じゃないのか・・? とタイトルにこだわるヴィトゲンシュタインとしては
ちょっと心配です。。
「はじめに」では、その「1919‐1945」の理由が書かれていて、
第1次大戦後のヴェルサイユ条約から「一本の大きな河の流れ」で記述することを
目的としたということです。
そして第1章では、フランスが次なる戦争では防御戦の方針を固めており、
それを「兵士の生命を重んじる立派な発想」と国民に解釈された・・とか、
スペイン内戦に参加した「コンドル軍団」のⅠ号戦車が非力過ぎることから、
バンバン鹵獲したソ連のT-26戦車で4個大隊を編成した・・というような話を紹介します。
第2章は「ポーランド戦」、そしてポケット戦艦グラーフ・シュペーなどの活躍した
「通商破壊戦」をドイツ海軍を中心にデンマークとノルウェー侵攻までを・・。
160ページを過ぎた第3章から、いよいよ西方戦役に向けたマンシュタイン・プランの誕生と、
「電撃戦」によるパリ陥落、さらにバトル・オブ・ブリテンと続きます。
英国本土上陸の「あしか作戦」では、長さ18mのホース状のシュノーケルをつけた
「潜水戦車」についても触れられています。
この西方戦役の章はまるで「電撃戦という幻」のダイジェスト版のようでした。
読んだばっかり・・というのもありますが、「あ~、アソコねぇ・・」と思ったり、
自分が書いたレビューとソックリな箇所があってビックリしたり(もちろん、本書が先です)、
巻末の参考文献にもしっかり載ってましたが、ちょっと参考にし過ぎてるような気も・・。
まぁ、逆に言えば、それだけ「電撃戦という幻」が素晴らしいということになりますね。
それでも電撃戦後は、クルップの列車砲が英国本土に向けて砲撃を開始した・・など
楽しい話もいろいろとありました。
ゲルニカ、ロッテルダムと続いたドイツ空軍による爆撃も、ヒトラーが首都ロンドンへの 爆撃を
禁止していたにも関わらず、目標を見失ったHe-111が適当に爆弾を投下した結果、
ロンドンの市街地へと吸い込まれてしまい、これを契機にベルリンへの報復爆撃と
さらにロンドンへの爆撃禁止令の撤回・・ロンドン市民の7人に1人が住居を失い、
地下鉄のホームでの生活を余儀なくされた・・ということです。
この激しくなった爆撃合戦は1943年のハンブルク爆撃で3万人の市民が命を落とすまで
なかなか詳しく書かれています。
フランス・レジスタンスも有名なジャン・ムーランが紹介され、彼がゲシュタポに捕えられて
クラウス・バルビーの拷問を受けた後、死亡・・や、
逆にドイツの傀儡政府であるヴィシー政府の後押しを受け、反独抵抗組織の壊滅に一役買った
フランス人の武装組織ミリス(フランス民兵団)も、団長ジョゼフ・ダルナンとともに登場。
本書によると彼らによって殺されたレジスタンスの数は3万人を下らないそうですが、
「神々の黄昏」を読んで気になっていた組織なので、大変勉強になりました。
まぁ、1ページだけなんですけどね。。
中盤はメインとなるノルマンディ上陸作戦です。
「ヴィレル・ボカージュの戦い」では、武装SSの戦車野郎ヴィットマンが大活躍。
そして、その死までも書かれていますが、本書は基本的に
個々の兵士のエピソードは書かれていないので(尉官レベルは皆無)、
このヴィットマンは完全に特別扱いですね。
戦況図が5ページに一枚の割合で出てくるのも、わかりやすくて良かったところです。
100枚ほどの戦況図が載っているそうですが、特にパリ解放後のドイツ本土へ向けた
モントゴメリー案とアイゼンハワー案の違いも上下で比較して見せたりして、
単なるやっつけ戦況図ではなく、簡潔ですが、
それぞれ意図を持ったわかりやすいものだと思いました。
もちろん彼らの確執に、パットンとブラッドレーらの絡んだ連合軍バトルも頻繁に登場します。
本書には独英米仏と、実に多くの師団や軍団、軍、軍集団が登場しますが、
その名称の後にカッコ書きで師団長などの名前が記載されています。
例えば、第1SS装甲師団<テオドール・ヴィッシュSS少将>という書き方で、
一度、出てくれば師団長の名はなくなりますが、その後、師団長交代すると、
第1SS装甲師団<ヴィルヘルム・モーンケSS少将>となります。
有名師団だけではなく、弱小師団についても、このルールは適用されているので
バルジの戦いで「突撃砲兵」のギュンター・ホフマン・シェーンボルンとか
「総統付き陸軍副官」ゲルハルト・エンゲルが国民擲弾兵師団長と書かれていると
「おぉ~、こんなところで頑張っているとは・・」と、なにか懐かしく感じたりもしました。
こういうのは親切かつ、発見もあったりして、実に良いですね。
ラストにはエルベ河畔で米軍第9歩兵師団がソ連第58狙撃兵師団と握手を交わし、
西部戦線と東部戦線が結合・・。ヒトラーも大急ぎで自殺して終わります。
「遠すぎた橋」などもちろん登場しますし、ドイツ側の将軍もロンメルにモーデル、
クルーゲにルントシュテットと沢山登場しますが、特別目新しい記述がなかったので
今回は思いっきり端折って、個人的に興味のあった部分のレビューにしました。
また、本書は各戦役や各々の戦いについては著者独自の見解というものはなく、
あくまで、一般的なものに留まっています。
例を挙げれば「ダンケルクの停止命令」も、いろんな説があって真相は不明・・・という表現です。
600ページ越えとはいえ、全体的にダイジェスト的な印象なのは否めませんが、
お弁当に例えるなら定番のおかずがたくさん入った「幕の内弁当」ですか・・。
ものめずらしい食材や、斬新な味付けがされているわけではなく、
「遠すぎた橋」が海老フライで、「バルジ大作戦」が唐揚げ・・なんて感じです。
しかし小さいおかずがたくさん詰め込まれてあるよりは、
「牛肉どまん中」みたいな、肉だけ食ってろ的なお弁当・・じゃなくて
戦記の方が好きな人も多いでしょうね。
最後に、この本がどんな読者をターゲットにしているのか・・?
う~ん、難しいなぁ。
初めて本格的に第二次大戦の戦記を読む人には大変だと思いますし、
詳しい方には物足りない・・。まさにいま、勉強中という人や、
20年前に「グデーリアンの電撃戦」や「史上最大の作戦」を読んでいたような方が
「懐かしいな~」なんて呟きながら楽しめる一冊なのかもしれません。
コメント 0