危うし空挺部隊 [英国]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
A・ロイド著の「危うし空挺部隊」を読破しました。
「朝日ソノラマ」と、この時代を感じさせるタイトルだけで、つい購入してしまった1冊です。
原題は「ザ・グライダーズ」で、空挺部隊モノでも一般的な「落下傘兵」や「パラシュート兵」、
「降下猟兵」と呼び名は様々な彼らの戦いではなく、「グライダー兵」と呼ばれる
かなり特殊な兵士たちの戦記です。
1940年、フランスを電撃的に制し、英国本土進攻の「あしか作戦」を控え、
副総裁ルドルフ・ヘスが兵員200名、或いは、戦車も輸送できる巨大な「空飛ぶ兵舎」を
検討するところから本書は始まります。
このようなアイディアをヘスに吹き込んだのはメッサーシュミット教授であり、
「ギガント」と呼ばれる巨大グライダー、Me-321を作り出します。
しかし、この化け物グライダーを曳航する機は・・?
という問題にHe-111を繋ぎ合せた、これまた化け物のような5発機、
He-111Zが開発されるというワクワクするような展開です。
いや~、しかし「ギガント」のグライダーがあったというのは、まったく知りませんでした。
ここからは戦前におけるドイツのスポーツとしてグライダーが発展していった経緯などが
ハンナ・ライチュやクルト・シュトゥーデントらが登場しながら解説され、
エーベン・エメール要塞を見事攻略し、クレタ島の大空挺作戦へと話は進みます。
実はこの前半30ページほどでドイツ空軍の空挺作戦が終わりを告げると、
それを肥やしにしたかのように英空軍の空挺部隊が創設され、
本書の主役、英国グライダー兵が誕生します。
ノルウェー山中にあるドイツの水素工場の破壊任務に2機のホーサ・グライダーが
曳航機ハリファックスと共に飛び立ちますが、この初陣は完全な失敗に終わります。
ちなみに、この作戦発動日は1942年11月19日・・、東部戦線でソ連軍による「天王星作戦」が
発動された日と同じですね。
続いては、連合軍初となる大空挺作戦である「降下目標、シシリー」です。
チュニジアから130機のグライダーが兵員1200名と重砲やジープの輸送を託されますが、
英米連合軍とはいっても、グライダー・パイロットは、ほぼ全員英兵であり、
それらを曳航するパイロットは米兵という役割分担が・・。
夜間のシシリー海岸では猛烈な対空砲と風によって、位置を見失った米軍の曳航機が
負担になるグライダーを暗い海の上にばらまき、
海に着水した68機ものグライダーはパイロットと乗員と共に、跡形もなく消え去ります。。。
続く大作戦は「ノルマンディ」。
ここでは特に「メルヴィル砲台」を巡る戦いが中心で、
重要な武器を搭載した11機のホーサ・グライダーのうち、5機がなんとか着陸したものの、
「ロンメルのアスパラガス」の餌食となります。
これによってこの砲台をを巡っての肉弾戦が始まるわけですが、
こういうのを読むと、またしてもパウル・カレルが読みたくなってきますね。
その後もいたるところで着陸地点に植えられた「アスパラガス」と格闘する工兵部隊・・。
「アスパラガス」に爆弾を結び付け、それに銃弾を撃ち込む・・という作業を繰り返します。
そして無事着陸したグライダー・パイロットは、その瞬間から戦闘員に変身し、
他の空挺部隊員たちに交じって、手榴弾も投げつけるのでした。
300ページの本書、真ん中前の137ページからメイン・イベントのゴングが鳴ります。
プロモーターは英軍の誇るモントゴメリー元帥。
モーデルとビットリッヒのドイツ軍に挑むのは、アーカット少将とフロスト中佐の空挺部隊。。
とくれば、もちろんマーケット・ガーデン作戦こと、「遠すぎた橋」ですね。
アーネム市の司令官クッシン少将が路上で殺された話もしっかり出てきたりと、
かなり詳細に書かれています。
そういえば「 ドイツ武装SS師団写真史〈2〉遠すぎた橋」読まないとなぁ。
しかし、ここでも主役を務めるのはグライダー・パイロットたち。
米軍空挺部隊を率いるギャビンの悩みは米軍のパイロットが一旦、着陸してしまうと何もできず、
「部隊に属していない彼らは、役に立ちたいと思っても、当てもなくウロウロし、
混乱の原因となって、結局は邪魔になったりしました」と語る一方で、
グライダーが輸送するあらゆる兵器の使用を訓練されている英軍パイロットは、
状況の悪化するアーネムにおいても、将校たちを失った歩兵大隊の指揮を取ったり、
対戦車砲でティーガーを撃破したりと大活躍を続けます。
これにはビットリッヒSS中将も「アーネムの英兵ほど、猛烈に戦う兵士を見たことがなかった」と
語るほどです。
しかし、結局はグライダー・パイロットだけでも捕虜、死傷者730名という大損害を負った英空軍。
続く、ライン川への大空挺作戦に向けた新たなグライダー・パイロットの育成は問題を抱えます。
1500名のパイロットが配属されますが、多くの者が反抗的・・。
それはグライダーは「翼のついた箱」であって、空軍に志願した彼らにとっては
「陸軍の仕事」という認識があったことのようです。
このように本書は「危うし空挺部隊」というより、「危うし英軍グライダー兵」というのが
正しい内容ですが、出だしの「ギガント」グライダーといい、
良い意味で期待を裏切る、実に楽しい読み物でした。
A・ロイド著の「危うし空挺部隊」を読破しました。
「朝日ソノラマ」と、この時代を感じさせるタイトルだけで、つい購入してしまった1冊です。
原題は「ザ・グライダーズ」で、空挺部隊モノでも一般的な「落下傘兵」や「パラシュート兵」、
「降下猟兵」と呼び名は様々な彼らの戦いではなく、「グライダー兵」と呼ばれる
かなり特殊な兵士たちの戦記です。
1940年、フランスを電撃的に制し、英国本土進攻の「あしか作戦」を控え、
副総裁ルドルフ・ヘスが兵員200名、或いは、戦車も輸送できる巨大な「空飛ぶ兵舎」を
検討するところから本書は始まります。
このようなアイディアをヘスに吹き込んだのはメッサーシュミット教授であり、
「ギガント」と呼ばれる巨大グライダー、Me-321を作り出します。
しかし、この化け物グライダーを曳航する機は・・?
という問題にHe-111を繋ぎ合せた、これまた化け物のような5発機、
He-111Zが開発されるというワクワクするような展開です。
いや~、しかし「ギガント」のグライダーがあったというのは、まったく知りませんでした。
ここからは戦前におけるドイツのスポーツとしてグライダーが発展していった経緯などが
ハンナ・ライチュやクルト・シュトゥーデントらが登場しながら解説され、
エーベン・エメール要塞を見事攻略し、クレタ島の大空挺作戦へと話は進みます。
実はこの前半30ページほどでドイツ空軍の空挺作戦が終わりを告げると、
それを肥やしにしたかのように英空軍の空挺部隊が創設され、
本書の主役、英国グライダー兵が誕生します。
ノルウェー山中にあるドイツの水素工場の破壊任務に2機のホーサ・グライダーが
曳航機ハリファックスと共に飛び立ちますが、この初陣は完全な失敗に終わります。
ちなみに、この作戦発動日は1942年11月19日・・、東部戦線でソ連軍による「天王星作戦」が
発動された日と同じですね。
続いては、連合軍初となる大空挺作戦である「降下目標、シシリー」です。
チュニジアから130機のグライダーが兵員1200名と重砲やジープの輸送を託されますが、
英米連合軍とはいっても、グライダー・パイロットは、ほぼ全員英兵であり、
それらを曳航するパイロットは米兵という役割分担が・・。
夜間のシシリー海岸では猛烈な対空砲と風によって、位置を見失った米軍の曳航機が
負担になるグライダーを暗い海の上にばらまき、
海に着水した68機ものグライダーはパイロットと乗員と共に、跡形もなく消え去ります。。。
続く大作戦は「ノルマンディ」。
ここでは特に「メルヴィル砲台」を巡る戦いが中心で、
重要な武器を搭載した11機のホーサ・グライダーのうち、5機がなんとか着陸したものの、
「ロンメルのアスパラガス」の餌食となります。
これによってこの砲台をを巡っての肉弾戦が始まるわけですが、
こういうのを読むと、またしてもパウル・カレルが読みたくなってきますね。
その後もいたるところで着陸地点に植えられた「アスパラガス」と格闘する工兵部隊・・。
「アスパラガス」に爆弾を結び付け、それに銃弾を撃ち込む・・という作業を繰り返します。
そして無事着陸したグライダー・パイロットは、その瞬間から戦闘員に変身し、
他の空挺部隊員たちに交じって、手榴弾も投げつけるのでした。
300ページの本書、真ん中前の137ページからメイン・イベントのゴングが鳴ります。
プロモーターは英軍の誇るモントゴメリー元帥。
モーデルとビットリッヒのドイツ軍に挑むのは、アーカット少将とフロスト中佐の空挺部隊。。
とくれば、もちろんマーケット・ガーデン作戦こと、「遠すぎた橋」ですね。
アーネム市の司令官クッシン少将が路上で殺された話もしっかり出てきたりと、
かなり詳細に書かれています。
そういえば「 ドイツ武装SS師団写真史〈2〉遠すぎた橋」読まないとなぁ。
しかし、ここでも主役を務めるのはグライダー・パイロットたち。
米軍空挺部隊を率いるギャビンの悩みは米軍のパイロットが一旦、着陸してしまうと何もできず、
「部隊に属していない彼らは、役に立ちたいと思っても、当てもなくウロウロし、
混乱の原因となって、結局は邪魔になったりしました」と語る一方で、
グライダーが輸送するあらゆる兵器の使用を訓練されている英軍パイロットは、
状況の悪化するアーネムにおいても、将校たちを失った歩兵大隊の指揮を取ったり、
対戦車砲でティーガーを撃破したりと大活躍を続けます。
これにはビットリッヒSS中将も「アーネムの英兵ほど、猛烈に戦う兵士を見たことがなかった」と
語るほどです。
しかし、結局はグライダー・パイロットだけでも捕虜、死傷者730名という大損害を負った英空軍。
続く、ライン川への大空挺作戦に向けた新たなグライダー・パイロットの育成は問題を抱えます。
1500名のパイロットが配属されますが、多くの者が反抗的・・。
それはグライダーは「翼のついた箱」であって、空軍に志願した彼らにとっては
「陸軍の仕事」という認識があったことのようです。
このように本書は「危うし空挺部隊」というより、「危うし英軍グライダー兵」というのが
正しい内容ですが、出だしの「ギガント」グライダーといい、
良い意味で期待を裏切る、実に楽しい読み物でした。
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