第二次世界大戦 ヒトラーの戦い〈1〉 [ヒトラーの戦い]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
児島 襄 著の「ヒトラーの戦い〈1〉」を読破しました。
遂に始まってしまいました・・。「ヒトラーの戦い」。
もともとは「週刊ポスト」に8年に渡って掲載されていたものを加筆して、
1978年に15巻の単行本として発売され、その後1992年に10巻の文庫版となった
有名なヒトラーと第三帝国の興亡史です。
ヴィトゲンシュタインが10巻セット、3000円で購入した文庫版も1巻のページ数は500ページ・・。
単純計算でも5000ページにも及ぶ「独破戦線」史上最大の超大作でもあります。
この「戦い」になんとか勝利するつもりですが、今後、連続10回続く予定のレビューに
どうか、お付き合い下さい。
なぜかヒトラーの遺体の検視結果・・「睾丸が1つしかなかった」という話から始まる本書。
このような睾丸欠如には「短気で過度に活動的、特別な人間、偉大な人間になりたいと願う」
心理状態になるといわれているそうで、これらの特徴がヒトラーにもピタリと当てはまります。
ヒトラーの青年時代、第1次大戦での従軍、そして戦後の1921年、ヒトラーが
ナチ党指導者になるまでが簡単に解説されます。
その後の「ミュンヘン一揆」、5年の禁固刑、その間の「わが闘争」の執筆と続きます。
さすが日本人の著者だけあって、この当時に日本の新聞に登場したヒトラーについても
「ヒットレル氏」とか「ヘトレル」などのパターンを紹介してくれます。
出版の決まった「わが闘争」ですが、当初のヒトラー案のタイトルは
「虚偽、愚行そして臆病に対する4 1/2年の闘争」というややこしいものだったそうな・・。
このナチ党が躍進を遂げ始める時期にヒトラーには2人の女性が現れます。
ひとりは姪のゲリ、そしてもうひとりはエヴァ・ブラウンです。
この辺りは今まであまり読んだ本がありませんが、以前にTVで放映された
「ヒットラー 第1章:覚醒/第2章:台頭」が印象に残っていて、
特に30代~40代の若きヒトラーを演じたロバート・「フル・モンティ」・カーライルと
ヒンデンブルク大統領を演じた名優ピーター・オトゥールの顔がすぐに思い浮かびます。
ブリューニング内閣のワイマール共和国。様々な政党が乱立するこの時代、
既存の有力政党に失望した市民は、若い指導者と若い党員のナチ党に「やらせてみても・・」
という政党に見えたなどという話は、最近の日本の政治情勢を彷彿とさせます。
そして愛する姪、ゲリの拳銃自殺・・。この事件はヒトラーに計り知れないショックを与え、
好物だったハムの皿を拒否して「死体を食べるようなものだ」とゲーリングらに語ります。
こうしてゲリの冥福を祈るため「肉断ち」をし、菜食主義者ヒトラーが誕生するのでした。
「あのボヘミアの伍長はろくでなしだ。首相の器ではない。せいぜい郵政相止まりだ」と
ヒトラーを最期まで毛嫌いするヒンデンブルク大統領。
「ペンキ屋あがりをビスマルクの椅子に座らすことは断じてできぬ!」とも言っています。
ヒトラーが擦り寄る国防軍側ではシュライヒャーの陰謀とハンマーシュタインが頻繁に登場。
ヒトラーが政権奪取に多忙なこの時、今度はエヴァが拳銃自殺を図ります。
ここでは専属カメラマンであるホフマンの娘、ヘンリエッテが「自分の店の能無し店員」が
ヒトラーの愛人であることに自尊心を傷つけられたことによる嫌がらせも
その要因として紹介しています。
ちなみにこのヘンリエッテは、後のナチ党全国青少年指導者フォン・シーラッハの奥さんですね。。
総選挙で後退したナチ党とヒトラー。
「天下分け目の決戦」と叫び、全国民も注目する10万人足らずの田舎選挙である
リッペ州地方選挙で勝利したヒトラーは、最終的な勝利も確信します。
それにしてもこのリッペの選挙は、ユルゲン・シュトロープが選挙活動に大貢献したヤツですねぇ。
ようやく誕生したヒトラー内閣ですが、内外からは様々な意見も・・。
駐ドイツ・フランス大使のヒトラー評は「ジャンヌ・ダルクとチャップリンの雑種のような感じ」と述べ、
「ミュンヘン一揆」にも参加した第1次大戦の英雄ルーデンドルフも
「この男が我が国を奈落の底に突き落とし、国民を悲惨な事態に陥らせる」ことを予言。。。
「国会議事堂放火事件」も手伝って、ナチ党を唯一の政党とする法律が制定。
旧政党を支持したり、新党を結成しようとすると、強制労働か禁固刑に処せられます。
一方、国防軍vs突撃隊(SA)問題については、ブロムベルク、フリッチュ、レーダーらに対して
「大統領の座を応援してくれれば、SAの徹底的縮小と国防軍の大拡張」を約束し、
いよいよ旧友エルンスト・レームのSA粛清「長いナイフの夜」へと進みます。
後のSA幕僚長となるヴィクトール・ルッツェがSA幹部でありながら、レームよりも
「親ヒトラー派」であり、レームらの逮捕にも参加していたというのは初めて知りました。
そしてレームの専属運転手も逮捕・・。彼は「最後にこの車でひと走りさせてくれないか?」
これに呆然とうなずくのはヒトラーの専属運転手であるケンプカです。
以前から興味のあったオーストリアの「ドルフス首相暗殺」が非常に詳しく書かれていて
大変勉強になりました。
特に当時のオーストリアが台頭してきたナチ党だけでなく、イタリアのファシスト党の影響下にもあり、
この事件によって「ヒトラーは性的変質者だ。バカだ。しかも危険なバカだ」と
怒り狂うムッソリーニによって、あわや戦争勃発の危機・・という状況です。
ヒトラーの建築家シュペーアが手掛ける、荘厳で華麗な演出を施したニュルンベルク党大会。
この様子も女流監督レニ・リーフェンシュタールがヒトラーから依頼を受け、
映画「意志の勝利」が完成するまでが書かれています。
英国人美女のユニティ・ミトフォードが現れたり、またしても「ヒトラーに捨てられた」と
思い悩むエヴァが今度は睡眠薬で自殺を図ります。
ここらあたり、完全にヒトラーに「モテ季」が来てます・・。
姉イルゼが破り取った日記の部分が紹介されており、
これは1935年の部分です。なお、あの本は確か1937年からでしたね。
最後はヒトラー最初の軍事的博打、非武装地帯「ラインラント進駐」です。
ケルンやデュッセルドルフを含むこの地方の問題、「ロカルノ条約」からが丁寧に書かれています。
続いて、スペイン内戦に伴う、「コンドル軍団」の派遣、イタリア、そして日本との友好的関係・・。
この第1巻で最も印象的だったのは、1936年開催のベルリン・オリンピックです。
以前から興味があったというのもありますが、このヒトラー政権獲得前から
開催の決まっていたオリンピックに、従来の都市による開催から国を挙げての援助、
ギリシャに始まる聖火ランナーの登場、壮麗な開会式など、
現在のオリンピックの基礎となったというエピソードが書かれており、
大会前半は積極的に金メダリストと握手をしていたヒトラーが有名な米国の
黒人スーパー・アスリート、ジェシー・オーエンスとの握手を拒否したと云われる件でも、
そうではないという理由が書かれていました。
レニ・リーフェンシュタールの記録映画「オリンピア」についても触れられていて、
これは子供のころにTVでちょっと観た記憶が残っています。
確か「サヨナラおじさん」こと、淀川長治氏が大好きだった映画でしたかねぇ。
DVDを欲しくなりました。
児島 襄 著の「ヒトラーの戦い〈1〉」を読破しました。
遂に始まってしまいました・・。「ヒトラーの戦い」。
もともとは「週刊ポスト」に8年に渡って掲載されていたものを加筆して、
1978年に15巻の単行本として発売され、その後1992年に10巻の文庫版となった
有名なヒトラーと第三帝国の興亡史です。
ヴィトゲンシュタインが10巻セット、3000円で購入した文庫版も1巻のページ数は500ページ・・。
単純計算でも5000ページにも及ぶ「独破戦線」史上最大の超大作でもあります。
この「戦い」になんとか勝利するつもりですが、今後、連続10回続く予定のレビューに
どうか、お付き合い下さい。
なぜかヒトラーの遺体の検視結果・・「睾丸が1つしかなかった」という話から始まる本書。
このような睾丸欠如には「短気で過度に活動的、特別な人間、偉大な人間になりたいと願う」
心理状態になるといわれているそうで、これらの特徴がヒトラーにもピタリと当てはまります。
ヒトラーの青年時代、第1次大戦での従軍、そして戦後の1921年、ヒトラーが
ナチ党指導者になるまでが簡単に解説されます。
その後の「ミュンヘン一揆」、5年の禁固刑、その間の「わが闘争」の執筆と続きます。
さすが日本人の著者だけあって、この当時に日本の新聞に登場したヒトラーについても
「ヒットレル氏」とか「ヘトレル」などのパターンを紹介してくれます。
出版の決まった「わが闘争」ですが、当初のヒトラー案のタイトルは
「虚偽、愚行そして臆病に対する4 1/2年の闘争」というややこしいものだったそうな・・。
このナチ党が躍進を遂げ始める時期にヒトラーには2人の女性が現れます。
ひとりは姪のゲリ、そしてもうひとりはエヴァ・ブラウンです。
この辺りは今まであまり読んだ本がありませんが、以前にTVで放映された
「ヒットラー 第1章:覚醒/第2章:台頭」が印象に残っていて、
特に30代~40代の若きヒトラーを演じたロバート・「フル・モンティ」・カーライルと
ヒンデンブルク大統領を演じた名優ピーター・オトゥールの顔がすぐに思い浮かびます。
ブリューニング内閣のワイマール共和国。様々な政党が乱立するこの時代、
既存の有力政党に失望した市民は、若い指導者と若い党員のナチ党に「やらせてみても・・」
という政党に見えたなどという話は、最近の日本の政治情勢を彷彿とさせます。
そして愛する姪、ゲリの拳銃自殺・・。この事件はヒトラーに計り知れないショックを与え、
好物だったハムの皿を拒否して「死体を食べるようなものだ」とゲーリングらに語ります。
こうしてゲリの冥福を祈るため「肉断ち」をし、菜食主義者ヒトラーが誕生するのでした。
「あのボヘミアの伍長はろくでなしだ。首相の器ではない。せいぜい郵政相止まりだ」と
ヒトラーを最期まで毛嫌いするヒンデンブルク大統領。
「ペンキ屋あがりをビスマルクの椅子に座らすことは断じてできぬ!」とも言っています。
ヒトラーが擦り寄る国防軍側ではシュライヒャーの陰謀とハンマーシュタインが頻繁に登場。
ヒトラーが政権奪取に多忙なこの時、今度はエヴァが拳銃自殺を図ります。
ここでは専属カメラマンであるホフマンの娘、ヘンリエッテが「自分の店の能無し店員」が
ヒトラーの愛人であることに自尊心を傷つけられたことによる嫌がらせも
その要因として紹介しています。
ちなみにこのヘンリエッテは、後のナチ党全国青少年指導者フォン・シーラッハの奥さんですね。。
総選挙で後退したナチ党とヒトラー。
「天下分け目の決戦」と叫び、全国民も注目する10万人足らずの田舎選挙である
リッペ州地方選挙で勝利したヒトラーは、最終的な勝利も確信します。
それにしてもこのリッペの選挙は、ユルゲン・シュトロープが選挙活動に大貢献したヤツですねぇ。
ようやく誕生したヒトラー内閣ですが、内外からは様々な意見も・・。
駐ドイツ・フランス大使のヒトラー評は「ジャンヌ・ダルクとチャップリンの雑種のような感じ」と述べ、
「ミュンヘン一揆」にも参加した第1次大戦の英雄ルーデンドルフも
「この男が我が国を奈落の底に突き落とし、国民を悲惨な事態に陥らせる」ことを予言。。。
「国会議事堂放火事件」も手伝って、ナチ党を唯一の政党とする法律が制定。
旧政党を支持したり、新党を結成しようとすると、強制労働か禁固刑に処せられます。
一方、国防軍vs突撃隊(SA)問題については、ブロムベルク、フリッチュ、レーダーらに対して
「大統領の座を応援してくれれば、SAの徹底的縮小と国防軍の大拡張」を約束し、
いよいよ旧友エルンスト・レームのSA粛清「長いナイフの夜」へと進みます。
後のSA幕僚長となるヴィクトール・ルッツェがSA幹部でありながら、レームよりも
「親ヒトラー派」であり、レームらの逮捕にも参加していたというのは初めて知りました。
そしてレームの専属運転手も逮捕・・。彼は「最後にこの車でひと走りさせてくれないか?」
これに呆然とうなずくのはヒトラーの専属運転手であるケンプカです。
以前から興味のあったオーストリアの「ドルフス首相暗殺」が非常に詳しく書かれていて
大変勉強になりました。
特に当時のオーストリアが台頭してきたナチ党だけでなく、イタリアのファシスト党の影響下にもあり、
この事件によって「ヒトラーは性的変質者だ。バカだ。しかも危険なバカだ」と
怒り狂うムッソリーニによって、あわや戦争勃発の危機・・という状況です。
ヒトラーの建築家シュペーアが手掛ける、荘厳で華麗な演出を施したニュルンベルク党大会。
この様子も女流監督レニ・リーフェンシュタールがヒトラーから依頼を受け、
映画「意志の勝利」が完成するまでが書かれています。
英国人美女のユニティ・ミトフォードが現れたり、またしても「ヒトラーに捨てられた」と
思い悩むエヴァが今度は睡眠薬で自殺を図ります。
ここらあたり、完全にヒトラーに「モテ季」が来てます・・。
姉イルゼが破り取った日記の部分が紹介されており、
これは1935年の部分です。なお、あの本は確か1937年からでしたね。
最後はヒトラー最初の軍事的博打、非武装地帯「ラインラント進駐」です。
ケルンやデュッセルドルフを含むこの地方の問題、「ロカルノ条約」からが丁寧に書かれています。
続いて、スペイン内戦に伴う、「コンドル軍団」の派遣、イタリア、そして日本との友好的関係・・。
この第1巻で最も印象的だったのは、1936年開催のベルリン・オリンピックです。
以前から興味があったというのもありますが、このヒトラー政権獲得前から
開催の決まっていたオリンピックに、従来の都市による開催から国を挙げての援助、
ギリシャに始まる聖火ランナーの登場、壮麗な開会式など、
現在のオリンピックの基礎となったというエピソードが書かれており、
大会前半は積極的に金メダリストと握手をしていたヒトラーが有名な米国の
黒人スーパー・アスリート、ジェシー・オーエンスとの握手を拒否したと云われる件でも、
そうではないという理由が書かれていました。
レニ・リーフェンシュタールの記録映画「オリンピア」についても触れられていて、
これは子供のころにTVでちょっと観た記憶が残っています。
確か「サヨナラおじさん」こと、淀川長治氏が大好きだった映画でしたかねぇ。
DVDを欲しくなりました。
こんばんは!
えーとりあえず私あくまで ドイツ軍に関心を寄せる一般人ですのでご安心を。さて先の長いお話になりますね、そんな所へこの一冊をご紹介するのはどうかと思いましたが。
「アドルフ ヒトラーの一族 独裁者の隠された血筋」
ちょうどこの本の時期とも重なるところが多く、また現在まで続くお話です
読んで損はないかと。ところで「ヒトラーの戦い」かなり会話のシーンがあります、実際にあったことなのか、作家の創作なのか悩んで巻末の参考文献
入手可能なもの買ってみたのですが、確証得られないところ、もしくは同様の記録はありそれを元に会話形式で再現した、とも思われるところがあるような。。この辺は微妙な感が、小説と位置付ける本ですかね。
まあ私も全部の資料を確認してないので断定できません、また「先生は徹底的に資料調べる」との編集者かアシの話もあるので迷います。
by グライフ (2011-02-12 18:53)
グライフさん、ど~も。
「アドルフ ヒトラーの一族 独裁者の隠された血筋」ですか。
コレはトンデモ本かな?と勝手に思っていましたが、そ~ですかぁ。
第2巻読み終わって、明日UPすべく頑張っているところですが、確かに会話のシーンは多いですね。まぁ、それが結構楽しく読ませてくれている要因なのは間違いないですが・・。
しかし、 グライフさんのお話を伺うたびに、とても 「一般人」とは思えません・・。
by ヴィトゲンシュタイン (2011-02-12 19:53)