第二次世界大戦 ヒトラーの戦い〈7〉 [ヒトラーの戦い]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
児島 襄 著の「ヒトラーの戦い〈7〉」を読破しました。
ノルマンディへ上陸を果たし、橋頭堡を築いた連合軍に対し、必死の反撃を繰り返すドイツ西方軍。
しかし、その反撃の核というべきB軍集団司令官のロンメルが瀕死の重傷を負って倒れ、
その情報に「新生ドイツの基礎が失われた」と愕然とする、シュタウフェンベルク大佐と
元参謀総長のベックら、「ワルキューレ作戦」の計画者たち・・。
この有名な7月20日のヒトラー暗殺未遂事件は、映画も含めて、本も何冊か読んでいますが、
シュタウフェンベルクが机の下にの置いた爆弾の入ったカバンを
邪魔だとばかりに足の先で押し込み、その結果、ヒトラーは助かったという話では
その足で押し込んだ人物が陸軍参謀本部作戦課長ハインツ・ブラント大佐であり、
彼が前年にもそれとは知らずにスモレンスクで「酒瓶爆弾」をトレスコウらから受け取り、
ヒトラー搭乗機に持ち込んでしまった人物ということに気が付きました。
まったくツイテないブラントは、この2回目の爆弾の犠牲者となってしまいます。
同様に怪我を負った参謀次長のホイジンガーの代行にヴェンクを当て、
兼務していた参謀総長にグデーリアンを任命すると語るヒトラーに
OKW長官のカイテルは「彼は急に弱気になった」と観察しています。
そしてクーデター派に貴族の称号である「フォン」が多かったことからOKW、OKH内の
全「フォン」族の厳重チェックも指示します。
正式名称「大ドイツ帝国対ヴィッツレーベンその他に関する人民裁判」が開廷し、
フライスラー裁判長とヴィッツレーベンやヘプナーの審理も詳しく書かれています。
「そこの薄汚いじじい!」と叫ぶフライスラーの元帥に対する非礼に
傍聴席の国防軍将校からはざわめきが起こります。
その後の絶命するまで通常の3~4倍もかかったという陰惨な絞首刑の様子も
ここまで詳細に書かれているものは初めて読みました。
また、ヒトラーがこの様子を映画や写真で喜んで観たとされる件では、
アーヴィングの「ヒトラーの戦争」と同様の解釈です。
膠着する西部戦線では、連合軍爆撃機編隊がドイツ軍の前線に向けて飛び立ちます。
しかし、誤爆によって米軍第30師団に死傷者150人以上という被害が・・。
これにもメゲない連合軍は翌日に仕切り直し。
そして再び誤爆・・。今度の死傷者は600人にも及びます。。。
「ファレーズ・ポケット」が閉じられようという危機を迎えたドイツ西方軍。
司令官の「フォン」・クルーゲ元帥が行方不明との急電がヒトラーの元へ飛び込んできます。
このクルーゲが西側連合軍との接触を試みたのでは・・とされる事件も検証しています。
罷免されたクルーゲの様子を参謀長だったブルーメントリットは
「目はくぼみ、顔色は蒼黒く沈んで・・、兼務するB軍集団との2つの司令官との重責に
押しつぶされたのだ」とその時の様子を語ります。
そのクルーゲが自殺した日、パリではレジスタンスが蜂起します。
やがてヨードルに向かって「パリは燃えているのか?」と繰り返すヒトラーですが、
大パリ司令官のコルティッツは破壊命令を無視して、降伏。
パリ市民は4年間の怨念を晴らすため、投降してきたドイツ兵に襲い掛かり、撲殺、射殺。。
それよりも激しい怒りはドイツに協力した同胞に向けられ、髪を剃られ、素っ裸にされ、
「ドイツ兵の娼婦でした」と書かれたプラカードをぶら下げて街を引き回します。
ルーマニアでは首相のアントネスクが王宮で国王によって逮捕/監禁されてしまいます。
まさにムッソリーニと同じ展開ですね。
「もうパリどころではない。ルーマニアの石油が問題だ!」と興奮するヒトラー。
西方軍司令官に再度ルントシュテットを起用し、B軍集団にはモーデル・・となると、
お馴染み「遠すぎた橋」が始まる予感です。
そして遂にモントゴメリーによって下令された「マーケット・ガーデン」作戦。
大破した1機のグライダーから押収した完全な命令書にシュトゥーデントとビットリッヒらも狂喜し、
「3ヵ所に1個師団ずつ、そして北上してくるのが英軍か・・」と
モーデルは「それなら叩ける」と自信をのぞかせます。
しかしヒトラーの司令部では情報の少なさから空軍の出動を求めますが、
案の定、ゲーリングは行方知れず・・。そして「こういうときにリヒトホーフェンが必要なのに・・」と
脳腫瘍で倒れ、再起が見込めない、ヒトラーが信頼する空軍元帥の不在を嘆きます。
こんな展開だと、頭の中では「遠すぎた橋」のテーマが流れ続けますねぇ。
ちょっと独破を中断して、DVD観るか・・、でも今回はガマンです。。。
再生できない場合、ダウンロードは🎥こちら
そのヒトラーの心配をよそに大失敗に終わった「マーケット・ガーデン」作戦について
ルントシュテットは冷ややかに論評します。
「逃げ場のない一本道で作戦しようとするのは、ただ生命と血の浪費に過ぎない」。
その頃、東部戦線では「ワルシャワ蜂起」が始まっており、ディルレヴァンガーや
カミンスキーの極悪SS鎮圧部隊に劣勢となったポーランドのコモロフスキー将軍は
ロンドンの亡命政府に空挺部隊の派兵を要請します。
ところがポーランドの空挺部隊は、当然「マーケット・ガーデン」作戦に駆り出されていて・・。
このように1944年も夏を過ぎると、あちこちで様々な問題や出来事、事件が発生して、
それらが少なからずリンクしていることを本書では理解できますね。
この「ヒトラーの戦い」では全般的にヒトラーの体調の変化に度々触れていて、
都度、モレル医師の治療法に不審を持つ人物が登場しますが、
この巻では遂にSS全国指導者ヒムラーに睨まれて、観念したモレルは
恒常的に投与してきた整腸剤が毒性の強いものであることなどを告白します。
左こめかみの骨折と眼の損傷により、左半分がひしゃげたような顔となったロンメル。
7月20日事件の関与をヒトラーから疑われ、死を強要されます。
海軍副官プットカマーから最期の報告を受けたヒトラーは、「またひとり、古い戦友を失った・・」。
また、同じく関与が判明したカナリス提督が「ブランデンブルク師団」で総統本営を強襲する計画を
立てていたという話も初めて聞くものです。
80万人ものユダヤ人に一切、手をつけなかったほど気を使っていたハンガリーも
ソ連の圧力の前に枢軸から脱落寸前・・。
これを阻止するためのスコルツェニーによる「パンツァーファウスト」作戦もなかなか詳細で、
この作戦の指揮官がバッハ=ツェレウスキであったのは初めて知りました。
しかしマンネルヘイムのフィンランドはソ連に屈服します。
レンドリックの駐留ドイツ軍3個軍団は、形式的なフィンランド軍の攻撃を受けながらも
スウェーデンを経由して、ノルウェーへの大移動を実施します。
そしてドイツ本土・・。ケルンの西方の小都市アーヘンが陥落し、
東部でも東プロイセンにソ連軍が侵攻・・。
ヒトラーの司令部ヴォルフスシャンツェも避難準備を始めますが、
ヒトラーの元副官で、いまや第4軍司令官である、「男」ホスバッハが逆襲に成功。
とりあえずは、ソ連軍をドイツ本土から駆逐し、総統本営は喜びに沸き返ります。
最後はヨードルに西部での攻勢作戦を指示するヒトラー・・。
作戦名「ラインの守り」、もちろん「バルジ大作戦」です。
児島 襄 著の「ヒトラーの戦い〈7〉」を読破しました。
ノルマンディへ上陸を果たし、橋頭堡を築いた連合軍に対し、必死の反撃を繰り返すドイツ西方軍。
しかし、その反撃の核というべきB軍集団司令官のロンメルが瀕死の重傷を負って倒れ、
その情報に「新生ドイツの基礎が失われた」と愕然とする、シュタウフェンベルク大佐と
元参謀総長のベックら、「ワルキューレ作戦」の計画者たち・・。
この有名な7月20日のヒトラー暗殺未遂事件は、映画も含めて、本も何冊か読んでいますが、
シュタウフェンベルクが机の下にの置いた爆弾の入ったカバンを
邪魔だとばかりに足の先で押し込み、その結果、ヒトラーは助かったという話では
その足で押し込んだ人物が陸軍参謀本部作戦課長ハインツ・ブラント大佐であり、
彼が前年にもそれとは知らずにスモレンスクで「酒瓶爆弾」をトレスコウらから受け取り、
ヒトラー搭乗機に持ち込んでしまった人物ということに気が付きました。
まったくツイテないブラントは、この2回目の爆弾の犠牲者となってしまいます。
同様に怪我を負った参謀次長のホイジンガーの代行にヴェンクを当て、
兼務していた参謀総長にグデーリアンを任命すると語るヒトラーに
OKW長官のカイテルは「彼は急に弱気になった」と観察しています。
そしてクーデター派に貴族の称号である「フォン」が多かったことからOKW、OKH内の
全「フォン」族の厳重チェックも指示します。
正式名称「大ドイツ帝国対ヴィッツレーベンその他に関する人民裁判」が開廷し、
フライスラー裁判長とヴィッツレーベンやヘプナーの審理も詳しく書かれています。
「そこの薄汚いじじい!」と叫ぶフライスラーの元帥に対する非礼に
傍聴席の国防軍将校からはざわめきが起こります。
その後の絶命するまで通常の3~4倍もかかったという陰惨な絞首刑の様子も
ここまで詳細に書かれているものは初めて読みました。
また、ヒトラーがこの様子を映画や写真で喜んで観たとされる件では、
アーヴィングの「ヒトラーの戦争」と同様の解釈です。
膠着する西部戦線では、連合軍爆撃機編隊がドイツ軍の前線に向けて飛び立ちます。
しかし、誤爆によって米軍第30師団に死傷者150人以上という被害が・・。
これにもメゲない連合軍は翌日に仕切り直し。
そして再び誤爆・・。今度の死傷者は600人にも及びます。。。
「ファレーズ・ポケット」が閉じられようという危機を迎えたドイツ西方軍。
司令官の「フォン」・クルーゲ元帥が行方不明との急電がヒトラーの元へ飛び込んできます。
このクルーゲが西側連合軍との接触を試みたのでは・・とされる事件も検証しています。
罷免されたクルーゲの様子を参謀長だったブルーメントリットは
「目はくぼみ、顔色は蒼黒く沈んで・・、兼務するB軍集団との2つの司令官との重責に
押しつぶされたのだ」とその時の様子を語ります。
そのクルーゲが自殺した日、パリではレジスタンスが蜂起します。
やがてヨードルに向かって「パリは燃えているのか?」と繰り返すヒトラーですが、
大パリ司令官のコルティッツは破壊命令を無視して、降伏。
パリ市民は4年間の怨念を晴らすため、投降してきたドイツ兵に襲い掛かり、撲殺、射殺。。
それよりも激しい怒りはドイツに協力した同胞に向けられ、髪を剃られ、素っ裸にされ、
「ドイツ兵の娼婦でした」と書かれたプラカードをぶら下げて街を引き回します。
ルーマニアでは首相のアントネスクが王宮で国王によって逮捕/監禁されてしまいます。
まさにムッソリーニと同じ展開ですね。
「もうパリどころではない。ルーマニアの石油が問題だ!」と興奮するヒトラー。
西方軍司令官に再度ルントシュテットを起用し、B軍集団にはモーデル・・となると、
お馴染み「遠すぎた橋」が始まる予感です。
そして遂にモントゴメリーによって下令された「マーケット・ガーデン」作戦。
大破した1機のグライダーから押収した完全な命令書にシュトゥーデントとビットリッヒらも狂喜し、
「3ヵ所に1個師団ずつ、そして北上してくるのが英軍か・・」と
モーデルは「それなら叩ける」と自信をのぞかせます。
しかしヒトラーの司令部では情報の少なさから空軍の出動を求めますが、
案の定、ゲーリングは行方知れず・・。そして「こういうときにリヒトホーフェンが必要なのに・・」と
脳腫瘍で倒れ、再起が見込めない、ヒトラーが信頼する空軍元帥の不在を嘆きます。
こんな展開だと、頭の中では「遠すぎた橋」のテーマが流れ続けますねぇ。
ちょっと独破を中断して、DVD観るか・・、でも今回はガマンです。。。
再生できない場合、ダウンロードは🎥こちら
そのヒトラーの心配をよそに大失敗に終わった「マーケット・ガーデン」作戦について
ルントシュテットは冷ややかに論評します。
「逃げ場のない一本道で作戦しようとするのは、ただ生命と血の浪費に過ぎない」。
その頃、東部戦線では「ワルシャワ蜂起」が始まっており、ディルレヴァンガーや
カミンスキーの極悪SS鎮圧部隊に劣勢となったポーランドのコモロフスキー将軍は
ロンドンの亡命政府に空挺部隊の派兵を要請します。
ところがポーランドの空挺部隊は、当然「マーケット・ガーデン」作戦に駆り出されていて・・。
このように1944年も夏を過ぎると、あちこちで様々な問題や出来事、事件が発生して、
それらが少なからずリンクしていることを本書では理解できますね。
この「ヒトラーの戦い」では全般的にヒトラーの体調の変化に度々触れていて、
都度、モレル医師の治療法に不審を持つ人物が登場しますが、
この巻では遂にSS全国指導者ヒムラーに睨まれて、観念したモレルは
恒常的に投与してきた整腸剤が毒性の強いものであることなどを告白します。
左こめかみの骨折と眼の損傷により、左半分がひしゃげたような顔となったロンメル。
7月20日事件の関与をヒトラーから疑われ、死を強要されます。
海軍副官プットカマーから最期の報告を受けたヒトラーは、「またひとり、古い戦友を失った・・」。
また、同じく関与が判明したカナリス提督が「ブランデンブルク師団」で総統本営を強襲する計画を
立てていたという話も初めて聞くものです。
80万人ものユダヤ人に一切、手をつけなかったほど気を使っていたハンガリーも
ソ連の圧力の前に枢軸から脱落寸前・・。
これを阻止するためのスコルツェニーによる「パンツァーファウスト」作戦もなかなか詳細で、
この作戦の指揮官がバッハ=ツェレウスキであったのは初めて知りました。
しかしマンネルヘイムのフィンランドはソ連に屈服します。
レンドリックの駐留ドイツ軍3個軍団は、形式的なフィンランド軍の攻撃を受けながらも
スウェーデンを経由して、ノルウェーへの大移動を実施します。
そしてドイツ本土・・。ケルンの西方の小都市アーヘンが陥落し、
東部でも東プロイセンにソ連軍が侵攻・・。
ヒトラーの司令部ヴォルフスシャンツェも避難準備を始めますが、
ヒトラーの元副官で、いまや第4軍司令官である、「男」ホスバッハが逆襲に成功。
とりあえずは、ソ連軍をドイツ本土から駆逐し、総統本営は喜びに沸き返ります。
最後はヨードルに西部での攻勢作戦を指示するヒトラー・・。
作戦名「ラインの守り」、もちろん「バルジ大作戦」です。
昨日スーパーで買い物中「ノルマンデイ産ワイン」を見つけて 「ノルマンディ上陸作戦のあのノルマンディ?!」とちょっと興奮したのは、ここだけの話です。
このへんも未だにドレスデンの兄妹パワーなんでしょうか。Ww
「遠すぎた橋」今度見てみたいです。「橋」も見たいんですが。。。。
アドルフの名前考も記事にしてみました。お時間あったら覗いてくださいませ。
by IZM (2011-03-05 04:24)
「ノルマンデイ産ワイン」っていうのは初耳です。
リンゴの産地ですから、カルヴァドスとかシードルしかないと思ってました。凄いなぁ。ちょっと探してみます。
「遠すぎた橋」ではビットリッヒSS中将役をマキシミリアン・シェルが演じているので、 IZMさんのブログでいきなり「マキシミリアン」とデカデカと出てくるあたりも、やっぱり「ドレスデンの兄妹パワー」ですねぇ。ホント不思議・・。
その「遠すぎた橋」。これはわかりづらいので有名です。オランダのアイントホーフェン、ナイメーヘン、アーネムの3か所での戦いが、入れ替わり出てくるので、どこで何が起こっているかわからない・・という理由です。
サッカー好きならアイントホーフェンとアーネムくらいの地名は知っていますが、映画の序盤、地上部隊のホロックス中将が第30軍団将兵に地図で作戦を説明するシーンを、彼らと同じくらい「真剣」に聞いておけば、なんとかなるでしょう・・。
「橋」も良い映画ですね。特にラストはなんともやりきれない感じで、いろいろ考えさせられます。。。
>アドルフの名前考も記事にしてみました
大変な質問しちゃったなぁ!!
by ヴィトゲンシュタイン (2011-03-05 11:17)
こちらのニュースでもずっと日本の地震・津波ニュースを流していますが、ヴィトゲンシュタイン様と独破戦線は異常なしでしょうか?心配してます!!
こんな所に書いちゃってすみません!
by IZM (2011-03-12 06:53)
IZMさん。心配していただいてありがとうございます。
まぁ、大変な目に遭いましたが、なんとか大丈夫です。
地震なれしている ヴィトゲンシュタインですが、こんなデカいのは生まれて初めてでした。道がグラグラ揺れてる・・というのも初めて味わいました。
詳しい体験談は「独破リスト」に書いてみます。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-03-12 10:05)