悪魔の旅団 -米軍特殊部隊、イタリア戦線を制覇す- [USA]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
ジョージ・ウォルトン著の「悪魔の旅団」を読破しました。
偶然、見つけた一冊の紹介です。
このタイトルと赤いベレーに緑の顔の宇宙人のごとき兵士・・という表紙を見たら
衝動買いせずにはいられませんでした。
1969年にハヤカワ・ノンフィクションで発刊されたもので、
主にイタリア戦線で死闘を繰り広げた、実働2年間というアメリカ/カナダ連合の
特殊部隊「第1特殊任務部隊(1st Special Service Force)」の
1942年の創設から、その最後までを描いたものです。
もともとこの特殊部隊創設の発想はロンドンの連合作戦本部のボス、
ルイス・マウントバッテン陸軍中将によるもので、これが米参謀総長マーシャル将軍へと
伝えられ、ドイツ占領下のノルウェーでの主要補給源破壊を目的とした特殊作戦を
新規開発による雪上車とともに実施しようという計画案でした。
陸軍省参謀部作戦課に勤務するロバート・フレドリック中佐の元に
この計画案が持ち込まれ、作戦的見地からそれを評価することになったフレドリックは
「実現不可能」という結論に至ります。
そして彼の報告書に癇癪玉を炸裂させた上官アイゼンハワーからデスクワークの任を解かれ、
逆にこの作戦の責任者として新設の「部隊長」に任命されてしまいます。
早速、旅団の編成に取りかかる昇進したフレドリック大佐は
チャーチルが「北アメリカ軍」と言うようにカナダ軍からも多くの兵士を受け入れることになります。
自ら徴集する米兵については「粗暴で、強健で怖いもの知らず、
小学校3年生以上の学力がある者」。
これを知った多くの駐屯地の司令官たちは、厄介者を追い払い、
自分の所の軍刑務所をカラにする絶好のチャンスとして大喜び・・。
このようにして米加のつわものたちがスキーやパラシュート降下などの合同訓練に
明け暮れるわけですが、当初は軍服や規律の違いなど揉め事も当然だったようです。
なかには、あるカナダ軍兵士が実は以前に脱走した米軍兵だった・・という話もありました。
この兵士は、血気盛んなことから「カナダ軍の方が早く戦える」と考えていたそうです。
しかし、当初のノルウェー作戦は時期を逃し、また、ノルウェー自体も、
いざこの作戦が現実味を帯びてくると及び腰となってしまいます。
その結果、初陣となるのはケッセルリンク元帥が構築した、
イタリアの山岳要塞グスタフ・ラインで立ち往生する
マーク・クラーク将軍の第5軍の支援ということに。
この戦いは「モンテ・カッシーノの戦い」としても良く知られていますが、
本書ではこのグスタフ・ラインの様々な地区や峰をひとつひとつ奪取していくというもので、
例えば、12月2日の初戦は「モンテ・カミノ」や「モンテ・マジョーレ」、最も頑強なのは
「モンテ・ラ・ディフェンサ」というものです。
精鋭「ヘルマン・ゲーリング師団」を筆頭にした頑強なドイツ守備隊に対して、
夜間の暗闇に紛れて「第1特殊任務部隊」は攻撃を仕掛けます。
25人程度の小隊がその山頂を奪取した際には7~8人しか残っていなかったという
とんでもない損害を出しながらも息つく暇なく、次の山頂を目指します。
常に部隊と共にし、自ら斥候まで行う旅団長のフレドリック大佐は
前線から負傷兵を運んだりと、部下の兵士にとっても神出鬼没の存在で
案の定、このイタリア戦線だけで9回も負傷しています。
そんな激戦を指揮するなか、突如、司令部から呼び出され、7時間をかけて山を下ります。
そこでは知らない顔のお偉方が「レクリエーション施設」についての説明を求めますが、
これは「特殊任務部隊(スペシャル・サーヴィセズ)」=「慰安部隊」との大きな勘違いであり、
なんとか平常心を保ち、この場をやり過ごしたフレドリック大佐は、呪いの言葉を吐きながら
また一歩一歩、山を登って行くのでした。。
このイタリアでの山岳戦。暗闇では仲間の生き死にすらわからないほどで、
結構、お互い「アメリカ兵か?ドイツ兵か?」といちいち確認しながら戦い始めます。
ドイツ兵からしてみれば今までの敵、英兵の皿のように平べったい鉄兜は一目瞭然ですが、
新たな敵である米兵のそれは、どちらかというと形もドイツに似ています。
ましてや、ヘルマン・ゲーリング師団のような降下猟兵は独特の小さい型で
「第1特殊任務部隊」も降下兵ですから、装備も含め、似ていたのかも知れません。
モンテ・マッジョでの戦いも終わったものの、隊員1800名のうち、
戦死、または負傷兵1400人・・。
ナポリで噂されていた「自殺部隊」と言われても仕方のない損害です。
その後、ライバルでもあるレンジャー部隊などから補充を受けた彼らは
「アンツォ上陸作戦」の支援に駆り出されます。
そして死亡したヘルマン・ゲーリング師団の中尉のポケットからは
この敵部隊のニックネームとなる「黒い悪魔・・」と書かれたメモが。。
彼らは記念としてドイツの拳銃欲しさに、投降して来たドイツ将校を
平気で射殺してしまうほどの荒くれ者でもあります。
表紙の赤いベレーを採用していたのかは定かではありませんが、
本書の原題はそのまま「Devil's Brigade」。
調べてみると、ウィリアム・ホールデン主演の映画「コマンド戦略」が引っ掛かりました。
1967年の映画ですが、コレは聞いたこともないタイトルですねぇ。
ストーリーは本書と同じのようで、この映画の原作的な位置づけかも知れません。
なお、本書のの帯では「グリーン・ベレーうんぬん」と書かれていますが、
これは、戦後の米特殊部隊「構想」の基盤になった部隊という意味であり、
直接、グリーン・ベレーそのものの母体というわけではないようです。
その意味では、若干やられた感はありますが、
米加連合の特殊部隊の存在を知ることができ、なかなかタメになった一冊です。
しかし、この文庫ではない、昔のソフトカバーの「ハヤカワ・ノンフィクション」は、
以前に紹介した「暁の七人 -ハイドリッヒの暗殺-」以来、2冊目ですが、
なかなか面白いモノがありますね。
神○町にこのシリーズを棚一面に強烈に揃えている古書店があるので
(「暁の七人」もそこで買いました。たったの¥700でした・・)
久しぶりに物色しに行ってきます。
ジョージ・ウォルトン著の「悪魔の旅団」を読破しました。
偶然、見つけた一冊の紹介です。
このタイトルと赤いベレーに緑の顔の宇宙人のごとき兵士・・という表紙を見たら
衝動買いせずにはいられませんでした。
1969年にハヤカワ・ノンフィクションで発刊されたもので、
主にイタリア戦線で死闘を繰り広げた、実働2年間というアメリカ/カナダ連合の
特殊部隊「第1特殊任務部隊(1st Special Service Force)」の
1942年の創設から、その最後までを描いたものです。
もともとこの特殊部隊創設の発想はロンドンの連合作戦本部のボス、
ルイス・マウントバッテン陸軍中将によるもので、これが米参謀総長マーシャル将軍へと
伝えられ、ドイツ占領下のノルウェーでの主要補給源破壊を目的とした特殊作戦を
新規開発による雪上車とともに実施しようという計画案でした。
陸軍省参謀部作戦課に勤務するロバート・フレドリック中佐の元に
この計画案が持ち込まれ、作戦的見地からそれを評価することになったフレドリックは
「実現不可能」という結論に至ります。
そして彼の報告書に癇癪玉を炸裂させた上官アイゼンハワーからデスクワークの任を解かれ、
逆にこの作戦の責任者として新設の「部隊長」に任命されてしまいます。
早速、旅団の編成に取りかかる昇進したフレドリック大佐は
チャーチルが「北アメリカ軍」と言うようにカナダ軍からも多くの兵士を受け入れることになります。
自ら徴集する米兵については「粗暴で、強健で怖いもの知らず、
小学校3年生以上の学力がある者」。
これを知った多くの駐屯地の司令官たちは、厄介者を追い払い、
自分の所の軍刑務所をカラにする絶好のチャンスとして大喜び・・。
このようにして米加のつわものたちがスキーやパラシュート降下などの合同訓練に
明け暮れるわけですが、当初は軍服や規律の違いなど揉め事も当然だったようです。
なかには、あるカナダ軍兵士が実は以前に脱走した米軍兵だった・・という話もありました。
この兵士は、血気盛んなことから「カナダ軍の方が早く戦える」と考えていたそうです。
しかし、当初のノルウェー作戦は時期を逃し、また、ノルウェー自体も、
いざこの作戦が現実味を帯びてくると及び腰となってしまいます。
その結果、初陣となるのはケッセルリンク元帥が構築した、
イタリアの山岳要塞グスタフ・ラインで立ち往生する
マーク・クラーク将軍の第5軍の支援ということに。
この戦いは「モンテ・カッシーノの戦い」としても良く知られていますが、
本書ではこのグスタフ・ラインの様々な地区や峰をひとつひとつ奪取していくというもので、
例えば、12月2日の初戦は「モンテ・カミノ」や「モンテ・マジョーレ」、最も頑強なのは
「モンテ・ラ・ディフェンサ」というものです。
精鋭「ヘルマン・ゲーリング師団」を筆頭にした頑強なドイツ守備隊に対して、
夜間の暗闇に紛れて「第1特殊任務部隊」は攻撃を仕掛けます。
25人程度の小隊がその山頂を奪取した際には7~8人しか残っていなかったという
とんでもない損害を出しながらも息つく暇なく、次の山頂を目指します。
常に部隊と共にし、自ら斥候まで行う旅団長のフレドリック大佐は
前線から負傷兵を運んだりと、部下の兵士にとっても神出鬼没の存在で
案の定、このイタリア戦線だけで9回も負傷しています。
そんな激戦を指揮するなか、突如、司令部から呼び出され、7時間をかけて山を下ります。
そこでは知らない顔のお偉方が「レクリエーション施設」についての説明を求めますが、
これは「特殊任務部隊(スペシャル・サーヴィセズ)」=「慰安部隊」との大きな勘違いであり、
なんとか平常心を保ち、この場をやり過ごしたフレドリック大佐は、呪いの言葉を吐きながら
また一歩一歩、山を登って行くのでした。。
このイタリアでの山岳戦。暗闇では仲間の生き死にすらわからないほどで、
結構、お互い「アメリカ兵か?ドイツ兵か?」といちいち確認しながら戦い始めます。
ドイツ兵からしてみれば今までの敵、英兵の皿のように平べったい鉄兜は一目瞭然ですが、
新たな敵である米兵のそれは、どちらかというと形もドイツに似ています。
ましてや、ヘルマン・ゲーリング師団のような降下猟兵は独特の小さい型で
「第1特殊任務部隊」も降下兵ですから、装備も含め、似ていたのかも知れません。
モンテ・マッジョでの戦いも終わったものの、隊員1800名のうち、
戦死、または負傷兵1400人・・。
ナポリで噂されていた「自殺部隊」と言われても仕方のない損害です。
その後、ライバルでもあるレンジャー部隊などから補充を受けた彼らは
「アンツォ上陸作戦」の支援に駆り出されます。
そして死亡したヘルマン・ゲーリング師団の中尉のポケットからは
この敵部隊のニックネームとなる「黒い悪魔・・」と書かれたメモが。。
彼らは記念としてドイツの拳銃欲しさに、投降して来たドイツ将校を
平気で射殺してしまうほどの荒くれ者でもあります。
表紙の赤いベレーを採用していたのかは定かではありませんが、
本書の原題はそのまま「Devil's Brigade」。
調べてみると、ウィリアム・ホールデン主演の映画「コマンド戦略」が引っ掛かりました。
1967年の映画ですが、コレは聞いたこともないタイトルですねぇ。
ストーリーは本書と同じのようで、この映画の原作的な位置づけかも知れません。
なお、本書のの帯では「グリーン・ベレーうんぬん」と書かれていますが、
これは、戦後の米特殊部隊「構想」の基盤になった部隊という意味であり、
直接、グリーン・ベレーそのものの母体というわけではないようです。
その意味では、若干やられた感はありますが、
米加連合の特殊部隊の存在を知ることができ、なかなかタメになった一冊です。
しかし、この文庫ではない、昔のソフトカバーの「ハヤカワ・ノンフィクション」は、
以前に紹介した「暁の七人 -ハイドリッヒの暗殺-」以来、2冊目ですが、
なかなか面白いモノがありますね。
神○町にこのシリーズを棚一面に強烈に揃えている古書店があるので
(「暁の七人」もそこで買いました。たったの¥700でした・・)
久しぶりに物色しに行ってきます。
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