女たちの時 -ドイツ崩壊の淵で 1944-1947- [女性と戦争]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
クリスティアン・フォン クロコウ著の「女たちの時」を読破しました。
「ベルリン終戦日記」や「ベルリン・ダイアリー」など、ドイツが敗戦へと向かうなか、
ドイツ女性たちが強く生きていく姿を描いたものに惹かれるヴィトゲンシュタインですが
本書もそんなシリーズのうちのひとつです。
今回の舞台はいつものベルリンではなく、「ポンメルン」。
戦後、ポーランド領となったバルト海に面した、ポンメルンは最終戦においても
グデーリアン参謀総長が必死の防衛戦を試みようとした場所であり、それは、彼が
このポンメルン出身だったから・・と、良く書かれることでも知られています。

1944年夏、主人公である著者の姉、リブッサの結婚式の様子から本書は始まります。
フォン クロコウ伯爵令嬢であり、新郎は陸軍大尉の男爵という、プロイセンの伝統的な
貴族同士の結婚式です。
しかし、連合軍が数日前にノルマンディに上陸し、国防軍全体に「休暇禁止命令」が出され、
男性の欠席者が続出したことから、母親の再婚によって養父となった「イェスコお父様」こと、
フォン・プットカマー男爵がフォン・マッケンゼン将軍の要請で近くに駐屯していた騎兵連隊から
無理やり将校たちを調達して、結婚式も華やかに・・。

このフォン・プットカマー男爵家は非常に子孫が多いそうで、ヒトラーの海軍副官を長く務めた、
あのフォン・プットカマーも、このプットカマー一族なんでしょう。
式では「プロイセン国王陛下」に万歳三唱が行われ、最後に小さい声で「それに、ヒトラーにも・・」と
締め括られるという環境です。

新婚生活も束の間、やがて冬になると東部戦線でのソ連の侵攻が激しくなり、
東プロイセンなどから避難民が、このポンメルンにも押し寄せてきます。
新郎も前線へと向かい、「イェスコお父様」フォン・プットカマー男爵も予備役少佐のようで、
5000人の子供と初老の男たちから成る「国民突撃隊」の指揮官に任命され、
郷土防衛戦に駆り出されます。

しかし武器も何もなく、早々に帰還した「イェスコお父様」と一家は、土地を捨て、
馬車三台で多くの難民と同じ運命に身を投じるのでした。
西ではなく、北のバルト海を目指す難民たちの群れ・・・。
大渋滞が続き、あっという間にソ連戦車に追いつかれ、ソ連兵士が避難所へ雪崩れ込むと
「おい、女、来い」。

妊娠9か月のリブッサは、さすがにこの恥辱からは逃れられますが、
女中のマリーが連れて行かれ、ボロボロになって戻ってくると泣き崩れます。
3日目にはソ連軍から故郷に戻れという命令が出され、「裏切り者」と書かれたプラカードを下げた
首つり死体が連なる街道を一路・・・・。
難産ながら無事、娘を出産したリブッサ。周囲ではいまも繰り返される略奪と強姦ですが、
大天使を抱いたリブッサにはやはり手を出す者はなく、
獲物を取ろうとする恐ろしい形相は一変し、子供をやさしく撫でては、リブッサにも微笑みかけます。
「ロシア人は子供好き」・・。ですが、故郷の娘を思い出したのか、
衝動的に連れ去ってしまう兵士もいたりと、心休まるものではありません。

戦争は終わったものの、ソ連軍に占領され、土地から何から何まで奪われ、
やがてこの地がポーランドのものとなったことがわかると、
噂に聞く、米英連合軍の占領地域への偵察を決行します。
反対するのは骨の髄までプロイセン将校であり、貴族である主人のイェスコお父様。
しかし、すべてを失った今、何の役にも立たず、名誉を重んじては「泥棒」もできません。
一方、毅然とした母は、畑からホウレン草も平気で盗み、
娘と孫娘にお腹いっぱい食べさせようと気を配ります。
この敗戦の時代には名誉ではなく、這いずり回っても生き延びること・・
そして、それは女たちの役目なのでした。

また近くに住む「おばあさま」も只者ではありません。
伝統の屋敷はソ連軍司令部に接収されますが、地下室に居を構え、
その貴族然とした威厳と雰囲気から、頻繁に交代するソ連司令官たちからも尊敬を受け、
曾孫の洗礼に参列する際には最高の馬車と兵士まで、提供されるほどです。
役立たずのイェスコお父様はある日突然、逮捕され、20㌔離れた刑務所へ・・。
刑務所の司令官を買収し、差し入れのパンを持って行ったリブッサは、
人違いだと思うほどの姿となったイェスコお父様と対面・・
そして言葉を交わすこともなく、ひたすらパンにかじりつくイェスコお父様・・。

このまま、冬を迎えては、恐ろしい飢餓が襲ってくる・・しかし、イェスコお父様が
いつ戻ってくるかもわからない・・というジレンマに悩みながらも、リブッサは
ポーランドからドイツへ帰還することを決意します。
母と娘を残し、繰り返し略奪に遭いながらの列車の旅・・。
ハンブルクに辿り着くと、今度は、母と娘、そして父も救い出すのために再び、故郷へ・・。
本書での敵役は、ソ連兵ではなく、ポーランド人です。
過去にドイツに占領されたポーランド人がドイツ人に復讐する・・という構図の中で
女性の強さが一際、際立ちました。

読み終えて、表紙の「女たちの時」というタイトルを見て、改めて、納得しました。
そして巻頭に掲載されている4世代の女性たちが写った写真はしみじみと見入ってしまいます。
「母は強し」なんだなぁ。。
クリスティアン・フォン クロコウ著の「女たちの時」を読破しました。
「ベルリン終戦日記」や「ベルリン・ダイアリー」など、ドイツが敗戦へと向かうなか、
ドイツ女性たちが強く生きていく姿を描いたものに惹かれるヴィトゲンシュタインですが
本書もそんなシリーズのうちのひとつです。
今回の舞台はいつものベルリンではなく、「ポンメルン」。
戦後、ポーランド領となったバルト海に面した、ポンメルンは最終戦においても
グデーリアン参謀総長が必死の防衛戦を試みようとした場所であり、それは、彼が
このポンメルン出身だったから・・と、良く書かれることでも知られています。

1944年夏、主人公である著者の姉、リブッサの結婚式の様子から本書は始まります。
フォン クロコウ伯爵令嬢であり、新郎は陸軍大尉の男爵という、プロイセンの伝統的な
貴族同士の結婚式です。
しかし、連合軍が数日前にノルマンディに上陸し、国防軍全体に「休暇禁止命令」が出され、
男性の欠席者が続出したことから、母親の再婚によって養父となった「イェスコお父様」こと、
フォン・プットカマー男爵がフォン・マッケンゼン将軍の要請で近くに駐屯していた騎兵連隊から
無理やり将校たちを調達して、結婚式も華やかに・・。

このフォン・プットカマー男爵家は非常に子孫が多いそうで、ヒトラーの海軍副官を長く務めた、
あのフォン・プットカマーも、このプットカマー一族なんでしょう。
式では「プロイセン国王陛下」に万歳三唱が行われ、最後に小さい声で「それに、ヒトラーにも・・」と
締め括られるという環境です。

新婚生活も束の間、やがて冬になると東部戦線でのソ連の侵攻が激しくなり、
東プロイセンなどから避難民が、このポンメルンにも押し寄せてきます。
新郎も前線へと向かい、「イェスコお父様」フォン・プットカマー男爵も予備役少佐のようで、
5000人の子供と初老の男たちから成る「国民突撃隊」の指揮官に任命され、
郷土防衛戦に駆り出されます。

しかし武器も何もなく、早々に帰還した「イェスコお父様」と一家は、土地を捨て、
馬車三台で多くの難民と同じ運命に身を投じるのでした。
西ではなく、北のバルト海を目指す難民たちの群れ・・・。
大渋滞が続き、あっという間にソ連戦車に追いつかれ、ソ連兵士が避難所へ雪崩れ込むと
「おい、女、来い」。

妊娠9か月のリブッサは、さすがにこの恥辱からは逃れられますが、
女中のマリーが連れて行かれ、ボロボロになって戻ってくると泣き崩れます。
3日目にはソ連軍から故郷に戻れという命令が出され、「裏切り者」と書かれたプラカードを下げた
首つり死体が連なる街道を一路・・・・。
難産ながら無事、娘を出産したリブッサ。周囲ではいまも繰り返される略奪と強姦ですが、
大天使を抱いたリブッサにはやはり手を出す者はなく、
獲物を取ろうとする恐ろしい形相は一変し、子供をやさしく撫でては、リブッサにも微笑みかけます。
「ロシア人は子供好き」・・。ですが、故郷の娘を思い出したのか、
衝動的に連れ去ってしまう兵士もいたりと、心休まるものではありません。

戦争は終わったものの、ソ連軍に占領され、土地から何から何まで奪われ、
やがてこの地がポーランドのものとなったことがわかると、
噂に聞く、米英連合軍の占領地域への偵察を決行します。
反対するのは骨の髄までプロイセン将校であり、貴族である主人のイェスコお父様。
しかし、すべてを失った今、何の役にも立たず、名誉を重んじては「泥棒」もできません。
一方、毅然とした母は、畑からホウレン草も平気で盗み、
娘と孫娘にお腹いっぱい食べさせようと気を配ります。
この敗戦の時代には名誉ではなく、這いずり回っても生き延びること・・
そして、それは女たちの役目なのでした。

また近くに住む「おばあさま」も只者ではありません。
伝統の屋敷はソ連軍司令部に接収されますが、地下室に居を構え、
その貴族然とした威厳と雰囲気から、頻繁に交代するソ連司令官たちからも尊敬を受け、
曾孫の洗礼に参列する際には最高の馬車と兵士まで、提供されるほどです。
役立たずのイェスコお父様はある日突然、逮捕され、20㌔離れた刑務所へ・・。
刑務所の司令官を買収し、差し入れのパンを持って行ったリブッサは、
人違いだと思うほどの姿となったイェスコお父様と対面・・
そして言葉を交わすこともなく、ひたすらパンにかじりつくイェスコお父様・・。

このまま、冬を迎えては、恐ろしい飢餓が襲ってくる・・しかし、イェスコお父様が
いつ戻ってくるかもわからない・・というジレンマに悩みながらも、リブッサは
ポーランドからドイツへ帰還することを決意します。
母と娘を残し、繰り返し略奪に遭いながらの列車の旅・・。
ハンブルクに辿り着くと、今度は、母と娘、そして父も救い出すのために再び、故郷へ・・。
本書での敵役は、ソ連兵ではなく、ポーランド人です。
過去にドイツに占領されたポーランド人がドイツ人に復讐する・・という構図の中で
女性の強さが一際、際立ちました。

読み終えて、表紙の「女たちの時」というタイトルを見て、改めて、納得しました。
そして巻頭に掲載されている4世代の女性たちが写った写真はしみじみと見入ってしまいます。
「母は強し」なんだなぁ。。
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