ヒトラー最後の十日間 [回想録]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
ゲルハルト・ボルト著の「ヒトラー最後の十日間」を読破しました。
先月の「ヒトラーの最期 -ソ連軍女性通訳の回想-」を読んで気がついた、
未読だった有名なヒトラーの最期モノの一冊を紹介します。
著者のボルトは大戦末期、陸軍参謀本部の伝令将校を最後まで勤め
グデーリアンや、その後任のクレープスといった参謀総長や副官のローリングホーフェンと共に、
ヒトラーの地下壕でも作戦会議に出席していた人物です。
戦後、西側連合軍に捕らえられ、その際に書き記したものが早くも1947年に出版され、
後に、加筆されて発刊されたものが本書となります。
日本では1974年に出版された284ページの古い本ですが、ヤフオクで2500円也・・。
ちなみに訳者さんは、この世界で絶大な人気を誇る、松谷 健二氏です。
まずは「私が帝国官房に入るまで」という章から始まります。
1918年、プロイセンのリューベック生まれの著者ボルトが音楽と良書、ボートと乗馬で
青春を謳歌した・・というくらいですから、良いトコのお坊ちゃんのようです。
しかし1933年、ヒトラー政権となると15歳になった彼はヒトラー・ユーゲントに入り、
やがてリーダー的な立場にもなりますが、自分の意見を持った「生意気な大口」が災いし、
1936年にはヒトラー・ユーゲントから去ることに・・。
翌年にはリューネブルク第13槍騎兵連隊に志願し、愛馬と共に訓練に勤しみますが、
1939年には落馬で大怪我を・・、そして直後にポーランド戦役が・・。
結局、初陣は1940年の西方戦役です。
偵察大隊に編入され、左胸に銃創を負い、戦傷章と2級鉄十字章を受章。
バルバロッサ作戦では、機械化工兵小隊を率いてバルト3国へ進軍。
1943年に騎士十字章を受章し、1944年にはハンガリー第1騎兵師団ドイツ軍連絡本部長に
就任しますが、この地に押し寄せるソ連軍の前にハンガリーからも撤退。
本国へ呼び戻された次の任地は、なんとラインハルト・ゲーレンの東方外国軍課です。
ちなみに下のチーム・ゲーレンの集合写真、2列目、左から3番目が著者ボルトです。
ベルリン近郊、ツォセンの広大な松林のなかに一見、普通の民家のような外観の
巨大地下壕「マイバッハⅠ」と「マイバッハⅡ」があり、
それぞれに国防軍総司令部(OKW)と陸軍総司令部(OKH)が入っていて
その5番壕にはグデーリアン参謀総長が入っているなど、詳細に解説しています。
ゲーレンの印象は「軍服を着た教授」というもので、洗練された尊敬すべき上司。
こうして彼と共に不慣れな情報将校としてソ連軍の情報収集に明け暮れます。
いや~、この章は後から書かれたものだそうですが、ビックリするくらい面白いですねぇ。
ゲーレンのチームがどのように情報収集し、それを整理/分析して、グデーリアンに提出するか、
勤務状況や会議の開始時間など、すべてはヒトラーへの報告時間が基準になっていて
また、気ままな総統に振り回されたりと、現場の視点で解説・・。
例えば、完璧な資料を持参するも、それにはヒトラーが目もくれなかったことから、
帰ってきたゲーレンは打ちのめされていた・・・。
3ヵ月程度過ぎた1945年1月、今度はグデーリアン参謀総長の首席伝令将校に任命されます。
3軍の戦況会議に初めて出席し、ヒトラーにも紹介されることになった彼は大型のメルセデスで
グデーリアン、そして副官のベルント・フォン・フライターク・ローリングホーフェンと共に
すでの壊れかけた新帝国官房へと向かいます。
会議の様子も作戦部長ヨードルが説明する西部戦線だけで4ページも書かれ、
次にグデーリアンが東部戦線の状況をハンガリーから順にヒトラーに説明します。
戦略的なものがすでになくなった空軍は、突然「ゲーリング、新型戦闘機は?」と問われ、
全員でうろたえる程度・・。最後にグデーリアンと共同戦線を張っているデーニッツが
孤立しているクーアラントからの部隊の海上撤退を進言します。
ある戦況会議の際にボルトが地図を準備しますが、ハンガリーの地図から始まり、
クーアラントで終わるという順番を逆に重ねてしまうという失態・・。
彼曰く「死罪に等しいもの」という大チョンボのまま、会議が始まってしまいます。
ハンガリーの戦況について説明を始めるグデーリアンは途中で口をつぐみ、睨みつけると、
ヒトラーも彼を見上げ、退屈気に椅子へもたれて・・。
なにやら意味不明な言い訳を呟き、床に沈みそうになるボルト。。
しかし一同が重大犯人であるかのごとく見つめるなか、慰めの言葉をかける救世主が・・。
海軍総司令官たるデーニッツがにっこり笑い、地図の山を持ち上げ、「重ね直しなさい」
ここからは激しさを増す東部戦線の模様を、上司グデーリアンvsヒトラーの様子も織り交ぜながら
語りますが、さすが参謀総長の首席伝令将校だけにその内容はかなり濃密です。
あのライネフェルトSS中将が司令官の包囲されたキュストリン要塞への突破作戦も
総統随伴師団やミュンヘベルク装甲師団などによる攻撃が失敗に終わったと
ヴァイクセル軍集団のハインリーチから報告を受けたグデーリアンがどんなにガッカリしたか・・。
3月後半にはそのグデーリアンも大バトルを演じた末、遂に罷免されてしまいますが、
ボルトが最も感銘深かったとして、第2軍司令官の任命式のためにヒトラーの元を訪れた
フォン・ザウケンのエピソードを挙げています。
会議後現れたザウケンは、7/20事件以降定められた「ハイル・ヒトラー」と腕を挙げた敬礼もせず、
預けるべき騎士サーベルに左手を当て、モノクルまで付けたまま、浅く身を屈めて挨拶するという
3つの大罪を犯してしまいます。
これにはグデーリアンとボルマンも「嵐の到来」を予感し、石のように立ちすくみ・・。
ヒトラーの挑発的な視線を伴った話にも、エレガントなザウケンは、「我が総統」ではなく
「ヒトラー殿」と反論する暴挙・・。しかしヒトラーは爆弾を落とすこともなく「よろしい・・」
しかしこの「ヒトラー最後の十日間」ですが、特に最後の十日間に限定したものでもありません。。
原題も「ヒトラー:総統官邸最後の日」という感じですし、なんでこんな邦題になったのか・・?
気になって調べてみると、1973年に英/伊合作の「アドルフ・ヒトラー/最後の10日間」
という映画が作られていて、原題も「HITLER: THE LAST TEN DAYS」。
そして、本書はこの映画のネタ本になっているということでした。
この日本未公開の映画でヒトラーを演じるのは「サー・アレック・ギネス」です。
「戦場にかける橋」の主役やスター・ウォーズの「オビ・ワン・ケノービ」を演じた名優ですね。
ついでに「ヒトラー 最期の12日間」はどうだったか・・というと、やっぱり原著にも、
映画の原題にも「12日間」という日数はなく、本の内容も確か「14日間」だったんじゃ・・。
う~ん。今から思うと、誰がこのタイトル考え付いたんでしょうかね。。
後任の参謀総長クレープスに慰留されたローリングホーフェンとボルトのコンビ。
年齢や階級は違うものの、これからは親友のような関係となっていきます。
4月20日にもなるとソ連軍のベルリン作戦が本格化し、危険になった「マイバッハⅠ」と
「マイバッハⅡ」もヒトラーの反対を押し切って移転。
総統ブンカーの一つの部屋で、参謀総長チーム3人での共同生活が始まります。
希望の星であるヴェンクの第12軍は「クラウゼヴィッツ」に「シャルンホルスト」、「ポツダム」、
「シュラゲーター」と名前はカッコいいものの、大半は書類上の師団でしかありません。。
そしてシュタイナー軍集団がぜんぜん反撃をしていないことを知ったヒトラーは
「カイテル、ヨードル、クレープスは残れ」と言って、最大級の怒りを爆発させます。
その様子もなかなか詳しく書いていますが、まぁ、この場面を読むと、
どうしても「総統MAD」のあのシーンを思い出しますね。「畜生め~!」
その後も、シュタイナーにオラニエンブルク北方の攻撃を・・とブルクドルフがウッカリ言うと、
「自惚れ屋で退屈でグズのSSか。あいつは使えん。シュタイナーが指揮を取り続けるのは許さん!」
と、ヒトラーは息巻いてます。。
絶望的な雰囲気が漂い始めた総統ブンカー。
それまで、国防軍将校に対して冷たい態度を取っていたヒトラーの護衛のSS隊員たちは、
突如として友情の権化と化し、「どうでしょう、いつヴェンクがベルリンに?」、
「我々は西へ血路を開きますか?」と質問攻めです。
ベルリン各区からの戦況報告も、もはや当てにならず、電話帳から選んだ適当な番号で
望みどおりの成果を得ます。
「すみません、奥さん。ソ連軍はもう来ましたか?」
ブルクドルフが「あんた方の贅沢な生活と権力のために彼ら若い将兵が死んでいったのだ!」と
ボルマンに対して叫んだり、ヴァイトリンクやハンナ・ライチュといったお馴染みも全員登場。
ボルトが直々にヒトラーにベルリンの戦況を報告している際にも重砲弾による振動が・・。
異様な目つきで報告を中断させ「どうだろう。どのくらいの口径で撃ってきてると思うかね?
ここまで貫通するだろうか?君は前線将校だから、知っているハズだが!」
そして4月29日の朝、ローリングホーフェンに起こされ、ヒトラーとエヴァの結婚を知らされます。
思わず2人でゲラゲラ笑うと、カーテンの向こうからクレープスの断固たる声が・・。
「気でも狂ったのか、総統を笑いものにするとは!」
この最後の最後に、彼らはベルリンを脱出してヴェンクに連絡をつける・・という計画を策定し、
クレープス、そしてヒトラーにもなんとか了承されます。
こうして、いざ決行のとき・・。
実に楽しく読み終えて、当初想定していた内容である「ヒトラー最後の十日間」は
後半の100ページでしかありませんでしたが、それより、なんと言っても
前半から中盤にかけての、ゲーレンやグデーリアンの元での仕事っぷりが
良い意味で期待を裏切る、すごい面白さでした。
よって、実のところ本書は「ヒトラーの最期」モノというジャンルに特化したものではなく、
「最後の参謀本部将校の回想録」というのが正しいですね。
現場での個人の回想という意味では、ミッシュ著の「ヒトラーの死を見とどけた男」もありますが、
まぁ、ちょっと彼とはレベルが違うというか、一介の電話番のSS兵のミッシュとは、
ヒトラーの死を目撃していないだけで、比較にならないほどの濃い内容です。
実際、ヒトラーとも直接絡んだりしてますし、また、彼が大のSS嫌いなのが
端々から伝わってくるのも、回想録らしくて面白かったですね。
ひょっとしたら「友情の権化と化し」たSS兵にミッシュも含まれていたのかも・・。
過去に読んだかなりの本のネタになっていると思われる本書ですが、
次はローリングホーフェンの体験がネタにもなっていると云われている
トレヴァ=ローパーの「ヒトラー最期の日」を予定しています。
ゲルハルト・ボルト著の「ヒトラー最後の十日間」を読破しました。
先月の「ヒトラーの最期 -ソ連軍女性通訳の回想-」を読んで気がついた、
未読だった有名なヒトラーの最期モノの一冊を紹介します。
著者のボルトは大戦末期、陸軍参謀本部の伝令将校を最後まで勤め
グデーリアンや、その後任のクレープスといった参謀総長や副官のローリングホーフェンと共に、
ヒトラーの地下壕でも作戦会議に出席していた人物です。
戦後、西側連合軍に捕らえられ、その際に書き記したものが早くも1947年に出版され、
後に、加筆されて発刊されたものが本書となります。
日本では1974年に出版された284ページの古い本ですが、ヤフオクで2500円也・・。
ちなみに訳者さんは、この世界で絶大な人気を誇る、松谷 健二氏です。
まずは「私が帝国官房に入るまで」という章から始まります。
1918年、プロイセンのリューベック生まれの著者ボルトが音楽と良書、ボートと乗馬で
青春を謳歌した・・というくらいですから、良いトコのお坊ちゃんのようです。
しかし1933年、ヒトラー政権となると15歳になった彼はヒトラー・ユーゲントに入り、
やがてリーダー的な立場にもなりますが、自分の意見を持った「生意気な大口」が災いし、
1936年にはヒトラー・ユーゲントから去ることに・・。
翌年にはリューネブルク第13槍騎兵連隊に志願し、愛馬と共に訓練に勤しみますが、
1939年には落馬で大怪我を・・、そして直後にポーランド戦役が・・。
結局、初陣は1940年の西方戦役です。
偵察大隊に編入され、左胸に銃創を負い、戦傷章と2級鉄十字章を受章。
バルバロッサ作戦では、機械化工兵小隊を率いてバルト3国へ進軍。
1943年に騎士十字章を受章し、1944年にはハンガリー第1騎兵師団ドイツ軍連絡本部長に
就任しますが、この地に押し寄せるソ連軍の前にハンガリーからも撤退。
本国へ呼び戻された次の任地は、なんとラインハルト・ゲーレンの東方外国軍課です。
ちなみに下のチーム・ゲーレンの集合写真、2列目、左から3番目が著者ボルトです。
ベルリン近郊、ツォセンの広大な松林のなかに一見、普通の民家のような外観の
巨大地下壕「マイバッハⅠ」と「マイバッハⅡ」があり、
それぞれに国防軍総司令部(OKW)と陸軍総司令部(OKH)が入っていて
その5番壕にはグデーリアン参謀総長が入っているなど、詳細に解説しています。
ゲーレンの印象は「軍服を着た教授」というもので、洗練された尊敬すべき上司。
こうして彼と共に不慣れな情報将校としてソ連軍の情報収集に明け暮れます。
いや~、この章は後から書かれたものだそうですが、ビックリするくらい面白いですねぇ。
ゲーレンのチームがどのように情報収集し、それを整理/分析して、グデーリアンに提出するか、
勤務状況や会議の開始時間など、すべてはヒトラーへの報告時間が基準になっていて
また、気ままな総統に振り回されたりと、現場の視点で解説・・。
例えば、完璧な資料を持参するも、それにはヒトラーが目もくれなかったことから、
帰ってきたゲーレンは打ちのめされていた・・・。
3ヵ月程度過ぎた1945年1月、今度はグデーリアン参謀総長の首席伝令将校に任命されます。
3軍の戦況会議に初めて出席し、ヒトラーにも紹介されることになった彼は大型のメルセデスで
グデーリアン、そして副官のベルント・フォン・フライターク・ローリングホーフェンと共に
すでの壊れかけた新帝国官房へと向かいます。
会議の様子も作戦部長ヨードルが説明する西部戦線だけで4ページも書かれ、
次にグデーリアンが東部戦線の状況をハンガリーから順にヒトラーに説明します。
戦略的なものがすでになくなった空軍は、突然「ゲーリング、新型戦闘機は?」と問われ、
全員でうろたえる程度・・。最後にグデーリアンと共同戦線を張っているデーニッツが
孤立しているクーアラントからの部隊の海上撤退を進言します。
ある戦況会議の際にボルトが地図を準備しますが、ハンガリーの地図から始まり、
クーアラントで終わるという順番を逆に重ねてしまうという失態・・。
彼曰く「死罪に等しいもの」という大チョンボのまま、会議が始まってしまいます。
ハンガリーの戦況について説明を始めるグデーリアンは途中で口をつぐみ、睨みつけると、
ヒトラーも彼を見上げ、退屈気に椅子へもたれて・・。
なにやら意味不明な言い訳を呟き、床に沈みそうになるボルト。。
しかし一同が重大犯人であるかのごとく見つめるなか、慰めの言葉をかける救世主が・・。
海軍総司令官たるデーニッツがにっこり笑い、地図の山を持ち上げ、「重ね直しなさい」
ここからは激しさを増す東部戦線の模様を、上司グデーリアンvsヒトラーの様子も織り交ぜながら
語りますが、さすが参謀総長の首席伝令将校だけにその内容はかなり濃密です。
あのライネフェルトSS中将が司令官の包囲されたキュストリン要塞への突破作戦も
総統随伴師団やミュンヘベルク装甲師団などによる攻撃が失敗に終わったと
ヴァイクセル軍集団のハインリーチから報告を受けたグデーリアンがどんなにガッカリしたか・・。
3月後半にはそのグデーリアンも大バトルを演じた末、遂に罷免されてしまいますが、
ボルトが最も感銘深かったとして、第2軍司令官の任命式のためにヒトラーの元を訪れた
フォン・ザウケンのエピソードを挙げています。
会議後現れたザウケンは、7/20事件以降定められた「ハイル・ヒトラー」と腕を挙げた敬礼もせず、
預けるべき騎士サーベルに左手を当て、モノクルまで付けたまま、浅く身を屈めて挨拶するという
3つの大罪を犯してしまいます。
これにはグデーリアンとボルマンも「嵐の到来」を予感し、石のように立ちすくみ・・。
ヒトラーの挑発的な視線を伴った話にも、エレガントなザウケンは、「我が総統」ではなく
「ヒトラー殿」と反論する暴挙・・。しかしヒトラーは爆弾を落とすこともなく「よろしい・・」
しかしこの「ヒトラー最後の十日間」ですが、特に最後の十日間に限定したものでもありません。。
原題も「ヒトラー:総統官邸最後の日」という感じですし、なんでこんな邦題になったのか・・?
気になって調べてみると、1973年に英/伊合作の「アドルフ・ヒトラー/最後の10日間」
という映画が作られていて、原題も「HITLER: THE LAST TEN DAYS」。
そして、本書はこの映画のネタ本になっているということでした。
この日本未公開の映画でヒトラーを演じるのは「サー・アレック・ギネス」です。
「戦場にかける橋」の主役やスター・ウォーズの「オビ・ワン・ケノービ」を演じた名優ですね。
ついでに「ヒトラー 最期の12日間」はどうだったか・・というと、やっぱり原著にも、
映画の原題にも「12日間」という日数はなく、本の内容も確か「14日間」だったんじゃ・・。
う~ん。今から思うと、誰がこのタイトル考え付いたんでしょうかね。。
後任の参謀総長クレープスに慰留されたローリングホーフェンとボルトのコンビ。
年齢や階級は違うものの、これからは親友のような関係となっていきます。
4月20日にもなるとソ連軍のベルリン作戦が本格化し、危険になった「マイバッハⅠ」と
「マイバッハⅡ」もヒトラーの反対を押し切って移転。
総統ブンカーの一つの部屋で、参謀総長チーム3人での共同生活が始まります。
希望の星であるヴェンクの第12軍は「クラウゼヴィッツ」に「シャルンホルスト」、「ポツダム」、
「シュラゲーター」と名前はカッコいいものの、大半は書類上の師団でしかありません。。
そしてシュタイナー軍集団がぜんぜん反撃をしていないことを知ったヒトラーは
「カイテル、ヨードル、クレープスは残れ」と言って、最大級の怒りを爆発させます。
その様子もなかなか詳しく書いていますが、まぁ、この場面を読むと、
どうしても「総統MAD」のあのシーンを思い出しますね。「畜生め~!」
その後も、シュタイナーにオラニエンブルク北方の攻撃を・・とブルクドルフがウッカリ言うと、
「自惚れ屋で退屈でグズのSSか。あいつは使えん。シュタイナーが指揮を取り続けるのは許さん!」
と、ヒトラーは息巻いてます。。
絶望的な雰囲気が漂い始めた総統ブンカー。
それまで、国防軍将校に対して冷たい態度を取っていたヒトラーの護衛のSS隊員たちは、
突如として友情の権化と化し、「どうでしょう、いつヴェンクがベルリンに?」、
「我々は西へ血路を開きますか?」と質問攻めです。
ベルリン各区からの戦況報告も、もはや当てにならず、電話帳から選んだ適当な番号で
望みどおりの成果を得ます。
「すみません、奥さん。ソ連軍はもう来ましたか?」
ブルクドルフが「あんた方の贅沢な生活と権力のために彼ら若い将兵が死んでいったのだ!」と
ボルマンに対して叫んだり、ヴァイトリンクやハンナ・ライチュといったお馴染みも全員登場。
ボルトが直々にヒトラーにベルリンの戦況を報告している際にも重砲弾による振動が・・。
異様な目つきで報告を中断させ「どうだろう。どのくらいの口径で撃ってきてると思うかね?
ここまで貫通するだろうか?君は前線将校だから、知っているハズだが!」
そして4月29日の朝、ローリングホーフェンに起こされ、ヒトラーとエヴァの結婚を知らされます。
思わず2人でゲラゲラ笑うと、カーテンの向こうからクレープスの断固たる声が・・。
「気でも狂ったのか、総統を笑いものにするとは!」
この最後の最後に、彼らはベルリンを脱出してヴェンクに連絡をつける・・という計画を策定し、
クレープス、そしてヒトラーにもなんとか了承されます。
こうして、いざ決行のとき・・。
実に楽しく読み終えて、当初想定していた内容である「ヒトラー最後の十日間」は
後半の100ページでしかありませんでしたが、それより、なんと言っても
前半から中盤にかけての、ゲーレンやグデーリアンの元での仕事っぷりが
良い意味で期待を裏切る、すごい面白さでした。
よって、実のところ本書は「ヒトラーの最期」モノというジャンルに特化したものではなく、
「最後の参謀本部将校の回想録」というのが正しいですね。
現場での個人の回想という意味では、ミッシュ著の「ヒトラーの死を見とどけた男」もありますが、
まぁ、ちょっと彼とはレベルが違うというか、一介の電話番のSS兵のミッシュとは、
ヒトラーの死を目撃していないだけで、比較にならないほどの濃い内容です。
実際、ヒトラーとも直接絡んだりしてますし、また、彼が大のSS嫌いなのが
端々から伝わってくるのも、回想録らしくて面白かったですね。
ひょっとしたら「友情の権化と化し」たSS兵にミッシュも含まれていたのかも・・。
過去に読んだかなりの本のネタになっていると思われる本書ですが、
次はローリングホーフェンの体験がネタにもなっていると云われている
トレヴァ=ローパーの「ヒトラー最期の日」を予定しています。
ヴィトゲンシュタイン様こんばんは!
ヴィトゲンシュタイン様がこの本の書評をどう書くか楽しみにしていました。さすがとしか言いようがありません!
この連休に読み返す気になりました!!・・・と言いながらもう手元にあります。
by ハッポの父 (2011-09-17 21:39)
おはようございます。
いや~、ハッポの父さんに喜んでもらえて、ホッとしました。。。
このような1970代の本には、ホント面白いのが多いですねぇ。
本書は今年の独破Best.3に入りますから、2500円でも安い買い物でした。充実した連休をお過ごしください。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-09-18 08:07)
。
by くしゃみ (2017-09-13 00:29)