写真・ポスターに見るナチス宣伝術 -ワイマール共和国からヒトラー第三帝国へ- [ナチ/ヒトラー]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
鳥飼 行博 著の「写真・ポスターに見るナチス宣伝術」を読破しました。
今年の7月に発刊された本書は、タイトルと表紙のカラーのポスターともに
第三帝国のポスターが大好きな自分のツボにハマった感もあり、
これらのプロパガンダ的なポスターと写真を解説している本をイメージして
速攻で手に入れて読んでみました。
第1章の冒頭では「ナチ・プロパガンダを考察するにはヒトラーの生い立ちと
青年時代を無視できない」としてそのまま、両親や学生時代、
ウィーンでの放浪の様子を解説します。
4ページに1枚程度、小さい白黒写真が掲載され、中学校のクラス写真やらが、
なかなかしっかりしたキャプションで出てきます。
第1次大戦後のヴェルサイユ条約がドイツにとって屈辱的なものであり、
それがナチ党勃興の契機となった・・とされていることに、本書では異を唱え
オーストリア帝国やハンガリー帝国、オスマン帝国が、その領土2/3を失ったことを思えば
ドイツのそれは「寛大な条件だった」としています。
続く、ワイマール共和国の混乱期はかなり詳しく書かれています。
フランスとのルール地方を巡る攻防では、あの英雄シュラゲーターについても触れられ、
ミュンヘン一揆へと続いていきます。
ここからは1933年にナチ党が政権を取るまでの選挙について、かなりのページを割き、
1924年から1930年までナチ党は第8党に過ぎず、資金不足から安上がりに注目を集めるための
プロパガンダの手段として、突撃隊(SA)による乱闘騒ぎを起こした・・としています。
白黒ですが、当時のナチ党の選挙ポスターが数枚出てくるのは興味深いですね。
しかしここまで1/3程度を読んだ時点で、当初、想像していたのとは全然違う本・・
ということに気が付きました。
タイトルの「写真・ポスターに見る・・」は、あくまで補足というかオマケであって、
文章によってナチ党が政権を掴むまでを細かく解説しているものでした。
表紙のカラーポスターも本文には登場しないので、結局なんのポスターかもわからず・・。
社会民主党のポスターはヒトラーとナチ党を批判していたりして、とても面白いんですけどねぇ。
本書では白黒の小さい紹介ですが、大統領選のヒンデンブルクのポスターも、
「英雄は重荷を支える! 私はまだヒトラーよりはるかに強い!」
本書は基本的にナチ党の政党としてのプロパガンダを批判しているものですが、
なかにはこれも良く知られた「血染めの党旗」に触れ、
「ミュンヘン一揆当時、鉤十字の党旗はほとんど使用されていないため、
犠牲者の血染めの党旗が本当にあったとは思えない」と、
その後のニュルンベルク党大会などでヒトラーが行った儀式を
「捏造してまで・・」としていますが、ど~も、ちゃんとした根拠はありませんね。
その他、選挙でも得票数などを細かく挙げつつも、「インチキがあったと思わざるを得ない・・」
というような書きっぷりですが、これも特に証拠があるわけでもなく、
根拠が薄弱で著者が単にそう考えているだけのようです。
大抵の人が「インチキがあったんじゃ・・」と思っているわけですから、
そんな風に書かれてもなぁ・・。
どうせなら、「インチキの証拠は発見できない」と堂々と書けば良いのに・・。
そして対ソ戦が始まると、軍事的なものはそれほどなく、ユダヤ人問題がメインです。
武装SSの話では、ノルウェーでの兵募集ポスターもひとつ紹介され、
特に後半は、ホロコースト中心で、写真もエグいものが多くなりますが、
チューリンゲンの地下工場でV2ロケット生産に従事する囚人労働者の話では
巻頭のカラー写真がなかなか生きてましたね。
最終的にヒトラーの死とニュルンベルク裁判で終了。
最後の章「ナチ・プロパガンダの真実」では、本書のまとめとして30ページ近く解説します。
アウトバーンやら景気回復は、ヒトラーが考案したものではなく、
ヒトラー政権以前の政策で始められていたものが、ヒトラー政権後に結果が出たり、
注目されたもの・・という話で締め括られます。
でも、こういう話は本文で書くべきだし、最後の結論やまとめは簡潔にすべきだと
個人的には思います。
ヴィトゲンシュタインはいつも本にカバーを付けて読んでいるんですが、
今回は読んでる途中、「この本のタイトルなんだっけ??」と、4回は確認しました。
「写真・ポスターに見る」がオマケだとしても、「ナチス宣伝術」というのも
本文ではそれほど明確に語られず、最後の章で、あーだのこーだのと整理している感じです。
まぁ、イメージ的には「写真で見る ヒトラー政権下の人びとと日常」に似た風でもありますが、
少なくとも、タイトルと表紙から想像しうる限度を超えた内容であるのは間違いありません。
読んでてこれだけイライラしたのは久しぶりなので、最後の章もあまり頭に入りませんでしたが、
初めて知った話も皆無で、つまんないことをダラダラ書かずに、
カラーの「写真・ポスター」をメインにして、キャプションだけで仕上げた方が、
よっぽど納得のいく1冊になったでしょう。
まぁ、表紙だけ見て飛びついた自分が愚か者だった・・と反省しています。。
鳥飼 行博 著の「写真・ポスターに見るナチス宣伝術」を読破しました。
今年の7月に発刊された本書は、タイトルと表紙のカラーのポスターともに
第三帝国のポスターが大好きな自分のツボにハマった感もあり、
これらのプロパガンダ的なポスターと写真を解説している本をイメージして
速攻で手に入れて読んでみました。
第1章の冒頭では「ナチ・プロパガンダを考察するにはヒトラーの生い立ちと
青年時代を無視できない」としてそのまま、両親や学生時代、
ウィーンでの放浪の様子を解説します。
4ページに1枚程度、小さい白黒写真が掲載され、中学校のクラス写真やらが、
なかなかしっかりしたキャプションで出てきます。
第1次大戦後のヴェルサイユ条約がドイツにとって屈辱的なものであり、
それがナチ党勃興の契機となった・・とされていることに、本書では異を唱え
オーストリア帝国やハンガリー帝国、オスマン帝国が、その領土2/3を失ったことを思えば
ドイツのそれは「寛大な条件だった」としています。
続く、ワイマール共和国の混乱期はかなり詳しく書かれています。
フランスとのルール地方を巡る攻防では、あの英雄シュラゲーターについても触れられ、
ミュンヘン一揆へと続いていきます。
ここからは1933年にナチ党が政権を取るまでの選挙について、かなりのページを割き、
1924年から1930年までナチ党は第8党に過ぎず、資金不足から安上がりに注目を集めるための
プロパガンダの手段として、突撃隊(SA)による乱闘騒ぎを起こした・・としています。
白黒ですが、当時のナチ党の選挙ポスターが数枚出てくるのは興味深いですね。
しかしここまで1/3程度を読んだ時点で、当初、想像していたのとは全然違う本・・
ということに気が付きました。
タイトルの「写真・ポスターに見る・・」は、あくまで補足というかオマケであって、
文章によってナチ党が政権を掴むまでを細かく解説しているものでした。
表紙のカラーポスターも本文には登場しないので、結局なんのポスターかもわからず・・。
社会民主党のポスターはヒトラーとナチ党を批判していたりして、とても面白いんですけどねぇ。
本書では白黒の小さい紹介ですが、大統領選のヒンデンブルクのポスターも、
「英雄は重荷を支える! 私はまだヒトラーよりはるかに強い!」
本書は基本的にナチ党の政党としてのプロパガンダを批判しているものですが、
なかにはこれも良く知られた「血染めの党旗」に触れ、
「ミュンヘン一揆当時、鉤十字の党旗はほとんど使用されていないため、
犠牲者の血染めの党旗が本当にあったとは思えない」と、
その後のニュルンベルク党大会などでヒトラーが行った儀式を
「捏造してまで・・」としていますが、ど~も、ちゃんとした根拠はありませんね。
その他、選挙でも得票数などを細かく挙げつつも、「インチキがあったと思わざるを得ない・・」
というような書きっぷりですが、これも特に証拠があるわけでもなく、
根拠が薄弱で著者が単にそう考えているだけのようです。
大抵の人が「インチキがあったんじゃ・・」と思っているわけですから、
そんな風に書かれてもなぁ・・。
どうせなら、「インチキの証拠は発見できない」と堂々と書けば良いのに・・。
そして対ソ戦が始まると、軍事的なものはそれほどなく、ユダヤ人問題がメインです。
武装SSの話では、ノルウェーでの兵募集ポスターもひとつ紹介され、
特に後半は、ホロコースト中心で、写真もエグいものが多くなりますが、
チューリンゲンの地下工場でV2ロケット生産に従事する囚人労働者の話では
巻頭のカラー写真がなかなか生きてましたね。
最終的にヒトラーの死とニュルンベルク裁判で終了。
最後の章「ナチ・プロパガンダの真実」では、本書のまとめとして30ページ近く解説します。
アウトバーンやら景気回復は、ヒトラーが考案したものではなく、
ヒトラー政権以前の政策で始められていたものが、ヒトラー政権後に結果が出たり、
注目されたもの・・という話で締め括られます。
でも、こういう話は本文で書くべきだし、最後の結論やまとめは簡潔にすべきだと
個人的には思います。
ヴィトゲンシュタインはいつも本にカバーを付けて読んでいるんですが、
今回は読んでる途中、「この本のタイトルなんだっけ??」と、4回は確認しました。
「写真・ポスターに見る」がオマケだとしても、「ナチス宣伝術」というのも
本文ではそれほど明確に語られず、最後の章で、あーだのこーだのと整理している感じです。
まぁ、イメージ的には「写真で見る ヒトラー政権下の人びとと日常」に似た風でもありますが、
少なくとも、タイトルと表紙から想像しうる限度を超えた内容であるのは間違いありません。
読んでてこれだけイライラしたのは久しぶりなので、最後の章もあまり頭に入りませんでしたが、
初めて知った話も皆無で、つまんないことをダラダラ書かずに、
カラーの「写真・ポスター」をメインにして、キャプションだけで仕上げた方が、
よっぽど納得のいく1冊になったでしょう。
まぁ、表紙だけ見て飛びついた自分が愚か者だった・・と反省しています。。
これはなかなか…
この手のプロパガンタポスターは洋書が多いですから、和書は大変ありがたいですね
by 北欧の鷹 (2011-09-30 21:13)
でも、コレはオススメしません。。
10年以上前に発刊されて、amazonで1円で売ってるような本なら、記事にしなかったんですが、新しい本なんで、敢えて辛口で書いてみました。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-09-30 21:29)
相当お怒りのご様子ですが~
ちょっと残念な1冊でしたね。当時のポスター、良い絵やデザインが多いのですねえ。。。などと書いてるうちに、うちにも昔の雑誌がまだまだあるので、記事にしたいと思っていたのを思い出したり!
タイトルのつけ方とか、この手の本は特に考えてほしいですね。(ただ、自分も全く別ジャンルですが本を出版した際は何の相談もなくタイトルは編集さんにつけられて、前書きも適当に書かれた経緯があるのでいかんせん作者だけの責任ではないかもな~などとエスパーしてみます。)
by IZM (2011-10-06 15:05)
いや~、もう自分で紹介しときながら、もうこの本の話題に触れたくないというかなんというか・・。
このレビューの0.5版はこんなもんじゃなかったんですよ。。感情剥き出し・・。あまりに大人げないんで、この程度に言葉などを修正しました。それにIZMさんの言うとおり、著者の方だけの責任とも思わないのでねぇぇ。
この手の新しい本は、大抵、本屋さんで内容の確認をするんですよ。だけど、今回は探したけど売ってなかった・・。そういう自分の手抜きプレーにも腹が立ったんですね。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-10-06 21:49)