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戦う翼 [戦争映画の本]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ジョン・ハーシー著の「戦う翼」を読破しました。

お馴染み「朝日ソノラマ」の米軍爆撃機モノの1冊です。
著者は第2次大戦に従軍記者として参加し、1946年には原爆「ヒロシマ」を書いたことで
有名のようで、本書の発刊当時は米国著作家連盟会長という方です。
「空飛ぶ要塞」こと、B-17"フライング・フォートレス"を舞台とした小説である本書。
原著は1959年の発刊、タイトルは「The War Lover」です。
ノンフィクションだった「ワイルド・ブルー」との比較も楽しみです。

戦う翼.jpg

一人称形式の本書の主役「私」は、B-17四発重爆の副操縦士であるボーマン中尉です。
25回と定められている爆撃任務も、あと1回で全うし、生き延びて帰国できるという状況・・。
そして朝からの出撃のため、夜中に叩き起こされ、2時半から朝食、そしてブリーフィングに
臨むわけですが、いざ出撃となっても、作戦中止となることもしょっちゅうです。

今回も「小説」なので、細かいことは極力控えて、簡単なストーリー展開を書こうと思いますが、
コレがなかなか難しい・・。
時系列で進む展開ではなく、回想で初陣まで遡ったりするので、
さまざまな出撃と爆撃任務のエピソードと乗員との人間関係がちょっとわかりづらいんですね。

memphis-belle.jpg

そんななかで本書の特徴である、各々の機のニックネームが細かく出てくるところは楽しめました。
例えば、映画「メンフィス・ベル」のような機の名前がバンバン出てくるんですが、
主人公の搭乗機は「いかす娘」号です。
機の前方に描かれたセクシー系の女の子の絵が定番ですが、この「ノーズ・アート」と呼ばれる
ものは、以前から興味があったので、「ディナより美人」号や「社長仲間」号など、
どんな絵なのかとか、オリジナルの名前を想像したりして・・。

B17_Texas Raiders.jpg

このような絵を描く専属の画家がいたようで、本書でもなぜか従軍してしまった50代の画家が、
安っぽい考えしかない連中の陳腐な考えで、同じような娘たちの絵を彼らの飛行機に描く・・
というエピソードがあり、そんな画家の苦悩も知らず、完成した自分たちの裸の娘の絵を
搭乗員たちは涎を垂らして、何時間も眺め続けるのでした。。。

cockrail hour.jpg

正操縦士のマローは26歳と、この世界では年長で、真の指揮官であると同時に、
大柄で文句が多く、怖いもの知らずを装うこの男を、主人公の副操縦士は大嫌いという関係です。
普通この爆撃機は正操縦士に命を預けた、家族のような信頼感で結ばれたモノ・・
というのが一般的ですが、本書ではドロドロした感じで、爽やかな空軍小説ではありません。

Witchcraft.jpg

「天使の足どり」号と「恋人同士」号、「消耗品6世」号、「でぶっちょマギー」号に
「往復切符」号、「ぶるぶる」号、といった連中を編隊を組み、何度も出撃。
そしてBf-109やFw-190、Ju-88の迎撃戦闘機の編隊との空戦も繰り広げられます。
しかし密集した編隊を崩してはならない爆撃機パイロットは、目の前に何度も
突っ込んでくるドイツ軍戦闘機の前には回避行動すら取れません。
やがては見たこともないMe-210にDo-217E、He-113なども一式揃って参戦してきます。
隣りでは空中分解して落下する「ねずみは止まらない」号の姿が・・。

The Virgin Hunter.jpg

そして「いかす娘」号最後の出撃・・。
本書は小説ですが、最後が特別印象的なので、勢いで書いてしまいますが、
機首部分に被弾し、機首射撃手のブリントは片足を吹き飛ばされてしまいます。
そしてスピードも落ち、編隊からも落伍した「いかす娘」号・・・、
この窮地に正操縦士のマローは神経をやられてしまい、機も制御を失います。

こうして初めて正操縦士となった主人公はドーヴァー海峡での不時着水を試みます。
執拗に追いかけているドイツ軍機にスピットファイアが護衛に・・、
このラスト空戦はなかなか手に汗握るもので、なんとか無事着水した「いかす娘」号ですが、
精神に異常をきたしたマローは、プロペラの羽根にぶら下がり、「彼女」と共に沈んでいきます。。
このマローの最期は、昔見たグレゴリー・ペックの「白鯨」のラストシーンを彷彿とさせますね。

MobyDick Gregory Peck.jpg

そしていま、このタイトルでamazonで検索したら、コレ映画になってました!
主演はなんとスティーヴ・マックィーン・・!。そしてこの偏屈な正操縦士マロー役のようです。
いや~、まったく知らなかったなぁ~!
大脱走」のヒルツ大尉をやる一年前の映画のようですね。

warlover.jpg

映画の原題も、日本での邦題も一緒・・。
「戦う翼」なんて映画、聞いたこともありませんでした。
とりあえずDVD安いし・・。
それにしても、こういう古い本でも発見があるって、ホント面白いですね。

McQueen 戦う翼.jpg







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ハッポの父

ヴィトゲンシュタイン様

先程、近所の家電量販店に行ったらDVDがなんと990円で売っていました。もちろん新品!思わず買っちゃいました!!
by ハッポの父 (2011-06-15 18:45) 

ヴィトゲンシュタイン

あはは。衝動買いですね。
完全に先を越されましたが、映画のラストは原作とは違う気がしますねぇ。
いや、でもマックィーンも当時は、まだ出だし俳優だから、死んじゃうかなぁ??
ハッポの父さんのレビュー読んでから購入することにします・・。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-06-15 22:36) 

IZM

マックィーンなら、ワタシも見たいです。。。 マックィーンって、今の子にいうと、みんなCars だと思うんでしょうかね。
「ノーズ・アート」の記載がちょっと面白かったです。昔から、何でこれあるんだろう?しかもエロぃ・・・と気にはなっていましたが。 若いパイロット達には、慰めのマスコットでもあったんでしょうね。
by IZM (2011-06-16 02:20) 

ヴィトゲンシュタイン

う~ん。。。ちょっと考えてみたんですけど、この爆撃機の「エロぃノーズアート」は米軍の専売特許なんですかねぇ?
英空軍の爆撃機には特に何も描かれてなかったような気が・・。
ルフトヴァッフェも機体に航空団や中隊のマークを描いたり、戦闘機でもガーラントの「ミッキーマウス」やハルトマンの「ハート」なんかのパーソナルマーク程度ですよね。

マックィーンは「大脱走」が好きな人なら、みんなファンですよね。
子供のころはコレと「荒野の七人」をTVでしょっちゅう放映してましたし(ブロンソンとかコバーンは両方出てました)、「タワーリング・インフェルノ」も同様に前編/後編分けての2週の放映・・。
兄弟の間ではマックィーンとポール・ニューマンのどっちが格好良いか・・と紛糾したものです。。。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-06-16 12:07) 

ハッポの父

昨晩飲みながらDVDを観ました^^; 
おかげで、今日は寝不足で仕事はぼろぼろでした。

ラスト…マックィーン扮する正操縦士(映画ではリクソン大尉)は・・・原作と違う壮烈な死をとげます。ヴィトゲンシュタイン様、ぜひこの映画、観てくださいね。古い映画なのであまり期待していなかったのですが、おすすめです!(お値段も安いし)


by ハッポの父 (2011-06-16 19:36) 

ヴィトゲンシュタイン

おぉ~と!速攻のハッポの父さんレビュー来ましたね!
負けじと速攻でamazonで買いました。。
>原作と違う壮烈な死をとげます
いや~、気になりますねぇ。
しかし、blogで勝手に紹介しといて、そのコメントを受けて購入する・・というのは、「人の道」に反しているような気もちょっとしますが、良い風に考えれば、このような世界で「信頼関係が築かれてる」とも取れますか。。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-06-16 20:42) 

ハッポの父

ヴィトゲンシュタイン様

ヴィトゲンシュタイン様の影響で「ブツ」を購入したのは「パンツァー・ユニフォーム」に次いでふたつめになってしまいました(^^ゞ

このブログを介したいい出会いに感謝しています!
by ハッポの父 (2011-06-16 21:10) 

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